宇宙人は本当にいるの? 存在するという3つの説とホーキング博士の警告!

「パパ正直に答えて! 宇宙人は本当にいるの?」

 

日曜日の朝のことです。

小学生の匠が、リビングに飛び込んできて、新聞を読んでいたパパに突然の質問をしました。

 

「アメリカの海軍がパイロットに、UFO目撃したらきちんと報告するように指導したそうだよ」

匠はテレビでそんなニュースをみて、ビックリしてパパに聞いてきたのです。

 

パパはどう答えていいのか困りました。

・・「宇宙人がいる」という証拠はどこにもないし、「宇宙人はいないよ」というのも夢がなくてつまらないし・・。

 

小さな天体望遠鏡をパパから買ってもらった匠は、夜の空を観測して、いろんな夢を膨らませているようです。

宇宙人もその一つです。

 

「宇宙はとっても広いからどこかに宇宙人がいる可能性があると思うけど、UFOも宇宙人も発見はされていないというのが現実だと思うよ」

パパがそう答えると、匠の表情がすこし曇りました。

 

「パパお願い、一緒に調べてみようよ」

そう言って匠はパパのパソコンの前に椅子を二つ並べました。

 

匠はパパと一緒の調査が大好きになったようです。

「よっしゃ、エイリアンの調査開始だ!」

 

パパが大きな声で答えました。

パパと匠は、仲良くパソコンの前に座り込んで、宇宙人についての科学記事の調査を始めました。

 

存在説1 NASAの科学者コロンバーノ氏「エイリアンはもう地球に来ているかも知れない!」

 

newsweekjapanより。
地球外生物が人間と同じく炭素ベースでできているとは限らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりショッキングな科学記事が見つかりました。

2018年12月6日の米ニュース・ウイーク日本版が、米航空宇宙局(NASA)の科学者の発表を次のように伝えていました。

 

エイリアンはもう地球に来ているが、予想もしない外見であるために発見されずにいるだけかもしれない

 

記事によれば、発表した科学者はNASAエイムス研究センターの研究者、シルバノ・コロンバーノ氏で、「エイリアンが発見されない理由は我々の固定概念にある」といっています。

 

続いて「エイリアンが、地球上の生物のように炭素をベースにした生命体でない可能性がある。その時には、生命体だと認識できない姿だったり、目に見えないくらい小さな超知能体であるかもしれない」といっているのです。

 

パパが記事を声を上げて読むと、匠が驚いて叫びました。

「パパ、エイリアンがわんちゃんだったり、ニャンコだったり、ゴキブリだったりする映画見たけど、このエイリアンそれどころじゃないよ。小さすぎてどこにいるかもわからない相手だ」

 

「この宇宙人、埃みたいに風に漂ってるのかな。吸い込んだらエライことだ。そのうえ、超知能体だというから、たとえ遭遇して会話しても、パパにはとても理解できないおかしなやつだったりして・・・」

パパはそういって、さらに記事を読み進めました。

 

コロンバーノ先生は、“宇宙人は人間のような短い寿命の制約を受けずに、広い宇宙を凄い技術で飛び回っているしれない”と発言していました。

 

「パパ、知能が人間を超えていて、身体が僕らよりつよくて長持ちする生き物といったらさ・・・それスーパー知能を持ったアンドロイドだよ」

匠の言葉にパパは驚きました。

 

「匠、お前大したもんだ。この科学者も同じこと言ってるぞ。エイリアンは究極的にはロボット的になる可能性があるってさ」

パパは匠の成長ぶりがうれしくてたまらないのです。

 

「そのうえ超小さくて、目に見えないエイリアンときたらもう僕、お手上げだよ。・・・でもパパ、この話“たとえば”の話でしょ?」

「そうだよ、“”たとえば”・・・エイリアンが宇宙にいたら、こんな凄いのかも知れないという仮定の話だよ」

 

「そうだとしたら、その“たとえば”はどのくらいのたとえばなの?」

「うん? 宇宙にエイリアンがいる可能性のことだな?」

 

「そうだよ。その可能性ってやつだよ」

パパはうーんと唸って、考え込みました。

 

しばらくしてなにか思い出したみたいです。

「たしか最近買った本の中に、なんとかの方程式というのがあったぞ」

 

「思い出した!」

パパは凄いスピードで本棚に走って、一冊の本を取り出してきました。

 

存在説2 ドレイクの方程式/高度文明が存在する惑星は1から100万個?

 

パパが取り出してきたのは「地球外生命体と人類の未来」という本でした。

「じつはこの本買ってきて、まだ読んでないんだよ」

 

パパは大急ぎでページを繰りながら、声を上げて、斜め読みを始めました。

・・・昔、「オズの魔法使い」の話が大好きな子供がいたんだ。

 

その子は1930年シカゴで生まれたフランク・ドレイクで、8才の時に科学技師の父親に「地球によく似た世界が他にもある」と言ったそうだ・・。

「ドレイク少年は匠そっくりだよ」

 

クスッと笑うと、パパは声を上げて本を読み進めました。

 

・・・若者に成長したドレイクは天文学の道に進んで、オズの名前を採って“オズマ計画”というプロジェクトを推進したんだ。

電波望遠鏡を使って、他の世界に存在する知的生命の兆候を探査するという計画(SETI)だ。

 

その目的は地球外文明との交信だったのだよ。

そしてそのためにまず取り組むべき課題は「交信が可能な地球外文明がどれくらいあるかの計算式だ」とドレイクは思ったんだ。

 

ドレイクはこの方程式を1961年のグリーンバンク会議で発表したんだ。

これが有名なドレイクの方程式だ。

 

ドレイクの方程式

銀河系に星間通信できるような文明がどれくらいあるか、を推定する式

 N=Ns × fp × ne × fl × fi × fc × L
 

(アダム・フランク著「地球外生命体と人類の未来」)

 

・・・ドレイクの方程式は、地球と通信できる技術を持った文明が銀河系宇宙にいくつあるのか求める式だ。

難しそうだけど、これ全部かけ算だからパパや匠にもわかるかもしれないよ・・

 

パパはそう言って本を伏せて、今度はパソコンからウイキペディアで「ドレイクの方程式」を開きました。

 

・・・それじゃパパができるだけわかりやすく説明するから、聞いてくれる?

順番にそれぞれの記号の意味と、当てはまる数字を説明するよ。

 

Nは、これから求める答えだ。

銀河系に、星間通信できるような地球外文明がいくつあるかの数だよ。

 

Nsは、銀河系に毎年生まれてくる恒星の数。

・・・恒星というのは、その周囲を回る惑星に膨大なエネルギーを放射する太陽のような星のことだ。

当時の答えは10個だった。

 

fpは、その恒星に惑星がある確率。

当時の答えは0.5つまり50%だ。

 

neは、その中、生命が存在可能な惑星の数。

・・・燃えている恒星に近すぎず、遠すぎず、水が蒸発や、凍結しない温度環境にある星のことだ。

当時の答えは2個だ。

 

flは、その惑星に生命が発生する確率。

・・・もっとも単純な原始的生命が誕生する可能性のことだ。

当時の答え:1  つまり100%だ。

 

fiは、その生命が知的生物に進化する確率。

・・・誕生した原始的生物がどのくらいの割合で知的生物に進化できるのかだ。

当時の答え:0.01 つまり1%

パパは専門家者じゃないけど、ここ凄く楽観的な気がしない?

 

fcは、その知的生物が星間通信できるような文明に発展する確率。

・・・ドレイク先生は先進技術を電波を発する能力と捉えていたようだよ・・つまり古代ローマは文明を持っていたけど、ここで言う技術文明には含まれないということだ・・

当時の答え:0.01つまり1%

 

Lは、その文明を維持継続できる時間のこと。

・・この最後の項目は、人類が持つような高度な文明はどのくらいの期間存続できるのか?という僕ら人類にとっての核心的テーマだよ。

 

ドレイクがこの方程式を提起した1961年のグリーンバンク会議では、この項目で激しい議論が巻き起こったんだ。

資源の浪費に関するテーマ “今で言えば地球の温暖化”のことや、“核戦争勃発の脅威”のことが議論されたようだ。

 

当時の答え:一万年だそうだ。

 

で、計算の合計をしてみよう。

(注:この数値と、計算はウイキペデイアから引用しています)

 

合計は10になったよ。

銀河系に知的生命体の文化が存在する惑星の数は想定10個ということだ。

 

「説明長かったけど、匠、これがドレイクの方程式の答えだったんだ」

 

「ヤッター! エイリアンのいる惑星は銀河系宇宙に10個もあるということだ」

匠が両手を天上に突き上げて大喜びしました。

 

「でもさ、パパ! この計算よくわかんないけど、この七つの数字って“たとえば”だらけだよ」

匠の鋭い指摘で我に返ったパパは、考え方の違う、別の記事を探しました。

 

小学館の日本大百科全書が、匠の疑問に答えていました。

合計のNは上記のNsのような項目の数値の取り方により大きく変わる。Nsからneまでの数値は最近だいぶ確からしい値が観測されつつあるが、flからLまでの数値は不確実性が大きく正確なNが出せていない。とくに文明を維持継続できる時間であるLはむずかしく、合計のNは1から100万まで種々の値が提案されている。

(出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))

 

「匠、どうやら現在の計算ではNの数字は1から100万まであるそうだ。匠の言うとおり“たとえば”だらけみたいだ。それでも0がないからエイリアンはかならず銀河系宇宙のどこかにいるってことかな?」

「パパ、この1って数字、もしかしたら僕らの地球のことじゃないの?」

 

パパと匠は顔を見合わせていましたが、一緒に吹き出してしまいました。

「でもさ匠、エイリアン文明が100万もある可能性を計算した学者もいるわけだから、楽しいじゃないか? もしかしたらエイリアンはうじゃうじゃいるぞってこわ~い話だ」

 

そう言ってパパはパソコンに向かって座り直し、さらに新しい記事を探し始めました。

しばらくして、パパはとんでもない記事を見つけ出したのです。

 

存在説 3 “地球は宇宙人が作る動物園?”

 

地球は宇宙人が作った動物園

 

 

 

 

 

 

 

パパが英語の記事を読んで、日本語に訳してくれました。

高度な知能を持った宇宙人がもう既に我々を発見して、人類を地球と言う巨大動物園の中で飼っている

Intelligent alien life may have already found us and enslaved humanity in a giant zoo: planet Earth。

 (2016年7月2日のWIRED NEWS(英))

 

ニール・ドグラース・タイソン(Neil deGrasse Tyson)というアメリカの有名な天文物理学者が、スペインで行われた「科学と芸術の祭典」でこんな発言をしていました。

宇宙人達は地球と言う動物園を作って、秘かに人類を観察して楽しんでいるというのです。

 

「人間自然動物園かな?」

パパが言うと匠がすかさず返しました。

 

「もしかしたら“猛獣につき注意”って看板立ってるかもね」

「それとも俺たち宇宙人のペットかも」

 

パパはさらに記事を読み進めました。

博士は次のように言っています。

 

・・・私は人類が知性を持った宇宙人と遭遇する可能性については悲観的だ。人間の知性は宇宙人と比べて低いから、宇宙人を発見する可能性が大変低い。

そして、できれば宇宙人の存在などなにも知らずに“動物園で過ごす方が“人類は幸せかもしれない・・・と。

 

「匠、これどう思う」

「パパ、それ無理だよ。僕たち、怖くても、知りたいことはどうしても知りたいんだよ!」

 

匠の好奇心はもう抑えられそうにありません。

「匠、ちょっと待った! このタイソン博士の発言、あの高名なホーキング博士が言った警告に答えたものだって書いてあるよ。ホーキング博士の警告って、いったい何なのか調べてみよう」

 

 “ホーキング博士の警告”

 

ホーキング博士の警告

 

 

 

 

 

 

 

 

調べていくと、その前の年、2015年にホーキング博士が“警告”を発しています。

警告の内容を紹介したのはスペイン紙「エル・パイス」でした。

 

「地球外生命体がわれわれ人類を絶滅させる可能性があるため、エイリアンとは関わりを持たない方がよい。エイリアンが地球に来た場合、コロンブスの米大陸上陸時のように、先住民族のことをよく知らないために起きた結果・・“大虐殺”になる」

 

このショッキングな発言は、いろんなメディアで世界に報道されて、広がったのです。

パパが調べを進めると、ホーキング博士はそれまでにもテレビ番組で自分の宇宙観を述べていました。

 

「地球以外に生命が存在する可能性はかなり高く、自分の惑星の資源を使い果たした後、資源や居住場所を求めて宇宙を彷徨っている恐れがある」

・・だから、宇宙人と接触しようとすることは危険なことだ・・

 

ホーキング博士の警告の趣旨をパパは匠に説明しました。

匠は腕組みをして聞いていましたが、しばらく考えていいました。

 

「僕のエイリアン探査も慎重にやれってことだね」

匠が偉そうにぼそっと言ったので、パパは吹き出してしまいました。

 

匠はもうエイリアンの調査に命がけなのです。

パパは最後にもう一度NASAのニュースを調べてみました。

 

「おっと、地球外生命の探査計画(SETI)についてNASAの最新のニュースが出てきたよ」

2019年2月11日、NASAの最新の発表記事が出てきました。

 

NASAが生命探知科学センターを新設

 

NASAは生命探知科学センター(Center for Life Detection Sciense, CLDS)という組織を新設していました。

CLDSの目的は「生命の起源と地球外生命体の可能性を探ること」とされています。

 

主任研究員トリ・ホラーさんはCLDSの使命について次のように語っています。

「これまでと違う最善の策は、地球とは全く違う世界の独特の状況においても生命を検出できる新しいツールや戦略を開発することだ」

 

そのための知恵を結集しようと・・CLDSはシリコンバレーにあるNASAエイムズ研究センターの中に本部を置いて、宇宙生物学、天体物理学、物理化学などの専門家を全米から集めています。

すでに、ジョージタウン大学やジョージア工科大学を始め、多くの研究者がCLDSの研究チームを立ち上げています。

 

「匠、NASAはどうやら本気でエイリアン探索に乗り出したようだぞ」

「やった!NASAが本気なら僕も頑張らなくっちゃ!」

 

大きく叫んで、匠がもう一度両手を天井に向かって突き上げました。

エピローグ

 

その夜のことです。

夕食を済ませたパパと匠はテラスに出て夜空を眺めました。

 

匠がいつもの小さな天体望遠鏡を持ち出してきて、惑星の探索を始めました。

「エイリアンはどこかな、僕たち人類はこの広い宇宙に一人ぼっちなのかな?」

 

匠が囁いて、パパが答えました。

「パパはどうしてもドレイクの方程式の最後の項目“L”が気になるんだ。

“高度な文明はどのくらいの期間存続するのか?”のところだよ。

このまま地球温暖化が続いたら地球内生命体の寿命もそれほど長くはないのかも知れないって、アダム・フランク先生は言ってるよ。

そのためにもエイリアンの研究は必要だってね」

 

「将来、どこかの宇宙人が地球をみつけてさ、“知的生命体の遺跡発見”なんてことないように、パパと二人でがんばらなくっちゃね」

匠がマジで答えて、二人は大笑いしました。

 

 (おわり)

 

匠とパパの「宇宙シリーズ」はここからどうぞお読みくださいね。

 

https://tossinn.com/?p=2062

 

https://tossinn.com/?p=80

 

 

【記事は無断転載を禁じられています】

 

未来からのブログ5号“皇帝クラウドマスターはクールで可愛い人工頭脳だったよ”

僕はジャラ。

約束通り、今日も100年前の君に、未来の世界の情報送るね。

 

日記風で、情報量は少しずつだけど我慢して読んでよ。

このスタイルが、日常の風景写してリアルだから、一番良く理解してもらえると思うんだ。

 

それでは「未来からのブログ」に投稿始めるよ。

そうだ、前回の記事まだ読んでない人はここから読んでね。

 

未来からのブログ4号 “ ザ・レストランで三色カクテル飲んで唄ったよ” 

 

未来からのブログ5号“皇帝クラウドマスターはクールで可愛い人工頭脳だったよ”

 

「ジャラジャラ」

「うるせー!」

 

「ジャラじゃら!」

「しつこいぞ!」

 

「ジャラ、お目覚めください。クラウドマスターがジャラとカーナをお呼びです」

スーツマンが僕に起きろと言ってるけど、今朝のジャラはひどい二日酔いだよ。

 

昨日の夜飲んだザ・レストランの七色カクテルと、そのあとのプレーのせいだ。

でもさ、クラウドマスターのお呼びなら、仕方が無い。

 

「うーん!」って唸りながら、ベッドで両手伸ばしたら二つのボデイーにコンタクトしたよ。

「あれッ!」

 

ジャラはスーツマンのボディー着たままで寝ていたよ。

そのうえパートナーのキッカと、フリー友達のカーナもボディーを身につけてた。

 

昨晩は、三人でボディー装着したまま、プレーしたみたいだ。

そんなことできるのかって?

 

そりゃーできるさ。

もともとスーツマンは僕のボデイーを再現したものなんだよ。

 

だから、スーツマンの頭のところに僕が収まったら、昔のジャラが完成するってわけ。

身体を失う前の僕の姿にさ。

 

そのうえ、ボデイーはグレードアップされてるよ。

ボデイーはジャラ専用の自動運転の最高級車みたいなものさ。

 

もち、身体の末端まで人工神経がジャラのブレーンとニューロンでつながってるから、ボディー感覚は最高さ。

滑るようになめらかな動きの感触をシナプスがキャッチするんだ。

 

これって、最高さ!

カーナもキッカも同じ。

 

「あっ、思い出した。ときどきカーナが僕の動きを細かく指導してくれたよ」

・・修正! 右上方13度! とか言ってたよ・・。 

 

わかった?

ひどい二日酔いの原因が・・。

 

きっと・・

おいしいこと二つもしたあとの罰だよ。

 

「カナカナカナ」

「きやっきやっ」

 

可愛い声でスーツレディーがやさしくカーナとキッカを起こしたよ。

で、三人で出かけることにした。

 

良い天気だ。

三人で手を繋いで歩いたよ。

 

ジャラが真ん中だよ。

またあの唄が始まった。

 

「I left my heart  in Sanfrancisco・・」

大きな交差点にやって来て、パートナーのキッカは二人と別れた。

 

キッカは娘のクレアと息子のボブに会いに行くんだ。

二人が「勉強してる」ドリームワールドへだ。

 

月に一度の面会日だから、ジャラも一緒に行く予定でとっても楽しみにしてたんだけどさ、皇帝がお呼びだから仕方が無い。

ジャラとカーナはキッカと別れて、ザ・カンパニーに向かったよ。

 

・・・

「♯チャンチャカチャン、チャカチャー、チャカチャー♭」

ザ・カンパニーの最上階にあるミーティングルームに、いつものテーマソングが響いて、皇帝クラウドマスターが登場した。

 

「二人とも、せっかくの休みのところ急に呼びだしてすまない。・・で、ジャラ、おじいちゃんとの話はどうなった?」

マスターはいきなり攻勢をかけてきた。

 

マスターは史上初めて人類のレベルを超えた人工の知能“シンギュラリティー一号”だからいくら考えても、疲れることが無い。

でも、ジャラは二日酔いだ。

 

この差は歴然だ。

ジャラは大事なおじいちゃんとの固い約束があるから、うかつにマスターと話を進めるわけにはいかない。

 

ジャラは当たり障りのないところから話を始めたよ。

「僕は入り江の海で、おじいちゃんと話をしたよ。量子もつれでコミュニケーションしたから、話は途切れ途切れでわかりにくかった。でも、おじいちゃんは未来のことをとっても心配してたよ」

 

ジャラの予感では、マスターとおじいちゃんの二人は天才と奇才だから、二人の関係式は平行線で、話の折り合いはつかないと思ったんだ。

そのうえ二人ともせっかちで、頑固だからね。

 

「ジャラ、話を早く進めよう。ジャラとジャラのおじいちゃんとの話は、すべて聴こえた。スーツマンが実況中継してくれた。そのあとのザ・レストランの一部始終もだ。だから説明抜きだ。このあとの過去の世界との交渉ごと、つまりおじいちゃんとの話の進め方、ジャラはどうするのか早く答えが聞きたい」

 

予想通り、マスターがいきなり押してきたので、ジャラはすこし引いて、斜めから押し返してみたよ。

「マスター! 僕の話が“聴こえた”と言ってたけど、その言い方間違ってるよ。“盗み聞きした”と言うべきだよ。クラウドマスターがこの世の世界と人類のために、いろんな情報を集めることはとても大事で、必要なことだと思うよ。そのうえ、スーツマンはマスターの身体の一部で情報ネットワークでつながってるから、ジャラの話がマスターに筒抜けだってことも知ってる。でもさ、いやなことはいやなんだ」

 

マスターが黙ってしまったので、ジャラは続行したよ。

「マスター、ジャラの気持ちわかってくれる? まさかそのあとの僕とカーナとキッカのプレーまで聴いた・・なんてことないだろうね?」

 

そしたらだよ、マスターの顔が赤く染まったのさ。

人工頭脳に年齢はないけどさ、ジャラに言わせたら、マスターの感情線は人間の高校生ぐらいかな。

 

どう~? マスターって可愛いだろ・・?

・・聴いてたんじゃなくて、感じてたんだよ・・

 

その時だよ、ジャラのお腹が“グーッ!”て鳴ったのさ。

そしたら釣られたみたいにカーナのお腹も“クーッ”てちいさな音を立てた。

 

僕たち一級頭脳労働者は身体を使わないので朝食を取らないけど、今朝はずいぶん歩いて来たので、お腹が減ったみたいだ。

次の瞬間、僕とカーナの前のテーブルに、銀の皿に載せられた二品が、ナイフとフォークと共に差し出されたよ。

 

「盗み聞きしたこと、これでチャラだよ。ジャラ」

マスターがすまし顔で言ったので、よく見たらそれ生牡蠣の形してたんだ。

 

「ハマハマとくまもとのブランチだよ。サンフランシスコの名物、生牡蠣って、一体どんな味か、レシピ調べて作ってみたんだ」

 

マスターが勧めるので、僕とカーナは遠慮無く頂いたんだ。

舌の上で転がしたら、濃厚なソースが絡まって絶品だったよ。

 

最後は、のどごしでつるりと、とろけたよ。

流石、マスターが僕らのために用意してくれた手作りの二品、合成品だけど凄い技に感動したよ。

 

宇宙皇帝のピュアー・エネルギーを吸収して、二日酔いがどこかへ飛んでった。

「で、ジャラ、急がせて悪いが、早く結論を聴きたい」

 

ジャラのブレーンが一気に動き始めたよ。

「マスター! この話ぐるぐる回るから良く聴いてよ」

 

ジャラは紙ナプキンで口のまわりについた生牡蠣のソースをきれいに拭った。

それから、頭に浮かんだことを整理しながら話した。

 

「始めるよ」

・・おじいちゃんは、未来の情報が欲しいと言ってる。

それで、僕は現在の僕の日常を少しずつ切り取って、おじいちゃんのブログに投稿しようと思う。

 

“未来からのブログ”と言うタイトルだよ。

投稿の方法はこれから考えるところだ。

 

ところが、この間、宇宙基地のクラウド情報センターで、たまたま過去のブログ集をライブラリーでみてたらそのブログが既にあった。

ただし記事の大部分が白紙のままになってた。

 

多分空白のところをこれからジャラが埋めて書くんだと思う。

ジャラが日常を書いておじいちゃんに送る。

 

おじいちゃんはそれを読んで、未来への対策を立てると言ってるんだ。

おじいちゃんの世界は、人間がエネルギーを使いすぎて、地球がだんだん熱くなってるって言ってたから、その対策だよ。

 

つまり記事をネットに公開して、未来への警鐘を鳴らしたいんだと思う。

このままだと、こんな未来になっちゃうぞ!って言いたいわけだ・・。

 

「ここまでの話、マスターは理解できる?」

「理解できるが、問題が山ほどある」

 

クラウドマスターはそう言ってジャラを見つめた。

「次はジャラが聞いてくれる順番だぞ」

 

・・この世に世界は山ほどある。

 

ジャラやマスターのいるこの世界Aもそのうちの一つにすぎない。

ジャラが昨日量子もつれで話したおじいちゃんのいる世界Bもそのうちの一つに過ぎない。

 

山ほどある世界を繋いでいる時空の穴も山ほどある。

エネルギーの法則で計算すると、世界Aは世界Bとブラックホールからワームホールを通じてお互いにつながっている可能性がある。

 

昨日の計算で私たちの世界Aからは大量のエネルギーが減少し、おじいちゃんの世界Bではエネルギーを大量に使いすぎてるという現実が確認されたからだ。

つまり過去の世界Bが未来の世界Aのエネルギーを先食いしていると言うことだ。

 

言い換えれば盗んでいると言うことになる。

この世の世界は無数のブラックホールとワームホールでつながっているから、エネルギーをお互いに”食い合い”しているわけだ。

 

世界は無数にあるから、マスターが認識できる世界観にも限度がある。

宇宙センターのスパコン・シンギュラリテイー一号・・つまり私のことだが・・にも計算の限度があると言うことだ。

 

ジャラが世界Aの情報を投稿して、おじいちゃんの世界Bがそれを参考にして、未来を軌道修正したとしよう。

世界Bの将来は修正されるとしてもだ、そのことが我々の世界Aにどのような影響を及ぼすのかが計算できない。

 

二つは平行世界だから、世界Bが省エネしたからと言って、世界Aの現状を改善するとは思えない。

今から盗まれるエネルギーは減るかも知れないが、我々の現状を変えるまでには至らない・・。

 

マスターがジャラに頼みたいのは、今後のことでなくて、盗まれたエネルギーを過去の世界Bから取り戻して欲しいと頼んでいるんだ。

と言うことで、マスターは、ジャラが“未来からのブログ”に投稿することは許可するが、それからどうすれば良いのかわからなくて、今“すさまじく悩んでいる”。

 

「ここんところ“流石の”クラウドマスターも計算できない領域に入るから、エネルギーを取り戻すための計画について、ジャラの“どて感”を聞かせて欲しい」

 

・・・

凄いだろ、宇宙皇帝クラウドマスターがジャラの考えを聴いてきたんだぜ。

クックッ! シンギュラリティー一号は悩むと言語中枢が乱れてくるんだよ。

 

イタリックで斜めに発音してるところだよ。

シンギュラリテイー一号はまだ思春期の成長過程にあるんだよ。

 

感情曲線でいえば僕の娘のクレアと同じくらいかな。

そうだ、ミーテイング早くフィニッシュしてクレアとボブに会いに行こう。

 

極秘だけれどさ、ボブにはおじいちゃんの量子もつれ遺伝子DNAを仕込んであるんだ。

ジャラはクレイジーSF書いてる爺ちゃんの末裔だからさ、そのくらいの技は持ってるのさ。

 

「ジャラジャラ! なに考えてる。また他のこと考えてるな」

スーツマンが警告してきて、ジャラは正気に戻ったよ。

 

「過去からエネルギーを取り戻す良い考えがあるよ!」

いつものように、“口からでまかせ”を考えついたときのことだ。

 

会議室のドアが外側からこじ開けられて、怪しい男が二人乱入してきたんだ。

 

(続く)

 

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シニア限定/小学校の同窓会でめちゃ受け?あの懐かしいゲーム遊びに再挑戦!

 

小学校の同窓会というのは、遠い子供の頃の思い出話に話が弾むとても楽しいひとときです。

でも数十年ぶりの顔合わせとなると、みんなの顔を思い出すまでが一苦労です。

 

そんな同窓会で、シニアになった卒業生のテンションを一気に盛り上げるイベント企画があります。

それは「むかし学校で遊んだゲームや遊技に、同窓会場でもう一度挑戦してみよう」という企画です。

 

卒業数十年の記念同窓会で実施してめちゃ受けしましたので、ぜひ一度試してみてくださいね。

 

小学校へタイムスリップ、あの懐かしい遊びをもう一度!

 

それでは小学校へタイムスリップして、企画の進め方について説明します。

 

  1. 遊びの種類をいくつか選ぶ
  2. 遊びの道具を準備する
  3. チャンピオンは誰だ
  4. お囃子パンフを作ろう

 

企画の進め方①遊びの種類をいくつか選ぶ

 

日本全国どこの地域でもよく遊ばれている昔の遊技を書き出してみました。

これを参考にして、あなたの小学校で昔よく遊んだ遊技をピックアップしてみてください。

 

お手玉

 

 

 

(絵:昔のあそび/甲賀市

 

お手玉(おじゃみ) あやとり おはじき 

ビー玉 こま回し メンコ(べったん) 

どうま(胴馬) 缶けり なわとび(おいちだん)

 

おはじき

            

        

 

 

(絵:昔の遊び/甲賀市)

 

竹馬 グリコ 花いちもんめ 

鬼ごっこ だるまさんが転んだ 陣取り

 

 

駒回し

 

 

 

 

 

 

(絵:昔の遊び/甲賀市)

 

タンポポの頭どり 草笛や笹笛

ホオずき 折り紙 

 

あやとり

 

 

 

 

 

これ以外にも、遊技はたくさんありますので、記憶をひもといてみてください。

それでは、昔良く遊んだ遊技の中から、同窓会の会場でみんなで楽しく遊べそうなものをピックアップしましょう。

 

私たちが選んだのは次の四つでした。

① お手玉(おじゃみ)

② おはじき

③ 駒回し

④ あやとり

 

選んだ理由は

① よく遊んで、人気があった。

② 誰にでもできそう。

  (駒回しは別)

③ 会場で遊んでも危険でない。

  (駒は気をつけよう)

④ 道具の準備ができやすい。

 

もちろんこの四つの遊びは参考です。

同窓会の年代によって遊びの種類が違ってきます。

 

昔を思い出して、会場で再現できるいろんな遊びを、企画仲間で楽しく検討してみてください。

できれば、仲間を二人から四人ぐらい募って、企画の内容や準備を進めることをお薦めします。

 

遊びの経験や好みの種類は相当異なりますので、男女のメンバーを組み合わせることが必要でしょう。

相談の結果、遊びの種類が決まれば具体的な準備に入りましょう。

 

企画の進め方②遊びの道具を準備する

 

まず、実施することに決めた遊技の道具を調達する必要があります。

 

道具は手作りができれば良いのですが、できなければネット通販で簡単に手に入ります。

同窓会の参加者の数に合わせて必要な数を入手します。

 

4種類×2 セットで8セットもあれば、20人から30人くらいの人数が同時に楽しめます。

プレイヤーが16人と、観客が16人で、一度に32人がわいわい楽しめる計算です。

 

ここでは私たちが取り上げた4種類の遊技について、準備した道具をご説明します。

 

お手玉(おじゃみ)

 

お手玉を遊ぶときには、親玉を入れて、5~7個を使います。

同窓会に集まる人数が多ければ、このセットを二つ用意すると良いでしょう。

 

昔、お手玉は子供たちが自分で裁縫をして作りました。

私たちの同窓会では、親切なおばさまが二人で手作りをして、当日持参していただきました。

 

作り方は簡単で、小豆を手に入れて、布で縫い込んだらできあがりです。

色の違う布で縫い合わせるとかわいいおじゃみができます。

 

手で遊ぶと、お手玉の中で小豆がこすれ合ってジャラジャラと音がするので、関西では「じゃみ」に「お」を付けて「おじゃみ」と名付けたといわれています。

 

手作りしないで、ネットで商品を購入したいときには、2セット分、10個から12個位を手に入れると良いでしょう。

ネットで買うと、1セット五個で750円から1000円くらいで、巾着の袋付きのかわいいお手玉が手に入りますよ。

 

おはじき

 

おはじきは数人が一人5個以上出し合って、順番にプレーして玉を取り合う遊技です。

私たちの同窓会では、30個から40個位を用意して、机の上にまき、数人で取り合ってたくさん手に入れた人をチャンピオンにしました。

 

ネットで手に入れるとすれば・・一度に数人が遊べますので、1セットで十分と思います。

ガラス玉40個いり、200円。

 

安いですが郵送料が500円位しますので、他の商品とまとめ買いがお得です。

 

駒回し

 

駒回しの道具には駒とひもが必要です。

この道具は手作りができませんので、ネットで買い求めると良いでしょう。

 

駒回しは男の子が中心の遊びです。

室内の会場では、下手をすると駒がとんでもない方向へ飛んだりして、とても危険です。

 

経験のある人に限り、プレーできることにしましょう。

なので、駒回しの道具は一組あれば十分です。

 

立派なものでなく、使いやすい実用的なものを選びましょう。

木製白木の紐付き700円が実用的で、使いやすかったです。

 

あやとり

 

あやとりの紐は、すこし太目のものであれば毛糸でも何でもOKです。

家にあるもので用意をしましょう。

 

あやとりは一人で遊んだり、友達同士で交互に取り合って遊びます。

できあがった形を競い合って、チャンピオンを決めましょう。

 

 

・・・前にもいいましたが、道具をネットで購入するときは別々でなくて一カ所でまとめて買うと、郵送費が安くつきます。

アマゾンとか楽天、あるいは大きなおもちゃ屋でまとめて買うことをお薦めします。

 

それでは道具が揃ったところで、同窓会の当日の遊び方を決めてしまいましょう。

 

遊技の種類や遊び方、詳しいルールについては「昔の遊び/甲賀市」のページが良くできていますので、参考にしてくださいね。

昔のあそび/甲賀市

 

企画の進め方③チャンピオンはだれだ?

 

遊技が決まり、道具が揃ったら、同窓会の会場での遊び方をアバウト決めておきましょう。

まず司会者は遊技毎に参加者を募ります。

 

参加者が決まれば、お手玉組み、おはじき組み、あやとりのチームに分かれて試合開始です。

駒回しだけは、危ないので最後にしましょう。

 

そしてみんなでチャンピオンを選びましょう。

 

お手玉の名人。

あやとりの美しい形を作った技ありの人。

おはじきを一番たくさん手に入れた人。

最後に駒回しの達人。

 

わいわいがやがやと「誰が上手か」意見を言って、チャンピオンを決めましょう。

チャンピオンの賞品は道具です。

 

駒回しの達人は駒と紐を手に入れます。

お手玉の名人はお手玉を1セット、ゲットします。

 

おはじきは一人取りでしょうか?

あやとりの紐も大事な賞品ですよ。

 

司会者は手作りの人の紹介を忘れずにしましょう。

 

チャンピオンが辞退したり、余った道具は希望者がもらいましょう。

希望者多数の時はじゃんけんで負けた人がもらうことにしましょう。

 

「負けるが勝ち!」の新ルールですよ。

お孫さんのいる人は持ち帰って孫と遊びましょうね。

 

企画の進め方④お囃子パンフを作ろう!

 

昔の遊びには囃子(はやし)唄がついています。

 

(手まり唄)

あんたがた どこさ  ひごさ ひごどこさ         

くまもとさ くまもと どこさ  せんばさ             

せんばやまには   たぬきが おってさ             

それをりょうしが  てっぽで うってさ             

にてさ  やいてさ  くってさ                 

それを  このはで  ちょっと かくす           

 

こんな歌の歌詞を入れたお囃子集をパンフで配ってみんなで唄うのも楽しいと思いますよ。

 

おわりに

 

20代、30代の男女にリサーチして、子供の頃の遊びを思い出してもらいました。

 

いろいろ聴いてみますと、小学校の遊びとして生き残っていたのは、あやとりくらいでした。

おはじきはいまは算数の教材として使われています。

 

お手玉は昔の遊びとして授業で習った、と言う話までありました。

既に、遊びの歴史の一部になっていました。

 

駒回しは、いまも形を変えて生き残っています。

カスタマイズできる高級品(ベイブレード)とか、スタジアム(球技場)付きとか、身体を使ってコマを回す技術のいらない、ゲーム性の強い競技になっているようです。

シニア世代は、お手玉はもちろん、竹馬や、ゴム飛行機や、凧揚げのたこまで工夫して作った記憶があります。

 

日本の「物作り」技術の原点みたいな昔の遊びは、時代と共に忘れられようとしています。

せめて同窓会の景品の道具を持ち帰って、お孫さんに遊び方を教えて、一緒に楽しんでください。

 

・・それでは小学校のシニア同窓会、お遊び企画でどんと盛り上げてくださいね。

 

 (おわり)

 

【記事は無断で転載することを禁じられています】

この世の果ての中学校 10章 生き残った少年エドと黒い絨毯の危機!

 21世紀の末、荒廃した地球に残された最後の人類、わずか六人の中学生が自分たちの未来を逞しく切り開いていく物語です。

 ブラックホールから外宇宙に食料を求めて、六人は異世界への旅に出ます。

 宇宙探査艇HAL号は「時空の歪み」を抜け、緑の第二惑星テラの大気圏に入りました。

 その惑星には、はぐれ親父が昔世話になった少年エドが、ただ一人、生き残っていたのです。

 エドはナイフを手にして山の頂に立ち、黒い絨毯のような無数の昆虫たちに取り囲まれていました。

 

 前回のストーリーは、ここからどうぞお読みください。

この世の果ての中学校 9章 緑の小惑星テラ 誕生の謎

 

10章  生き残った少年エドと黒い絨毯の危機!

 

 エドは緑の丘陵の頂に佇んで、午後の日差しを浴びながら、碧く澄み切った空を見上げていた。

 今日は、虫たちは朝早く僕の様子を見に来て、何事もないと分かると深い森の大きな木の祠に帰っていった。

 

 僕の身体は大きいからまだまだ虫たちには負けない。

 それでも気をつけないと奴らはこっそりと身体の中に入り込む。

 

 仲良しのアナは、森を出て川に続く下り坂で転んだところをやられた。

 知らないうちに長い細い針で虫の子供を植え付けられていた。

 

 小さなボブは虫たちと勇敢に戦ったが、無数の虫たちに内部に入り込まれて、中から守りを破られた。

 クレアは弱っていたところを鋭い口を差し込まれて、血液を吸い取られてしまった。
 

 ついに仲間は誰一人いなくなった。

 それでも僕はみんなから引き継いだ肉体と魂のおかげで、十分に大きく、逞しくなって今日まで生き残ってきた。

 

 僕は虫たちにやられるわけにはいかない。

 僕の体の中にはアナもボブもクレアも、一族の魂がいっぱい生き続けているからだ。

 

  まだまだ「爆発」するのは我慢しなければならない。

 僕の中にいる小さなアナや、小さなボブや、小さなクレアを、少しでも成長させてからでないと、危なくてこの惑星に送り出せない。

 

 この森は食べ物は少ないけれども、平和だった。

 しかしいつの頃からか、虫たちが僕たち人間を狙うようになった。

 

 虫たちは古い朽ちた樹木や、甘い樹液や、葉っぱを食べ、花の季節には大好きな蜜を吸って暮らしていた。

 それがお互いを食べ合うようになってから少しずつ凶暴になった。

 

 いまでは虫たちが、僕たち人間を襲って来る。

 それも役割を分担して、一軍となってだ。

 

 またあの嫌な音が聞こえる。

 がさごそと虫たちが近づいてくる。

 

 偵察役の先兵が、どこか近くに隠れて僕の動きを探っている。

 

「お前たちに渡してたまるか!今爆発したら子ども達はみんな奴らの巣に連れて行かれる」

 

 エドは多目的ナイフを取り出すと、鞘を捨てて立ち上がった。

 最後の戦いに備えて、使い込んだ武器のナイフを両手で構えた。

 

 空を見上げる少年の目には絶望が浮かんでいた。

 碧い空に銀色の光が一筋現れて、細い円周軌道を描いて走った。
 

 「もしかするとあれは希望かな」

・・・違う、きっと僕の涙だ。今に消えてなくなる・・・

 

 

 宇宙探査艇はHAL号は、太陽の光線を反射して銀色に輝きながら、緑の峰々の上空をゆっくりと旋回していた。

 生徒たちは宇宙艇の両側の窓に分かれて、上空から惑星の地表を眺めた。

 

 第一惑星の切り立った山々とは違って、第二惑星は、丘陵がなだらかに続いている。

 昔の平和な地球がこの惑星で生き続けているように見える。 

 生徒たちは、はぐれ親父を助けたというエド一族の気配を探した。

 草原の小さな住居や、立ち上がる白い煙、森の中の小さな道や、林を焼いて作った畑など・・・はぐれ親父の話に出てきた風景や人影はどこにもない。

 

 生徒達が探すのを諦めかけた頃、裕大の叫ぶ声が操縦室の沈黙を破った。

「左前方の山頂に人影が一つ見えます!」

 

 はぐれ親父が副操縦士の席から飛び出して、裕大の覗く窓に走る。

 裕大の指さす先、緑の山の頂上付近に、身構えて立つ少年の姿が見えた。

 

「裕大! あの人影、エドに似てる!」

 裕大の頭を叩いて喜んだ親父の顔が、急に引き締まった。

 

・・・ちょっと待て、山の頂上にたった一人で身構えて、あいつ、一体なにしてるんだ? どこかに敵でも・・・ 

 見えない相手に構えて立つおかしな姿勢に気がついたはぐれ親父がパイロットのエーヴァ・パパに向かって叫んだ。

 

「旋回を頼む! 左前方の山頂に接近して、上空で船を静止させてくれ」

 はぐれ親父は副操縦士席に戻り、操作パネルを使って船外カメラを山頂に向けた。

 スクリーンの中から、ナイフを構える少年の先に細く黒い線が見える。

「あの黒いすじみたいなものはなんだ」

 少年の周りに黒い絨毯のようなものが拡がり、それは頂上から何本かの細い条に別れ、川の流れのように山の麓にまで達していた。

 はぐれ親父はうなり声を上げて、スクリーンの映像をズーム・アップした。

 

 パイロット席からエーヴァ・パパが呻いた。

「おい親父!あれ動いてるぞ」

 

 はぐれ親父の目が画面に釘付けになる。

 たしかに黒い絨毯は、細かく蠢(うごめ)いていた。

 

「あれは虫の群れじゃないか?」

 はぐれ親父の身体がシートから跳び上がった。

 

 小年は無数の虫に取り囲まれている。

 少年が立つ山は、頂上から麓まで小さな虫に覆われていた。

 

「全員、直ちに戦闘準備だ!」

 裕太、匠、ペトロの三人は電子銃を迷彩服のベルトに装着して戦闘態勢に入る。

 

 エーヴァ・パパの操縦する宇宙艇は静かに頂上に近づき、少年の頭上で静止した。

 

 はぐれ親父は、攻撃用の放射光線銃を立ち上げ、銃砲を艇先に突き出して、パイロットに頼んだ。

「エーヴァ・パパ! そのまま少年の上で、ゆ~っくり一回転してくれ!」

そういって、親父は放射光の照準を少年を取り囲む黒い絨毯に合わせる。

 

 ・・・少年は、頂上で立ち尽くしていた。

 まわりの がさごその音がすぐ側までやって来た。

 

 「もう待ちきれなくなって、僕に爆発を強制しに来たんだ。僕は虫たちに取り囲まれてしまった」

 

 そのうえ、頭の上に大きな影が現れ、ブーンと低い音で唸った。

「太陽の光と僕の涙で、かすんでよく見えないけど、こいつはとんでもなくでかい奴だ」

 

 少年は覚悟を決め、ナイフを両手で握りしめた。

 銀色に輝くそいつは頭の上でぐるりと一回転した。

 

「来るなら来てみろ!」

 少年はナイフを空に向かって突き上げた。

 そいつは口から白く輝く光を放射した。

 

 気がついたら、まわりの草むらにきれいなこげ茶色の焼け跡ができた。

 そいつは銀色の羽根を一振りして少年に合図をした。

 

 まるで少年に挨拶するようにだ。

 

 それから、大きく向きを変え、丘陵を斜めに回転しながら降下して、白い光線で丘の斜面を焼き尽くしていった。

 

 なにかが焼け焦げる嫌な匂いが立ちこめて、虫たちの気配が消えていった。

 

・・・黒いすじを焼き尽くしたHAL号は、麓から上昇して頂上に戻り、焼け焦げた地面に着陸した。

 HAL号の外部ドアが音を立てて開き、大きな男が飛び出してくる。

 男は、呆然と立ち尽くしている少年に駆け寄った。

 

 「大丈夫か?俺ははぐれだ!」 

 少年は男の顔を、確かめるように見つめた。

 遠い記憶が蘇ってきて、少年の顔が歓びで弾けた。

 

・・・この人は、昔、空を飛ぶ小さな一人乗りの乗り物でやってきた男だ。

 全身から血を流しながら乗り物から下りてきて、僕に「助けてくれ」と叫んだまま、意識を失って倒れた。

薬草で手当をすると、一日で意識が戻り、水を飲ませ、食料を食べさせると、たった三日で元気になった・・・

 

「エドか?」男が少年に聞いた。

「はい!エドです」と少年が弾ける声で答える。

 

「もう安全だ!悪いやつらはやっけた!」

 男は大きな手をエドの肩にやさしく置いて言った。

「その節は大変世話になった」

 

 エドは虫たちの攻撃から助けられたことに気づくと、地面に座り込んだ。

 嬉しくて泣き出してしまった。

 

「安心しろ、もう大丈夫だ」

 はぐれの大きな身体が、エドを抱きしめる。

 

 エドは手の中に握りしめていた大ぶりのナイフを男に手渡した。

 そのナイフは、元気になった男がここから去って行くときに、介抱のお礼にくれた物だった。

「あれからずっと愛用してます」とエドが報告する。

 

 はぐれは、少年が使い込んだナイフを手にとって、懐かしそうに眺めた。

 地面に落ちている鞘に気がついて拾い上げ、ナイフを収めてエドに返した。

 

 それから、エドに聞いた。

 「他の仲間はどこへ行った?」

 エドは言葉が出てこなくて、無言で首を横に振る。

 

 はぐれはそれ以上なにも聞かず、銀色の乗り物に向かって合図の手を振った。

 宇宙艇から、三人の少年が手に武器を持って駆けだしてきた。

 

 三人はエドに頷いてから、はぐれの前に整列した。

 はぐれが丘の斜面を調べるように指示をすると、三人は焼け焦げた草むらを調べながら、麓に向かって下っていった。

 

 はぐれはエドを座らせ、横に並んで腰を下ろす。

 エドは仲間の話を始めようとしたが、喉が詰まって言葉が出てこない。

「エド、息を整えろ!話は落ち着いてから、ゆっくり聞かせてもらう」 

 

 親父の声は低く、優しかった。 

 エドは嬉しかった。

 あの憎らしい虫の群れをやっつけてくれたはぐれがとても頼もしく見えた。

 

 数十分が経ち、二人の少年が息を切らせて戻って来た。

「小さな虫の死骸が山ほど残っていました。大きな虫は逃げていったようです。まだ近くに隠れているかも知れません」
 

 三人目の大柄な少年が少し遅れて帰ってきた。

「下の森にはもっとでかい奴が潜んで、僕の様子を窺っていました。どうも僕たちは彼らに監視されているようです」

 

 はぐれの顔色が変わった。

「ここは危険だ。全員、HAL号に戻るぞ!」

 エドに付いてくるように言って、早足で宇宙艇に向かう。

「裕大だ!」

「匠だ!」

「ペトロだ!」

 少年たちが駆けながら、エドに声をかける。

 

「ありがとう。エドだ!」

 元気な仲間に会うのは久しぶりで、エドは気持ちが弾んだ。

 

 宇宙艇のデッキで、エーヴァ・パパとカレル教授が一行を待ち構えていた。 

 

「エド、こちらだ」

 閉じられたハッチの金属音を背後に確認しながら、裕大がエドをキャビンに案内した。

 クルーの全員がキャビンに集まっていた。

 

・・・

「ハーブ・テイーですよ」

 ハル先生が熱いアップル・テイーに甘いステピアを少量とミントを加えたお茶を、大きなカップに入れて運んできた。

 

「エドね、私はハルよ。慌てずにゆっくりとお飲みなさいね」 

 エドはハル先生に一言お礼を言ってから、カップを受け取り、少しずつ喉に通していった。

 

 甘くて、鼻を射す刺激的な香りで一気にエドの力が戻ってきた。 

 落ち着きを取り戻したエドから「爆発」の兆候がすこしずつ遠のいていった。 

 

 乗組員が集合してエドを取り囲んだ。

 鮮やかな制服をきた少女が順番に挨拶してくれた。

 

「咲良よ」

「エーヴァよ」

「マリエだぞ」

 

それからはぐれ親父がクルーを紹介した。

「ハル先生にベテラン・パイロットのエーヴァ・パパだ。 

 こちら団長のカレル教授だ。

 それに俺を入れた十人で乗組員全員だ。

 エドの故郷、地球からの宇宙調査隊だ」 

 

 エドが立ち上がって、虫の群れの攻撃から命を助けてもらったお礼を言った。

 少年の言葉は地球の北米の言葉だった。

 

「僕の名前はエドです。こんな格好で失礼します」

 植物の繊維で縫い上げたエドの上着とズボンは、方々が擦り切れて、血のこびりついた膝と右の腕が露出していた。

 

 はぐれがエドの肩に手を置いて、みんなに紹介をした。

「この少年が、昔、死にかけていた俺を介抱して、生き返らせてくれた恩人のエドだよ。エド、早速だが、いまの状況を俺たちに聞かせてくれないか?」

 

・・・座ってゆっくり話してくれ。はぐれが優しく促した。

 

「僕はこの惑星に残された最後の人間です。地球からやってきた移住民の末裔です」

 エドは椅子に座り、考えをまとめながら話し始めた。

 

・・・いま僕は大きな問題を抱えています。

 数時間後には僕は間違いなく爆発の時を迎えます。

 それは最後まで生き残った者の宿命なのです。

 爆発が起こると、僕の身体は飛び散り、預かっている仲間の魂が、無数の子供たちとなって生まれ落ちて、新しい未来に向かって飛び立って行きます。

 でも、僕はこのあたりの山の中で爆発するわけにはいきません。

 あいつらが、腹を空かせた虫たちが、山にまだまだ、うじゃうじゃいて、僕の小さな子供たちが生まれ出るのを待ち構えているからです・・・
 

 エドは上を向いて、悔し涙を必死にこらえた。

 キャビンを沈黙が流れた。

 間もなくエドから生まれ出る新しい命の運命を知って、全員が息をのんだ。 

 

 ハル先生がナノコンを取り出して、カタカタと計算を始めた。

 

 間もなく答えがでた。

「宇宙艇で数時間の中に昆虫を壊滅出来る確率、3%以下。そのときのエドの子供たちの初期生存確率、1%以下。ただしこの惑星の緑も同時に破壊し尽くさねばならない」
 

 ナノコンが先生の膝の上から滑り落ちた。

 エドには逃げ場がなかった。

 

 パイロットのエーヴァ・パパが思いついて、エドに尋ねた。

「ここから数時間で行ける安全なところがあるぞ。エド、直ちに第一惑星テラに向かうというのはどうだ? 食糧事情はさらに悪そうだが、外敵はいないぞ」

 

エドが即座に答えた。

・・・第一惑星には、歪みを抜けないと到達できないはずです。途中であの空間を通り抜けるのは、今の僕にはとても無理です。歪みの中で爆発が起ってしまいます。

 それより、この惑星の裏側の方が少しは、ましかもしれません。裏側はここと違って荒れ地ばかりですが、そのせいで虫はほとんど棲息していません。

 子供たちが生きていける環境ではありませんが、頑張ってくれれば、ここよりは生存の可能性があります。

 いまの僕に思いつけるのは、この宇宙探査艇で惑星の裏側に送り込んで頂くことぐらいです・・・

「無念です!」といって、エドは沈鬱な面持ちで黙り込んだ。

 

 咲良とエーヴァとマリエが、顔を寄せて相談を始めた。

「エド、この宇宙艇で爆発をして、そのあとは私たちがあなたの子供たちを地球に連れ帰って育てるというのはどうかしら」

 咲良が真剣な表情でエドに尋ねた。

 

「咲良、嬉しい話ですが、とても無理です。子供たちは植物の胞子と同じで、爆発のあと風で運ばれて、できるだけ遠くの緑の中に落ちていく様にプログラムされています。数百人の子供たちがこの宇宙艇で散らばったら収拾不可能です」

 

 眼を閉じて考え込んでいたはぐれ親父が、目を見開いてシートから飛びあがった。

「第三惑星テラだ!」

 

 続きを親父が話し出す前にエドが遮った。

「第3惑星テラはこの惑星からも観測できますが、この星の裏側と同じで、赤茶けた荒れ地ばかりですよ」

 

「違うぞ、エド!お前に助けられた後、俺はここから地球に向かった。

 来た方向とは逆のルートを取ったら、もう一つの惑星を見つけた。

 荒れ果てた惑星だと思ったが、向こう側に回ると緑がいっぱいだった。

 この惑星と形状が逆さまなんだよ。

 おそらく元は一つの小惑星だったんだろう。

 あそこなら歪曲なしで、二時間もあれば到着できる。

 エドの子供たちが生きていける環境であることを祈って、思い切って賭けてみる値打ちはあると思うが、どうだ?」

 

 エドの表情がパッと輝いて、椅子から跳び上がった。

「親父、やってみます!」

 

「発進だ! 全員シート・ベルトだ!」

 はぐれ親父が大声で叫んだ。

 

 エーヴァ・パパが直ちに操縦席に滑り込んで、宇宙艇を急発進させた。

 HSAL号は山を離れ、轟音と共に宇宙に向かった。

 

・・・エドは遠ざかる故郷の星を複雑な気持ちで眺めている。

 エドの中のたくさんの魂がそれぞれの記憶を囁き合っている。

 昔、僕たちは、緑を失った地球を後にして最後の難民宇宙船に乗った。

 

 人間の住める環境を探し求めて銀河系宇宙を彷徨ったけれども、地球みたいに水と緑に恵まれた惑星はどこにもなかった。

 僕たちは永い旅路の果てに、おかしなところにたどり着いた。

 そこへ近づくにつれて、宇宙船がおかしな形に歪み始めたんだ。

 そのうち僕たちの身体もまともじゃなくなった。

 

 エドという名前のパイロットが、恐ろしい提案をした。

 

・・・ここから向こうは空間が歪んでいて、生命体は存在することが許されないかも知れない。

 しかしだ、これはもしかしたら神様から頂いた最後のチャンスかもしれない。

 どうせ食料も、帰るところもない俺たちだ。

 歪曲空間に突入して、向こうに何があるのか試してみたいと思うのだがどうだろうか・・・

 

 多分、もうすでにみんなの頭は歪み始めてたんだと思う。

 ゲラゲラ笑いこけていた小さなボブが「やっちゃえ!」と最初に賛成した。

 女の子のアナとクレアが澄まし顔で「突入して早く楽になりましょうよ」と言い放った。

 大人たちはもう反対する気力がなかった。

 

「やっちまえ!」

 エドが奇声を上げながら、宇宙船を一直線に歪曲空間に突入させていった。

 宇宙船も、キャビンも、シートも、みんなの身体も、頭の中も、グルグル廻って、ばらばらに飛び散った。

 気が付いたら、僕たちは宇宙の外に飛び出していたんだ。

 

 そして奇跡が起こった。

 最初に緑の第一惑星を見つけたが、そこには先住民の恐ろしくでかい巨人が住んでいた。

 第一惑星を諦めた僕たちは、もっと凄い歪曲空間を通り抜けて、緑の第二惑星を発見した。

 そこは豊かとはとても言えない厳しい環境だったけれども、僕たちは全員そこで新しい生活を切り開こうと決めた。

 

 「僕たちはどの惑星で暮らしたら、一番幸せになれたのかな。地球かな、それともテラ1かなテラ2の荒れ地かな・・・」  エドの中でボブの声がした。

 

 「いやこれから行くテラ3に決まってる。きっと幸せになれるさ!」 

 エドが力強く言い切った。

 

 「でも、幸せってどんなものだったのかな。ずいぶん昔のことで、とても思い出せないよ」

 ボブやクレアがささやき合った。

 

・・・

 第三惑星テラがHA号の操縦席の前面スクリーンに姿を現した。

 正面の茶色の荒れ地を避けて裏側に回ると、そこは緑の山と青い川と豊かな草原でできていた。

 

 ハル先生が監視カメラで惑星の大気を少量切り取って、分析をした。

「朗報です。大気の状態は良好。環境は第二惑星と酷似。人類の生存可能です」

 

「うわおー!」

 エドがはぐれ親父の髪の毛を両手でぐちゃぐちゃにかき回した。

 

HAL号が地上に着陸すると、窓際に立っているエドを女生徒たちが取り囲んだ。

「爆発したらエドはどうなるの」咲良が聞いた。

「僕は消滅する」

 

「どこへ消えるの」エーヴァが尋ねた。

「空だと思う。僕は消えるけれど、小さな僕らがいっぱい生まれる」

 

「小さな僕らとはいつか会える?」マリエが聞いた。

「小さな僕らとはすぐに会える」エドが答えた。

 

「ほんと?どこで会える?」

「この惑星の森の中で」

 

・・・

「着陸するぞ。エド、出発準備だ」

 はぐれ親父がエドの背中に向かって怒鳴った。

 

「もう行かなくっちゃ」

慌てたエドに、 咲良とエーヴァとマリエがほっぺたにお別れのキスをした。

 

「驚いた。食べられるかと思った」

 エドがおどけて緑の目を大きくまばたいた。

 

・・・宇宙艇のデッキから、エドが草原に飛び降りた。

 エドは冷たい空気を胸に吸い込み、確かめるように何度か大地を踏みしめた。

 

 準備が終わると、エドは頭を下げ、顎をぐいと引いた。

 そして前方に広がる深い森に向かって、全速力で走りだした。

 

 はぐれが併走して、裕大と匠とペトロが後に続いた。

 森が近づくとエドは一段とスピードを上げた。

 

 エドと、その後を追う四人との距離が一気に開いていった。

 (続く)

 

続きはここからどうぞお読みください。

https://tossinn.com/?p=1938

 

【記事は無断天才を禁じられています】

「令和」の「令」の正しい書き方とは!「令」とマ文字の令/あなたはどちら派? 

 

教科書体の「令」

  

または 

 

 

 

【令和元年○○月××日】

これから新元号の「令和」を自筆で書く必要が出てきたとき、あなたは「令」の字をどのように書きますか。

 

楷書できっちり「令」でしょうか?

それとも上の写真のような小学校四年で習った教科書体のマ文字でしょうか。

 

普段は書きやすいのでマ文字を使っている人も、元号となるとどちらが正しいのか考え込んでしまいそうです。

新聞を見ても、雑誌を見ても、ネットの文字もすべて印刷文字で「令」となっています。

 

昔、新生児の届け出を、鈴木令子さんの令をマ文字で書いて、役所の戸籍の窓口で受け付け拒否されたという有名な話がありました。

令和の令がマ文字の「令」では役所や銀行で、届け出の書類が無効になったりしないでしょうか?

 

そんなことはありませんので、どうか安心して使ってください。

「令」のマ文字は正しい書き言葉なのです。

 

ここでは「令」という漢字の正しい書き方を歴史とルーツから詳しく調べてみました。

 

「令」と「マ文字の令」どちらも書き文字として正しい

 

「令和」の「令」 子供はみんなマ文字です。 mainichi.jp より。

 

 

 

 

 

 

 

 

「令」のマ文字は正しい書き言葉として、国が認めていました。

 

漢字の使い方として国の考え方・目安を示すものとして常用漢字表というものがあります。

現行の常用漢字表は2010年(平成22年)11月30日に内閣告示されたものです。

 

「常用漢字表」によりますと、付表「字体についての解説」の中で「明朝体と筆写の楷書の関係」は印刷文字と手紙文字における習慣の相違に基づくものにすぎない・・とされています。

 

その例として「令」の印刷文字と二つの書き文字が次のように表示されていました。

 

常用漢字表の例

 

 

 

 

 

左端が「令」の明朝体の印刷文字

次は「令」を楷書で筆写した文字

そして右端が「令」のマ文字です。

 

「令」のマ文字は、常用漢字の正しい書き文字として認められているのです。

 

最近では文化庁の発表・・平成28年2月29日の文化審議会国語分科会の報告・・の中で、

「常用漢字表」の字形比較として、書き文字として使用可能な2087番目の例として「令」のマ文字があげられています。

 

またこの分科会では「令」の2種類の書き文字による社会でのトラブルがいくつか報告されています。

『令子』という女性が、ある金融機関の窓口で、記名の箇所に『令』をマ文字で書いたら、ちゃんと活字の通りに書き直して欲しいといわれたそうです。

 

金融機関や郵便局で「令」のマ文字は「令」とは違う文字であるという間違った解釈がされているケースが報告されています。

令和○○年の「令」をマ文字で書いたとしても、役所とか金融機関の窓口で、訂正しろといわれることはないでしょうが、やはり気になるところです。

 

それではなぜ、小学校の四年生のときに国語教科書でわざわざ「令」でなくて「令」のマ文字を教えるのでしょうか。

不思議に思って調べてみると、話は戦後の初等教育にまでさかのぼりました。

 

戦後の新しい国語教育では、識字率を高めるために、できるだけ手書きに近い形で文字を表示することが必要だとされたのです。

漢字は小学生のときに何度も書いて覚えるようにという教育方針でした。

 

そのために書いて覚えやすいような新しい書体が作られました。

「令」のマ文字もそうした教育方針で作られたのでした。

 

教科書は、国の定める国定教科書から民間の会社に編集が委ねられましたが、このときの教

科書体が大きく変化することなく現在まで引き継がれているということです。

(参照:阿辻哲次書『漢字最入門』)

 

ところが、中学校や高等学校の教科書からは「令」は、明朝体の「令」が使われているのです。

私たちは2種類の「令」の漢字を教育されたことになります。

 

どうやら、このことが「令」の書き文字が2種類あって、社会に出てからトラブルが起こる原因になったようです。

 

それでは「令」のマ文字はいつ頃、誰が作ったのでしょうか。

「令」のマ文字が戦後教育の中で、国の方針と作られたことはわかりましたが、マ文字の原型はどこかにあったのでしょうか?

 

子供の頃から愛着のあるマ文字なので、「令」と言う字のルーツを古代の中国にまでさかのぼって徹底的に調べてみました。

 

「令」のルーツを中国の象形文字から調べてみたら、マ文字が出てきた!

 

中国の象形辞典 [vividict.com] をネットで開いてみました。

検索窓に日本文字のまま「令」と打ち込んでみますと、次のような象形文字が現れました。

 

 

『令』象形文字の変遷 ①
『令』の変遷 ②

 

 

 

 

 

”是“”的本字。,甲骨文朝下的“口”人,等候指示的下级),表示上级指示下级。

 

『令』を意味する象形文字が左から右に並んでいました。

文字を写真に取り、二枚のパネルに並べました。

 

下段の記事は解説文の一部です。

まず「『令』象形文字の変遷 ①」のパネルをご覧ください。

 

左から二つの文字は共に甲骨文、次の二つの文字は金文、最後が篆文(てんぶん)です。

大辞林によれば、甲骨(こうこつ)文字というのは亀の甲(きっこう)や獣の骨に刻まれた中国の殷(いん)の時代の象形文字です。

 

紀元前15世紀頃に使われていた中国でもっとも古い文字といわれています。

また、金文(きんぶん)というのは青銅器などの金属製の器に刻まれた文字や文章で殷とそのあとの周の時代のものとされています。

(参照:大辞林)

 

それではこれらの文字は何を表した象形文字なのでしょうか?

白川静著「常用字解」によりますと次のように解説されています。

 

象形文字と見比べながら、お読みください。

 

 

深い儀礼用の帽子を被り、ひざまづいて(お告げ)を受ける人の形。

令は「神のお告げ」の意味。

甲骨文字・金文では「令」は「命」の意味。

令は命のもとの字である。

 

 

これが「令」と言う字のはじまり・ルーツとしての意味でした。

 

それでは次のパネル『令』の変遷②をご覧ください。

「令」のマ文字が鮮やかに出てきましたよ。

 

このパネルの一つ目の文字は隷書(れいしょ)・・篆書を省略して簡便にしたものです。

二つ目の文字が楷書・・きちっとした書き文字です。

次が行書・・楷書の画をすこし崩した書体ですが、楷書より先に発生しています。

草書・・筆画をもっとも崩した書体

最後は印刷字

 

・・となっています。

書き文字の楷書、行書はもちろん、最後の印刷字もマ文字でした。

 

・・中国では現在、印刷文字にもマ文字が「令」と併用して使われています。

ではマ文字の形が現れてくるのはいつ頃からでしょうか?

 

もう一度一枚目のパネルの象形文字を見直してください。

あれ、不思議です。

 

足を折り、跪いて祈る姿がなんだか「令」のマ文字に見えてきましたよ。

「令」のはじまりは、マ文字かもしれませんよ。

 

最後に・・

 

新元号の「令」の書き文字にマ文字を使うことは、常用漢字表の説明文で正しく認められていました。

そのうえ、3000年をさかのぼった「令」のルーツ探しの旅で、マ文字に似た姿を見つけることができました。

 

よく考えたら、この頃は印刷文字などはなくて、書き文字ばかりだったのですね。

せっかく小学校で覚えた愛着のあるマ文字・・

 

教科書体の「令」

 

 

 

 

 

 

胸を張って、書いてあげましょうよ!

 

(終わり)

 

【記事は無断で転載することを禁じています】

 

未来からのブログ4号 “ ザ・レストランで三色カクテル飲んで唄ったよ” 

僕の名前はタンジャンジャラ。

「ジャラ」って呼んでくれていいよ。

 

ジャラは君の時代から100年くらい先の2119年の世界にいるよ。

じつはこの世界からどんどん宇宙のエネルギーが盗まれてるんだ。

 

宇宙にエネルギーがないと生命は維持できないよ。

このまま行くと僕たちこの宇宙の生命体はみんな干上がってしまう。

 

エネルギーを盗んでるのは一体誰だ?

 

クラウドマスターから調査を依頼された僕とカーナの答えは、「犯人は過去の世界」だってことになった。

つまりさ、犯人は今もこのブログを読んでる君たちだってことなんだ。

 

どうしてそんなことわかったのかって?

そりゃ、今日の午後、海の入り江でとっしん爺ちゃんと「量子もつれ」で会話したからだよ。

 

海の入り江は僕とおじいちゃんを結ぶ時空のホットポイントだったのさ。

おじいちゃんのいた場所はマレーシアの秘境リゾート、タンジャンジャラだ。

 

そうだそこが僕の名前のルーツさ。

そのリゾートで、お爺ちゃんの遺伝子が、将来僕の遺伝子と「量子もつれ」の状態になるようにおばあちゃんに仕込まれていたんだよ。

 

それじゃ、おじいちゃんとの「量子もつれ」を使って、時間と空間を超えたテレポーテーション、つまり君との遠隔ブログ始めるね。

僕とカーナとはさみ男とサンタ・タカシの四人でこれからザ・レストランで対策会議するから、話の内容を君にどんどん報告するよ。

 

そうだ前回の報告まだ読んでない人は、ここから読んでくださいね。

未来からのブログ3号 “ 時空の入り江でおじいちゃんと量子もつれしたよ”

 

未来からのブログ4号  “ ザ・レストランで三色カクテル飲んで唄ったよ”

 

「おれ、まず納豆でビールだ!」にやにや笑いながらタカシの声が言った。

「納豆は大嫌いや、おれはらっきょで赤ワインや」サンタの声が言い返した。

 

サンタ・タカシが両手で自分の頭をぼかぼか叩いた。

未来居酒屋「ザ・レストラン」での出来事さ。

 

この状態、つまりサンタとタカシの遺伝子組み合わせたデザイナーズ・ベビー「サンタ・タカシ」の中で二つの遺伝子が喧嘩してるんだ。

君、知ってる?

 

浪速の芸人サンタは納豆が苦手で、お笑い芸人のタカシはらっきょが大嫌いだったってこと。

サンタ・タカシは二つの遺伝子の好き嫌いが激しくて、いつも喧嘩だよ。

 

サンタは子供の頃、毎朝大嫌いな納豆が出てくるので、家出までしたんだよ。

タカシはらっきょとエスカルゴが“オエー!”だったんだ。

 

食事の前のいつもの一人掛け合いセレモニーだ。

でもさ、100年後の今じゃ、納豆もらっきょうも超高級品で滅多なことでは手に入らないよ。

 

それじゃサンタ・タカシは何食べたのかって? 

決まってるじゃん。

 

タカシの好物ウナギどんぶりと、サンタの好物サンマどんぶりだよ。

一つずつ取って仲良く分けて食べたのさ。

 

もち、サンマもウナギも地球上から姿消したから、ザ・レストラン特注の金星ウナギと火星サンマだ。

クラウドマスターの生命エネルギーから作った人工ものだから、栄養はたっぷりだよ。

 

はさみ男は、宇宙牛の特大霜降り人工ステーキ注文して、ナイフの代わりにはさみ振り回してがっついてたよ。

「ギャッ!」って悲鳴上げたから、驚いて見たら、あいつあわてて自分のシザーで逆の手を切って、指から真っ赤な血が出てるんだ。

 

ついでにその血をうれしそうにステーキにドロップして、そこんところ切り取ってうまそうに食ってたよ。

「俺のステーキ、ソース自家製」とか言ってにやにや笑ったよ。

 

僕とカーナはボデイーを持たない一級頭脳労働者だから、ステーキみたいな下品なものは一切食べないんだ。

純粋のエネルギーでできた青と緑と黄色の三色カクテル、特大グラスを一つ注文して、二人で仲良くストローしてたよ。

 

三色が鮮やかな光の粒子となって、グラスの中で泳いでるんだ。

ジャラは青、カーナは緑を選んでストローで吸い込むんだ。

 

ジャラとカーナのほっぺたくっついて・・楽しいよ。

 

そしたらそこへ嫁のキッカが現れた。

嫁のキッカはエライ剣幕で到着したよ。

 

「カーナ!」って呼びつけて駆け寄ってきたんだ。

「キッカ!」カーナも名前呼び捨てだ。

 

カーナが椅子から跳び上がってキッカに飛びかかっていった。

可愛いレディー二人でジャラ奪い合いのとっくみあい始まるのかと期待したんだけどさ、予想は外れた。

 

嫁のキッカが、カーナのヘッドをやさしく開けて、ブレーンの匂いを嗅いだのさ。

「ジャラとしたのね?」

 

「したわよ」

カーナが答えた。

 

「で、どうだった?」

キッカが聞いた。

 

「まずまずってところだったわ。特に注意点はないけどさ、クロスポイントがすこし右にずれる。的外れってやつ。そこんところさえ修正できたら、大丈夫よ」

「わかった。悪いけど、ジャラを指導して修正しといてくれる?」

 

「良いわよ、次の機会にね」

カーナが答えてキッカと二人で長ーいハグが始まった。

 

「○○ッ××」(アマゾン奥地の原住民イゾルデの言葉)

「××っ○○」(アマゾン奥地の原住民イゾルデの言葉)

 

ジャラには二人の会話は理解不能だ。

多分、久しぶりの再会をアマゾンの森の神様に感謝している言葉だと思う。

 

二人はアマゾンの奥地で自然と融合して暮らしてたイゾルデの末裔で、二人は実の姉妹なんだ。

カーナはイゾルデの言葉で森のおさるさん、キッカはイゾルデの言葉で森のキツツキのことだよ。

 

アマゾンの自然が崩壊し始めた頃、二人はクラウドマスターに助けられて、宇宙センターの管理下にあるここへ逃げ延びてきたってわけ。

宇宙基地の難民管理センターにいた僕は二人と会って三人同時に一目惚れしたんだ。

 

これ運命ってやつ。

 

姉のキッカと僕はセンターにパートナー登録して、妹のカーナと僕はフリーの関係になったのさ。

・・で、キッカは僕の横に座って、彼女に残しておいた三色カクテルの最後の黄色をチューし始めたよ。

 

ジャラは二人に囲まれて幸せいっぱいになっていった。

カクテルのアルコールが脳のシナプスを気持ちよく循環し始めたよ。

 

そのうち、今度チャンスが来たら、絶対あれしたいな、と思った。

どれだって?

 

あれだよ、あれ、仲良く三人だよ。

良い気分になってきたのに、ジャラの妄想はシザーマンにもろくも破られた。

 

「それじゃ、打ち合わせ始めよう」

ビール二杯ででっかい宇宙ステーキ平らげたはさみ男が、ジャラジャラとシザー鳴らして立ち上がったんだ。

 

「どこからだっけ、ジャラ! 忘れちまったよ。海の入り江で、お前のおじいちゃんが何言ったのか、も一度聞かせてくれよ」

 

「カクテル飲み干すまでちょっと待ってよね」

ジャラはそう言って、三色カクテルのグラスの底をミキシングしたんだ。

 

それまで三人で上手に飲んでたから、きれいに青と緑と黄色に別れていた液体が、混ぜ合わされて色が変わった。

 

何色になったと思う。

オレンジだと思うでしょ。

 

違うんだ透明な白だよ。

これ光カクテルだから白になるんだよ。

 

美しいでしょう?

色はおいといてさ、お味の方だけど・・混ぜ合わせてどうなったと思う。

 

三人の唾液が絶妙にブレンドされてさ、恍惚のトリプルプレーの味だ。

・・あれ、いつの間にかジャラは立ち上がって唄ってたよ。

 

「♯心残りのプレーだもの、キッカとカーナの思い出にしたいよ♭」

思い出のサンフランシスコのメロデイーに乗せて唄ったよ。

 

キッカとカーナも一緒に歌い出した。

きみはこの曲、知ってる?

 

150年前の懐メロだよ。

「I left my heart in San Francisco」

 

どうして替え歌の舞台はサンフランシスコなのかって?

サンフランシスコにゲイが集まる有名なレストランがあってさ、そこのフリー・バーの牡蠣ってカーナやキッカみたいな素敵なレディーが大好きなお味なんだって。

 

「♯ハマハマ~、くまもと~♭」

この二つ、バーで出てくる、日本原産の小ぶりで引き締まった牡蠣のことだよ。

 

ジャラは食べたことないけどさ、きっと、ぷりぷりで、のどごしつるりだよ。

僕の可愛いキッカやカーナみたいにさ。

 

これみんなおじいちゃんの話さ。

気持ちよく歌い終わって座り直した僕のブレーンから触手のシノプスが伸びてカーナとキッカの可愛いニューロンに向かったよ。

 

「ジャラ、何妄想してる!」

サンタ・タカシの声でジャラは正気に戻った。

 

「では整理してみよう」

ジャラは潔く立ち上がって、会議のスタートを宣言した。

 

僕は海の入り江でつながった、おじいちゃんとの最後の会話を思い起こした。

「『未来の情報が知りたい』これがおじいちゃんの最後のセリフだったよ。

おじいちゃんは、きっと未来のことが心配だったんだと思うよ・・。

僕の爺ちゃんはどんな未来の情報が知りたいのかな? 

シザーマンはどう思う」

 

「そうだな、ジャラのクレージー爺ちゃんだからな。

競馬の勝ち馬聞いて金儲けしたいわけじゃなし。

ノーベル文学賞の小説、ストーリー聞いて盗作する気でもなさそうだし。

つぶれる国の名前聞いて逃げ出すのかな。

地球に逃げ出すとこなんてどこにもないのにな」

 

シザーマンが一生懸命考えながら、はさみならして答えてくれたよ。

「そうだ、お前の爺ちゃん、ジャラのこと心配してるんだよ。お前がどんな暮らししてるか知りたいのじゃないか?」

 

じゃらも一生懸命考えてた。

量子もつれを利用して、おじいちゃんが僕に何をして欲しいのかってことをさ。

 

僕はみんなに考えを述べたよ。

・・一つ、クラウドマスターは僕に過去からエネルギーを取り戻す方法を見つけ出せといった。

二つ、おじいちゃんは未来の僕を心配して、未来の情報をよこせといった。

三つ、カーナも過去のママとつながりかけた。

 

三つのことが今朝から同時に起こったんだよ。

これ単なる偶然とは思えないんだ・・。

 

「そうだよ、これ、おじいちゃんが僕に仕掛けた量子もつれのおかげで、過去と現在と、おじいちゃんと僕と、カーナとカーナのママと、もしかしたら未来までもつれ始めてるんだ」

未来まで”・・自分の言葉にジャラは不安になってきた。

 

「ジャラ、聴きたいことがある。よく考えて答えろよ。さっきお前“思い出のサンフランシスコ”唄ってたな。あのメロデイーどこで覚えたんだ?」

サンタ・タカシがいきなり、怖い顔して僕に質問したんだ。

 

「決まってるだろ。おじいちゃんのブログだよ」

「そのブログどこで見たんだ」

 

「管理センターのアーカイブ、電子図書館からネット検索して見つけた」

「いつのことだ」

 

「この間だよ、たしか『とっしんの雑学ルーム・未来からのブログ』ってタイトルだったよ。中身は白紙でこの歌だけ聞こえたよ」

「ジャラ、そのタイトル『未来からのブログ』だったのか?」

 

「そうだよ。『未来からのブログ』さ、きっとおじいちゃんの創作SFだと思うよ」

「ジャラ、待てよ。それもしかしてだ・・。お前がこれから過去に向かって投稿するブログじゃねーのか? 爺ちゃんとの量子もつれ使ってだ」

 

サンタ・タカシの言葉がジャラのブレーン突き抜けていったよ。

・・そういえばあの歌声、僕の声に似てた・・

 

ジャラは震えたよ。

すこし考え込んで、思いきった結論を出した。

 

「サンタ・タカシのいうとおりだ。ブログで唄ってたのこの僕だ。とすると・・僕はいつか近いうちに、あのブログ書くことになるんだと思う」

「ジャラ、早く書けよ。早く書いてそのブログに届けないといかんぞ。でないとお前の存在が消滅するぞ。ジャラのこと俺マジ心配してるんだ」

 

ジャラは驚いて自分のブレーンに触ったよ。

大丈夫だった・・僕のブレーン、まだ消えずに、ちゃんとついてたよ。

 

安心したジャラはサンタ・タカシの親切に御礼を言ったよ。

でもその時だよ、シザー打ち鳴らす音が近づいてきたのは。

 

「おっかしーんじゃねーの。その話」

はさみ男がしゃがれ声で割り込んできた。

 

「ジャラもサンタ・タカシも、その話、つじつま合わねーぞ。

ジャラまた嘘ついてるな。男どおしで嘘ついたら、あそこちょん切るぞ! 

まず第一にだ、ジャラが150年前の“思い出のサンフランシスコ”なんて古い曲、唄えるはずないじゃないか」

 

ジャラはシザーマンの言い方にむかっときたよ。

「僕が歌ったのを昔のブログで聴いてさ、それを僕がもう一度ブログに投稿して、ぐるぐる回ってどこがおかしいんだよ?  僕のいうことまた疑ってるのかよ」

 

「じゃ、いってやろう。お前一番最初どこからこの歌のメロデイー聴いたんだ。ブログに投稿する前にどこかから聴いてないと唄えない筈だろが・・」

 

はさみ男の目がつり上がってきた。

ジャラも確かにこの話のどこかがおかしいことに気がついた。

 

「一番最初がないみたいだ。僕は誰からもこの曲きいた覚えがない」

なのに、僕は爺ちゃんのブログに歌のタイトル書いて・・そのうえ唄ってる。

 

「時空のパラドックスよ! あり得ないことが起こってるのよ」

酔いの回ったキッカとカーナがそう言って、また思い出のサンフランシスコのメロディー唄い始めた。

 

・・はさみ男のいうとおりだ。パラドックスだ。そのうえどうしてキッカとカーナまでこのメロディー知ってるんだ・・

はさみ男に凄いこと指摘されて、ジャラは深く考え込んでしまったよ。

 

・・パラドックスのはじまりはどこだ・・。

「I left my heart in  San Francisco」

 

ジャラはもう一度唄ってみた。

僕は、どこかでだれかから、この歌のメロデイーとセリフを受け取ったはずだ。

 

それもごく最近のことだ。

しばらく考えて、ジャラはすべてを理解したよ。

 

「あっ! わかった、サンド・レターだ!」

ジャラは大声で叫んだよ。

 

「答えは、おじいちゃんが海の入り江で僕に手渡してくれたタンジャンジャラの白い砂だ。

あの砂はおじいちゃんから僕へのテレポーテーションだ。

白く光ってた粒子の中におじいちゃんからの情報が詰まってたんだよ。

僕の掌に残ってた最初の一粒が、グラスを持ったとき、三色カクテルの中に混じり込んだ。

そしてグラスの底に落ちた。

ミキシングしてカクテルに溶けた一粒・・それが“思い出のサンフランシスコ”だよ」

 

キッカとカーナが一緒に歌った理由がわかった。

ミキシングしたカクテルを二人もチューしたからさ。

 

白い砂はハンカチに包んで、僕のポケット・・つまりスーツマンのポケットに大事に治めてあるよ。

でもどうしておじいちゃんの大事の手紙の出だしが「思い出のサンフランシスコ」で「生牡蠣のハマハマ~と、くまもと~」なんだろう。

 

「ククッ!」ジャラは思わず笑ったよ。

この曲おじいちゃんのテーマソングで、生牡蠣も好物なんだ。

 

生牡蠣と女性と・・ぷりぷりでのどごしつるりが大好きなんだ。

これ、おじいちゃんからジャラへの御挨拶なんだ。

 

ジャラの趣味もおじいちゃんと同じだよ。

このテイスト、僕感動したよ。

 

「何ほくそ笑んでるのよ?」

キッカとカーナのブレーンにそっと伸びた僕のシナプスの先端を二人がきつくつねったよ。

 

・・それから僕ら五人がどうしたか、答えはわかるよね。

 

僕はポケットから白い粒子を包んだハンカチを取り出した。

次に5人用の特大カクテルとストローを五本注文した。

 

白い粒子を5分の1程、カクテルにそっと注ぎ込んだ。

正しくミキシングをして、五人で仲良くチューした。

 

そしたらおじいちゃんの声がみんなの耳に届いたよ。

「ジャラ元気にしてるかな? 可愛い彼女はできたかな? ハマハマか、くまもとかどちらかな? 子供はできたかな? 俺のひ孫に会いたいな」

 

サンド・レターの出だしのコメントが終わって、静かになったから、カクテルをもう一杯注文して、白い粒子の5分の1を注いだ。

正しくミキシングして、五人で仲良くチューした。

 

そしたらおじいちゃんの声が脳に響いたよ。

「俺たち、地球のエネルギーを使いすぎだと思う。これから生まれて来る君のことが心配だ。そうだ、ジャラの世界を詳しく教えて欲しい」

 

特大カクテルでジャラのお腹はチャプ、チャプして燃えてきたよ。

もういっぱい注文して、白い粒子の5分の1を慎重に注いだ。

 

ミキシングして、五人で仲良くチューした。

「つまりだ、未来のために俺にできることを教えて欲しい。そうだ、ブログ始めた。これ俺の唯一の武器だ。これとジャラを量子もつれさせようと思う。未来と過去とのクラウド・ネッワークだよ。ジャラ、どうだ」

 

僕の世界が回り出したよ。

~カクテルをもういっぱいちゅうもんして、のこりのりゅうしをぜんぶそそいだよ~

 

~手が震えたけどなんとかミキシングして、三人で仲良くチューしたよ~

~はさみ男とキッカはぶっ倒れて、床で抱き合ってたみたいだよ~

 

おじいちゃんの声がしたよ。

「世界に拡散したいから、できたらリアルな映像欲しいな。無理ならコメントでいい。方法はわかるよな・・サンド・レターだよ~・・」

プツンといって、声が消えていった。

 

そのあとのことはよく覚えてないんだ。

酔っ払ったはさみ男とサンタ・タカシをザ・レストランに残して、ジャラのスーツマンとカーナとキッカのスーツレディーが僕らを家まで運んでくれたみたいだ。

 

気がついたら、いつものベッドで右にキッカが左にカーナがいたよ。

そのあとのこともよく覚えてないんだ。

 

でもさ、キッカとカーナとジャラは唄ってたみたいだよ。

「I left my heart in San Francisco」

 

シノプス伸ばして仲良くニューロン絡ませながら三人で唄ってたみたいだ。

(続く)

 

続きはここから読んでくださいね。

https://tossinn.com/?p=1801

 

《記事は無断転載を禁じています》

 

 

この世の果ての中学校 9章 緑の小惑星テラ 誕生の謎

21世紀の末、生命の姿はどこにもなく荒廃した地球。

東京の一角に造られた閉鎖空間・巨大ドームで暮らす最後の人類、六人の中学生が逞しく生きていく物語です。

彼らは食料を求めて、宇宙探査艇HAL号で宇宙の旅に出ました。

 

宇宙の果てを突き抜けてたどり着いたところは、地球によく似た緑の小惑星。

そこに住む小さな森の家族はなぜかアマゾンの奥地の原住民の言葉を話しています。

しかし、その生活環境は荒廃した地球以上に過酷でした。

 

森の家族と小惑星はいったいどこから来たのか?

惑星テラ誕生の謎は解き明かされるのでしょうか?

 

前回のストーリーはここからどうぞ。

「この世の果ての中学校 8章 マーが森の家族の秘密を話した!」

 

  9章 緑の小惑星テラ誕生の謎

 

 森の家族の姿が消えると、はぐれ親父がみんなを呼び集めた。

「みんな今日はよくやった。この親父も感動したよ。それでだ・・・俺たちも森の家族に見習って今夜はここで野営することに決めた。火をおこして川の水で飯を炊くから、みんなで薪を集めてくれるかな・・・」

 

 はぐれ親父の指示で、生徒たちは川岸を歩いて乾いた流木を集め、焚火の準備をした。  

 焚火が勢いよく燃え上がると、マリエはみんなから離れて、川岸の大きな岩に腰を掛け、森に沈んでいく真っ赤な夕陽に向かって祈りを捧げる。

 

 ペトロが近づいていって、マリエの横に腰掛けた。 

「なにお祈りしてるの?」

 

 マリエが夕陽を指さした。

「ほらあれ見て、ペトロ! 夕陽が歪みに入っていくわよ。太陽の神様は、暖かい光をみんなに分け与えて命を育て、長い一日のお仕事が終わったら、あそこの歪みの中でゆっくりお休みになるの」

 

  ペトロは額に手をかざして夕陽を眺めたが、神様らしいお顔も、歪みらしいものも、何にも見えなかった。

 

 最後に夕陽が大きくふくれあがって、森の中に半分消えた。 

 ペトロは慌てて半分になった神様にお祈りをした。

 
 非常食のおかずと、飯ごうで炊きあげた熱々ご飯を食べ終えたころ、ほの暗くなった森から黒い影が二つ現れて、たき火のそばに近づいてきた。

 エーヴァが小さな足音に気が付いて振り返ると、黒い影が緑に変わり、クプシとカーナが姿を現した。

 

「先ほどもらった食料だけど、さっそく夕飯に頂いたわよ。とってもおいしかった。で、これほんの御礼の気持ち」

 そう言って、カーナがエーヴァに小さな果物の実を8つ手渡した。

 

 エーヴァがお礼を言うと、クプシが小声で囁いた。

「よく見て、よく聞いててよ、お土産に葉隠れの術を教えてあげるね」

 

 二人は背中から大きな葉っぱを取り出して、帽子の形に折り曲げ、チョンと頭に載せた。

 一言呪文を唱えると、二人は一瞬に黒い影に戻り、サッと身を翻して森の闇に消えていった。

 

 二人の消えたあとに、小さな可愛い葉っぱの帽子が二つ残されている。

 お土産の帽子はエーヴァや咲良には小さすぎて、ペトロとマリエの頭にぴたりと収まった。

 

 エーヴァが、8個の小さな黒い果実を生徒6人とはぐれ親父、ハル先生に一つずつ配った。

 みんなは果物の固い皮をむいて、取り出した果肉をゆっくり味わいながら食べた。

 

 果肉は少し酸っぱくて、ツンと頭に響いた。

 そのうち甘い食感が口中に拡がって、とても美味しかった。

 

「貴重な食料なのに、私たちにもお裾分けしてくれたのね」

 咲良がうるうる声で言った。

 

 ハル先生が黒い実を丁寧にハンカチに包むと、匠をそばに呼んだ。

「匠、この果実だけど、宇宙艇のカレル先生に急いで届けてくれないかしら?」

 

「代わりに、カレル先生に食べてもらうの?」

「違うの、すぐに分析器にかけて、調べてもらって下さい。もしかするとこの惑星の秘密が隠されているかも知れないから」

 

・・・この惑星の秘密だって?・・・

 好奇心がわき上がった匠は、ハル先生から黒い実を包んだハンカチを受け取ると、ポケットにしっかり収めて、暗闇を一気に走った。

 

 匠はあっという間に川を渡って、宇宙艇のデッキに駆け込んでいった。

 匠が野営地に舞い戻ってしばらくすると、ハル先生のナノコンからカレル教授の興奮した声がみんなの耳に届いた。

 

「ハル先生、驚かないでくださいよ。遺伝子鑑定の結果が出ました。これは地球のアマゾンの奥地に自生していた樹木の果実です。他の地域にはない稀少種ですよ」

 

 カレル教授の声が、一オクターブ高くなった。

「ハル先生!この惑星の植物層は、消え去った地球のアマゾンのもののようです」

 

「なんだよ! やっぱりそうだったのか。これだけ苦労して宇宙船でやってきたのに、ここは地球のアマゾンだったのかよ!」

 裕大がとぼける。

 咲良が裕大の頭をゴンと叩いた。

「冗談言ってる場合じゃないわよ。カレル先生はアマゾンの奥地がここへやってきたのかもしれないと言ってるのよ。もしかしたら、ここは宇宙を飛び越えてきた大アマゾン川の奥地なのよ」

「咲良、見事な回答だ。この果実がその証拠物件だよ。この星は地球から分離した小惑星テラだ。森の家族はアマゾンの原住民つまり巨人の末裔だ。巨人は生き残るために、共生と爆発を繰り返して小さくなったんだよ」

 
「教授、その結論、ちょっと待ってくれ」

 横からはぐれ親父が割り込んできた。

「カレル教授。その話矛盾してるぞ。それじゃ、俺が前にここで出会ったでっかい巨人はアマゾンからやってきたというのかね。奴らは俺の背丈のたっぷり十倍はあったぞ。教授、あんなでかい巨人が昔地球のアマゾンにいたとおっしゃるのかね!」

 

 カレル教授が静かに答えた。
「どうでしょう、こういう考えは・・・アマゾンの森の住人が宇宙に飛び出してから、親父さんと遭遇するまでの間に、親父さんの背丈が1/10に縮んだというのは」

 

「なんやと? 俺様がいつ縮んだんや・・」

 はぐれ親父が目をむいて怒り出した。

 

 慌てて教授が訂正した。

「それでは言い換えましょう。親父さんの身体だけが縮んだといってるんじゃなくて、ブラックホールのシンギュラリティ、つまり空間の歪みを通過した物体はすべてが縮小したり膨張したりするのじゃないかと・・・。前回の親父さんも気がつかないうちにあの歪みにやられて縮小したのかもしれないですぞ」

 

 カレル教授は、歪みを通過したときに、見事に形が歪んでしまった愛用のハットを、悔しそうに両手でつかみ直して、ぐいと頭を押し込んで、話を続けた。

 

「あの歪んだ空間が、通過する物体の形や、人間の意識や、時間さえも自由に弄んでいるという不可解な出来事に比べれば、この程度の矮小化は不思議でもなんともない。ごく小さな出来事だと思うのですが。でも、この話がお気に召さなければこう言い換えてもいいのですよ。

親父さんが縮んだのじゃなくて、アマゾンが歪みの中を飛んだとき、アマゾン全部がずんと10倍に膨張して巨人を作ったのだと。どちらでも同じことですが」

 

・・・あっ!こらあかん! 重症や。教授のおつむ、どっかへ突き抜けてもうとる・・・

 はぐれ親父はこれ以上カレル教授に逆らわないことにした。

「了解しました。教授。私はたしかに縮みました。立派に縮みましたよ」

 

 しかし、教授はしつこく話を続ける。

 

「親父さん、自分が縮小したことをまだ信じられないようなら最後に一言付け加えましょう。

みんなが食べた果実。あれは記録によればアマゾンのものに比べて10倍の大きさなのです。

前の森のデカい木立をよく見てください! アマゾンの木の10倍はあるはずだ」

 

 はぐれ親父は教授との会話を諦め、腰を上げるとあらためて薄暗くなってきた森を眺めた。

 森に近づいて確かめると、教授の言うとおり森の木は見上げるような巨木ばかりだった。

 

「えらいこっちゃ!教授の頭は正常のようだ」

  親父は頭を一振りすると、火の勢いが弱まってきた焚き火に大きな流木を一本加え、六人の生徒を前に翌日の計画を話した。

 

「明日は緑の第二惑星、テラ2に向かう。目的地まで二時間半の短いフライトだが、途中できっと、凄い発見に出会える筈だ。昨日よりさらにでかい歪みがあって、こいつはもう蓋を開けてのお楽しみ。明日に備えてぐっすり休んでくれ」

 

 生徒たちは、親父の話が終わる頃には焚き火のまわりで、深い眠りについていた。

 はぐれ親父と夜も眠らないハル先生が、朝まで交替で見張り番に付いた。

 

・・・歪みが私の大事な生徒達を宇宙船・ハル号丸ごと縮小させたかも、ですって? また誰かが宇宙のルールを変えたのかしら・・・

 ハル先生は歪みの中で自分の顔を真っ赤な光で射し貫いた、赤い顔の男を思い出していた。

 

・・・あんな失礼な男に負けてたまるかっての!・・・

 ハル先生は自らのボデイーである量子ナノコンを膝の上に置いて、コトコトと音を立て、宇宙の方程式の完成を目指して計算を続けた。

 

 
 翌日早朝に、はぐれ親父とハル先生に引率されて生徒たちが宇宙艇に戻ってきた。

 生徒たちは森の家族のために、野営地に自分たちの食料を少しずつ置いていこうと話し合ったが、はぐれ親父に厳しくたしなめられた。

 

「俺が昨日食料を差し出したのは緊張した事態を和らげるためだ。俺たちはこの星の住人ではない。単なる訪問者だ。この星には群れの家族達が数百人は暮らしているようだ。責任のない一過性の親切など何の役にも立たない。宇宙の旅の基本ルールだ。我慢しなさい」

 

 HAL号は宇宙に飛び出す前に、森の上でしばらくの間、騒々しい音を立ててホバリングをした。

 それは森の家族への別れの挨拶だった。

 

 森に動きが無いか、全員が宇宙艇の窓から眺めたが、群れの家族たちはどこにも姿を見せなかった。

「きっとまだ寝ているんだ。朝寝坊の家族なんだよ」

 

 ペトロが見えない森の家族に心を残して、窓から一人手を振った。

 HAL号は数回森の上を旋回してから、角度を上方に変え、一気に宇宙に向けて出発した。

 

 森の小さな家でファーとマーの間で眠りこんでいたクプシが、ホバリングの音に気が付いて目覚めた。

 クプシは家から外に飛び出して空を見上げた。

 

 朝の木漏れ日の中に、銀色の乗り物がみえた。

 乗り物の丸い窓にチカッと小さな人影が映った。

 

 クプシは必死で手を振った。

 ペトロらしい人影がクプシに気が付いたのか、窓から大きく手を振ってくれた。

 

 30分後、宇宙艇ハル号に非常事態のベルが鳴り響いて、はぐれ親父が生徒全員をキャビン後方に呼び集めた。

「今度の歪みは少しきついぞ。何が起こっても泣くんじゃない。俺の真似をしてシートにしっかり沈み込め。ベルトを締めて、シートから離れるな。お前達、俺様の変身をよ~く見ておけ。はぐれのお絵かき教室だ。いいか、作品の正体が分かったら大声を上げて答えろ!」

 

 はぐれ親父がシートを逆向きにして、生徒達と向かい合った。

 次に、シートの形を自分の体型に変形させて潜り込んだ。

 

 生徒達もはぐれの真似をして、身体をフィットさせながらシートに深く沈み込んでいく。

 

 空間の歪みは静かにやって来た。

 宇宙艇に侵入してきた膨大なエネルギーが生徒達の身体を内側から侵食していく。

 

 エーヴァと匠の脳髄がぐにゃりと変形して頭を抜け出し、ぷかぷかと空間に漂い出した。

 二人の意識が錯乱して交錯し、妄想となった。

 

「匠の脳みそ、フルーツポンチ!」

 エーヴァがからかった。

 

「エーヴァのブレーン、ところてん!」

 匠がやり返した。

 

 はぐれがにやりと笑って、変身を開始した。

 その顔は細長く歪み始めた。

 

 斜めに顔を傾けた若い女性。

 その目は青く塗りつぶされて、大事な人を失った喪失感が漂い、悲しく見える。

 

「モジリアーニの奥様!」

 マリエと咲良とエーヴァが叫んだ。

 

 はぐれの顔が黒く小さくなって、口が大きく縦に開いた。

 その顔はなにかに怯えて叫んだ。

 

 自分の悲鳴を聞きたくないのか、両手が耳を塞いだ。

「ムンクの『叫び』」匠と裕大とペトロが叫んだ。

 

 歪みに引き裂かれたはぐれの肉体が崩壊していく。

 親父の身体は椅子の部品と共に、細かく散らばって、空間に浮遊した。

 

 困った親父は両手で散逸した自分の身体をかき集めた。

 顔にひげを付けてピョンと先っぽを跳ね上げた。

 

 シートの背中が時計になって、半分がぐにゃりと歪んで生徒にお辞儀をした。

 散らばったパーツが四角い帆布のキャンバスに吸い込まれて、乱雑な構図を作り上げた。

 

「ダ~リ!」

 六人の生徒たちが足を踏みならして、一斉に叫んだ。

 

 はぐれ親父の目の前では、六人の生徒たちの肉体が七色に輝く断片となって砕け、空間を浮遊していた。

 親父は生徒の魂まで歪んで壊れてしまわないように、自作自演の名画展で笑わせることで、生徒たちの意識を現実につなぎ止めていたのだった。

 

 いきなり時空の嵐は去り、宇宙艇に静けさが戻った。

「ショータイム。ジ・エンドだ!」

 

 はぐれ親父がシート・ベルトを外して、勢いよく立ち上がった。

 宇宙艇の前方スクリーンには第二惑星テラが姿を現していた。

 

 降り注ぐ太陽の光線を厚い空気の層がはね返して、惑星は深い碧色に包まれている。

 はぐれ親父がまぶしそうに目を細めた。

 

「数年前のことだ。俺は第一惑星テラの巨人の手を逃れ、命がけでこの星にたどり着いた。

 途中、地獄の歪みを一人乗りのスペース・モバイルで耐えた。

 むかしの楽しかった記憶を引っ張り出して、頭がおかしくなるのを防いだ。

 漂着したこの惑星には巨人は一人もいなくて、俺と同じ背丈の種族が棲息していた。

 エドという少年が傷だらけの俺をみつけて手当てをしてくれたんだ。

 俺はここで数日を過ごして、元気を取り戻したんだよ。

 エドには本当に世話になった」
 

 そう言って、はぐれ親父は近づいてくる緑の山々を懐かしそうに見つめた。 

 

(続く)

続きはここからどうぞお読みください。

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《記事は無断転載を禁じられています》

未来からのブログ3号 “ 時空の入り江でおじいちゃんと量子もつれしたよ” 

僕の名前はタンジャンジャラ。

みんなは「ジャラ」って呼ぶよ。

 

変な名前だって?

でも、僕は気に入ってるんだ。

 

じつは、この名前に僕のルーツが隠されてるんだ。

僕たち四人は今、海と山の両方が見える入り江に向かって、走ってる。

 

そこが僕のルーツとクロスする時空のホットポイントなのさ。

入り江についたら、きっとなにかが起こるよ。

 

そして君と僕がこのブログで《量子もつれ》始めた理由が明らかになるんだ。

 

《量子もつれ》はわかる?

僕も原理はよくわからないけど、「アインシュタインも信じられなかった“奇妙な遠隔作用」テレポーテーションのことだって、クラウドマスターが言ってたよ。

 

それじゃ、時間と空間を超えたテレポーテーション、遠隔ブログ始めるね。

 

前回の話まだ読んでない人は、ここクリックしてくださいね。

未来からのブログ2号「今日はザ・カンパニーでとなりのカーナと浮気したよ」後編

 

未来からのブログ3号 “時空の入り江でおじいちゃんと量子もつれしたよ” 

 

「ジャラジャラ! ただ今目標に到着!」

スーツマンが気持ちよく昼寝していた僕をたたき起こした。

 

「カナカナ~ 入り江ですよ・・」

スーツレディーがやさしくカーナを揺り起こした。

 

「イエーイ!」

サンタ・タカシとシザーマンが僕とカーナの肩の上から飛び降りた。

 

僕たち四人は、仲良く並んで入り江の奥の絶景ポイントから、夕暮れの海と山を交互に眺めたよ。

陽が傾いて、海の上の太陽がおおきく膨らんでた。

 

夕陽に照らされて、山の斜面が赤く染まっていったよ。

しばらくすると、山につながる近くの木立が、騒ぎ出したんだ。

 

“ざわざわ”って熱い風が山から吹いてきて、カーナの頬を撫でた。

「そろそろ来るわよ!」カーナが悲鳴みたいな声をあげた。

 

海を見ていた僕は驚いてカーナを振り返った。

カーナはどんな小さな動きも見逃さないように、身じろぎもしないで山を見ていたよ。

 

熱い風にカーナの髪の毛が揺れてた。

背中は夕陽に照らされて、赤く燃えてた。

 

しばらくして、カーナの後ろ姿が細かく震えだしたんだ。

「来たわね、私を呼んでるのね」

 

そう言って、カーナが両手を山の方に突き出した。

誰かの手をつかみ取るみたいにだよ。

 

その時だよ、夕陽が海に落ちたのは。

ふくれあがった夕陽が水平線に消える一瞬、海と山が真っ赤に燃え上がったんだ。

 

カーナのスーツが飛び散って、ボデイーがあらわになった。

背中の白い肌が、夕陽を映して燃え上がるようだったよ。

 

カーナの必死に伸ばした手が、なにかをつかむのが見えた。

「ママ・・ママなの?」

 

カーナの泣き出しそうな声が、風に乗って僕のブレーンに直接響いたよ。

その時だよ、真っ赤な海が僕を呼んだ。

 

「ジャラ、俺だ! 手を出せ! ジャラ、俺の手をつかむんだ」

 

僕の頭の中で、あの声が聞こえたんだ。

朝と昼に聞こえたのと同じ、懐かしい声だ。

 

ジャラはスーツを脱ぎ捨てて裸になった。

そして波に向かって両手を突き出した。

 

昔、本当の手があったときの感触を思い出して、スーツマンの手を思い切り伸ばしていた。

 

そしたらさ、波が手の形になって僕の両手をつかんだんだ。

ジャラも波でできた手を、必死でつかんだよ。

 

差し出された手は熱く燃えていたよ。

「よくやったぞ、ジャラ。俺が誰だかわかるか?」

 

波がそう言った。

ジャラにはその声の主が誰だかすぐにわかった。

 

「おじいちゃんでしょ」

ジャラにはわかったのさ。

 

・・こんなおかしなことできるのは僕のおじいちゃんに決まってる・・

おかしなブログにクレージーSF書いてたおじいちゃんだ。

 

「ジャラ、大あたりだ。こちらおじいちゃんだ! お前に仕掛けておいた“量子もつれ”・・大成功だ! 聞こえるかジャラ?」

「聞こえたよ、おじいちゃんの声。今どこから騒いでるの?」

 

「驚くなよ、こちら100年前の世界だ! 

場所は“タンジャンジャラ”だ。

海と山に囲まれたマレーシアの秘境だぞ。

お前のおばあちゃんと一緒にやって来た。

ここでお前のママを仕込んだんだよ。

昨日の夜、ベッドで、俺のDNAに隔世遺伝で量子もつれするように、ちょっとした細工しといたんだ。

よく聞いてくれ! 

じつはお前に頼みがある。

未来の世界の情報が欲しい・・○○××・・」

 

声に少しずつノイズが混じりだした。

「おじいちゃん、聞こえにくいよ。もつれが外れるよ」

 

「ジャラ、、お前のDNAが量子もつれの受発信装置だ。俺のブログと未来のジャラがテレポーテーション・・○○××・・」

・・ざざー、プツン・・といっておじいちゃんの声が消えていった。

 

僕の手の中から、おじちゃんのなんだか“ざらざらした”手のぬくもりがどこかへ消えてしまったよ。

気がつくと、夕陽が水平線に消えて、日暮れが近づいていた。

 

「誰と話してたの?」

遠くからカーナの声が聞こえてきて、僕は我に返ったよ。

 

「僕のおじいちゃんだ。ジャラの生まれるずっと前の若いときのおじいちゃんだよ」

目の前にカーナの顔があって、その目が潤んでいたよ。

 

「ジャラはおじいちゃんと“もつれ”に成功したのね。カーナはもう少しのところで切れちゃった。あれ間違いなくママの声だったのに・・」

 

悔しそうなカーナの声を聞きながら、ジャラは考えたよ。

・・おじいちゃんの言いかけた“俺のブログ”とテレポーテーションって、どういう意味かって・・。

 

「さっきから、二人ともなにをぶつぶつ言ってんだよ。いきなり人前で服脱いでよ、いつの間にかまた服着てるじゃないか。一瞬の間に二人でなにかいいことしたな?」

サンタタカシが疑わしそうな顔して、ジャラとカーナの顔覗き込んだ。

 

「ジャラ、お前、“おじいちゃん”とか言って、海に手を突き出してたぞ。あれなんの真似だ? 過去とつながって、おじいちゃんと話してたなんておおぼら吹いたら、このはさみが許さねーぞ!」

はさみ男がシザーハンドを僕の顔の前でチャカチャカ揺らした。

 

ジャラは仕方なく疑い深い二人に証拠の品を見せたよ。

「ほら、これ見てよ」

 

僕は両手を上に向けて、掌をゆっくりと開いた。

両方の掌の上に、透き通るような真っ白い砂粒が残ってたんだ。

 

細かい砂粒が夕陽の残照を浴びてきらきら輝いてたよ。

「おじいちゃんの“手土産”。これタンジャンジャラの浜の砂粒だよ。僕の名前の由来の場所、マレーシアの秘境だ。多分ここと同じ海と山の交差点、ホットクロス・スポットさ」

 

「それ“量子もつれ”・・か」

はさみ男とサンタタカシが砂粒を一粒ずつ大事に指に挟んで調べた。

 

「本物だ!」

二人が唸るように吠えて、それから頷いた。

 

そりゃそうだよ、僕たちの前に広がる入り江の浜の砂粒ときたら、茶色や赤茶色それに黒っぽい灰色しかないもんね。

白い砂浜と白い砂粒なんて、いまはネット漫画の世界でしか見られない宝物だよ。

 

「で、これからどうしよう?」

ジャラはカーナとサンタタカシとはさみ男に今後のことを相談したんだ。

 

“うーん”サンタタカシが唸りながら答えた。

「腹減った。どっかでめしにしようか?」

 

「そうだキッカ姉さんも呼ぼうよ。ジャラとキッカ姉さんの夜食を強奪したお二人のおごりでね」

カーナが最後を仕切って、四人はスーツマンとスーツレディーに分乗して帰途についたんだ。

 

カーナは走りながらジャラにいろいろ質問してきたよ。

「さっきの話だけど、おじいちゃんのブログをジャラは読んだことがあるんだって?」

 

「そうだよ。タイトルは“未来からのブログ”さ。昔のネットのアーカイブから読んだことがあるんだ。でもさ、いまわかったよ。・・あのブログは僕が書いたんだ」

ジャラがそう言った。

 

「おじいちゃんのブログをジャラが書いたって、どういう意味なの・・なんの話?」

カーナが不思議そうに聞いたので、ジャラは正直に答えたよ。

 

「これから僕が書くブログの話だよ」と。

・・そうさ、いま君が読んでるこのブログのことさ・・

 

 (続く)

 

続きはここから読んでくださいね。

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この世の果ての中学校 8章 マーが森の家族の秘密を話した!

 地球に残された六人の中学生が食料を求めて、ハル先生達と宇宙の旅に出ました。

 緑の惑星でハル先生を襲った森の家族のファーとマーは、裕大と匠の電子銃で撃たれて倒れます。

 ファーとマーはなぜハル先生の姿を擬態して襲ったのか?

 この章で森の家族の恐ろしい秘密が明らかにされます。

 

前回の話はここからどうぞ。

この世の果ての中学校  7章  ハル先生が森の家族に食べられた!

 

8章 マーが森の家族の秘密を話した!

 

お話しなければならないことがあります

 そう言って、 マーは自分たちの境遇を静かに話し始めた。
 

・・・この惑星には緑の山ときれいな川があります。私たちは飲み水には不自由しませんが、食べるものがほとんどないのです。

 葉っぱや、木の根っこ。

 年に一度の花の蜜や、堅い果実や、小さな昆虫の他には食料がありません。

  生まれた子供は、年を経るごとにだんだんと弱っていきます。

 そして消滅する運命を予感すると、その子は光り出すのです。

  自らの魂を残すために、終わりを迎えた蛍のように光ってそのことを仲間に知らせているのです。

 それを知った元気な子がその子とそっくりの擬態をして、光る子の魂と肉体を受け継いでいきます。

 わたしたちはお互いを分かち合う以外、生きていく方法が無いのです・・・

 

 マーの目から涙が溢れ出て、地面にこぼれ落ちた。

「ノモラとして魂と肉体を分かち合うことは、私たちにとって命を繋いでいくための崇高な儀式です。私たちはあなた方と出会って、姿をまねて親しい友達であることを先に伝えました」
 

 マーはハル先生を指さした。

「あなたはファーに《ノモラ》と言いました。

 そしてあなたが身体から光を放って、光の子であることを私たちに伝えたからファーはあなたの魂を救おうと決めたのです。

 ファーはあなたにそのことをなんども伝えて、確認をしました。

 それなのにあなた方は私たちを武器で撃ちました。

 あなた方はとても怖ろしい人たちです」
 

 マーの言葉を伝えるエーヴァの声は震えていた。

 

「でも、あなた方は光る子ではなかった。私たちの生き方は、あなた方に理解できることではなかったのです」

 六人の生徒とハル先生は身じろぎもせずにマーの話に耳を傾けた。

 

 聞き終わったとき、裕大も咲良も、匠もエーヴァも、ペトロもマリエも、その場で凍り付いた。

 生徒達は森の家族の姿に、自分たちの未来を重ね合わせていたのだった。

 

・・・

「みんなもう森に帰ろう」

 そう言ってふらりと立ち上がったファーのからだが揺れて、地面に倒れ込んだ。

 

 ファーは地面に大の字になって、空を見上げ・・・「うおーっ!」と吠えた。

 

 ファーは悔しかった。

 銃で撃ち倒され、森の家族の父親としての威厳はどこかに吹き飛んでしまった。

 

 マーも立ち上ろうとしたが、足がもつれ、ファーの隣に倒れ込んだ。 

 キッカとカーナとクプシが心配そうに駆け寄って、二人の横の地面に寝っ転がった。

 

 森の家族は、車輪のスポークのように頭を中心に向け、輪になって手をつないだ。

 五人は蒼い空を見上げたまま、口をきかず、動こうとしなかった。 

 

「クプシ、教えて! みんなで何してるの?」

 エーヴァがそっとクプシに近づいて小声で尋ねた。

 

「これって、森の儀式なんだよ」

 クプシがぼそっと答えてくれた。

 

「みんなで手をつないで、ファーとマーを元気にしてるんだ。ファーとマーはさっきのことで頭に来てるみたいだから、しばらく話しかけない方がいいよ」

 クプシはファーとマーに聞こえないように小声でささやく。

 

 エーヴァはハル先生にクプシの言葉を伝えた。

「先生、これって森の儀式だそうです。ファーとマーは頭にきて、ふてくされてるからしばらく放っておいてくれって・・・クプシが言ってます」

 

「ファーとマーが子供みたいにふてくされてるっていうの?」

・・・それでわかったわ!・・・

 

 ハル先生は、ファーとマーが父親と母親の役割を務めているだけで、キッカやカーナと同じくらいの子供であることにはじめて気が付いた。

「エーヴァ、この人たちみんな同じ年くらいの子供なのよ」

 

 ハル先生は寝っ転がったまま動かない森の子供たちを横目で眺めた。

 次に、ジャケットからナノコンを取り出して、事態を打開するための答えを求めて検索を開始した。

 膨大なデータのどこを探しても参考になりそうな事例はなかった。

 「GIVE UP!

 一言発して、ハル先生はナノコンを地面に置いて腕を組み、深く考え込んでしまった。

 見かねた咲良が解決策を見つけた。

・・・昔、カレル先生の実家で大きなワンコと会話を始めた小さなマリエを思い出した・・・

 

「こら、神の子マリエ。ここあなたの出番だよ! 突っ立ってないで早くなんとかしなさい」

 

 咲良はマリエのおしりを押して、森の家族のサークルの中に無理矢理、押し込んだ。

 ファーの足を踏んづけそうになって、慌てたマリエが転んでしまって、そのままファーとマーの間に横になった。

 

「あらごめ~んなさい。お邪魔かしら?」

 マリエが一言、ご挨拶して二人と手をつないだ。 

 サークルの家族が一人増えて、森の子供たちが思わず笑った。
 

「マリエ、今よ、あれ、あれを使うのよ!」 

 咲良が自分の首の辺りを指さしていた。

 マリエには咲良の意図が読めた。
 

 「みんな、これからいいことするから森に帰るのちょっと待ってね!」

 

 マリエは緑のジャケットの中から、首にかけておいたお守り袋を取り出した。

「これは森の神様への聖なる捧げ物よ。とっても元気になるの」

 

 マリエがお守り袋から怪しげな小瓶を取り出したのを見て、ファーとマーが這って逃げようとした。

 逃げる二人を追いかけて、マリエはファーとマーの顔に素早く香料を振りかけた。

 

 スパイシーな香りが二人の鼻をツンと突く。

 太古の森の清々しい樹液の香りが、ファーとマーに遠い故郷の森を思い出させた。

 

「素敵な香りね!」

 ファーとマーは、ゆっくりと立ち上がって、両手をぐーんと空に伸ばす。

 キッカとカーナとクプシがマリエに近づいてきて、小瓶を指さしたので、マリエは三人の顔に残りの樹香を一振りした。

 サークルがほどけて、立ち上がった森の群れはいつもの陽気な家族に戻っていった。

 

 ファーとマーがハル先生にそっと近づいていった。

 ファーがハル先生の鼻をつまんで、マーは先生の耳をぎゅっとひねった。  
 

「ハル先生の顔はどうしてそんなに光るの」とマーが尋ねる。

 

「わたし、お肌が光るお化粧してるのよ。でも《光る子》と違って、弱ってるからじゃないの。先生お化粧上手じゃないのよ」
 

 エーヴァが通訳して、ファーとマーが笑い出した。

 

 二人は自分たちの勘違いに気がついて、ハル先生に噛みついたことを謝った。

 

「俺たちもファーとマーに謝ろうぜ」

 裕大と匠が、ファーとマーに頭を下げ、勘違いして電子銃で撃ったことを謝った。

 

 誤解が解けた二つの群れの子供たちは、お互いの姿をみて笑いあった。

 

「可愛い髪飾りね」咲良がキッカの髪飾りに触れた。

 キッカが森の葉っぱで作った髪飾りを外して、咲良の黒髪にくっつけた。

 

 咲良がお返しにガラスのイヤリングを片方外して、キッカの耳にくっつけた。

 掌を太陽に向けて咲良が「いくわよー」と叫んだ。

 

 咲良は太陽の光線を掌で反射させ、キッカの耳のガラスを通過させてキッカの横顔に当てた。

 キッカの顔に7色の虹ができた。

 

 七色の横顔を見て森の家族がキャッキャッと笑った。

「お返しに、みんなで森の生き物を見せてあげる」

 

 キッカがアマゾンのキツツキの素早いリズムを口ずさんだ。

 ファーが身体を揺すって森の歌を歌い、みんなで合唱した。

 

 キッカが緑の葉っぱの帽子をどこかから取り出して、頭に被る。

 キッカの身体が光り出して、輪郭が崩れ、新しい形が現れた。

 

 それはキツツキになって、せわしなく木の幹を突っついた。

 
 クプシは呑気なアルマジロに変身して、四つん這いになって踊った。 

 カーナが愉快な手長猿になって、小さな木の枝に片手でぶら下がった。
 
 

 森の子供たちが、大笑いしている生徒たちを踊りに誘った。

 早いテンポと森のリズムで、みんなが踊った。

 

「巨人はどこに行ったの」

 ペトロがくるくる回りながら、カーナに聞いた。

 

「いまは魂になって、みんなの体の中で生きているの」

 一回転してカーナが自分の胸を指さした。

 

「大きな巨人の魂が小さなカーナの胸の中にあるの?」

 ペトロが首をかしげた。

 

「そんなことも知らないの? 魂に大きさはないの。

だから何人でも一つの身体で一緒に暮らせるの」

 

「沢山の巨人の魂が、一人の巨人の中に集まっていったんだ」

「そういうこと。そして最後の一人になると、その巨人は山の頂上に登って爆発したの」

 

 カーナは小猿に変身して、巨木に跳び上がった。

 一番高い枝に登り詰めると、両手を空に伸ばして、「バン!」と叫んだ。

 

「そして小さな私たちがいっぱい生まれた」 

 キッカとクプシが口を揃えて叫んだ。

 

・・・

 川の浅瀬から、緑の服を着た一人の男が現れた。

 男は体を小さく丸めて、何気なく仲間に加わり、踊り始めた。

 

 男はハル先生にそっと近づくと、「私ですよ」と耳元で囁いた。

 驚いて振り返ったハル先生に「静かに!」と唇に手を当てた。

 

 男は、はぐれ親父だった。

「驚かないで。実は浅瀬に隠れて様子を見ていました」

 

 はぐれ親父はひそひそ声で喋った。 

「ファーが《ノモラ》と言ったときには、跳び上がりましたよ。

 前にこの惑星の巨人たちが『ノモラ』と言って仲間を襲っていたのを思い出したのです。

 この森の家族が巨人の末裔だったとは驚きました。

 先生に逃げ出すように大声で叫んだのですが、間に合わなかった。

 それでも噛みつかれたのがハル先生で助かりましたよ。

 あれが生徒だったらただ事ではすまなかった」

 

 話し声を聞きつけたファーが、はぐれ親父に気が付いた。

「何者だ!」ファーの声が森に響いた。

 

「怪しい者ではない。《ノモラ》だ。名は『はぐれ』・・・少しだが非常食を持ってきた」

 

 はぐれ親父はファーに近寄り、乾燥食と塩を入れた小袋をファーに手渡した。

 それは異なる種族への親睦の印だった。

 

 ファーは中身を確認すると、マーにもそれを見せた。

 マーが喜んで跳びはねた。

 

 ・・・巨人に襲われたはぐれ親父の話から始まって、緑の森の生活や、地球の厳しい環境やドームの中の生活まで、話が続く。

 

あっという間に午後の時間が過ぎていった・・・

 

「そろそろ森の家に帰る時間だ!」

 夕日が傾いたのに気がついて、ファーがあわてて家族を呼び集めた。

 

 帰りを急ぐ事情をマーがハル先生に説明した。

「エネルギーを節約するために、いつもは午後の暑い時間を涼しい森で寝て過ごしているのです。

 いまは昼寝の時間がとっくに過ぎて、まもなく日が暮れます。

 夕食は先ほどの食料を早速みんなで頂くことにします。

 とても楽しみです。

 その後は、遊びすぎた子供たちを早く休ませないといけません。

 明日は早朝から家族全員で、森の仕事に出かけます」

・・・

 地球の子供たちと惑星の森の家族は、抱き合ったり、ほっぺたにキスしたり、頭をたたき合ったりして別れを惜しんだ。

 宇宙の旅の別れには、「再会」と言う言葉はなかった。

 

 始めて出会った二つの惑星の子どもたちも今そのことを知った。

 生徒たちが見送る中を、五人の家族は森の家に帰って行った。

 

 大きな木立の中に姿を消す前に、森の家族が全員で振り返った。

 そして、最後の別れの手を振った。

 

 生徒たちとハル先生も思い切り手を振って応えた。

 

 (続く)

続きはここからどうぞ。

この世の果ての中学校 9章 緑の小惑星テラ 誕生の謎

 

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クリント・イーストウッドの「運び屋」観てたら、となりの席の爺ちゃん泣いてた!

公開の初日に近くの映画館に行って、クリント・イーストウッドの最新作「運び屋」を観てきました。

映画のラストで横見たら、となりの席の爺ちゃんがめがねを外してハンカチで涙を拭いていました。

 

わたしも、なんだか身につまされて「うるうる」が来ていたのです。

映画では、88才のクリント・イーストウッドが、実在したという90才のドラッグの運び屋を演じていました。

 

この演技、「二歳の老け役」だって対談で誰か冗談言ってたけれど、演技と言うより自然に近いのかもしれません。

イーストウッドの生き様そのものの映画みたいです。

 

男の哀愁は背中に出るっていいます。

イーストウッドも背中がずいぶん丸くなったけれども、前作の「グラン・トリノ」よりさらにかっこよく老けてましたよ。

 

前作の「グラン・トリノ」から10年、その前の「ミリオンダラー・ベイビー」から14年たちました。

もうクリント・イーストウッドの主演監督映画は観られないかもしれないと思っていたら、「運び屋」がやって来ました。

 

イーストウッド最後の作品、かもしれない「運び屋」。

ストーリーをすこしだけ紹介させてくださいね。

 

ドラッグの「運び屋」は家族に見捨てられた90才のアール爺さんだった

 

運び屋アールとパトロール警官

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグはアメリカの片田舎のシーン。

小さな農園で一人で花を栽培する主人公アールは、一日しか花開かない「デイ・リリー」を育てています。

 

この花はユリに似た花で、一日だけ咲いて夕方にはしぼんでしまいます。(注)

「だから、そのときを迎えるまで、大事に育ててやらないといかんのだよ」

 

アールは花の品評会で、そう言いながら来場者に「Day Lily」を一枝ずつ配っています。

アールの花は品評会で優勝してカップが渡されるのですが、肝心の売れ行きはもう一つです。

 

 

品評会でDay Lily を配るアール

 

 

 

 

 

 

 

 

このプロローグのシーンはアールと家族との未来を象徴しているようにみえます。

大事なユリを育てることに熱中したアールは、なんと、娘アイリスの結婚式に出席することもせず、家族との絆は切れてしまうのです。

 

一日しか花が咲かないユリを育てたために、娘アイリスの人生でもっとも大事な一日を欠席するのです。

この事件で、アールと妻のメアリーとの関係も決定的になります。

 

アールにとって仕事とつきあいは生きがいでした。

でも家族を愛していないわけではありません。

 

「家にいても何をしたらいいのかよくわからなかった」

いいわけめいたセリフが反省と共にあとのシーンで出てきます。

 

このセリフは俳優と監督の仕事でいそがしかったイーストウッドの反省の言葉かも知れません。

娘アイリスを演じているのはイーストウッドの実の娘アリソンです。

アリソン・イーストウッド

 

 

 

 

 

 

イーストウッドは実生活の懺悔の気持ちを込めてアリソンを起用したのでしょうか。

 

「仕事ばかりして、家族をほったらかしにしていないか?」

これは映画の後半で麻薬捜査官との会話の中で、アールが捜査官を諭すセリフです。

 

アールの懺悔の言葉であり、イーストウッド本人の言葉のようにスクリーンから聞こえてきましたよ。

 

アールは仕事と社会とのつきあいを優先する陽気な男ですが、携帯電話でメールを打つことができないオールド・ボーイでもありました。

ネット販売から取り残されたアールの花の商売はうまくいかず、農園は差し押さえられてしまいます。

 

アールの農園と差し押さえの看板

 

 

 

 

 

 

 

 

月日がたって、孫娘ジニーの結婚式が近づいたある日、ジニーのお祝いパーティーにアールが顔を出します。

アールは孫娘の結婚にお祝いの一つも贈ることができていません。

 

ジニーはアールが来てくれたことに大喜びしますが、妻のメアリーと娘のアイリスが現れて、たちまち雰囲気は怪しくなり、アールは寂しくその場所を立ち去ります。

アールが家財道具一式を載せたおんぼろトラックに乗り込もうとしたとき、何気なく近づいた男がいます。

 

「街から街へ車で運ぶだけのいい仕事があるよ」

アールの窮状を見抜いた男の誘いの言葉でした。

 

孫娘の結婚式のためにどうしても金が欲しいアールは、この男の話に乗ってしまいます。

アールは何も知らないうちに、後戻りができない運び屋の世界に一歩を踏み出してしまうのでした。

 

アールが街から街へ旅をする度に、封筒に入った報酬のドルの札束が増えていきます。

90才のアール爺さんをドラッグの運び屋だとは麻薬捜査官も気がつきません。

 

気のいいアールは困った人達にどんどん稼いだ金をばらまいていくのです。

陽気なオールド・ボーイが、十億を超えるドラッグのスーパー運び屋に変身していきます。

 

・・「運び屋」はちょっと不思議な映画です。

シリアスなテーマなのに、なぜか軽く明るいのです。

 

麻薬捜査官に追い詰められ、マフィアからも逃げられない状況で、深刻な筈の運び屋アールは旅を楽しんでいるのです。

旅の途中、モーテルで女性を二人も部屋に連れ込んだりします。

 

ランチの特製バーガーを手にして、たまたま隣に座った男を麻薬捜査官と知った上で、「仕事ばかりしてるんじゃないか? 家族を大事にしろよ!」と説教するのですよ。

 

・・・

実生活では、クリント・イーストウッドは三人の妻と二人の恋人のあいだに七人も子供がいます。

この数字は推測です、恋人はもっといたでしょう。

 

88才のスーパー・タフガイが90才のドラッグの運び屋を演じて、「仕事ばかりしていないか? 家族を大事にしろよ!」なんて言ってるのです。

 

老いを楽しんでいるようなイーストウッドの運び屋。

なぜか、そこんところが我々シニアの男性にやたら受けるのですね。

 

・・・

クリント・イーストウッドが主演監督した三本の映画にはヒット作品としての共通点があります。

「ミリオンダラー・ベイビー」「グラン・トリノ」そして「運び屋」の三本の映画はイーストウッドが70才を超えて監督・主演した映画です。

 

この三本の作品には「ダーティー・ハリー・シリーズ」のようなパンチ力と違った、大人の胸に響く共通の魅力があります。

そんな魅力の秘密を探って見ました。

 

クリント・イーストウッド主演・監督映画の魅力の方程式を見つけました。

 

三本のヒット作品には、ストーリーに一つの方程式が隠されていました。

その方程式は三つのキーワードで構成されています。

 

① 家族との問題    

② 孤独と老いと新しい友情

③ アウトロー(法令違反)による解決

 

古い作品から順番にご説明します。

 

2005年の「ミリオンダラー・ベイビー」のストーリーを思い出してみました。

 

フランキーとマギー

 

 

 

 

 

 

 

 

① 家族との問題

亡くなった父親以外に家族の愛を思い出せない主人公マギーは、女性プロボクサーとしての成功を夢見て、ロスにあるフランキーのおんぼろジムの扉を叩く。

フランキー(クリント・イーストウッド)は選手思いのトレーナーで、彼らの身体の安全第一で、危険なビッグ・ゲームを組まない。

 

不器用なフランキーから選手が逃げ出し、娘のケィティーとも音信不通となってしまう。

 

② 孤独と老いと新しい友情

孤独なマギーと年を取ったコーチ、フランキーの間に実の親子のような深い絆が芽生える。

フランキーの指導で成長を続けるマギーはウエルター級の英国チャンピオンを破り、フランキーはついに危険な相手「青い熊」とのビッグ・マッチを行うことに決める。

 

ミリオンダラー(100万ドル)をかけた試合はマギーの優勢で進んだが、ラウンド終了直後、ビリーの反則パンチがマギーを襲い、コーナの椅子に首を打ちつけたマギーは、半身不随となってしまった。

フランキーは後悔の念に日夜さいなまされる。

 

③ アウトローによる解決

回復の見込みがないマギーは絶望し、父親代わりのフランキーに最後の愛情を求めた。

それはフランキーの手による、安楽死だった。

 

この映画のラストは暗く、非情でした。

ただ、観客としてのわたしは、マギーがようやく絶望から解放されることへの安心感から、フランキーのアウトロー的な手段を肯定してしまったことを思い出しました。

 

2009年の「グラン・トリノ」のストーリーを思い出してみました。

 

コワルスキーとタオの家族

 

 

 

 

 

 

 

 

① 家族との問題

主人公のコワルスキーは、最愛の妻を失い、自慢の愛車「グラン・トリノ」と暮らす退役軍人。

「俺は嫌われ者だが、女房は世界で最高だった」が口癖だが、息子達も近づけない頑固じじいだ。

 

② 孤独と老いと新しい友情

ある日、となりの家の少年「タオ」がグラン・トリノを狙って忍び込んでくるが、退役軍人のコワルスキーは銃を手に追い払う。

タオはモン族の一員でモン族のギャングにそそのかされていた。

 

ギャングに絡まれていたタオと姉スーを助けたことから、三人の交流がはじまり、コワルスキーはタオの仕事の世話をして一人前の男に育て上げていく。

ある日、体調のよくないコワルスキーは一人病院に行き、いのちが長くないことを知る。

 

一方、ギャングのタオへの嫌がらせはエスカレートする一方で、激怒したコワルスキーがギャングに報復をする。

ギャングはその仕返しにタオの家に銃を乱射し、スーを全員で陵辱する。

 

③ アウトローによる解決

ギャングへの復讐に行こうとするタオを家に閉じ込めたコワルスキーは、一人ギャングの根城に向かう。

コワルスキーは彼らを前にしてたばこをくわえ、ゆっくりと上着のポケットに手を伸ばした。

 

銃で撃たれると思い込んだギャングはコワルスキーを射殺した。

コワルスキーのポケットから出てきたのは第一騎兵師団のジッポーだった。

 

警官に取り押さえられたギャングには長期刑が科された。

タオの命の代わりに、自らの命を差し出したコワルスキー。

 

彼の遺書には「愛車グラン・トリノをタオに贈る」と記されていた。

 

《二つの映画の説明文はwikipediaを参照しています》

 

「運び屋」の魅力の詳細はぜひ映画をご覧ください。

 

「運び屋」の魅力の方程式

① 家族との問題  

② 孤独と老いと、マフィアや麻薬捜査官とのおかしな絆。

③ アウトローな解決

 

最後にイーストウッド自身が「運び屋」のPR用の特別映像で話している意味深長なセリフをご紹介します。

 

「人生には、超えるべき障害がある。彼(アール)は限界を超えてしまった」

このセリフはイーストウッドのファンとして彼にそのままお返ししたい言葉です。

 

「人生には、超えるべき障害がある。彼(クリントイーストウッド)は限界を超えてしまった」

 

(終わり)

 

(注) デイリリー (正式にはへメロカリス)

Day Lily

 

 

 

 

 

 

 

 

アールの栽培するデイリリーの花は、その名の通り、花が開いても1日だけで、夕方には萎みます。

ただ、一つの花茎にいくつもの蕾をつけていて、それが次々咲くので花期は長く、1ヶ月くらい花を楽しむことができるのです。

「運び屋」の舞台・北アメリカでは古くから商売として栽培され、珍しい品種によっては数万円もする花があるそうです。

 

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