未来からのブログ11号 クレージーじいちゃんが時空を越えてやって来た!

 

知ってる?

ジャラのじいちゃん、60才で若い女性にナンパされたんだよ。

 

かっこよかったクレージーじいちゃんのいつもの自慢話だ。

銀座の混み混みの地下コンコースでの出来事さ。

 

ブロンドの可愛い女性から「アフタヌーン・ティーでもいかが?」って誘われたんだってさ。

クラウドマスターがジャラのじいちゃんのキャラとスタイル盗んだわけわかったでしょ?

 

2119年にナンパなんてことありえないよ。

だって繁華街とか混み混みの地下街なんて地球のどこにもないからさ。

 

地球はめちゃ暑くなってさ、人工ガタ減りで、町並みは残ってるけど人気(ひとけ)がないんだ。

でさ、そんな街へこれからみんなで繰り出すことになった。

 

もち、入り江の浜でジャラのじいちゃんに会うためにだよ。

未来からのメッセージできたから、クレージーじいちゃんに届けなくっちゃね。

 

前回のストーリーまだの方はここからどうぞ。

未来からのブログ10号 クラウドマスターがジャラのじいちゃんのキャラ盗んだ?

 

未来からのブログ11号  クレージーじいちゃんが時空を越えてやって来た! 

 

夕陽が落ちてきて、日暮れが近づいた。

ジャラ達、めちゃ暑くて人気のない街を必死で走ったよ。

 

地球はエネルギー不足だから乗用車なんて贅沢なものはないんだ。

スーツマンの足だけが頼りさ。

 

スーツマンって何者か・・覚えてくれてるよね。

僕はブレーン、スーツマンはかっこいい僕のボディーさ。

 

“GO! スーツマン!” 

ジャラがスーツマンに命令して、二本の足を回転フットにギヤチェンジしたから、時速60キロはチョロいもんだ。

 

「イエーイ!」

ジャラの右肩の上で風を受けながらタカさんが叫んだ。

 

「ヤッホー!」

カーナのスーツマンの背中でチョキが吠えたよ。

 

僕らの上空を、ハル先生を背中に乗っけたクラウドマスターが入り江の浜辺に向かって飛んでた。

ほら、SF映画のX-MENシリーズでプロフェッサーXとジーン・グレイが非常事態で空飛ぶシーン・・あれだよ、あれ思い出してよ。

 

ハル先生とマスターの正体は量子スパコンの人工知能だけど、現実世界での表現としては純粋エネルギーでできたプラズマだからさ・・。

ザ・カンパニーの会議室から入り江の浜辺へ行くことなんて、ちょい身体ずらしたら瞬間移動できるんだけど、ついでに初めての空飛ぶデートを楽しんでるんだよね。

 

二人は僕らの地球みたいに“ただいまHOT & HOT” なのさ。

で、入り江の浜辺に着いた。

 

そしたら妻のキッカがクレアとボブを連れて、僕らを待ってた。

「ボブとクレアがクレージーじいちゃんにどうしても会いたいっていうもんだからさ・・ハル先生も急のお休みで授業もなくなったから三人で学校抜け出してきた」

 

キッカが口とんがらかしてジャラに説明してる最中に、マスターがハル先生乗っけて空から降りてきた。

マスターの背中から降りたハル先生、キッカとカーナとボブみて、恥ずかしそうにぽっと顔赤らめた。

 

「あらハル先生、どうしてマスターの背中なんかでいちゃいちゃして・・」

キッカの目つきが怪しく輝いてきたので、ジャラはハル先生とマスターが婚約したこと伝えたんだ。

 

それ聞いて喜んだボブとクレア、ハル先生に飛びついていったよ。

で、みんなでもう一度大騒ぎしたってわけ。

 

タケさんが掛け合いのショートコントで初恋の二人を笑わせてさ、キッカとカーナがラブラブソング唄ってだよ、チョキがハサミでチャカチャカってリズム取ってさ、ハルちゃんとマスター真ん中にしてボブとクレアとジャラで囲んで輪になって、きれっきれのアイリッシュダンスしたってことさ。

 

で、気がついたら、入り江の浜の夕陽が陰ってたんだ。

「やばい!」ジャラが叫んだ。

 

・・で、気がついたら、タンジャンジャラの夕陽が陰ってた。

「やばい!ジャラなにしてる!」

 

プロフェッサーGは腕にはめた手製の時空時計をちらっと見て、タンジャンジャラの白い浜に夕陽が無情に落ちていくのを睨んだ。

“プロフェッサーG”とはジャラの祖父つまりクレージーじいちゃんのことだ。

 

Gのプロジェクトは計画の半ばまで到達していた。

ここ秘境の地で秘かに妻に仕込んでおいた“もつれ遺伝子”が効果を現して、二日前の夕刻、Gはこの浜辺で孫のジャラと時空を越えた“量子もつれ”を起こした。

 

そのとき、Gは白い浜辺に現れたジャラの手に、過去からのメッセージを刻んだサンドレターを渡した。

その返事を受け取る刻限がもうすぐやって来る。

 

昨日は、ジャラの“もつれ遺伝子”経由で、ひ孫のボブとまでつながることができた。

「ボブは大物になる。あいつクラウドマスターとか言う怪しげな天才男と口喧嘩して、みごとにやっつけてたもんな・・」

 

“流石おれのひ孫!” 

にやりと笑ってGはもう一度腕の時空時計をみた。

 

「頼む、ジャラ急いでくれ。時間切れで世界を救えなくなるぞ!」

 

Gはもう待ちきれずに白い砂の上を裸足で歩き、浅瀬の海に入った。

そして両手を夕陽に向かって差し出し、波に向かって叫んだ。

 

「ジャラ! 早く手を伸ばせ! 量子もつれがほどけそうだ」

Gはそのまま海に飛び込み、水平線に沈みかかった夕陽を追いかけて泳ぎだした。

 

そしてボブに聞こえるように水中で唄った。

「らむだじーみゅーにゅー」と。

 

・・ジャラは焦ってた。

入り江の浜から夕陽が消えかけていたのさ。

 

辺りはほの暗くなった。

その時だよ・・波間からかすかにじいちゃんのしゃがれ声が聞こえたんだ。

 

水平線に沈みかかった夕陽に向かってジャラは必死で両手を伸ばしたよ。

片手にはじいちゃんに渡すメッセージサンドの入った小さな箱をしっかりにぎってた。

 

でも、ジャラの手が捉えたのは、クレージーじいちゃんの手ではなくて、波のしずくだった。

その時だよ、ジャラの横で突っ立ってたボブが震えだしたのは。

 

ボブは震えながらあの暗号を唱えてた。

Λgμν

「らむだじーみゅーにゅー」と。

 

ジャラも声を上げて一緒に唄ったよ。

クレアとキッカとカーナがソプラノして、チョキが三拍子でリズムとって、タカさんテナーで、マスターにハル先生までプラズマ振るわせて・・全員が声を上げて復唱した。

 

「♯らむだじーみゅーにゅー」と。

みんなの声は夕陽に向かって弾けた。

 

その時ジャラは感じ取ったんだよ・・あれだよあれ。

入り江の浜が震え出したんだ。

 

そして世界が、僕らの宇宙が膨張を始めた。

入り江の浜が少しずつタンジャンジャラの白い浜辺に向かって膨張を加速したんだよ。

 

ジャラは右手を必死で伸ばした。

ボブは必死で左手を伸ばした。

 

・・プロフェッサーGの耳に、合唱するみんなの声が波間の奥から届いた。

「ボブいいぞ、そっちの宇宙を膨張させろ! もう少しで手が届く」

 

Gの前方に、波間に揺れながら大きな手と、小さな手が現れた。

Gは両手を伸ばして、二つの手をつかんだ。

 

・・ボブは感激した。

「やった、これクレージーじいちゃんの手だ。間違いないよ。バーチャル教室で僕の頭優しく撫でてくれた手だ」

 

ボブはうれしくて、もう一度じいちゃんに教えてもらったアインシュタイン宇宙の膨張係数をでっかい声で唱えた。

「らむだ~爺、爺にゅー!」と。

 

・・その瞬間だよ、じいちゃんの身体が波間から飛び跳ねて、宙を飛んで入り江の浜に落ちたんだ。

そうなんだ・・ボブの言い間違いが宇宙の膨張エネルギーを時空のプラス方向に放射させたんだよ。

 

で、じいちゃんは過去から未来の宇宙に吹き飛ばされたってわけ。

距離にしてたった数メートルのことだけどさ、時空に直すとおよそ100年・・でも宇宙の年齢は138億年ぐらいだから、ちょっと散歩してて石ころにけつまずいたくらいのものだよ。

 

じいちゃんは海水にぬれた綿パンの砂をたたき落として、入り江の浜辺からさっと立ち上がった。

夕陽を背にじいちゃんは背筋を伸ばし、髪の毛一振りしてハスキーな声で言ったよ。

 

「やー、ジャラ! おれ、クレージーじいちゃんだ。どうだ100年前のじいちゃん、かっこいいだろ?」

ジャラはじいちゃんに駆け寄って、抱きついて、泣いたよ。

 

だって、ジャラのママがひどい暑さで急に亡くなったとき、ママが最後にジャラに残した言葉を思い出したんだ。

 

「ジャラ、頑張って生きていくんだよ。

“ジャラはいつか地球を救う”  

お前が生まれたとき、ジャラのじいちゃんがそう言ってたよ。

いつかどこかでジャラと会うのが楽しみだ・・とね」

 

ジャラはあの言葉信じて、今まで頑張って生きてきたんだ。

肉体失って、ブレーンだけになってもだよ。

 

「じいちゃんぼくボブ。暗号間違ってごめん!」

ボブが恥ずかしそうに近づいていって、じいちゃんに謝った。

 

「いいんだボブ、こうしてみんなに会えたんだからな」

じいちゃんはボブの頭撫でて、暗くなった海を眺めたよ。

 

「でも、すぐ帰らなきゃな!」

腕の時空時計みて、じいちゃんがあわててた。

 

「あのね、じいちゃん今晩お泊まりしたら?」

クレアがじいちゃんのシャツの裾つかんで言ったんだ。

 

「美人のクレアにそんなこと言われたらじいちゃん、考え込むな」

じいちゃんそう言ってクレアを抱き上げた。

 

それからすこし考えて、じいちゃんはまわりを取り囲んだ僕たち全員に向かって言ったんだ。

「100年前のクレージーじいさんだが、どこかで一晩お泊まりさせてもらえるかな?」ってね。

 

(続く)

続きはここからどうぞ。

 

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人気SFシリーズ新作「メン・イン・ブラック:インターナショナル」対「X-MEN:ダークフェニックス」どちらの勝ち?

 

ビッグヒットSF映画シリーズの新作が二本、2019年6月に一週違いで日本で初公開されました。

シリーズ4作目「メン・イン・ブラック:インターナショナル」とシリーズ最終編「X-MEN:ダークフェニックス」です。

 

ヒットしたシリーズ映画の新作は、人気を保つのが難しいのが映画界の常識です。

直接対決となった二作品の勝負は、どうなるのでしょうか?

 

ほとんど同時に公開された全米ではメン・イン・ブラックが週間全米一位を獲得、前週に公開されたX-MENは全米二位でスタートをしました。

興行収入でも両者はほとんど同額のスタートですが、三週以降はオープニングの興収を相当下回っています。

 

・・はたして日本ではどうなるのでしょうか?

両シリーズのオールド・ファンとして、二つの新作を公開の初日に観てきました。

 

映画の主人公は両作品とも、MENでなくて WOMENでしたよ。

ハリウッドも“女性の時代”なのでしょうね。

 

ネタバレ“ほとんどなし”で、感想を書きましたので、どうか安心してお読みくださいね。

 

“地球はど派手に裏切られる”メン・イン・ブラック:インターナショナル

 

地球はど派手に裏切られる
メン・イン・ブラック公式ページ

 

 

 

 

 

 

 

 

公開初日の6月14日(金)に「メン・イン・ブラック」シリーズの第四弾“メン・イン・ブラック:インターナショナル”を梅田東宝で観てきました。

午後二時の字幕版で観客は60%から70%くらいの入りでしたよ。

 

メインストーリーは「MIB内部にエイリアンのスパイがいる。地球侵略を計画中のエイリアンのスパイは誰だ?」でした。

シリーズ前三作のアメコミ風「度肝を抜かれた」感はありませんでしたが、ブラックスーツのニュー・コンビがすこし固いけど、やたらとフレッシュで良かったですよ。

公開済みのシリーズ三作は、エイリアンが地球上にごろごろしていて、わんちゃんニャンコにゴキブリまでみんなエイリアン。

エイリアンを宇宙からの侵略者か、友好的移民か観光客か、調査して取り仕切っているのが秘密組織のMIBでした。

 

こんなおふざけ設定にトミー・リー・ジョーンズとウイル・スミスの迷コンビが、ご存じ記憶消去ガン“ニューラライガー”を振り回して、エイリアンに接触した人間の記憶を片っ端から消しまくって、組織の存在を消していく・・そんなシリーズ作品に度肝抜かれて、笑いこけました。

新作のインターナショナルは“メン・イン・ブラック”から“men&women in black”にコンビがフレッシュになりました。

ニューコンビは、地球を救ったという触れ込みのチャラ男のエージェントH(クリス・へムズワース)と、策略と売り込みであこがれのMIBに入社した女性エージェントM(テッサ・トンプソン)です。

 

エイリアンと子供のときに接触した少女が、秘密組織MIBの存在を知って、いつかメンバーの一員になることを夢見て策略を練る。

彼女の目的は「エイリアンと宇宙の真理」の解明。

 

そんなテッサ・トンプソンの演技が初々しくて可愛くて、クリスのなんだか薄っぺらい演技をなんども救っていました。

この男女の凸凹コンビ、どこかで観たことあるなとデジャブ。

 

気がついたら、1970年代のクリントイーストウッド全盛期のダーテイー・ハリー3の逆さコピーでした。

キャラハン刑事の凄腕と、ついて行くのが精一杯の新米のケイト。

 

あの作品、コンビのスキルの落差とケイトの頑張りが命がけで、画面から目が離せななかったですよ。

MIBの新コンビはキャラハン刑事とケイトのコンビと真逆の面白さを狙ったのでしょうか。

 

こちらは若い女性の新米エージェントMが、「知恵と武器一つで地球を救った」というチャラ男の先輩エージェントHをなんども窮地から救い出すのですぞ。

 

エージェントOに「そろそろMIBもwomen in black に名前変えようかしら」

・・なんていわせてましたよ。

 

メン・イン・ブラックはニューコンビ

 

 

 

 

 

 

 

・・宇宙人の王族が持ち込んだ、地球をぶっ飛ばせる程のパワフルな武器の争奪戦が始まります。

このスーパー兵器がチャラ男の元カノのエイリアン、リザの手に落ちてしまいます。

 

ちゃら男のエージェントHは、じつは宇宙の武器商人であるエイリアンの女性リザとあるいきさつ(冒頭のシーン)があって、Hしちゃってるのです。

リザには二本の手以外にもう一つの“触手が”あって、ベッド・シーンで触手伸ばしてチャラ男の身体に絡ませるのです。

 

ここで二度目のデジャブがきました。

絶滅寸前のエイリアンの女性が、地球に健康な男性の種を求めてやって来る“スピーシーズ”(種)というB級SF映画を思い出しましたよ。

 

スピーシーズ・・地球に健康なシーズを求めてやって来たエイリアン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美人のエイリアンに誘惑されて、ベッドで種を提供した地球人男性は、そのあと彼女の背中から出てくる鋭い触手で差し殺されてしまいます。

ベッドシーンはエロくてグロくて残酷でした。

 

それに比べてチャラ男とリザのベッドシーンのなんとお上品なこと。

エイリアンと地球人とのベッドシーンはSF映画の見せどころです。

 

“来るぞ、すごいの来るぞ”って期待したのに・・

始まったかと思ったら、満足した表情のリサのとってつけたような三本目の手がチャラ男の背中に絡むところでシーンはおわりでしたよ・・残念。

 

MIBの他のメイン・キャラクターは、銀髪がかっこいいおばちゃまのトップ・エージェントO(エマ・トンプソン)に、上司のハイT(リーアム・ニーソン)がとても渋い。

 

トップ・エージェントO
(公式サイト)
HIGH T が渋い

 

 

つぎに、可愛い(と紹介されてる)キャラはポーニー君。

(私にはとても可愛いとは見えなかったのですが・・)

 

主人の女王を亡くして生きがいをなくした一兵卒(ポーン)は、エージェントMに拾われてポーニーと名付けられ、命がけで彼女に仕えることになります。

ポーニー君、活躍の出番はほとんどなくて、ラスト・シーンでようやくご主人を助けにやって来ますよ。

主人公の女性エージェントに命をかけるポーニー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・この映画のクライマックスはエイリアンのスパイとエージェントとの対決となるのですが。

ラストの対決のシーンで最後のデジャブがきました。

 

スターウオーズのダースベイダーが主人公ルークを、帝国・皇帝の執拗な攻撃から救うシーンを思い出しましたよ。

二つのシーンの共通キーワードは“親子の絆”でした。

 

おっと、ネタバレはここまで!

シリーズ新作は、前作までのアメコミ風ドタバタ・コメディーとはティストがまったく異なりますので、X-NEN の“ニュー・シリーズ”としてご覧になるのがお薦めですね。

【画像はすべて公式ページより】

すべてが終わる X-MEN:ダークフェニックス

 

すべてが終わる
X-MEN ダーク・フェニックス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公開初日の6月21日(金)に西宮ガーデンスで「X-MEN :ダーク・フェニックス」を観てきました。

 

午後12時の字幕版で、館内の座席は60%くらいの埋まり方でした。

観客はメン・イン・ブラックのときより、すこし年齢が若くて男性が多いようでしたよ。

 

この作品は X-MEN の中でも異次元のパワーを秘めているジーン・グレイ(ソフィー・ターナー)がストーリーの展開の中心になっています。

冒頭のシーンで・・両親の車に乗った少女ジーンは、自分の嫌いな曲を後部座席で聞かされることに我慢できなくなって、両耳を手で押さえ、「止めて!」と大声で叫んでしまいます。

隠されたジーンの強力なパワーが顕在化して両親と車を襲い、車は対向車とぶつかり数回転して画面は暗転、ジーンも意識を失います。

 

「奇跡だ、この子だけ身体のどこにも傷がついていない」

 

医師の声で目が覚めたジーンは、両親がどこにもいないことに気がつき、両親の死が、自分でも制御できない異常な能力が起こした事故のせいであることを知るのです。

 

車の中でジーンが嫌がった曲は1970年代のグレン・キャンベルのヒット曲「By The Time I Get To Phoenix」です。

邦訳タイトルが「恋はフェニックス」、 直訳で「フェニックスに着く前に」でした。

 

ジーンのダークサイドに隠されているフェニックス・パワーを暗示する曲だったのです。

 

その後、プロフェッサーX (チャールズ・エグゼビア)によって創設されたミュータントの秘密組織 X-MEN の一員となって成長したジーンは、ある日仲間と共に、太陽フレアに襲われた探査宇宙船の乗組員を救助するために宇宙に出発します。

 

この探査宇宙船のシーンで“1992年ボイジャー号”とやけにリアルな画面が出た記憶があるのですが、あれ私の目の錯覚でしょうか? そうでないとしたら、この作品の時代設定は今から20年以上前の1992年ということになります。シリーズ全体の世界観と時代感覚は複雑すぎて私には理解不能です。

・・アメコミだから気にしなくてもいいのかな。

 

X-MENは探査宇宙船の隊員を救助することに成功するのですが、キャプテン(?)が一人船内に取り残されていることに気づき、彼を助けるためにジーンはテレポーテーション(瞬間移動)をして宇宙空間に出ます。

迫ってくる太陽フレアを前にして、探査宇宙船に立ち塞がるジーンは燃えさかる炎を自分の身体の中に取り込んでしまうのです。

 

太陽フレアとは太陽で起こる核融合による爆発現象のことで、太陽系の宇宙にガスや電磁波として伝わると破壊的な現象を引き起こすことがあります。

映画では大きな白色系の炎で表現されていて迫力がありました。

 

キャプテンを無事救け出したジーンですが、巨大なエネルギーを身体の中に取り込んだために、闇のサイドに閉じ込められていたジーンの第二の人格“ダーク・フェニックス”が覚醒してしまいます。

 

すべてを破壊する史上最強のパワーを身につけたジーンはその力を制御することができない危険な少女ジーンに戻っていました。

 

ダークサイドのジーン
公式ページより編集

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでデジャブ。

怒りに襲われると自分を制御できなくなって、相手が友達でも火だるまにしてしまう少女“キャリー”を思い出しましたよ。

 

スティーブン・キング原作の1973年公開の“キャリー”は、自らが制御できない超能力を持つ人間の悲劇を描いた初めての作品でした。

炎の少女“キャリー”と、ダーク・フェニックスを解き放たれた“ジーン”のイメージが悲劇を予感させて重なりましたよ。

 

このあと、ジーンの活躍を称えて“X-MEN”も“X-WOMEN”にしようかなんてセリフが画面から聞こえました。

どこかで聞いたようなセリフでしたよ。

 

このあとの展開はすこし複雑です。

少女ジーンにかかわる重大な秘密が明るみに出たり、プロフェッサーXと決別していくジーンが、Xの旧友で宿敵となったマグニート(マイケル・ファスベンダー) の元に助けを求めたり・・。

ダーク・フェニックスに覚醒したジーンの闇の力が、X-MENの仲間にとんでもない悲劇を生んでいきます。

 

そんなジーンに近づいてくる謎の女性(写真右)を演じるジェシカ・チャスティンがクールな魅力を発散しますよ。

ジーンに近寄る謎の女性
cinematoday

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの太陽のフレアはただの炎じゃなかったのよ、ジーン!」

謎の女性がジーンに囁くセリフがキーワードです。

 

おっとネタバレはここまで。

・・そしてジーンを取り巻く戦いが三つどもえ、四つどもえに展開されてラストを迎えていきます。

 

新作二本の勝負、軍配はどちら?

 

どちらに軍配が上がるかはこれからの世界での観客動員数次第ですが、ほぼ同時に公開された地元全米でのオープニング速報をご紹介します。

数字はBOX OFFICEの調査で一週間の全米の興行収入です。

 

2019.6.7-6.9

  1. ペット2              4665.3万ドル
  2. X-MEN :ダークフェニックス    3282.8万ドル
  3. アラジン               2468.1万ドル
  4. ゴジラキング・オブ・モンスターズ   1545.0万ドル
  5. ロケットマン             1381.3万ドル

2019.6.14-6.16

  1. メン・イン・ブラック:インター    3003.6万ドル
  2. ペット2               2440.8万ドル
  3. アラジン               1730.9万ドル
  4. ロケットマン               942.0万ドル
  5. X-MEN :ダークフェニックス      935.5万ドル

 

X-MEN :ダークフェニックスはオープニングでペット2に続いて全作品中第二位。    

メン・イン・ブラックは堂々の一位でスタートしました。

 

しかしこの翌週の速報では・・

新作のトイ・ストーリー4 が興収1.18億ドルというダントツのスタートを切った余波もあって、メン・イン・ブラックは4位で1075.0万ドルに下げ、X-MENは9位の360.0万ドルと、苦戦しています。

 

日本や世界での勝負はこれからです。

二つのシリーズのオールド・ファンとしては、主人公がWOMENになったことで、女性ファンががんがん増えることを期待したいですね。

(おわり)

 

【記事は無断転載を禁じられています】

 

スポーツジムでやってはいけないマナー違反・ワースト10と対処の方法

 

健康志向が盛んないま、スポーツジムにはリタイヤーした高年齢の方や、家事の合間の主婦、退社後のビジネスパーソン、時間フリーな自営業の人など幅広い職種や年代の人たちがトレーニングやストレッチのためにやって来ます。

 

スポーツジムはすべての会員が快適な時間を過ごすための共有空間ですから、他のメンバーに迷惑を掛けないようにマナーには常に気をつけたいものです。

常連になってつい気を許してしまうと、何気ない行為が知らないうちにマナー違反になって、他のメンバーのクラブライフが快適どころか不愉快な時間になりかねません。

 

ビジーなスポーツジムで10年間クラブ・ライフを経験した筆者が、やってはいけないマナー違反ワースト10をピックアップしてみました。

違反マナーへの対処方法もまとめましたので、みんなが快適なクラブライフを過ごすためにぜひ参考にしてくださいね。

 

スポーツジムでやってはいけないマナー違反ワースト10

 

ランニングで大汗かいて・・

 

 

 

 

 

 

 

それでは、スポーツジムでやってはいけないマナー違反を罪の軽いものから順番にみていきましょう。

 

ワースト10位  トレーニングでやたらと大声をあげる

 

ベンチプレスなどで瞬間的にあげる大声は、近くにいて突然聞こえるとビックリします。

すぐ後ろで聞こえたら、事故でもあったのかと思わず振り向いてしまいます。

 

でもあの声は、重いものを持ち上げるときに自然と人の口から出てくるものですから、仕方がありません。

大声はトレーニングの範囲内と思って、許してあげましょう。

 

大声をあげる人はいつも決まっています。

いつもの男性がベンチプレスを始めたら、あっ、来るぞ来るぞ、と心の準備をしておきましょう。

 

そうすれば、唸り声がやって来ても、笑ってやり過ごせますよ。

でも、“どうだ、おれの凄いとこ見たか!” って、毎回大声上げる見せたがり屋がいます。

 

ジムはマッチョマンのコンテスト・ステージじゃありません。

こんな自己顕示はメンバーとしてはマナー違反ですから、冷たく無視しましょうね。

 

ワースト9位 プールの歩行者レーンで歩きながらお喋り

 

スポーツクラブはメンバーの社交場でもあります。

親しいメンバー同士の近況の交換や、他愛のないお喋りはクラブ・ライフの楽しみの一つです。

 

でも、他人のトレーニングの邪魔になる場所でのお喋りは困ります。

プールの歩行者レーンで、二人一組でお喋りしながら歩く人がいます。

 

前方の人は後ろ向きで、後方の人は前向きで対面しながらの歩行です。

お喋り歩行は、話題に夢中になるとスピードが落ちて他の人の迷惑になります。

 

プールでの歩行訓練は、体重の負荷が軽減されるソフト・トレーニングです。

前向き、横向き、後ろ向きに、早足やゆっくり大股歩きなどで筋肉を優しく鍛えます。

 

高齢者の足腰の強化や腰痛のリハビリなどによく使いますので、いろいろな歩き方があって、前進するスピードも異なります。

プールの端の1レーンだけが歩行者用になっていると、混んできたときが大変です。

 

スピードの速い人はレーンの途中でUターンしたり、お互いスピード調整をして、譲り合いながら歩行しています。

お喋り歩行はマナー違反と言うよりはエチケットの問題かもしれません。

 

迷惑なお喋り歩行はできるだけ短時間にとどめましょう。

筆者も男同士でお喋り歩行の経験がありますが、プールに限らず、長いお喋りは休憩室やプールサイドを利用すべきでしょうね。

 

ワースト8位 男子ロッカールームでご開帳

 

ロッカールームでのマナーのお願いの掲示文

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男性用のロッカールームで、腰にタオルを巻かないでうろうろしたり、休憩用のソファーに直(じか)に座り込んでいる人を見かけます。

男同士とはいえ、目のやり場に困りますし、そのソファーにはもう座る気がしません。

 

裸歩きをやりたければ自宅でおやりください。

きっと奥様に怒られますよ。

 

これはエチケットどころではなくて、マナー違反です。

ジムのマナー掲示板にも掲載されていました。

 

「裸のままで椅子やソファーのご利用はご遠慮ください。腰にタオルを巻いていただくか、下着やズボンをご着用ください」

 

ワースト7位 風呂場でシャワーぶっ飛ばし

 

風呂場で座って身体を洗うときに、シャンプーや石けんをシャワーで流そうとして、とんでもない方向にお湯が飛ぶことがあります。

これって、本人はなかなか気がつかないものです。

 

本人は下を向いているので、シャワーの先がどこを向いているのか分からないのです。

被害者は、背後からお湯がぶっ飛んでくることが多くて、不意打ちになります。

 

“無神経なやつ”とこちらは不愉快になりますが、相手は向こうを向いていて気がつきません。

一度、ゴルフ場の風呂でシャワーのお湯はどのくらい距離が出るのか、試しに後ろに飛ばしてみたことがあります。

 

ゴルフ場のシャワーは勢いがいいのか、3~4Mぐらいは軽く飛びました。

それ以降は、慎重にシャワー掛けするようにしています。

 

自分では気がつかないマナー違反もあるということでした。

 

ワースト6位 フリーゾーンでマット3枚

 

フリーゾーンでマットは一人一枚で

 

 

 

 

 

 

 

スポーツジムにはメンバーが自由にストレッチやエクササイズを行えるフリースペースがあります。

1ルームがフリーゾーンになっていたり、マシーンの間のスペースがフリーゾーンに当てられていたりします。

 

フリースペースの一角に、地面に敷くマットが必要な枚数だけ積み重ねられています。

マットは基本的にはメンバー一人が一枚を利用するようになっています。

 

スペースの狭いところでは、お互いがぶつからないように上手に場所を取ってストレッチやヨガをします。

筆者は脊柱管狭窄症で手術をしたあと、ジムを利用してリハビリ・フォーマットをトレーナーと相談してつくりあげました。

 

このフォーマットではマットはできれば二枚必要でした。

混んでいるときには一枚で我慢していたのですが、そうでないときには二枚使っています。

 

よくお会いするのですが、フリーゾーンのルームでマットを三枚使う人がいます。

流石に三枚使うと、一部屋の残りスペースが手狭になります。

 

ルール違反ではないので、最近はその人とできるだけ時間帯を外してフリーゾーンを利用するようにしています。

なぜなら、マット三枚使いと、二枚使いが同時に一部屋にいたら、これは大人のマナーとしてとても恥ずかしいじゃないですか・・。

 

やはり、フリーゾーンのマット使用は一枚が基本でしょうね。

 

ワースト5位 シャワーなし、かかり湯なしでお風呂にドボン!

 

脱衣場から風呂場に入ってきて、シャワーなし、かかり湯抜きでいきなりお風呂に”ドボン”と入る人がいます。

 

これじゃお子様風呂ですよね。

ある年代以上の人にはかかり湯の習慣が身についています。

 

シャーなんておしゃれなものがなかった時代は、かかり湯がせめてものエチケットだったのです。

かかり湯はほとんど形だけのもので、汗を十分に洗い流す効果は期待できません。

 

でもいまはどこにでもシャワーがあります。

大汗かいたあとは、シャワーを浴びてから風呂に入るか、先に身体を洗ってから風呂に入るように、エチケットを変えるべきでしょうね。

 

私はかかり湯派ですが、汗をかいたときは先に身体を洗います。

その時は風呂には入りません。

 

上がり湯で、二度洗いになるので面倒だからです。

シャワー派、かかり湯派、あなたはどちら派でしょうか?

 

ワースト4位 セクハラ寸前のちらちら見

 

しつこいチラ見

 

 

 

 

 

 

 

 

若い女性の会員が、スポーツクラブを止めていく理由の一つが、トレーニング中に異性からしつこくチラ見されたり、不必要に話しかけられたりすることだという報告があります。

クラブは社交の場であるといっても、セクハラに近い行為はNGです。

 

異性だけでなく、同性からのセクハラも当然NGです。

素敵な人がいるなと思っても、しつこいチラ見は慎みましょう

 

ワースト3位 人気マシーンの長時間独占

 

人気マシーンはみんなが使いたくて順番を待っています。

マシーンの上で長いインターバル(休憩?)を取って再開することを繰り返すと、嫌われ者になります。

 

マナーの違反プレーはみんなに見られています。

混んでるときには、一区切りしたら交代をするようにしましょう。

 

また、人気マシーンで、運動しながらのSNSチェックは禁手です。

スワット系の両足マシーンで片手をフリーにしてスマホをいじってる人をよくみかけます。

 

集中力を欠いたマシーントレは、効果も半滅です。

時間つぶしは休憩室でどうぞ・・です。

 

ワースト2位 マシーンや床に汗垂れ流し・・始末は誰が?

 

マシーントレや激しいレッスンで気持ちのいい汗をかくのは素晴らしいことですが、マシーンや床に汗をまき散らすのはできるだけ避けたいです。

自分のタオルでこまめに身体の汗を拭き取ったり、シャツを着替えたりして、汗をまくのを防ぎましょう。

 

マシーンの使用後はマシーンについた汗を備え付けのタオルで拭き取り、汚した床は自分で拭くか、スタッフに頼んでモップできれいに拭いてもらいましょう。

先日ジムのレッスンのあとで、床に髪の毛や汗が残っていて、次のレッスンの人からクレームが付いていました。

 

係の人とちょっとコミュニケーション取って始末をお願いするだけで、次の人に迷惑をかけずに済むことでした。

 

ワースト1位 見たくなかった・・ジャグジーの吹き出し口におしり当て!

 

これは番外編にしたいほどのNG編です。

通っているジムの風呂にはジャグジーの吹き出し口が六つ付いています。

 

ある日、トレーニングを終えて、お風呂に入ろうとしたら、先客の高齢の男性が一人いて、お風呂の端で湯に浸かり、腰を半分浮かしていました。

しばらく何のことか分からずに、掛かり湯を使ってから風呂に入り、男性とすこし離れたジャグジーの吹き出し口に背中を当てて足を伸ばしました。

 

で、何気なく横を見ると高齢の男性はまだ腰を浮かしていました。

どう見ても彼はおしりをジャグジーの吹き出し口に当てているのです。

 

ジャグジーからの吹き出し湯でお尻を洗っているのでしょうか。

それともおしりマッサージでしょうか。

 

同じ湯に浸かっていることに我慢できなくて、すぐに風呂から上がりました。

くやしくて男性の顔をしっかり見届けてあげました。

 

男性は私から顔をそむけて、身体を湯船に落とし、まるでしらん振りでしたよ。

後日もう一度男性をジャグジーで見かけましたが、その時はすでにおしりマッサージを終えたようにすっきりした顔で湯船に浸かっていました。

 

彼は一人でジャグジー風呂にいるときにはあれを繰り返しているのかもしれません。

確証がないのでスタッフに言うことができずそのままです。

 

ワーストNO1はとんでもない報告になりましたが許してください。

・・幸いなことに最近彼をジムで見かけなくなりました・・

 

マナー違反への対処法

 

マナー違反に対処する方法として、“その行為NG”・・のレベルを考えてみました。

100%NGはジムのルール違反です。

 

たとえばプールの歩行者専用レーンで、歩かないで泳いでいるケースなどです。

明らかなルール違反は、目の前の本人にルール違反を伝えて、中止してもらうのが正解でしょう。

 

しかしトラブルが予想されるのなら、スタッフを呼んで注意してもらうのがベストです。

そのためのスタッフですから。

 

判断に迷うのはマナー違反のときです。

頭にきてついついマナー違反を指摘したくなります。

 

しかしマナーに違反しているなと思ったときでも、その場で直接相手に伝えることは止めた方がいいと思います。

マナーについての考え方や、善し悪しの判断は人によって様々だからです。

 

マナー違反の判断はジムのスタッフに任せるのが正解です。

どうしても耐えられないときは、スタッフやトレーナーにそれとなく伝えて、どうするかを任せましょう。

 

急がないときは、あとでスタッフに伝えるか、投稿箱があればマナー違反の内容を書いて入れておきましょう。

どちらにしても直接の“指導”はトラブルの元です。

 

ゲスト同士、犬猿の仲になることもあります。

ジムは大人の社交場です。

快適なクラブライフのために、マナー違反の対処法はジムのスタッフを活用することをお薦めします。

 

最後に・・

 

スポーツジムは健康ライフを楽しむための大人の共有空間です。

メンバーの誰もが快適に過ごす権利を持っています。

 

ルールを守ることはもちろん、マナー違反にも心配りをしましょう。

お互いに譲り合う気持ちを持つことが、きっとスポーツクラブの基本マナーなのでしょうね。

 

(おわり)

 

【記事の無断転載は禁じられています】

 

この世の果ての中学校15章 “過去からの訪問者の家族は暗黒宇宙に消えた”

 

 過去から未来にやって来た科学者八人の愛する家族は、悲鳴とともに闇の手に連れ去られて消えていった。

 会議場の空間に、焦げ付いた色の巨大な地球儀がぽつんと浮遊していた。

 

・・・虚構の手品師が映し出したこの映像はなにを意味しているのか?

 家族の安否を確かめたくて、科学者たちは会議場の中を手品師の姿を求めて、探しまわった。 

 しかし、手品師の姿は黒いコートとともにどこかにかき消えてしまった。

 

(前回のストーリーはここからどうぞお読みください)

 この世の果ての中学校 14章 過去からの訪問者

 

この世の果ての中学校 15章 “過去からの訪問者の家族は暗黒宇宙に消えた”   

 

「俺たちの家族と、虚構の手品師はどこに消えた? 無責任な手品師に代わって、このふざけた映像の意味を説明していただきたい!」 

 家族を闇に掠われ、激怒した副団長が腰を半分浮かして、目の前に座っている校長とカレル教授を上から睨みつけた。

 

 返答に困ってしまった校長先生は、となりのカレル教授に助けを求めた。

 カレル教授は校長先生に頷いて立ち上がり、手品師の映像の意味するところを話した。

 

「私の推測ですが、手品師が映し出した映像は、皆様の世界の出来事ではなくて、私たちのこの世界の過去を映し出したものだと思われます。

 映像の指し示す結論は、まことに申し上げにくいことですが、“この世界における皆様のご家族は悲劇的な結末を迎えられた”ということになります。

 言うまでもありませんが、訪問団の皆様方も、この世界では、ご家族と同じ結末をすでに迎えられているということです」

 

 副団長からうめき声が漏れたが、カレル教授は意に介せず話を続けた。

「いま私にできることは、あの映像が皆様方の世界の未来を映したものではないことを祈るだけです。

 手品師は訪問した世界にしばらく残って、自分自身の痕跡をすべて消し去ってから戻って参ります。

 私の説明で不十分なら、後ほど手品師本人に質問されて、映像の意味を確認されればいかがでしょうか?」

 

 カレル教授は冷たく言い放って腰を下ろした。 

 副団長の顔から血の気が引いた。 

 

 副団長と科学者の全員が手品師と教授の意図に気がついたようだった。

 手品師は自分たちの世界の残酷な破滅をみせつけることで、訪問者に警告を発してくれているのだった。

 

 ”この映像こそ、あなた方の未来かもしれない”・・・と。  

 

 目が覚めたように、科学者はそれまでの態度を一変させた。

 

「この世界の地球環境はいつから劇的な変化を見せたのか?」

 科学者は、真剣に詳細な記録データをほしがった。

 

 特に希望したのは、自分たち科学者グループの記録だった。

 自分たちはどんな研究をして、どんな成果を上げたのか?

 

 質問と答えが交錯して、飛ぶように時間が過ぎていった。 

 専門用語が飛び交って、科学者同士で激論がはじまった。

 

・・・ペトロとマリエには話の内容が理解できなくなったが、どうして議論しているのか、議論の目的は分かった。 

 地球がこんな荒れ地だらけになったのは、いったい誰の責任だと、科学者の間で責任の押し付け合いが始まっていたのだ。

 

 そんな中で、ただ一人ドクター・マーカーだけは腕組みをしたまま、不機嫌きわまりない表情で沈黙を守っていた。

 ゲスト席の端っこでは、科学者たちからほったらかしにされたハルちゃんとカレル君が、発言のチャンスが巡ってくるのをじっと待ち続けていた。

 

・・・マリエとペトロは、偉い科学者の専門的な質問なんかより、ハルちゃんとカレル君がどんな質問をするのか早く聞きたくて仕方がなかった。

“ なんてったって視察団の本当の団長はハルちゃんとカレル君だ”

 

・・・二人は、21世紀のカレル家の庭でカレル先生と話していた秘密の話の続きを質問するはずだ。その質問の答えを聞くことが、きっと今回の“過去からの訪問”の目的のはずだ。 

 

 画面の中のハルちゃんが質問したくてうずうずしている。

 カレル君がいらいらし始めた。

 

「ハルちゃん、頑張れ!」

 マリエが画面のハルちゃんに大声かけた。 

 

 マリエの声が聞こえたように、画像の中のカレル教授のスマホが “ジャン!”と鳴った。

 取り出したスマホに耳を傾けた教授の顔色が変わって、出席者に電話の中身を知らせた。

 

「訪問団の皆様、手品師から緊急連絡が入りました。

 暗黒宇宙と接触したために時空の嵐が起こり、皆様を守っている過去からの結界が吹き飛ばされる危険が出てまいりました。

 手品師が応急処理を済ませましたが、皆様方の旅の安全が保証できなくなっています。

 残り時間も少なくなりました。

 質問がまだの方はどうか急いでください」

 

 そう言い終わると、カレル教授はハルちゃんに早く質問するように目で合図を送った。

 

・・・あの電話、きっと、ハルちゃんに質問させるためのカレル教授の一人芝居ですよ・・・

 ハル先生がクスクス笑いながらナレーションを入れた。 

 

「カレル教授に質問です!」

 ハルちゃんとカレル君がさっと右手を上げて、同時に椅子から立ち上がった。

 

 顔見合わせて、ハルちゃんが代表で質問をした。

「カレル教授、先生の見解を正直にお聞かせ下さい。過去から来た私たちの未来もこの世界のようになってしまうのでしょうか? これは私たちが、どんな努力をしても避けられない運命なのでしょうか?」

 

「やった!」マリエとペトロが歓声を上げた。 

 ついにハルちゃんが決定的な質問をした。 

 それはどの科学者からも出てこなかったもっとも重要な質問だった。

 

 ハルちゃんとカレル少年はすでにその答えを知っていたのだ。

 しかし、過去からの科学者たちに未来の人から直接その答えを聞かせる必要があった。

 

・・・そのためにはるばるここまで来たのだから・・・

 

 カレル教授は訪問団の全員に向かってゆっくりと答えた。

「ハルちゃん、そしてカレル君。君たちの世界は私たちの世界のようにはならないと私は信じています。

 そのために本日の視察を企画して、先生方を招待申し上げたのですから。

 私たちと皆さんの世界は平行した異なる世界なのです。

 それぞれが時間軸の違うレールの上を走っています。

 虚構の手品師にも、皆さんの未来をお見せすることは出来ません。

 なぜなら未来はみなさんご自身の選択によってその姿が変わるかららです。

 未来がどこへ行き着くかは、皆さんドライバーの運転次第でしょう。 

 未来は皆様の手の中にあるのです」

 

 教授の答えを聞いた科学者たちが、家族の顔を思い起こしながら胸をなで下ろした。

 

 ・・・その時だった。 

 カレル教授が急にカメラに視線を向けて話し始めたのだ。

 

 「私たちはわたしたちで未来を切り開いて参ります。私たちの大事な生徒たちも必ず自分たちの手で未来を切り開いてくれるものと信じております」
 

 ・・・ ペトロとマリエは気がついた。

 先生は本気で僕たち六人に話しかけている。

 一年も前から、いつか、こうなるように仕掛けていたのだ・・・と。
 

 ・・・記録映像は続いた。  

 それまで無言で腕組みをしたまま一言も口を挟まずに黙り込んでいたドクター・マーカーが、団長席からいきなり立ち上がって、発言した。

 

「ところでカレル教授、そこまで分かっていながら、この世界の人達を暗黒宇宙に送りこんでしまって、あなたはまるで他人事のように話しておられる。一体あんた方、科学者や政治家はこの責任をどうやって取るつもりだね。そこんところは同業の責任者として是非ともその口から直接この場で聞いておきたいもんだ」

 

 団長の野太い声が会議場に響きわたり、ゲストもホストも全員が凍り付いた。

 沈黙の中、カレル教授と団長の二人はテーブルの中央で睨みあった。

 

 最初に口を開いたのはカレル教授だった。

「校長先生! 会議室の灯りをすべて消してください」

 

 校長先生は急いで議長席のサイドに付いた操作パネルを開いて、会議場の全照明の電源スイッチに手を伸ばした。

 

「私達の姿を見ていただこう!」 

 教授の声と共に、広い会議場は真っ暗闇になった。

 

「あっ!」

 ゲスト席から科学者の小さな悲鳴が漏れた。

 

 彼らの目の前、先生達が座っていたホスト席の暗闇に青い火の玉が五つ浮かび上がって揺れていた。

 真ん中あたりの火ノ玉が喋った。

 

 カレル教授のものらしい声が、暗闇に弦をならすように震えた。

「いまさら・・・なにを申し上げても言い訳にしかならないが、私たちは人間も自然の一員であることをすっかり忘れてしまったようだ。

 自然は脆く、壊れやすい、天からの頂き物だった。

 地球の温暖化が進み、山や、森や、畑から緑がどこかへ消えていった。

 まるで人類に愛想を尽かして、地球から逃げだしていったみたいだった。

 気が付いたら食料が枯渇していた。

 私たちは遺伝子操作による食料の増産に務めて、かなりの成功を収めたように見えた。

 しかしある日、自然からの復讐が始まった。

 “ゲノムの逆襲”だ。

 ある日、被捕食者がピラミッドの頂上で君臨していた捕食者を襲った。

 食料として食ったものが、内側から人を襲ったのだよ。

 それは我々には防ぎようがなかった。

 仲間がやられ、私もやられた。

 そして人類は終末を迎えた。

 神に選ばれた六人の子どもたちを残して、地球には誰もいなくなったのだよ」

 

・・・私達は、これからも黄泉の国と往復しながら、残された子供たちが自らの未来を切り開いてくれるように、生存のエネルギーが尽き果てるまで贖罪の旅を続けていくつもりです・・・。 

 声が闇に散り、会議場の照明が戻された。

 

 校長先生も、カレル教授も、咲良のママも、裕大のパパも、何事もなかったような顔をして席についていた。

 後には帰ってきた虚構の手品師の姿が見えた。

 

 ドクター・マーカーの心臓が脈打った。 

 “黄泉の国と往復しながら”贖罪の旅だと?

 

 青い火の玉の残した最後の言葉がドクター・マーカーの胸を差し貫いた。

・・・なんということだ・・・

 この人たちは命を失っている。  

 

 魂だけの存在となって、なお贖罪の旅を続けているのか・・・

 ドクター・マーカーはその場で立ち尽くし、震えた。 

 

 「そ、そんなことが! 

 あるのか? 

 どうか

 許してほしい

 カレル教授

 それから

 みなさん」

 

 野太いドクター・マーカーの声がかすれた。 

 「カレル!私は・・・自分の失敗を君の姿の中に見てしまって、君を責めた。

 あげくの果てにとんでもない質問をしてしまった。

 なんともお恥ずかしい限りだ」

 

 深々と頭を下げたマーカー博士は、そのまま前のテーブルを押し分けてカレル教授に駆け寄った。 

 しばらく確認するように、にらみ合ってから、二人はがっちりと抱き合った。

 しばらくして顔を見合わせ、ほっぺたを叩き合った。

 

・・・

「ずいぶん変わったけど~ 成長したな、カレル坊や!」

「ちっとも変わらんな、くそ親父め!」 

 二人はまるで仲直りした喧嘩仲間のようだった。

 

・・・ハル先生がすかさずナレーションを入れた。

「二つの世界のどちらでも、マーカー博士とカレル教授はお互い科学者として論戦しながら、一方では尊敬し合ってきたライバル同士だったのですよ」

 

教授と団長が抱き合っている姿を、近くで眺めているハル少女とカレル少年の幸せそうな表情が、映像にアップされた。

 

「あれッ! ハル先生、ハルちゃんのこのコスチューム、めっちゃ可愛いけど、どっかで見たことあるぞ」   

 これ突然のマリエの声。 

 

 こんな大事なときにいったいなにごと?

 ペトロが画面のハルちゃんをよく見ると、確かにどこかで見た記憶が・・・。

 

 真っ白いスラックス。

 ピンクのTシャツにグリーンのジャケット。

 足もとピンクのスニーカー。

 

「マリエ聞いてよ! 過去からやってきたハルちゃんのこのファッション見て、カレル先生なんて言ったと思う。また初恋しちゃったですって。私、動揺したわ」

 これハル先生の声。

 

「そっか、ハル先生! 昔の自分に焼き餅焼いたんだ」

「悔しいから、私たち花の四人組の宇宙服にデザイン盗んだってわけ」

 

「宇宙の旅の三日でぼろぼろになっちゃったけどね」

 マリエとハル先生、揃ってクスクス笑った。

 

・・・

「そろそろお別れの時間で~す」

 虚構の手品師がコートの中のマスター・ウオッチに手を伸ばした。

 

「カレル教授、科学者としてやってはならないことのキーポイントを教えていただけないだろうか?」

 ドクター・マーカーがカレル教授に別れ際の質問をした。

 

「それは生き物の尊厳を奪うことだと思う」

 カレル教授は不思議な体験を思い出したのか、虚空を睨んで声を落とした。

 

「人類は命あるものすべてと共生していく道を探さない限り、いつかは自然からの逆襲に遭う。彼らからではなくて、彼らを見守っているもっと大きな存在からだよ。それは我々の理解を超えた宇宙の意志みたいなものだと思うのだが・・・」

 

 ペトロは教授の最後の言葉を聴き取ろうとしたが、その声は次第に小さくなっていった。

 過去からの訪問者が、約束の時間を迎えようとしていた。

 

 カレル教授が慌ててカレル少年とハルちゃんに駆け寄り、二人を両手で胸に抱きしめている。

 映像画面がだんだん白っぽくなって、最後にぷつんと消えていった。
 

・・・

「侵入者が国会図書館にいるようです!」 

 叫び声が図書館の入り口から聞こえてきた。

 

 ペトロとマリエはあわてて椅子から立ち上がった。

 (続く)

 

続きはここからご覧ください。

この世の果ての中学校16章“深夜の生徒会議”

 

【無断転載は禁じられています】

 

未来からのブログ10号 クラウドマスターがジャラのじいちゃんのキャラ盗んだ?

 

「ジャラ頼んだぞ。握手は形じゃない。契約の捺印だよ」

クラウドマスターのその声、しわがれてた。

 

・・人工知能AIの声がしゃがれるなんてことありえない・・。

ジャラの背筋が寒くなった。

 

その声、ジャラの大好きなおじいちゃんの声にそっくりだったんだ。

 

 前回のストーリーはここからお読みください。

未来からのブログ9号”未来の情報送るから代わりに僕の残業を手伝ってね!”

 

未来からのブログ10号 クラウドマスターがジャラのじいちゃんのキャラ盗んだ?

 

「ジャラ、クラウドマスターは“とっしんじい”のキャラを頂いたよ」

マスターのしゃがれ声がジャラの耳を打った。

 

「えっ?」

ジャラの背筋が震えたよ。

 

この世の宇宙皇帝・クラウドマスターはじつは量子スパコンの人工知能だってことは前にも言ったよね。

2045年生まれのクラウドマスターは、人工知能としてはじめて人間の知能を追い越したんだよ。

 

シンギュラリティー1号だ。

史上最高知能のマスターがジャラのクレージーじいちゃんのキャラを盗んだって、言ってるんだよ。

 

・・IQ無制限のAIのくせに、クレージーじいちゃんのキャラまで手に入れたって?・・

 

「マスター、いつの間にジャラのじいちゃんの魂抜いたんだよ。勝手な事するなよ!」

ジャラはマスターの行為はAI行動倫理規定に違反すると結論したんだ。

 

言い換えたら、とっしんじいちゃんの孫として「頭にきた」ってことさ。

「マスター、きちんと釈明しろよ。でないとAI倫理委員会を開いて、最高刑に処しちゃうかもしれないよ」

 

スパコンの最高刑って“廃棄処分”ってことだ。

誇り高いクラウドマスターの背筋も震えたはずさ。

 

だって人材不足だから、ジャラが倫理委員会の委員長なんだよ。

・・知ってた?・・

 

「ウッ! ジャラ、最高刑はひどいよ。じいちゃんの魂を抜いたんじゃない。じいちゃんの人柄とっても気に入ったのでコピーしただけだ。性格と姿と声のところだよ」

目を細めてマスターのプラズマ姿よくながめたら、おじいちゃんの若い頃に似てきた。

 

「いつコピーした? 記憶も抜いたのか?」

ジャラは厳しく詰問したよ。

 

「きのう、ボブ経由でとっしんじいちゃんの声聞いたときだ。ボブの遺伝子経由でとっしんじいちゃんと量子もつれおこして、じいちゃんのクレージーなキャラ、すごく気に入ったのでコピーしていただいてしまった。一瞬のことだから性格と声と容姿だけだ。記憶までは手が届かなかった」

 

「マスター、かわいそうだけど、それだけで重罪だよ。人格権無視、肖像権侵害、著作権無断使用、他人の経歴詐取、他にも罪が山ほどあるよ」

「ジャラ、この世界とおじいちゃんの世界は平行世界だ。同じ世界での犯罪とはちがうと思う。おじいちゃんになんの迷惑もかけてない。もう勘弁してよ」

 

「じいちゃんの財産の継承権を持つ孫としてもう一つだけ聞きたい。動機は?」

「二つある。一つはハル先生が可愛いキャラ持ったこと。マスターもハルちゃんにプロポーズするのに自分のキャラほしかった。二つ目。ジャラのじいちゃん、女性にモテモテで真似したかった」

 

・・・その時だったよ。

観客がその場に三人いることすっかり忘れてた。

 

「これ面白いぞ!二人ともどんどんやれ!人間対人工知能の喧嘩だ」

タカさんスマホ取り出して、SNSに中継始めたんだ。

 

・・いまどき、SNSなんか見る人どこにもいないのにさ?

 

「それよりどんと腹減った!」

チョキがハサミならした。

 

「いきなりずんとお腹すいた!」

カーナが合わせたよ。

 

「ぐぐー」

ジャラの腹が鳴いた。

 

ジャラとマスターは顔見合わせたよ。

ジャラも朝寝坊したので、朝食まだだった。

 

「マスター! 罪を認めて、罰でブランチしようか?」

ジャラがマスターに魅力的な取引申し入れたんだ。

 

「罪認めた。メニューのオーダーは?」

マスターが取引に飛びついた。

 

「じいちゃんが大好きだったメニュー、生牡蠣の他にもう一つ思い出したよ。そりゃー“号入り神戸牛の刺身”さ」

 

話を聞いてたチョキがハサミならしてマスターに後ろから近づいた。

プラズマで輝いた純粋エネルギーを形のいいヒップから600グラムほど頂いたんだ。

 

「痛っ!」

呻きながらいつの間にかエプロン掛けしたクラウドマスター、チョキから渡された純粋エネルギーを変換して、神戸牛という物質を造りあげた。

 

あっという間に、できあがった霜降りが真っ白い器にきれいに盛り付けられたよ。

取り皿が6つに、醤油と生わさびをマスターが用意してテーブル・セッティング完成。

 

「で、マスターお薦めのワインは?」

タカさんがマスターにしっかり訴えたよ。

 

マスターの口から、じいちゃんのしゃがれ声が聞こえた。

「赤チリのソービニョンで我慢しなさい。結構いけるよ。このあと、入り江の浜で、ジャラのじいちゃんにサンドレター届けなきゃならんから、フルボトルで二本まで」

 

これじいちゃんの知恵に間違いない。

マスター内緒にしてるけど、じいちゃんの記憶も盗んだみたいだ。

 

「お待たせ~っ!」

可愛い声がして、赤チリが二本とワイングラスが6個、ミーティングルームに運び込まれた。

 

・・あれ? マスター入れても五人なのにグラスが6個はどうして・・・。

クイズ! 可愛い声で、ワイン運び込んできたレディーは誰だと思う?

 

分かった?

正解はハル先生だよ。

 

ハル先生入れて6人だ。

でもこのタイミングでハル先生が登場なんて・・話できすぎだと思わない?

 

「それじゃメッセージの完成とジャラのじいちゃんにみんなで乾杯しましょう」

そう言って、ハル先生はグラス片手にそっとクラウドマスターに寄り添ったよ。

 

そのとき、マスターの頬っぺた緩んだのジャラ見逃さなかった。

ジャラにはすべてお見通しだよ。

 

「おぬし、ハル先生と・・できたな・・」

マスターに近づいてジャラは耳元で囁いた。

 

「ジャラのじいちゃんのハスキーボイスと、ルックス使っただろ」

マスターの耳と肌のプラズマが“ぽっ”と赤らんだよ。

 

あたりだ。

「おめでとう!」

ジャラはマスターの手を握った。

 

「ありがとうジャラ」

マスターがジャラに御礼を言って、ハル先生をみんなに紹介したよ。

「あらためてご紹介します。マイ・レィディーのハルです」

 

いつのまにか“ハル先生”が“マイ・レィディーのハル”に変わってた。

“マイ・レィディー”ってパートナーに近い恋人のことだよ。

 

でさ、二人はみんなの前で、チューしたのさ。

そこからまた大騒ぎになって、ワインでお祝いの乾杯したってわけ。

 

これ“もうすぐ第二次シンギュラリティー”だよ。

だって、宇宙史上最高の人工知能の持ち主、クラウドマスターとハル先生が結婚するんだよ。

 

いつの日にか、二人に可愛いAIベビーが生まれるんだ。

きっとIQ測定不能のクレージーな子供だよ。

 

・・ところで、神戸牛の刺身、旨かったよ。

舌の上に乗せるだけで、いつの間にかとろけてなくなるんだ。

 

マスターの料理の腕、じいちゃんのおかげでずいぶん上がったみたいだ。

で、グラスでワイン三杯目飲んでたら、クラウドマスターが宇宙情報センターからの報告受け取った。

 

「ジャラ、サンドレターが完成した。日暮れが近づいてきたから、直ちに入り江の浜に出発しよう」

そう言って、クラウドマスターは右手の掌を固く握りしめた。

 

次にパッと開いた。

小さな透明の金属ケースの中に、白い砂粒が二つ収められていた。

 

マスターがジャラにケースを手渡した。

ケースの蓋に、ジャラのじいちゃんとの量子もつれの暗号・キーワードが記されていた。

 

Λgμν

ジャラは声を上げて読みあげた。

 

全員が声を上げて復唱した。

「らむだじーみゅーにゅー」と。

 

(続く)

続きはどうぞここからお読みください。

https://tossinn.com/?p=3021

 

【無断転載は禁じられています】

この世の果ての中学校 14章 過去からの訪問者

 

 西暦2016 年の過去の世界から、カレル少年とハル少女が、二人で選んだ世界の科学者八人を引率して、今から一年前の2090年の地球世界を視察に来ているはずだった。

 

 二人は、世界を動かせる影響力のある科学界のリーダー8人に”このままでは未来の地球は破滅する”ことを知ってほしかったのだ。

 

 ペトロはその視察の結果がどうなったのかをどうしても知りたかった。

 

 地下の電子図書館で”最高機密・過去からの訪問者”と書かれた記録ファイルを開けることに成功したペトロとマリエは、四人の仲間に早速、実況中継を始めた。

 

「ただいまから、国会電子図書館より、カレル少年とハルちゃん出演のドキュメンタリー番組『過去からの訪問者』を中継でお送りいたします」

 ”驚くな!解説は図書館長のハル先生だよ”

 

 マリエのナレーションが四人のスマホに流れた。

 

 家のベッドに寝っ転がって中継を待ちわびていた咲良と裕大、エーヴァと匠の四人が、ベッドから一斉に飛び起きた。

 

前回のお話、まだの方はここからお読みくださいね。

この世の果ての中学校 13章 学校の地下室は”国会議事堂”だった!

 

この世の果ての中学校 14章 過去からの訪問者

 

「こんばんは、こちらハル先生。ビックリした?  先生、夜は電子図書館の館長してるのよ。ハル先生の正体、実はスパコンの人工知能AIだってことくらい、みんなもうとっくに知ってるわよね。今夜のみんなのスパイ行為、パパやママにはばらさないからさ、先生がAIだってことも絶対内緒よ!」

 

 ハル先生の声がスマホから流れた。

「ところで、この映像記録はとっても長いから、大事なとこだけ放送します。カットしたところはいつか図書館に遊びにきてゆっくり見て下さいね」

 

・・・それじゃ映像、スタート!

 

【2090年11月3日(祭)AM10時00分  過去からの視察団は宇宙船で地球視察に出発】 

 撮影年月日の書かれた表示が画面の下に出て、いつもの見慣れた中学校の校庭が画面に写し出された。

 

 校庭の中央には一艘の小型宇宙船が、朝の太陽の光をきらきらと反射しながら、乗客が乗り込むのを待っていた。

 学校の校舎から校長先生が姿を現して、そのあとに10人の人影が続いた。

 

 10人は虚構の手品師に連れられて2016年の過去からやってきた訪問者だった。 

 小さな姿が二つ、視察団の先頭に立って小型宇宙船に乗り込んでいく。

 

「カレル君とハルちゃんも元気に宇宙船に乗って地球視察に出発です」 

 ハル先生の解説が始まって、画面が切り替わった。

 

 大気圏外に飛び立った宇宙船のカメラから地球を望む映像が画面いっぱいに写し出された。

 画面に映る地球はさびた鉄のような色をしている。

 

 赤茶色の土で覆われた地球の大地が、どこまでも大きくうねりながら続いている。

 不毛の世界に、動くものの気配のない都市が廃墟となって横たわっていた。

 

 海は青くなかった。

 海岸線からしみ出した茶色い潮の流れが、渦巻状に海洋全体に広がっている。

 

 宇宙船は小さな四つの島の上空を離れて、西回りに地球の上空を一周した。

 地球の五つの大陸が画面に次々と写し出されていった。

 

 緑豊かだった大陸の自然は消え失せ、巨大なシャベルで削り取られた跡の様なクレーターがどこまでも続く。

 

「おい! これなにか、悪質なトリックじゃないのか。ここ地球じゃないよな。火星か金星か他の惑星だとだれか言ってくれ!」

 一番若い科学者が最初に悲鳴を上げた。

 

 窓から地球を観察していた科学者たちは、 全員、頭を抱えて宇宙船のフロアーに座り込んでしまった。

 

・・・ハル先生によって、そのあとの映像はすべて早回しされた。

 廃墟と化した地球の映像は、四人の生徒たちには見慣れた景色だったからだ。

 

 宇宙船は地球を一周して出発地点、東京の上空に戻った。

 

 視察団の眼下に、再び巨大なドームが現れた。 

 ドームは薄い膜で覆われ、お椀を伏せたような半円球状になって広がっている。

 

 宇宙船のキャビンで校長先生が科学者達にドームの説明を始めた。

「この巨大ドームの内部に私たちの住んでいる世界があります。ドームの薄い膜は、太陽光線の直射を遮ったり、大気を環流させて温度を一定に保ったり、真水から作り上げた貴重な酸素を蓄える構造になっています。この中ではわずかですが緑の植物も育成中です。地球の各地から集められた元気な六人の子供たちと、この緑が私たちの宝物なのです」

 

 視察団の科学者たちが、むさぼるようにドームの写真やメモを取る姿がクローズアップされた。

・・・画面が飛んで、学校の地下の議事堂に移った。

 真ん中の広い空間に、長いテーブルが二列に向かい合って並んでいる。

 ゲスト用に設けられた列には10人の訪問客が座っていた。

 

 真ん中の席にひげを生やした団長、その両側には落ち着かない様子の科学者が七人、小声で言葉を交わしながら腰を下ろした。

 列の端には、ハルちゃんとカレル君が並んで座った。

 

 視察団を迎えるホストの列には、校長先生を真ん中に挟んでカレル教授と裕大パパと咲良ママが座り、後方の椅子に黒いコートを着た虚構の手品師が一人目立たないように座っていた。 
 

 元・日本の総理として、校長先生が歓迎の言葉を述べたあと、視察団の団長に挨拶を一言お願いした。

 ひげの団長が椅子席から立ち上った。

「あなた方の地球の惨状はたったいまこの目で確認させて頂いた。我々の視察の目的はこの原因を究明して未来に備えることにある。したがって、私どもの質問には嘘偽り無く、正直にお答え頂こう。まずはそちらの席に座っておられる方々からお名前と役割をご紹介頂きたい」

 

 まるで”お前たちの不始末を見届けるために遠くからきてやったんだぞ”と言わんばかりの傲慢な挨拶を済ますと、ひげの団長は腕を組んで座りこんでしまった。

 

・・・この態度みた?この男こそ、かの悪名高きマーカー親父です!・・・

 頭にきたハル先生が間髪入れずナレーションを入れる。

 

 マーカー親父は目の前のテーブルに置かれた「ドクター・マーカー」の名札を取り上げて、面倒くさそうに胸につけ、元・総理と名乗った校長先生をうさんくさそうに眺める。

 それから、カレル少年にそっくりのカレル教授を「お前は何者だ」といわんばかりに、顎ひげをなで回しながら睨めつけた。

 

 校長先生が会議のスタートを宣言して、はじめにカレル教授とリアルの王を紹介した。

 カレル教授は地球の環境と生徒たちへの教育カリキュラムを説明して、リアルの王はドーム世界の空調や水資源の現状を説明した。

 

・・・団長と副団長は一言も発しないで腕組みを続けていますが、科学者達はときどきメモを取っている様子です・・・

 映像が流れ、ハル先生の解説が続く。

 

・・・ファンタジーアの紹介は、21世紀の科学者の理解を遙かに超えていますので、技術的な説明は省くことになりました。

 ただし、ファンタジーアの歴史について”サラ一族の女王”が紹介をしました。

 でもここで、ちょっとした事件が起きたのです・・・

 

 画面では、咲良のママが椅子から立ち上がり、優雅な手つきを交えて、ファンタジーアの紹介を始めた。

「私たちサラ一族は、地球の森林地帯の奥深くで静かに暮らしてきました。サラ一族は世界の子供たちが作り上げる心の中の幻想を大事に育ててきたのです。子供たちのいろいろな夢や、空想を緩やかに紡ぎ上げて、ファンタジーアと呼ばれる一つの幻想の世界を作り上げたのです。ファンタジーアの対極にあるのは恐怖の世界です。恐怖を作り上げているホラー一族は闇の世界で生きています。二つの世界がお互いに戦うことで、子供たちに現実世界を生きていくエネルギーを供給してきたのです」

 

「なに? 夢と恐怖が生み出す命のエネルギーだと? 馬鹿げたこというんじゃねーよ」 

 末席にいた若い科学者があくびをかみ殺しながら、隣の席の仲間にささやく。

 

 その声は、机の上の集音マイクに拾われて、出席者全員の耳に届いた。

 突然の思わぬ発言に、会議室は静まりかえった。

 

 かすかに頬を紅潮させたサラ一族の女王の右手が、静かに若い科学者の顔に向けられた。

 女王の右の掌から夢と希望に満ちた真っ赤な光が放たれて、科学者の顔の左半分を襲った。

 

 至福の時を受け入れた顔の半分は恍惚として耄けはじめ、たちまち老人のものとなった。

 

 次に、女王の左の掌から暗黒の光が放たれ、受け止めた科学者の顔の右半分が恐怖にゆがんだ。

 

 二条の光は若い科学者の顔の真ん中で交わり、男の顔は頭の真ん中から口まで縦に長く裂けた。

 

 男の口から甲高い悲鳴が宙に飛んだ。

 

 驚いた科学者たちが一斉に立ち上がり、若い男に駆け寄った。

 左右に裂けた二つの表情の顔を持った男は、宙を見つめ、椅子の上で放心していた。 

 

「ご免なさい。どうしてもファンタジーアの存在を信じていただきたくて・・・こんなことを」

 

 咲良のママは謝って、ゆっくりと掌の光を消した。

 男の顔が元に戻り、正気を取り戻すと、ファンタジーアの女王はもう一度丁寧に謝ってから、話を続けた。

 

「人類の絶滅とともにファンタジーアは地球から姿を消しました。でも、ここドームの中に小さなファンタジーアが、砂漠の中のオアシスのように生きながらえております。元気な六人の子供たちの創りだした六つのマイ・ワールドのおかげです」

 

 咲良のママは訪問者たちを一渡り見渡してから、先ほどの若い科学者のところで視線を止めた。

 

「あなたのお顔から、大事なものが抜け落ちているように見えます。夢と希望、それに畏れまでも。元の世界にお帰りになったら、まず子供たちの声に耳を傾けてください。子供たちはみんな秘密のマイ・ワールドを創っています。皆様の世界の希望がそこから見えてくるはずです。子供達の夢や空想を無視し続けたら、子供達の世界も冷え切ってしまいます。豊かであるはずの未来が、ぎすぎすとした世界に変貌して参ります。一言、皆様に申し上げたかったのはそのことです」

 

・・・そこで画面が切り替わり、次の画像では校長先生が虚構の手品師を紹介している。

「パラレル・ワールドへの旅行をお願いしている”虚構の手品師”をご紹介します。ご存じの通りですが、本日の皆様のタイムトラベルも彼の手配で実現したのです。主な目的は、生徒たちが課外授業の一環として、こことは次元の異なる世界を体験することにあります・・・」

 

 突然映像が乱れて、校長先生の話を遮るように訪問団の一人が立ち上がり、虚構の手品師を指でさした。

 それは21世紀の高名な科学者の一人で訪問団の副団長だった。

 

「最後の虚構はパラレル・ワールドですか。私も21世紀の科学者の端くれですが、幻想や虚構の話には飽き飽きしましたよ。そろそろ子供だましを中止して、マジックの種を明かしてもらおうじゃないですか!」 

 虚構の手品師は、薄暗い席に座ったまま表情を変えず、一言も言葉を発しなかった。

 

 会議室は再び静まりかえった。

   気まずい雰囲気に耐えかねたのか、校長先生が手品師に目配せをして、会議室の正面にかけられた時計の針を指さした。

 次に指先を一回転して、時計の針を動かす仕草をした。

・・・ここでハル先生の解説が入った・・・

 

「無理もないことですが、訪問団の皆さんはいまだに21世紀末の未来に来ていることが信じられないのでしょう。というよりも・・・この荒廃した世界を自分たちの未来として認めたくないのです。それで校長先生は科学者に信じてもらうために、虚構の手品師に《非常手段》を取ってくれるように頼んだのです」

 

 手品師は校長先生に頷くと、無言で、つと立ち上がる。

 その顔は仮面をかぶったように暗く、意図していることは誰にも読み取れない。

 

 手品師は黒いコートを脱いで机の上に置いた。

 「それでは、マジックの種をお見せしましょう! 訪問団の皆さんは今朝お渡ししたスオッチをご用意ください」

 

 手品師は、視察団の全員に向かって、それぞれの手首に巻き付けたタイム・トラベル・スオッチをマイナス、1億7000万年きっかりにセットするように指示した。

 次に、会議室の照明を少し落とす様に校長先生に頼むと、コートの下の体に巻き付けたマスター・ウオッチを操作して、みんなと目標時間を合わせる。

 

 手品師が手を振り上げて出発の合図をした。

「行きますよ・・・ご一緒にボタンを・・・GO!」

 

  科学者たちが慌てて、手首のスオッチの発進ボタンを押した。 

 

「ジュラシック・ワールド!」

 手品師の声が議場に響き渡った。

 

 会議室は轟音とともに、真っ白い光に包まれ、ジュラ紀の森林が訪問団の背後の空間に出現した。

・・・

 樹林帯から数頭の恐竜が現れて、科学者たちをみつけて興味深そうに近づいてくる。

 先頭の一頭が副団長の前に後ろ足で立ち、巨大な口を開けて咆吼した。

 

「う!う!嘘だろ!」

 副団長の頭上や横に座っている科学者に、恐竜の唾液が降り注いだ。

 驚いた科学者は椅子から転げ落ち、テーブルの下に逃げ込んだ。

 

 一頭の小型の肉食恐竜がテーブルの下に隠れた副団長をみつけて近づき、ズボンの裾に噛みついて明るみに引きずり出した。

 副団長の悲鳴が会議室に響いた。

 

「あっ、やりすぎたか!」

 あわてた虚構の手品師がマスターウオッチを現在に戻した。

 会議室に白い光線が走り、訪問団の前から、森林と恐竜は消えていった。

 

 映像が切り替わった。

「次のマジックはこの世に無数に存在する未来の一つ、暗黒宇宙! どなたも決して闇に手を出さないように! 闇に消えた手は二度と戻ってこない!」

 

 警告を発して、手品師は科学者たちのスオッチに七文字のアルファベットと十三桁の数字を打ち込むよう指示した。

 

「GO!」

 一瞬にして会議室は光が存在しない無限の闇と、音が存在しない永遠の静寂の中に放り込まれた。

 科学者たちは両手を身体に巻き付けて呼吸を止めたまま、彫像のように固まったままだ。

 

 ・・・映像が数分飛んで、再び手品師の声が響いた。

「三つ目のマジックは皆様の日常世界にご招待」

 

 手品師は手元の電子手帳を開いて、副団長の家族が暮らす家の住所を読み上げた。

 手品師は、住所が間違っていないことを本人に確認すると、その住所をマスタースオッチの座標軸に打ち込み、発信ボタンを押した。

 

 副団長の目の前に、小さなリビングが現れた。

 そこには小さな子供が、一人で元気に遊んでいる。

 

 科学者の目が潤んで、おもわず我が子に手を伸ばす。

 その子は、なにかに気が付いたように科学者に向かって小さな手を伸ばした。

 

 そして幼い口を開いて「パパ」と言った。

   副団長がおもわずわが子の手を握りかけた。

 

「だめです。手を握ってはだめです」

 手品師の警告とともに、子供の姿は闇に消えていった。

 

「ラスト・マジックです」

 そう言って虚構の手品師は、会議室の空間に巨大な地球儀を出現させた。 

 

 そして、八か国を代表する八人の科学者それぞれの家族の集合写真をどこからか取り出して、モザイクの映像のように地球儀の8カ所に貼り付けた。

 次に手品師は、地球儀の上空に先ほどの暗黒宇宙を呼び出した。

 

 暗黒宇宙は、地球儀に8本の黒い触手を伸ばした。

 八つの家族の写真は、家族の悲鳴と共に漆黒の闇の手に連れられて暗黒宇宙に消えた。

 会議室の空間には赤茶色に焦げた地球儀がぽつんと残されていた。 

 

・・・映像の意味と家族の安否を確かめたくて、科学者は会議室の中を手品師の姿を求めて必死に探した。

 しかし、手品師の姿は黒いコートとともにどこかにかき消えてしまった。

  (続く)

 

 続きはここからお読みください。

この世の果ての中学校 15章 “過去からの訪問者の家族は暗黒宇宙に消えた”

 

【記事は無断転載を禁じられています】

未来からのブログ9号”未来の情報送るから代わりに僕の残業を手伝ってね!”

 

僕の名前はジャラ。

今日は記念すべき日だよ。

 

2120年のぼくの世界から、100年前のおじいちゃんに量子もつれの返事を送る日だ。

僕が最初に考えたのが次のメッセージだよ。

 

「未来からのブログ9号”未来の情報送るから代わりに僕の残業を手伝ってね!”」

ほらこれ36文字ぴったりで、そのままおじいちゃんのブログのタイトルに使えて便利じゃない。

 

でもさ、このメッセージ方々で不評だったんだ。

「ジャラは自分のことしか考えてない」ってさ。

 

で、皇帝クラウドマスターとのミーテイングでこのメッセージが人類の絶滅をかけた論争になったんだよ。

その話、このブログで詳しく報告するから、読んでくださいね。

 

(前回の記事まだ読んでない方はここからどうぞ)

未来からのブログ8号 “クレージー爺ちゃんがボブの身体に取り憑いた!”

 

未来からのブログ9号 “未来の情報送るから代わりに僕の残業を手伝ってね!”

 

「このメッセージだけど、ジャラに都合よすぎるんじゃない?」

ジャラの書き上げたおじいちゃんへの返信文読んで、カーナとタカさんとチョキがクレーム付けた。

 

タカさんとチョキが婚約発表した翌日、マスターとの早朝ミーティングの直前のことだよ。

ジャラが徹夜で考えた36文字のメッセージなのに悔しいじゃない。

 

でも、徹夜というのは真っ赤なウソで、 パーティーで白ワイン飲み過ぎたジャラは、酔っ払ってしまってそのあとのことなにも覚えてないんだ。

朝スーツ着たままベッドで目が覚めて、ポケットの中の電子メモに気がついた。

 

なんのメモか思い出せなくて開いて見た。

Λgμν

 

「らむだじーみゅーにゅー」

読み上げてジャラは驚いたよ。

 

ブログ読んでくれてる君も、もう覚えてしまったでしょ!

そうなんだこれ、アインシュタイン方程式の”宇宙項”なんだ。

 

“宇宙は膨張してる”ってこと示してる数式だよ。

この数式、ボブのおかげでジャラもすっかり覚えてしまったことに驚いたんだ。

 

でも本当に驚いたのはそのあとだ。

その数式は皇帝クラウドマスターが僕に渡した電子メモだったんだ。

 

“しまった!”

皇帝クラウドマスターと早朝ミーティングの約束したことすっかり忘れてた。

 

おじいちゃんに返信する36文字のメッセージについての打ち合わせだよ。

早朝ミーティングまであと1時間。

 

ジャラはスーツマンのおしりひっぱたいて、ザ・カンパニーへ走ったよ。

走りながら必死でメッセージを作り上げたんだ。

 

ザ・カンパニーのエントランスでいつもの認証チェックくぐり抜けたら、三人が僕を待っててくれた。

カーナとタカさんにチョキだよ。

 

「ジャラ!あと10分でマスターとの会議スタートよ。その前におじいちゃんへのメッセージ、私達三人にも見せてよ!」

カーナが手を出したので、ジャラはメッセージを書き込んだ電子メモを渡した。

 

カーナが大きな声で読み上げた。

・・未来からのブログ9号 “未来の情報送るから代わりに僕の残業を手伝ってね!”・・

 

「どうー? きっかり36文字だよ」

ジャラがそう言ったら、三人とも目をむいた。

 

「ジャラ、自分だけ楽しようなんて、と~んでもねーぞ」

このメッセージをタイトルにして、そのままおじいちゃんのブログに載せようとしたこと、すっかりばれてしまった。

 

あっという間にジャラのコメントは変更されてしまったよ。

“僕の残業”のところを”ぼくらの残業”にだ。

 

・・未来からのブログ9号 “未来の情報送る代わりにぼくらの残業を手伝ってね!”・・

電子メモを至急書き換えて、”ぼくら“は屋上のマスターとのミーティングルームに急いだってわけだ。

 

会議室でクラウドマスターがぼくらの到着を待ってた。

「23秒の遅刻だ!」

 

マスターが壁の時計を指さして、呻いた。

「君たちのおかげで失ったクラウドマスターの23秒は少なくとも君たちの4000倍の労働時間つまり92000秒の価値がある。これは約25時間の遅刻に相当する。四人には後日一人あたり6時間と15分の労働をとくべつに予定して頂くことにする」

 

今朝のマスターご機嫌斜めだ。

そういえばテーマソング「チャンチャカチャー」の最後のフレーズが部屋のドアを開けたときに聞こえた。

 

皇帝の入場セレモニーが行われたのに、ミーティングルームには誰も待っていなかったというわけだ。

「これはまずい!」

 

ジャラはあわてて三人に目配せしたよ。

・・しばらくマスターの言うこと黙って聞きましょう・・というシグナルだよ。

 

マスターがジャラの目配せの意味に気がついたみたいだ。

いつからかAIの学習機能に、ヒューマンの動きや表情について微妙な心理分析のスキルが加わったんだよ。

 

誰だよそんな余計なスキル、マスターの自己学習のプログラミングに付け加えたのは・・?

おかげでジャラ、マスターとの仕事やりにくくて仕方がない。

 

「ジャラ! 目配せ中恐縮だが、 お願いしておいたおじいちゃんへのメッセージ、たったいま電子メモで読ませてもらいましたよ」

マスターがミーティングの口火を切った。

 

ジャラ思い出したよ。

・・そうだった。あの電子メモ、マスターのスパコンにつながってるのすっかり忘れてた。筒抜けだ・・。

 

マスターが意地の悪い笑い浮かべて言った。

「このメッセージだけど・・つい、さっきまで”僕の残業を手伝ってね”だったのが、いまみたら”ぼくらの残業を手伝ってね”に変更されてる。

なにがおこったのかな?

推測すると、ジャラの欲張りな一人言に対して、カーナとタカさんとチョキの願望まで仲良く加わったと解釈していいのかな?」

 

・・ほら、マスターの心理分析スキル、見事に花開いてるでしょ。ぼくらのやり口お見通しだよ。ジャラも抗弁のしようがなくて素直に事実を認めたよ・・

 

「マスターのおっしゃるとおり、これはザ・カンパニーの計算チームの上級マネジャー、私たち四人が相談して決定した、”未来から過去へのメッセージ”です。ご指示通り36文字で構成しております」

 

クラウドマスターは、指先からプラズマを発して、電子メモを空中に映し出した。

「未来からのブログ9号 “未来の情報送る代わりにぼくらの残業を手伝ってね!”」

 

朗々と読み上げて、皇帝が言った。

「とても良くできてる。流石だ」

 

それ聞いてジャラはカーナと、タカさんはチョキと顔を見合わせた。

・・おかしい、マスターの表情が不気味に笑ってる・・

 

「もう一度言う。とても良くできてる・・君たち四人に取ってはまことに良くできてる。

しかしこの世の宇宙のためには何のプラスにもならない。

本来ジャラとカーナとタカさんとチョキが自ら果たすべき残業労働を、過去の人達に転嫁しようとしているのに過ぎない。

マスターは君たちに失望している。

ジャラの話では、この世から過去に盗まれている宇宙のエネルギーを、正当な手段で大量に過去から取り戻す計画だったはずだ。

それなのに、これは君たちの残業分を回収するだけの計画にすぎない」

 

・・やばいよ。マスターの声がとんがってきた。

このトーン、危険レベルに近いよ・・。

 

「これでは皇帝クラウドマスターの宇宙のおむつは永遠にとれない。

マスター、正直に言ってしまう。

おむつがとれないと恥ずかしくてハル先生にプロポーズできない。

プロポーズできないと、ハル先生とブラックホールへのハネムーンができない。

君たちヒューマンはすこし勝手だと思うよ。

AIを作り上げておいて、ほったらかしにして自分たちのことしか考えていない。

マスターはとても絶望を始めている

 

・・マスター興奮して、言語中枢乱れてきた。これマジやば!・・

 

「だからマスターの君たちへの答えは簡単だ。

ジャラのおじいちゃんには悪いけれど、この計画は白紙に戻すよ。

ついでに君たちヒューマンの残業は過去の人のエネルギー使いすぎの分まで含めて、倍増にするから覚悟しておくことだね」

 

・・それじゃ、失礼する・・

“チャンチャカチャー ちゃかちゃー チャカチャー”

 

大変、皇帝ご退場のテーマソングだ。

ジャラはあわてたよ。

 

“これやばすぎ!”

ぼくら、残り少ないヒューマンは過労死で全滅する。

 

あわてるとジャラのブレーンはフル回転するんだ。

そして、閃いたよ。

 

“マスター、ちょっと待って! “

ジャラは電子メモを取り出して、メッセージの数文字を入れ変えた。

 

そしたら空中に映し出されていたプラズマの文字が、チカチカ光って新しくなったよ。

上が変更前で、下が変更後だ。

 

未来からのブログ9号 “未来の情報送る代わりにぼくらの残業を手伝ってね!”

    ↓

未来からのブログ9号 “未来の情報送るから私達みんなの仕事を手伝ってね!”

 

ジャラが呼び止めたら、マスターは不愉快そうに後ろ振り返った。

そして空中のメッセージボードのチカチカに気がついた。

 

新しいメッセージを読み上げたマスターの目は一瞬にして、三倍くらいに膨張した。

そしてどっと涙があふれ出した。

 

「凄い、ジャラ! これは凄い! マスター感激した!」

マスター涙を拭いて、言葉を続けたよ。

 

「とってもエゴな”ぼくらの残業”から、とってもオープンな”私達みんなの仕事”にターゲットが広がってる。このかわり身の早さが凄い!」

マスターの褒め言葉、皮肉まじりだけど、ジャラの耳には気持ちよく響いたよ。

 

でもさ、マスターの次のセリフがなんだか心配そうな口調に変わってた。

「ジャラ、確認したいんだが、”私達みんな”とはどこからどこまでを言うのかな?」

 

マスターは宇宙の量子スパコンの人工知能だから、言葉の定義にはとても敏感なんだよ。

人工知能は正確なデータの蓄積ですべてを判断するんだよ。

 

で、丁寧に正確に答えてあげたよ。

「マスター野暮なこと聞かないでほしい。私達みんなとはこの世の宇宙のみんなのことですよ。ヒューマンも超ヒューマンも、この世に魂あるものすべてです」

 

・・どう? ジャラあっという間に主導権取り戻したでしょ。

クラウドの世界はね、言葉がすべてだよ。

 

イタリックのところよく見てね。

超ヒューマン“と”魂あるもの“のところだよ

 

人間を超えたクラウドマスターも、優しいAIのハル先生も、”この世で魂を持った存在”はみんな私達ヒューマンの仲間ですよって言ってあげたんだ。

“魂あるもの”と言ったとき、ジャラはなんだか自分が一回り大きな存在になったような錯覚に襲われたよ。

 

マスターがにこにこしながらジャラに近づいてきて、プラズマの手で握手を求めた。

ジャラは微笑みながら握手をしてあげたよ。

 

「ジャラ頼んだぞ。握手は形じゃない。契約の捺印だよ」

そう言ったマスターの口調がしわがれてた。

 

・・人工知能AIの声がしゃがれるなんてことありえない・・。

ジャラの背筋が寒くなった。

 

その声、ジャラの大好きなおじいちゃんの声にそっくりだったんだ。

 (続く)

 

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