宇宙の果てまで飛んでけ~!加速しながら膨張している宇宙の果てとはどんなところ?

宇宙の果てのイメージ画像:COPILOTで生成

 

 

 

 

 

 

 

宇宙の果てまで飛んでけ~!

宇宙シリーズの今回は、“加速しながら膨張している宇宙の果て”とはどんなところか、ルポしていきます。

この宇宙は、目に見えない暗黒のエネルギー「ダークエネルギー」によって加速しながら膨張を続けているとされています。その結果、地球から遠い宇宙の果てでは、光より速い速度で宇宙が膨張していると考えられているのです。

光速より早いものは存在しないとアインシュタイン博士がいっていたのに、どうしたことでしょう? もしも、宇宙の果てまで飛んでいけたら、そこから見える世界はどのような景色でしょうか?

そもそも宇宙に果てなどあるのでしょうか?

まず始めに、宇宙の形や宇宙の果てまでの距離について調べてみました。

 

宇宙は半径465億光年の球体!宇宙の果てはその表面

参照:https://commons.wikimedia.org/wiki/User:Azcolvin429

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちの地球から観測可能な地点までの距離は465億光年といわれています。観測可能な地点とは、そこからの光が地球に届くことが原理的に可能な領域のことです。

それ以上の距離になると宇宙の膨張速度が光速を超えるので、光は地球に向かわないとされています。永久に観測することが不可能です。

宇宙が誕生した約138億年前、誕生して約38万年後に放たれた初期の光が465億光年の距離を進み続けて地球に届いたことが観測されています。この微弱な光は宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれています。

ところで、誕生から138億年かかったのなら138億光年の距離のはずなのに、465億光年とはおかしいと思いませんか? その理由は、宇宙が膨張しているからです。距離に比例して宇宙が膨張しているのでどんどん距離が増えて465光年の距離を旅したのです。

つまり、138億年前に宇宙背景放射を放った地点は、宇宙の加速膨張によって、現在の地球から465億光年離れた場所となったのです。

繰り返しになりますが、465億光年よりも遠いところからは光が地球に到着しないため観測することが不可能です。先が見えなくなるこの地点を、地球の地平線に例えて「宇宙の地平線」と呼んでいます。

ここを超えると、星や銀河は光速を超えて地球から遠ざかるので、「宇宙の地平線」の向こう側に「姿を消す」といわれています。

まとめますと、観測できる宇宙の姿は半径465億光年、直径930億光年の丸い球体と表現できるでしょう。宇宙の地平線とはこの球体の表面を指しています。

上の画像を見てください。これは宇宙の大きさを描いたイメージ画像です。観測可能な宇宙が白い楕円形で描かれています。中央の小さな青い丸は地球や天の川銀河がある「おとめ座超銀河団」を表しています。

楕円形の白いサークルから外側の宇宙は、地球に光が届かないので永久にみることができない世界です。このことから、地球から半径465億光年の球体の表面が宇宙の果てということができるでしょう。

ところで、「宇宙の果ては光速を超えて膨張している」とは、いったい何事でしょう!

アインシュタインは「光より速いものは存在しない」といったはずなのに、博士は間違っていたのでしょうか?

アインシュタイン博士もびっくり!宇宙は加速しながら膨張していた

アインシュタイン博士は、宇宙は星座の位置が少し変わることはあっても、宇宙全体は大きくは変化しない静的なものだと考えていました。

ところが博士が一般相対性理論の基本となる宇宙のモデル「アインシュタイン方程式」を作ったところ、「そのような宇宙は存在できない」という結論が出てしまったのです」

困った博士は方程式を修正して、後に「宇宙項」というものを方程式に加えました。これがあれば、宇宙が変化することなく永久に同じ姿を保てることになるのです。アインシュタインの静止宇宙と呼ばれています。

下の画像は「宇宙項」を付け加えたアインシュタインの方程式です。(筆者の落書きが余計ですがご容赦の程)

引用:光文社新書「宇宙のダークエネルギー」

 

 

 

 

 

これは時空間の構造(左辺)と、その中にある物質の状態(右辺)の関係を等式(=)で表現しています。この方程式には、宇宙項(Λラムダ)が加えられています。

宇宙が変化しないようにと加えた宇宙項ですが、その後、1924年にエドウィン・ハッブルによって膨張する宇宙が発見されて、世界に衝撃を与えました。

ハッブルは、ほとんどの銀河が天の川銀河から遠ざかる動きを観測しました。しかも、どの銀河から見ても、ほかの銀河は距離に比例した速度で遠ざかっていたのです。

つまり、宇宙全体が膨張しているという事実が明らかになりました。ハッブルは、銀河からの光の波長が空間が膨張するために引き伸ばされる「赤方偏移」という現象から、宇宙膨張によって遠ざかる銀河の速度を割り出しています。

ハッブルによって、銀河が遠ざかる速度は、その銀河までの距離に比例して早くなることが明らかにされました。これによると、宇宙は加速しながら膨張し、「宇宙の地平線」を超えると地球からみると光速を超えてしまい、永遠に見えなくなるのです。

宇宙の膨張を認めたアインシュタインは、宇宙項を一度撤回しています。宇宙項を「余分」と筆者が書いたのはその意味です。しかし決して余分ではなかったのです。

その後、宇宙項は加速膨張を引き起こす力「ダークエネルギー」を意味するものとして復活しています。宇宙項は正しかったので、復活させたのでした。

物理の世界では「方程式はそれを作り出した人より偉い!」といわれているそうですが、
これには、アインシュタイン博士もびっくりしたことでしょうね。

ところで、宇宙が膨張するとはどんなことなのでしょう。銀河や地球や人間も一緒に膨張するのでしょうか? 

・・・なんだか心配になって調べてみました。

宇宙が加速膨張すると銀河や地球や人間も膨張するのでしょうか?

膨張する宇宙:イメージ画像 AI生成

 

 

 

 

 

 

 

「宇宙が加速膨張する」とは、遠い銀河ほど、その距離に比例して速く遠ざかっていることを表現しています。宇宙空間に存在する謎のエネルギーによって引き起こされると考えられ、その正体は「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」と呼ばれました。

ダークエネルギーは、物体同士が引き合う「引力」に対して、銀河を遠くへ押しやる「斤力」を持ったエネルギーです。

そんな怪物が宇宙空間に存在しているのなら、人間の体内の空間や隙間にあれば体もプーツと膨らんでしまうのではないかと心配になります。

でも心配は不要でした。私たちの身体や物体は、引力や他の力によってまとまっているので、宇宙の膨張とは無関係に存在し続けます。膨張するのは空間そのものであり、空間にある物体はその中で変わりません。

でも、空間が膨張するのなら、空間を内部に持つ銀河は膨張するのではないでしょうか?

調べてみると、「宇宙の膨張」とは「宇宙の大規模構造が拡大する」という現象で、銀河では内部の重力が強く、それが銀河を一体としてまとめているので膨張はしないということでした。

ところで先述の疑問・・・「宇宙の果ては光速を超えて膨張している」とはいったい何事でしょうか? アインシュタインは、光より速いものは存在しないといったはずですが。

筆者のこんな疑問に対する答えをみつけました。

これは「物質自体が光速を超えて動いているのではなくて、空間そのものが膨張しているので、博士の理論と矛盾しない」そうです。

深淵ですね・・・。

それでは、ルポの本題です。今、宇宙の果てに飛んでいけば、いったいどんな景色が見えるのでしょうか?

いま宇宙の果てに飛んで行けば、宇宙の果ての向こう側には何が見える? 

宇宙の果てで何が見える? AI生成 イメージ画像
宇宙の果てで何が見える? AI生成画像

もしも、いま、宇宙の地平線に人類が飛んで行ったと仮定して、そこから見える世界はどんな景色でしょうか? 銀河や星が存在しない暗黒の空間が広がっているのでしょうか?

人類には永久にみることができない世界だから「人類にはわからない」が答えでしょうか? 

宇宙は膨張しているので、現在観測可能な領域にある銀河や、星たちがこれからも次々に宇宙の地平線の向こう側へその姿を消していくといわれています。

それなら、宇宙の果てに立てばすでに姿を消した銀河や星たちの姿が見られるかもしれませんね。

有力な学説においても、そこから見えるものは、地球の地平線を超えるのと同じ理屈で、地球から宇宙を見るのと同じような様々な銀河や星々を見ることになるとされています。

それでは、その奥にある全宇宙とはどんな構造をしてるのでしょうか? 全宇宙の深い最果てはどうなっているのでしょうか? 果たして全宇宙に最果てがあるのでしょうか?

いまのところ確たる答えは見つかりません。不明です。

SF的発想に近いものもありますが、宇宙についてのいくつかの考えや理論をご紹介します。

1.インフレーション宇宙論によると、宇宙の地平線を超えた遠い宇宙ではインフレーション(ビッグバン以前の瞬時における宇宙の種の超・超大爆発)が今も、永久に続いている。

2.宇宙は無限にあり私たちの宇宙はその一つにすぎない(マルチバース理論)。

3.この宇宙はほかの宇宙から生まれた。例えば、膨張から収縮に転じた宇宙が一つの点(種)となり、再び大爆発して別の宇宙に生まれ変わる。

4.自らの内部にあるブラックホールに飲み込まれた宇宙が、ブラックホールの特異点からホワイトホールを通って新しい宇宙が生まれる。

5.超ひも理論から考えると、この宇宙は10次元時空か11次元時空から3次元だけが膨張してできた宇宙「ブレーンワールド」だ。

何だかありそうな宇宙の構造として、「閉じた宇宙論」があります。宇宙は地球の表面と同じように、一周すれば元の地点に戻ってくる、という閉じた宇宙論です。

宇宙の最果てに立って向こうをながめ、長い、なが~い時を過ごして待っていたら、自分の顔がこちらを見ていたというシーンに出会えるかもしれませんよ。

自分の顔でなくて、自分のお尻だったりして(笑)

(おわり)

 

 

 

ウエブ望遠鏡が115億年前の銀河団に「宇宙の結び目」を発見! 大量の暗黒物質の存在も!

2022年10月20日、NASAはジェームス・ウエブ宇宙望遠鏡が捉えた宇宙初期の巨大銀河団の赤外線映像を公開しました。

公開されたのは115億年前、宇宙の始まりであるビッグバンから20億年が経過したばかりの初期の宇宙で、非常に赤いクエーサー(銀河の核)の周りに形成中の巨大銀河団。この度、明らかにされたのはその驚くべき形状と動きです。

天体は1つの銀河ではなくて、3つの銀河がもつれ合いながら高速度で回転していたのです。3つの銀河は尻尾の端が結びついていて、画像を見た研究チームは「宇宙の結び目だ、驚くべき発見だ」と報じています。

このクエーサーは遠く離れた宇宙に存在し、とても明るく輝いているので、ハッブル望遠鏡のような光学望遠鏡では恒星のような点光源になって捉えられていました。小さな点なので内部構造がまるで見えません。

今回は、赤外線望遠鏡であるウエブ望遠鏡によって驚くべき内部の構造が明らかにされたのです。

研究チームは、「宇宙の結び目」に目に見えない謎の物体・大量の暗黒物質ダークマターが存在するかもしれないと言っています。

 

“初期宇宙の銀河の謎を探るウエブ望遠鏡の旅!”

NASA公式サイトに載せられた研究チームの発表からその概要を紹介します。

 

115億年前の3つの巨大銀河のもつれ、高密度の「宇宙の結び目」とは?

 

クエーサー SDSS J165202.64+172852.3
(NASA公式サイト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この画像は、ジェームズ・ウエブ宇宙望遠鏡によって始めて撮影された115億年前の巨大銀河団の姿です。上部の左の画像はハッブル宇宙望遠鏡で撮影された画像でターゲットのクエーサー 「SDSS J165202.64+172852.3」 が菱形のマークの中で小さく浮かび上がっています。右の画像と、下の画像がウエブ望遠鏡による新しい観測結果の画像です。

下部に並ぶ画像の右端がウエブ望遠鏡の赤外線反応により明らかとなった構造です。形成中の3つの銀河がもつれ合って、中央で尻尾が結ぶ目のようになっているのが確認できます。

 

3つの銀河は秒速700kmという驚異的な速度でお互いを周回しており、離ればなれにならないように1つの「結び目」でホールドされています。ここには大量の質量が存在することも確認できたそうです。チームはこれが初期宇宙における銀河形成の中で最も密集した領域だと言っています。

 

このクエーサーが異常に赤いのは、本来の輝きが赤色であることに加えて、銀河の光がウエブ望遠鏡に到達するまでに要した115億年のあいだに「赤方偏移」したためです。「赤方偏移」というのは宇宙が膨張しているので波長も引き延ばされて波長の長い色である赤色になる現象です。赤外線に高度に反応するウエブ赤外線望遠鏡によって、始めて内部構造を詳しく調べることができました。

 

これまで、ハッブル宇宙望遠鏡や他の天文台による研究で、「銀河風」によるクエーサーの外部への流出現象が見られることから、天文学者はクエーサーのホスト銀河が何か目の見えない相手と合体しているのではないかと推測していました。しかしウエブ望遠鏡の近赤外線分光器のデータから発見された事実は意外な結末でした。一つの銀河だけでなく、少なくとも3つの銀河が渦を巻いている銀河団であることが明らかになったのです。

 

研究チームは、このクエーサーに3つの銀河の存在を確認し、それらがどのように結びついているかを明らかにしました。「この赤いクエーサーは銀河形成の密な結び目の役割を果たしている」と結論を出しました。チームは銀河団全体の中心部を見ていた可能性があるとして、宇宙初期の高密度な宇宙の結び目(Dense Cosmic Knot in The Early Universe)と呼んでいます。

暗黒物質の2つのハローが合体している領域かもしれない!

 

チームのリーダーであるWylezalekによれば「暗黒物質の2つの巨大なハローが合体している領域を見ている可能性がある」としています。

暗黒物質 Dark matter とは銀河と銀河団をまとめている目に見えない構成要素であり、銀河を包み込む球状の領域ハローhaloを形成すると考えられています。

 

一般的に、ダークマターは目に見えない存在ですが銀河の集団である銀河団の運動をサポートするのに不可欠の仮説上の存在です。銀河団の中にある銀河の運動は重力に影響されるので、銀河の運動を調べると銀河全体の総重量が推定できます。ところが実際に銀河の質量やガスの重量を足し合わせても必要な総重量の5分の1程度しかないことが明らかになっています。

 

とすると、宇宙には目に見えないが存在する重量がどこかにあるはずなので、これを暗黒物質ダークマターと呼んでいます。ダークマターは宇宙で均一に広がっているのではなくて、銀河が観測される場所には多く存在し、銀河のない場所では少なくなっているそうです。ダークマターの正体はいまだに不明です。今回の初期宇宙時代の宇宙の結び目がダークマターの二つのハローが合体している状態であるとすれば、この研究はダークマターという宇宙の謎の解明に一歩近づいたかもしれません。

 

NASAのチームの記事解説はここまでですが、専門家でない記者の勝手な解釈は次の通りです。

この結び目は高速で回転する銀河団を離ればなれにしないようにつないでいるゾーンであり、そのために引力を作る大質量・ダークマターが集まっているハローがそこにあるはず。目に見えないダークマターが大量に存在するという予測は、引力の形成に必要な大きな質量が銀河団の核に必要だから・・・。 

 

宇宙の構成要素である“質量とエネルギー”のうち、ダークマターは星やガスなどを構成する目に見える普通の元素(バリオン)の約6倍が存在するとされています。このクエーサーの場合は、回転する銀河の質量と高速回転による脱出のチカラを考えると、引きとどめる引力は、膨大な質量を必要とすると推定されます。「高密度の領域」という記述はそのことを意味しているのかもしれません。

 

・・・この巨大銀河団のダークマターは、「目に見えない」つまり光を吸収するか反応をしない。「銀河団の中心・銀河核にいて」高速でまわっている銀河をつなぎ止めるだけの「膨大な質量」を持っている。

「そんな物体の正体とは一体何者なのか?」

ここまで記事を書いて来て記者の背筋がチリチリとしてきました。

ダークマターは原始ブラックホールとそっくりじゃないか?」

 

ダークマターと原始ブラックホールは同一人物?

 

これは今世紀最大の宇宙のテーマの一つ。原始ブラックホールとダークマター同一説は、1970年代にホーキング博士達が始めて提唱した説で、現在では色あせた考え方とされています。

「ホーキング博士の説が蘇った?」飛び上がった記者は、慌ててNASAの記事から、結びのセンテンスをもう一度確認しました。研究チームのレポートの結びのセンテンスは次のようになっています。

 

「今回、Wylezalekのチームが実施した研究はウエブ望遠鏡による初期宇宙の調査の一部です。チームはこの予想外の原始銀河団の追跡調査を計画中です。このような密集した無秩序な銀河団がどのように形成されたか、その中心にある活動中の超大質量ブラックホールによってどのような影響を受けるのか解明したいと考えています

 

結びのコメントでは、ダークマターと原始ブラックホールの関連性について一切触れていませんが、関連性を示唆していることが読み取れます。記者は慌てて他のサイトをひっくり返して、ヒントを探してみました。「ダークマターとブラックホールは同一人物?」で検索すると2つの代表的な記事がみつかりました。

 

二つの記事のタイトルは次の通りです。

記事1.「ブラックホールと暗黒物質 — それらは同一のものですか?」

(2021年12月12日付けのYale News)

記事2.「宇宙の暗黒物質がブラックホールであることは否定された」

(2018年10月2日付けのBerkelei News)

 

記事2のバークレー・ニュースはブラックホールと暗黒物質が同じであることを否定。現在の通説となっています。

記事1のイエール・ニュースはブラックホールと暗黒物質が同一であることを示唆しています。この記事は今回のNASAの公式サイト「NASA’s Webb Uncovers Dense Cosmic Knot in The Early Universe」にレポートしたチームと同じメンバーが、ウエブ望遠鏡が打ち上げられる数ヶ月前に寄稿した記事です。

 

イエール・ニュースの記事を一部引用します。

「これは、イェール大学、マイアミ大学、および欧州宇宙機関 (ESA) の天体物理学者によって作成された初期宇宙の新しいモデルが示唆するものです。まもなく打ち上げられるジェイムズ ウェッブ宇宙望遠鏡のデータで真実であることが証明されれば、この発見は暗黒物質とブラック ホールの両方の起源と性質に関する科学者の理解を一変させるでしょう」

 

研究チームによる初期宇宙の新モデル(画像)

 

 

 

 

 

 

この画像は、研究チームが作成した初期宇宙の新モデルです。記者の勝手な解釈は次の通りです。左端のレッドゾーンは原始ブラックホールを表しています。真ん中のダークなゾーンに点々とダークマターが表現されています。右端にはダークマターによってホールドされた銀河団が渦巻いています。

 

このモデルが示唆していることとは・・・

1. ビッグバンから原始ブラックホールは生まれていた

2.   原始ブラック ホールが宇宙のすべての暗黒物質を構成している

3.   暗黒物質によって宇宙の銀河はホールドされている

 

ダークマターとブラックホールという宇宙の不思議な存在がどのように銀河の形成にかかわってきたのか? その正体が明らかにされる日が近づいているようです。今後のウエブ宇宙望遠鏡の研究チームの発表が待ち遠しくなります。

(おわり)

 

【参照サイト】

NASA’s Webb Uncovers Dense Cosmic Knot in The Early Universe

この報告はアーリーリリースです。これらの結果は、The Astrophysical Journal Letters に掲載される予定です。(NASA公式より)

 

記字1. イエールニュース

タイトル「ブラックホールと暗黒物質 — それらは同一のものですか?」

 

記事2.バークレーニュース

タイトル「宇宙の暗黒物質がブラックホールであることは否定された」

 

【関連サイト】

NASA/ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が撮影したディープな宇宙の星たちを初めて公開! 

 

原始の星を探れ!ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡に与えられたミッションとは?

 

NASA/ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が撮影したディープな宇宙の星たちを初めて公開!

2022年7月12日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が撮影した深い宇宙の星たちの驚異の映像をNASAが公開しました。星の誕生が見られる若い星雲から、生涯を終えつつある年老いた星たちの様子。踊るように見える5つ子の星や、水の存在を示す観測データ。130億光年離れたディープフィールドの銀河まで、エキサイティングな5つの映像をNASAの公式サイトからご紹介します。

1. カリーナ星雲  Carina nebula

Carina nebula カリーナ星雲(NASA公式)

 

生まれたばかりの若い星たちを包む星雲「カリーナ星雲」の画像です。山や谷や、雲のように見える風景は、実は巨大なガスや塵でできています。ガスや塵が落ち着いたところでは、集まって新しい星が形成されていきます。

この画像はカリーナ星雲の一部、NGC3324と呼ばれる若い星形成領域の端のゾーンを撮影した画像です。この星雲の高さは最大で約7光年・光の速さで7年掛かる距離があるそうです。

ガスの中にある若い星からの熱くて強い紫外線と恒星風が星雲を彫り上げています。高性能のジェームス・ウエブの赤外線望遠鏡でキャプチャーされたこの画像は、星が誕生する領域を始めて明らかにしました。

最新のウエブ赤外線宇宙望遠鏡によって、星が誕生するメカニズムがさらに詳しく解明されることが期待されています。

 

2. ステファンの5つ子 Stephan’s Quintet

 

ステファンの5つ子 Stephan’s Quintet (NASA公式)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ステファンの5つ子」は近接した5つの銀河がダンスをしているように見えます。1877年にエドゥアール・M・ステファンによって発見された「ステファンの5つ子」が、この度、ウエブ望遠鏡で鮮明に映し出されました。この画像は、遠近の異なる5つの銀河を視覚的に近くに見えるように撮影した画像です。

銀河は4つに見えますが、上の大きな3つの銀河の中、一番下にある銀河をよく見ると白く光る部分が2か所あります。この銀河には中心が二つあるように見えますが、実はNGC 7318A と NGC 7318B という二つの銀河が存在しています。二つの銀河は接近しているので、接近遭遇による相互作用によって、いまも若い星が劇的に誕生していると報告されています。

実は、左サイドにある矮小銀河 NGC 7320 は地球から4,000万光年の距離に位置して、他の銀河は約3億光年先のペガスス座にあります。5つ子とはいえ、一つだけ約7倍も地球に近いので「5つ子」とはいえないかもしれませんね。

 

下の画像は、ウエブ宇宙望遠鏡の兄貴分に当たるハッブル望遠鏡で2,009年半ばに観測した「5つ子」です。赤外線望遠鏡のウエブの最新画像と比較してみると特徴が異なるので興味深いですよ。

 

「ステファンの5つ子」ハッブル撮影・合成(NASA公式)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッブルの観測は、青、緑、赤外線とフィルターを用いて、合成画像を作成しています。赤外線望遠鏡のウエブ画像よりもカラフルに見えるのはそのためです。

 

3. 南のリング星雲 Southern Ring Nebula

 

南のリング星雲 Southern Ring Nebula(NASA公式)

 

 

 

 

 

 

“Some stars save the best for last.” 

「いくつかの星は、最高のものを最後まで取っておきます」(NASA公式)

ロマンティックなキャッチコピーで紹介されているのは、約2,500光年の距離にある、生涯を終えかけて美しく輝いている「南のリング星雲」NGC 3132 の画像2点です。NASAは、この画像はこの星が塵に覆われた惑星状星雲であることを明らかにしたと報告しています。

惑星状星雲とは死にかけた星が放出するガスや塵でできた星雲のこと。惑星状星雲になるのは太陽の8倍以下の質量の恒星で、核融合の材料がなくなる最終段階で膨張して赤色巨星となります。星の外層のガスが周囲に放出されて、中心に取り残された白色矮星からの紫外線が周囲のガスを電離して天体がこのように輝くのです。

 

左右に2枚の画像がありますが、「左の“近赤外線カメラ”の画像では、星とその光の層が際だっており、右の“中間赤外線カメラ”の画像では、二番目の星が塵に囲まれていることが初めて明らかになった」と、NASAは報告しています。

中心に見える明るい方の星は星形成の初期段階にあり、将来的には自らの惑星状星雲を放出すると考えられているとのことです。

 

4. WASP-96b

 

恒星の周りの巨大ガス惑星の大気中に水の存在を示すサインを確認(NASA)
恒星の周りの巨大ガス惑星の大気中に水の存在を示すサインを確認(NASA)

 

NASAによれば、ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が、太陽に似た恒星の周りを周回する高温の巨大ガス惑星WASP-96 b の大気中に水の存在を示す明確なサインを捉えたと発表しました。

WASP-96 b は、天の川銀河系で確認されている太陽系外惑星の一つ。南天のフェニックス座から1,150光年の距離に位置するガス惑星で、太陽系には存在しないタイプです。質量は木星の半分以下、直径は1.2倍、水星と太陽の距離の9分の1という近距離を公転しています。

WASP-96 b は、大きさ、公転周期の短さ、大気の膨らみ具合などから大気観測に理想的な天体だとのことです。ハッブル宇宙望遠鏡は20年以上をかけて太陽系外の惑星の大気を分析して、2,013年に始めて水を検出しましたが、ウエブ宇宙望遠鏡は即時に何百光年離れた惑星の水の大気を検出しました。

水は生命の誕生に不可欠です。ウエッブ宇宙望遠鏡は、地球外の居住可能・ハビタブルな惑星の特徴を探る上で、大きな期待をかけることができる存在と言えます。

 

5. SMACS 0723

 

デイープフィールドの銀河団SMACS0723(NASA公式)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウエッブ宇宙望遠鏡が撮影したディープ・フィールド(最も遠い宇宙)の銀河団SMACS0723の画像です。“最も暗い天体を含む何千もの銀河”が、ウエッブの前にその姿を現しました。この画像は手のひらサイズの砂粒のようなもので、広大な宇宙の一角に過ぎないとのことです。

画像に映っているのは、46億年前に出現したSMACS 0723 という銀河団とその前後にある銀河の映像です。46億年前に宇宙に飛び出した光は宇宙の膨張によって引き延ばされ、波長の長い赤外線となって、ウエッブ赤外線望遠鏡に素早くキャッチされ映像化されたのです。NHKが専門家に問い合わせところ、画像の中には130億光年離れた銀河も映っているとのことです。

不思議な特徴として、NASAはこのフィールドが極めてアーク状であると報告しています。銀河団による強力な重力場が、背後にある遠くの銀河からの光線を曲げているとのことです。虫眼鏡が画像を曲げて歪ませるように、背景の画像は歪んでいるのだそうです。

 

ウエッブの今後の活躍

 

ウェッブの中間赤外線観測装置(MIRI)は、星の形成や生命の誕生に重要な要素であるダスト(塵)の存在を探しています。今後、さらにディープなフィールドからの赤外線がキャッチできれば、生命の誕生や、宇宙の始まりの謎が解明できるかもしれません。

(おわり)

ウエブ宇宙望遠鏡のミッションについてはここからどうぞ。

原始の星を探れ!ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡に与えられたミッションとは?

 

参照:NASA公式サイト

ウエブ宇宙望遠鏡の画像はここからどうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原始の星を探れ!ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡に与えられたミッションとは?

打ち上げに成功した“ウエッブ”のミッションは“原始の星を探れ!”です。

2021年12月25日、ハッブルの後継機、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡がギアナ宇宙センターから打ち上げられました。史上最大・最高度な赤外線望遠鏡は、ハッブルの限界を超えて135億年以上前にさかのぼることが可能です。宇宙最初の星や銀河の誕生を目撃することができるかもしれません。

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡イメージ図(NASA)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ウエッブ”のゴールは月の軌道の約4倍、地球から150万km離れた「2番目のラグランジュポイント(L2)」と呼ばれる宇宙の重力が安定したところです。ウエッブは熱に大変弱い望遠鏡なので、L2で太陽を周回しながら太陽や地球や月からの光や熱を避けるために、テニスコートサイズの5層の傘・サンシールドを宇宙に拡げます。

 

その姿は、宇宙を飛ぶ巨大コウモリのように見えます。コウモリはソナーで獲物の昆虫の動きを察知しますが、ウエッブは遠い宇宙の果て“原始の星”からやって来るかすかな赤外線を感知してその姿を観測します。

 

“ウエッブ”に与えられたミッションは宇宙の始まりの観察と、惑星が生まれ出る“原始惑星系円盤”の観測です。それでは、二つのミッションとウエッブの新しい機能についてみていきましょう。

ミッション1 最初の星 “巨大恒星ファーストスター”の秘密を探れ!

ファーストスターのイメージ画像(ナショジオ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この宇宙に、最初の星はどのようにしてできたのでしょうか?

宇宙の始まりはいまから138億年前。ビッグバンで生まれた原始宇宙は高温度の霧で満たされていました。そして、霧が晴れ渡ると、宇宙は「暗黒時代」と呼ばれる光のない時を迎えます。暗い宇宙にはほんのわずかな密度の濃淡があり、濃淡の濃い重力空間にガス状の物質が集まり始め、宇宙に最初の構造物が誕生しました。

 

それは、銀河のような複雑な構造ではなくて、想像を絶する巨大な恒星だったとされています。超大な太陽のような“ファーストスター”がビッグバンから約2億年後に誕生していたはずだとされているのです。

 

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡の感度はハッブルの約100倍とされています。ハッブルは128億光年までが探査の限界でしたが、ウエッブは135億光年まで目撃することができます。ウエッブ宇宙望遠鏡の登場で、宇宙の始まりの星ファーストスターや最初の銀河が誕生するシーンがみられるかもしれません。

 

初期の宇宙から100億年以上をかけてやって来る光は、宇宙が膨張を続けているために波長を引き延ばされて人の目に見えない赤外線になっています。これは“赤方偏移”と呼ばれる現象です。

 

そのため、ウエッブは赤外線を観測できるように6.5mのメイン反射鏡に金メッキが施されています。また、検出器は測定の邪魔になる熱などの赤外線ノイズを出さないようにマイナス200度の超低温に保たれるといった高感度構造に仕上げられているのです。

 

宇宙の始まりに生まれた最初の星たちはどのような姿をしていたのでしょう。また、どのような元素でできていたのでしょう。ファーストスターは大爆発を起こして、超新星となり、質量の重い元素(重元素)が宇宙全体に広がっていったといわれています。

 

重元素は超新星の中で作られた物質です。重元素と呼ばれるもののなかには、炭素や酸素といった生命に必要不可欠な重元素が含まれていました。そういえば、私たちの身体を作っている炭素や酸素も元を質せば星のかけらです。星の中で作られ、宇宙を巡りながらここまでやって来たのです。

 

ウエッブ宇宙望遠鏡のミッションはあなたのルーツに迫る旅でもあるのですね。

 

ミッション2 惑星のルーツ“ 原始惑星系円盤”の内側を探れ!

アルマ望遠鏡による20個の原始惑星系円盤(NASA)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球のような恒星の周りをまわる惑星はどのようにしてできたのでしょうか?

この画像は、2018年に南米チリにあるアルマ望遠鏡で観測された20個の原始惑星系円盤です。アルマ望遠鏡が撮影した画像は円盤の外側ですが、ウエッブ宇宙望遠鏡は、このうち17個の円盤を選んで円盤の内側を高角解像度プロジェクトで詳しく調べる予定です。

 

そもそも、原始惑星系円盤(protoplanetary disk)とは何者でしょう? 原子惑星系円盤とは、惑星を形成する過程の初期に現れる円盤状の構造のことです。まず始めに、ガス状の雲の中にある密度が濃い分子雲コアが、自分の重量で収縮を繰り返すことによって原子恒星が出来上がります。

 

そのとき、大きな回転力(角運動量)を持ったガスと塵は、収縮する中心部の恒星にたどり着けず、恒星の周りに円盤を形成します。これが原始惑星系円盤です。この後、数100万年から1000万年ほどの時間を掛けて、円盤内でガスと塵が集束していくつもの惑星が形成されていきます。

 

ウエッブ宇宙望遠鏡のミッションは、20個の原始惑星系円盤の中から、中心星(恒星)の質量が太陽の0.5倍から2倍ほどの17個を選んで、円盤の内部にある物体の組成を解明することです。

原子惑星系円盤のスペクトル分析・シミュレーション(NASA)

 

ウエッブは中赤外線(mid-infrared light)と呼ばれる波長を使って円盤の内部のスペクトル分析をします。メタン、アンモニア、二酸化炭素などのガスがどれだけ含まれているか?

とくに水がどのくらい含まれているかを解明できると期待されています。

 

原始惑星系円盤は地球のような岩石惑星が形成されたゾーンに位置しています。NASAの研究チームは、原始惑星系円盤の内部の組成を観察することによって、生命の存在が可能なハビタブルゾーンについて新しい発見ができるかもしれないといっています。

 

そういえば、NASAの火星探査車“パーサビアランス”も、生命の痕跡を求めて、かつて水があったとされる火星のジェゼロクレーターで小さな岩石を採集しています。2030年頃には地球に持ち返って調べる予定です。

 

ウエッブが観測を開始するのは打ち上げの半年後。宇宙に生命が誕生した秘密が解明される時が近づいているのかもしれません。

 

ハッブル宇宙望遠鏡の功績とウエッブ宇宙望遠鏡への期待

1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、現在地球の約545km上空を周回しています。当初は10年程度の寿命とされていましたが、チームの努力で故障を乗り越え、30年もの間、宇宙探査活動を続けています。現在は機能を停止して回復が待たれる状態です。

 

NASAによれば、ハッブルの功績は、銀河核内のブラックホールの存在を確認したこと。系外惑星大気の組成を測定したこと。もっとも遠い銀河を発見したこと。宇宙の加速膨張を検証したことなどとされています。ハッブルは偉大な発見や功績をたくさん残してくれました。

 

後継機のウエッブ宇宙望遠鏡はどのような発見をしてくれるのでしょうか? 天文学者たちは「ハッブルとウエッブの両方が宇宙にあり、同時に観測できることを楽しみにしている。それぞれの望遠鏡の観測装置と波長範囲から、異なることが明らかになるはずだ」といっているそうです。

 

ウエッブの寿命は、軌道を修正する燃料が必要なので10年程度とされています・・・。ハッブルと同じように長寿を重ねて、銀河の始まりや、生命誕生の謎に迫って欲しいですね。

 

打ち上げられたウエブ望遠鏡は、ゴールに行き着く途中の宇宙空間でサンシールドとミラーを組み立てます。迫力のシミュレーション画像をご覧ください。

James Webb Space Telescope Deployment Sequence (Nominal)

 

(おわり)

*ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡は、アメリカ航空宇宙局(NASA)がパートナーである欧州宇宙機関(ESA)とカナダ宇宙機関(CSA)と共に推進する国際プログラムです。

 

【補】原始惑星系円盤の進化シナリオ概念図

原始惑星系円進の進化シナリオ概念図

 

 

 

 

 

 

 

この図は、原始惑星系円盤(Protoplanetary Disks)が進化していく様子を描いた概念図です。

a(左上)→b(右上)→c(左下)→d(右下)の順番に進化して、惑星ができていく様子を描いています。それでは、順番に見ていきましょう。

 

黄色の丸は中心にできる中心星・恒星。水色の雲はガス。赤い点々が惑星に成長するダスト・破片たちです。ガスとダストを含む水色の部分が原始惑星系円盤です。

a. 大規模に燃え上がる円盤:円盤の初期段階。円盤からガスが中心星に降着していきます。また、中心星の紫外線によって円盤内のガスが蒸発していきます。

b. 定着・沈殿する円盤:降着率が低下して、ダストが合体・成長していきます。やがてダストは円盤の赤道面に沈殿します。

c. ガスが蒸発・散逸する円盤:紫外線による蒸発率が上がり、中心星に近いガスから散逸して円盤からガスがなくなります。

d. 破片となった円盤:ガスがほとんどなくなり、ダストが微惑星や原始惑星から惑星となります。中心星は前主系列星から主系列星になります。

「Protoplanetary Disks and Their Evolution(原始惑星系円盤と進化)」Jonathan P. Williams and Lucas A. Ciez 

より抜粋しました。

Protoplanetary Disks and Their Evolution (sunysb.edu)

 

 

 

 

 

 

宇宙は膨張を早めてるんだって? 犯人は何者! 僕らの宇宙の最後はどうなるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ大変!  宇宙は膨張を早めてるんだって!  僕らの宇宙をどんどん膨れさせてる犯人は一体何者なの? 」 

 

日曜日の朝のことです。

小学生の匠が、リビングに飛び込んできて、新聞を読んでいるパパに突然の質問をしました。

 

匠は最近宇宙の出来事に夢中です。

ブラックホールの映像がはじめて発表されてから、毎週日曜日になると匠からパパに、宇宙の質問が飛んできて、パパも答えるのが大変です。

 

今日のテーマは“宇宙の膨張”です。

仕事にいそがしいパパですが、匠に負けているわけにはいきません。

 

パパはにやりと笑って、バッグから一冊の本を取り出してきました。

「匠、僕らの宇宙は膨張してるぞ。それも加速しながらだよ」

 

「加速させてる犯人はこいつだ」

パパは買っておいた本のタイトルを読み上げました。

 

「“宇宙のダークエネルギー”だよ」

パパはこの本を通勤中の電車の中で毎日読んで勉強していたのです。

(宇宙のダークエネルギー 土居守 松原隆彦 共著)

 

二人は仲良くソファーに座って、本を読み始めました。

 

宇宙は膨張を加速させていた

 

ビッグバン・宇宙初期の光の名残 (ウイキペデイアより)

 

 

 

 

 

 

 

 

“ビッグバン理論”によれば、宇宙はいまから138億年前、宇宙の種が大爆発(ビッグバン)を起こして誕生し、その後も進化を続けていると考えられています。

そして宇宙は爆発のあとも膨張を続けて現在のような姿になったのです。

 

宇宙には爆発で作られた多くの物質が存在しています。

その物質とは、無数の星を構成する要素であったり、宇宙を漂うガスやゴミのようなものであったり、地球の植物や動物や、私たちの身体であったりします。

 

それ以外に存在が考えられているけれども未知の物質である「ダークマター」(後述)も含めて・・・この宇宙に存在するすべての物質は、お互いを引きつける力「引力」を持っています。

20世紀には、宇宙は膨張を続けながら、物質の引力によってお互いに引きつけあって、膨張する速度を次第に落としていると考えられていたのです。

 

でも実態はどうやら違いました。

宇宙は膨張の速度を加速させていることが明らかになったのです。

 

大型望遠鏡や観測衛星によって、宇宙の遠くまで観測できるようになった結果20世紀の末に“宇宙は加速しながら膨張している”ことが明らかにされました。

21世紀の科学では、この宇宙の中には、引力と相反して宇宙を膨張させている「不思議な力」が存在するのではないかと考えられています。

 

「匠、僕らの宇宙を加速膨張させている犯人の正体はまだみつけられていないんだよ。でも名前だけは付けられているんだ。シカゴ大学のマイケル・ターナーと言う学者が命名した呼び名は暗黒の存在“ダークエネルギー”だ」

パパが結論をいうと・・匠が答えました。

 

「パパ、その犯人、どうやって宇宙を膨らませるんだろうね。でもねパパ、宇宙が膨らむって意味がよくわかんないよ? 宇宙がどんどん膨らんだら僕の身体はどうなるの? 一緒にブーって膨らむのかな?」

 

匠がマジで心配そうな顔して聞くので、パパは思わず吹き出してしまいました。

「宇宙が膨張するというのは、無数の星が集まってできている銀河と別の銀河の間の距離が遠く離れていくということだよ。銀河の中の星も同時に膨張して大きくなったり、地球で暮らしている僕たち人間まで膨張するわけではないんだ」

 

パパは、パソコンの前に座ってウイキペディアから“宇宙が膨張する画像”を取り出して、匠に説明をしました。

(ウィキペデイアより)
ビッグバン理論では、宇宙は極端な高温高密度の状態で生まれた、とし(1番下の宇宙図)、その後に空間自体が時間の経過とともに膨張し、銀河はそれに乗って互いに離れていった、としている(真ん中、1番上の宇宙図)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「匠、この絵はビッグバンで生まれた宇宙が膨張していく様子を表したものだ。下から順番に上の方に、時間の経過と共に膨張していく宇宙が三枚のパネルの絵で表現されてるよ」

 

宇宙誕生の始まりは・・一番下の黒い点“シンギュラリティー”からだ。

大爆発が起こる寸前の凝縮された特異な時空“宇宙の種”だよ。

 

「バン!

僕らの宇宙の誕生だ」

 

一番下の宇宙のパネルは爆発直後の初期宇宙だ。

お絵かきのキャンバスみたいにぐちゃぐちゃの状態だ。

 

時間が経過し、膨張が始まって宇宙が拡がり始める。

下から二枚目の宇宙では星が集まって渦巻状やいろんな形の銀河を作って、宇宙の方々に散らばってるだろ。

 

一番上の三枚目の宇宙では空間が広がって、銀河と銀河の距離が離れていくのが分かるよね。

ほら、よく見てご覧! 宇宙が膨張して銀河と銀河の距離は離れていってるけれど、銀河そのものの大きさは変わらないだろ。

 

「空間が膨張しても、銀河や星や人間の身体の様な物質は強い引力が働いてお互いに引きつけ合うから、膨張しないんだよ」

パパの話を聞いて匠の表情がほころびました。

 

「それ聞いて安心したよ。それじゃ、もう一つの質問だよ。ダークエネルギーのおじさんはどうやって宇宙を膨張させてるんだろう? 引力と逆に反発するでっかい磁石でも持ってるのかな」

匠の質問にパパはどう答えていいのか困ってしまいました。

 

ダークエネルギーは宇宙最大の謎

 

宇宙は何からできている?
(東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 須藤 靖先生の資料より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の絵は「宇宙は何からできている?」のかを説明した、ある講演会での資料です。

円グラフは宇宙の組成を説明したものです。

 

宇宙の組成は質量とエネルギーで構成されているんだよ。

まず通常の物質とは、私たちの身の回りにあるすべての物質を作っている元素のことだ。

 

星もガスも海も山も私たちの身体もすべてこれに含まれるってことだ。

構成比は全体のわずか4%。

 

さらに存在が予測されるが未知の物質ダークマターが22%を占めているよ。

最後に、宇宙を構成する物資とエネルギーの総和の中、ダークエネルギーは何と、70%以上も占めているんだ。

 

しかし現在も、ダークエネルギーの正体は全く不明だそうだ。

宇宙空間が加速しながら膨張していることが事実であるなら、膨張させる「力」が宇宙のどこかにあるはずだと考えられた。

その力は引力に対して斥力とか反引力と呼ばれている。

つまり引力の反対で、お互いを遠ざけようとする力だよ。

この不思議な存在を仮にダークエネルギーと呼ぶことにしたそうだ。

 

パパがここまで解説を進めると、匠がストップをかけました。

「パパ、ちょっと待ってよ。さっき、ダークマターっていったけど、ダークエネルギーとどう違うの?」

 

「匠、ダークマターというのはダークエネルギーとよく似た名前だけど、全く別のものだよ。この物質は重力を持っていて、他の物質と引き合っているんだけど、変わっているのは光を発したり、吸収したりしないから、見えないのだそうだ」

 

「それじゃそのダークマターおじさんもずいぶん変わってるよ。透明人間みたいなものかな。重さはあるけれど、光を反射しないし、通過させてしまうってワケか・・なんだかブラックホールの親分みたいだね」

 

「匠、お前大したものだ。このダークマターも正体不明で、もしかしたら、原始的なブラックホールじゃないかって説まであるぞ。匠の説と同じだ!」

 

パパは匠の成長ぶりにすっかり驚いてしまいましたが、匠はすぐに言い返しました。

「でもさ、ダークマターはだ、目にみえないのにどうしてあると分かるんだよー?」

 

匠が偉そうにいったので、パパは吹き出しました。

「ダークマターは見えないけれども、重力があるからまわりの天体の運動や光の進む方向を曲げたりするんだ。だから、観測の結果から、宇宙の空間にあることが分かっているんだって・・」

 

「パパ、分かったよ。・・じゃ元に戻って、ダークエネルギーの正体だ!」

「匠、何度も言うけどダークエネルギーは発見されてないんだよ。でも、宇宙が加速しながら膨張しているという事実を説明するためにはこのような存在がどうしても必要なんだ」

 

・・引力と逆さまの力を持った反重力がこの宇宙に広く薄く広がっていて、そのうえ空間が膨張すると同じように増えていく怪物、それがダークエネルギーの正体なんだって・・

 

「この正体を明らかにすることが、宇宙科学の今世紀最大のテーマらしいよ。パパの説明もこれ以上は無理だよ」

 

「パパ、ありがとう・・・なんとなく分かったよ。この宇宙のどこかにまだ誰にも知られていない不思議なエネルギーが隠されているはずなんだね!」

 

・・・それじゃ最後の質問だよ。この宇宙がスピードを上げて膨張を続けていったら最後はどうなるのかな? パパ、宇宙の最後をもう少し調べてみない?・・・

 

匠の最大の心配事は“宇宙の最後がどんなもので、それはいつやって来るのか”だったのです。

パパは、加速膨張する宇宙の最後について、ネットの記事を調べていきました。

 

膨張した宇宙の最後はどうなる

 

パパはまずウイキペデイアを参照してみて、驚きました。

宇宙の最後がどうなるのか・・予測している理論がいっぱい出てきたのです。

 

パパと匠は一つずつ、順番にみていくことにしました。

まずはじめに出てきたのは“ビッグ・クランチ”でした。

 

「ビッグクランチのcrunchは“ばりばりかみつぶす”って意味だ。

ビッグバンの膨張が限界に来て、反転が起こる。

次に宇宙は重力に引き戻されて大収縮が始まる。

やがて宇宙は時空の一点に凝縮される」

 

パパが読み上げると、匠がすかさず言い返しました。

「パパ、それって、ビッグバンの始まりとまるで逆さまだよ。・・でも、新しい記事だと、ダークエネルギーおじさんの力が強くて、宇宙は膨張を加速してるはずだからさ・・ばりばりかみつぶされるって話はないことにしようよ・・」

 

パパは思わず笑って、次に進むことにしました。

「分かった、じゃ次の説だ。膨張加速する宇宙崩壊モデルのトップは“ビッグリップ”だ!」

 

ripは“びりっと引き裂く”という意味です。

ビッグリップ論は、宇宙の膨張・加速が続いたとき、宇宙の中にある物質が耐えきれずに引き裂かれてしまうという理論でした。

 

加速膨張が続くと、それまで“重力で束縛されていた銀河系や惑星系は崩壊を始めます。

さらに斤力が原子や原子核を形作る力も上回り、最後は、ばらばらになった素粒子が飛び交うだけの宇宙となるとされていました。

 

「パパ、これなんだかありそうな怖~い話だよ。宇宙が膨張してさ。今度は僕らの身体はばらばらだ」

「匠、怖そうで、ありそうな話がまた出てきたぞ。“開いた宇宙の熱的死”だって」

 

・・この宇宙崩壊モデルでは宇宙の拡大が続いて、宇宙の熱量が尽きるんだそうだ。

熱エネルギーは広がった宇宙空間に平均的に拡散していくから、膨張する宇宙では熱エネルギーがついに尽きてしまう。

 

新しい星は誕生することがなくなり、光を放つ天体が次第に減っていき、やがて冷却途中の天体の余熱が赤外線や電波で見えるだけになる・・。

 

「なんともクールな宇宙の終末だよな」

そういって、パパはそのほかにもいろいろな宇宙の終末論を調べ上げました。

 

1. ブラックホールがブラックホールを次々と飲み込み、最後に銀河の中心にある巨大ブラック ホールが銀河全体の質量“物質”を飲み込むことになる。

2. 多元宇宙論では、宇宙が消滅したとしても他の次元にある宇宙は生き残っている。

3. “時の終わり”論では、宇宙のおわりより前に時間のおわりが来るが、我々はそれに気がつかない。

 

他にもいろいろな説がありましたが、匠が上手にまとめてくれました。

「パパ、宇宙の最後はいろいろあるけどさ、僕ら人類が生き延びるのは凄く難しいということだよ。僕らも宇宙のメンバーだってことだ。

・・とすればだ、宇宙の崩壊までどのくらいの時間があるかってことだ・・。

人類にどのくらいの時間が残されてるのか僕はそれが知りたいんだ」 

 

二人は、パソコンの前で座り直すと、宇宙についての新しいニュースがないか、探しました。

そしてついに、二人は、どうしても知りたかったニュース記事を探し出しました。

 

宇宙の終わり「ビッグリップ」は早くて1400億年先

 

すばる望遠鏡の筒先に取り付けられた巨大デジタルカメラ(国立天文台提供画像)

 

 

 

 

 

 

 

東京大学や国立天文台などの国際共同研究グループが2018年9月26日に、次のような研究結果を発表していました。

 

米ハワイ島にある「すばる望遠鏡」による広域観測データをもとに、宇宙の大規模構造の進化の度合いを世界最高レベルの精度で測定した。
その結果、遠い将来、宇宙がバラバラに引き裂かれ終わりを迎える「ビッグリップ」は少なくとも1400億年は起きない
(日経サイエンス電子版より抜粋)

 

宇宙には銀河団や超銀河団などで形作られる大規模構造があり、時間と共にその構造が進化しています。

研究グループは巨大カメラで遠方の銀河約1000万個を撮影して、それらの“歪み”を調べることで大規模構造の進化の度合いを調べました。

 

その結果、「宇宙は少なくとも1400億年は安泰だ」と発表したのです。

 

「匠、安心しろ! 人類に残された時間は1400億年もあるぞ!」

「ヤッター、それだけあればきっとなんとかなるよ!」

 

匠が喜んで跳び上がった時です。

パパが太陽と地球についての記事を見つけました。

 

「匠、喜ぶのはまだ早いぞ。別の記事では、地球がその前に太陽に飲み込まれるといつてるぞ」

・・太陽の寿命はだいたい100億年で、そのまえの50億年の頃には、太陽が大きく膨らんで地球や他の星をのみこんでしまうといわれてるぞ。

そのうえ、いまから“5年”くらいたつと地球は太陽の熱のために海水が蒸発してしまい、生き物が住めなくなってしまうというのが科学の常識だそうだ・・

 

「匠、エライ事だ。宇宙より太陽に注意しろだ!」

 

匠がパパの話を聞いて椅子から飛び上がりました。

「パパ! いまなんて言ったの? たった5年で、地球の生き物全滅だって?!?」

 

「え・・? ごめん言い間違えた。5年じゃなくて5億年だった」

パパが至急の訂正をしました。

 

“ゴン!”

匠がパパの頭を叩きました。

 

“痛っ!”

パパが呻きました。

 

「ビックリさせないでよ!」

匠が吠えて、二人は顔を見合わせて大笑いしました。

 

パパは、人類に残された時間が1400億年からいきなり5億年になったら、匠がショックを受けると思って、まず5年でどんと驚かせるという逆療法に出たのでした。

 

「今のうちに地球を散歩しようか?」

パパが誘って二人は、仲良く日曜日の朝の散歩に出かけました。

 

ところで・・・

5億年後、人類は熱くなった地球を脱出して、宇宙の新天地に向かっているのでしょうか? 

 

あるいは・・・

1400億年後のビッグリップに備えて、超人類が誕生しているのでしょうか?

(おわり)

 

それとも・・・

私たちには想像もできない、別のシナリオが待っているのでしょうか?

 

“宇宙と人類の未来はまだまだ誰にも分からないようですね。”

(おわり)

 

【記事は無断での転載を禁じられています】

 

宇宙人は本当にいるの? 存在するという3つの説とホーキング博士の警告!

「パパ正直に答えて! 宇宙人は本当にいるの?」

 

日曜日の朝のことです。

小学生の匠が、リビングに飛び込んできて、新聞を読んでいたパパに突然の質問をしました。

 

「アメリカの海軍がパイロットに、UFO目撃したらきちんと報告するように指導したそうだよ」

匠はテレビでそんなニュースをみて、ビックリしてパパに聞いてきたのです。

 

パパはどう答えていいのか困りました。

・・「宇宙人がいる」という証拠はどこにもないし、「宇宙人はいないよ」というのも夢がなくてつまらないし・・。

 

小さな天体望遠鏡をパパから買ってもらった匠は、夜の空を観測して、いろんな夢を膨らませているようです。

宇宙人もその一つです。

 

「宇宙はとっても広いからどこかに宇宙人がいる可能性があると思うけど、UFOも宇宙人も発見はされていないというのが現実だと思うよ」

パパがそう答えると、匠の表情がすこし曇りました。

 

「パパお願い、一緒に調べてみようよ」

そう言って匠はパパのパソコンの前に椅子を二つ並べました。

 

匠はパパと一緒の調査が大好きになったようです。

「よっしゃ、エイリアンの調査開始だ!」

 

パパが大きな声で答えました。

パパと匠は、仲良くパソコンの前に座り込んで、宇宙人についての科学記事の調査を始めました。

 

存在説1 NASAの科学者コロンバーノ氏「エイリアンはもう地球に来ているかも知れない!」

 

newsweekjapanより。
地球外生物が人間と同じく炭素ベースでできているとは限らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりショッキングな科学記事が見つかりました。

2018年12月6日の米ニュース・ウイーク日本版が、米航空宇宙局(NASA)の科学者の発表を次のように伝えていました。

 

エイリアンはもう地球に来ているが、予想もしない外見であるために発見されずにいるだけかもしれない

 

記事によれば、発表した科学者はNASAエイムス研究センターの研究者、シルバノ・コロンバーノ氏で、「エイリアンが発見されない理由は我々の固定概念にある」といっています。

 

続いて「エイリアンが、地球上の生物のように炭素をベースにした生命体でない可能性がある。その時には、生命体だと認識できない姿だったり、目に見えないくらい小さな超知能体であるかもしれない」といっているのです。

 

パパが記事を声を上げて読むと、匠が驚いて叫びました。

「パパ、エイリアンがわんちゃんだったり、ニャンコだったり、ゴキブリだったりする映画見たけど、このエイリアンそれどころじゃないよ。小さすぎてどこにいるかもわからない相手だ」

 

「この宇宙人、埃みたいに風に漂ってるのかな。吸い込んだらエライことだ。そのうえ、超知能体だというから、たとえ遭遇して会話しても、パパにはとても理解できないおかしなやつだったりして・・・」

パパはそういって、さらに記事を読み進めました。

 

コロンバーノ先生は、“宇宙人は人間のような短い寿命の制約を受けずに、広い宇宙を凄い技術で飛び回っているしれない”と発言していました。

 

「パパ、知能が人間を超えていて、身体が僕らよりつよくて長持ちする生き物といったらさ・・・それスーパー知能を持ったアンドロイドだよ」

匠の言葉にパパは驚きました。

 

「匠、お前大したもんだ。この科学者も同じこと言ってるぞ。エイリアンは究極的にはロボット的になる可能性があるってさ」

パパは匠の成長ぶりがうれしくてたまらないのです。

 

「そのうえ超小さくて、目に見えないエイリアンときたらもう僕、お手上げだよ。・・・でもパパ、この話“たとえば”の話でしょ?」

「そうだよ、“”たとえば”・・・エイリアンが宇宙にいたら、こんな凄いのかも知れないという仮定の話だよ」

 

「そうだとしたら、その“たとえば”はどのくらいのたとえばなの?」

「うん? 宇宙にエイリアンがいる可能性のことだな?」

 

「そうだよ。その可能性ってやつだよ」

パパはうーんと唸って、考え込みました。

 

しばらくしてなにか思い出したみたいです。

「たしか最近買った本の中に、なんとかの方程式というのがあったぞ」

 

「思い出した!」

パパは凄いスピードで本棚に走って、一冊の本を取り出してきました。

 

存在説2 ドレイクの方程式/高度文明が存在する惑星は1から100万個?

 

パパが取り出してきたのは「地球外生命体と人類の未来」という本でした。

「じつはこの本買ってきて、まだ読んでないんだよ」

 

パパは大急ぎでページを繰りながら、声を上げて、斜め読みを始めました。

・・・昔、「オズの魔法使い」の話が大好きな子供がいたんだ。

 

その子は1930年シカゴで生まれたフランク・ドレイクで、8才の時に科学技師の父親に「地球によく似た世界が他にもある」と言ったそうだ・・。

「ドレイク少年は匠そっくりだよ」

 

クスッと笑うと、パパは声を上げて本を読み進めました。

 

・・・若者に成長したドレイクは天文学の道に進んで、オズの名前を採って“オズマ計画”というプロジェクトを推進したんだ。

電波望遠鏡を使って、他の世界に存在する知的生命の兆候を探査するという計画(SETI)だ。

 

その目的は地球外文明との交信だったのだよ。

そしてそのためにまず取り組むべき課題は「交信が可能な地球外文明がどれくらいあるかの計算式だ」とドレイクは思ったんだ。

 

ドレイクはこの方程式を1961年のグリーンバンク会議で発表したんだ。

これが有名なドレイクの方程式だ。

 

ドレイクの方程式

銀河系に星間通信できるような文明がどれくらいあるか、を推定する式

 N=Ns × fp × ne × fl × fi × fc × L
 

(アダム・フランク著「地球外生命体と人類の未来」)

 

・・・ドレイクの方程式は、地球と通信できる技術を持った文明が銀河系宇宙にいくつあるのか求める式だ。

難しそうだけど、これ全部かけ算だからパパや匠にもわかるかもしれないよ・・

 

パパはそう言って本を伏せて、今度はパソコンからウイキペディアで「ドレイクの方程式」を開きました。

 

・・・それじゃパパができるだけわかりやすく説明するから、聞いてくれる?

順番にそれぞれの記号の意味と、当てはまる数字を説明するよ。

 

Nは、これから求める答えだ。

銀河系に、星間通信できるような地球外文明がいくつあるかの数だよ。

 

Nsは、銀河系に毎年生まれてくる恒星の数。

・・・恒星というのは、その周囲を回る惑星に膨大なエネルギーを放射する太陽のような星のことだ。

当時の答えは10個だった。

 

fpは、その恒星に惑星がある確率。

当時の答えは0.5つまり50%だ。

 

neは、その中、生命が存在可能な惑星の数。

・・・燃えている恒星に近すぎず、遠すぎず、水が蒸発や、凍結しない温度環境にある星のことだ。

当時の答えは2個だ。

 

flは、その惑星に生命が発生する確率。

・・・もっとも単純な原始的生命が誕生する可能性のことだ。

当時の答え:1  つまり100%だ。

 

fiは、その生命が知的生物に進化する確率。

・・・誕生した原始的生物がどのくらいの割合で知的生物に進化できるのかだ。

当時の答え:0.01 つまり1%

パパは専門家者じゃないけど、ここ凄く楽観的な気がしない?

 

fcは、その知的生物が星間通信できるような文明に発展する確率。

・・・ドレイク先生は先進技術を電波を発する能力と捉えていたようだよ・・つまり古代ローマは文明を持っていたけど、ここで言う技術文明には含まれないということだ・・

当時の答え:0.01つまり1%

 

Lは、その文明を維持継続できる時間のこと。

・・この最後の項目は、人類が持つような高度な文明はどのくらいの期間存続できるのか?という僕ら人類にとっての核心的テーマだよ。

 

ドレイクがこの方程式を提起した1961年のグリーンバンク会議では、この項目で激しい議論が巻き起こったんだ。

資源の浪費に関するテーマ “今で言えば地球の温暖化”のことや、“核戦争勃発の脅威”のことが議論されたようだ。

 

当時の答え:一万年だそうだ。

 

で、計算の合計をしてみよう。

(注:この数値と、計算はウイキペデイアから引用しています)

 

合計は10になったよ。

銀河系に知的生命体の文化が存在する惑星の数は想定10個ということだ。

 

「説明長かったけど、匠、これがドレイクの方程式の答えだったんだ」

 

「ヤッター! エイリアンのいる惑星は銀河系宇宙に10個もあるということだ」

匠が両手を天上に突き上げて大喜びしました。

 

「でもさ、パパ! この計算よくわかんないけど、この七つの数字って“たとえば”だらけだよ」

匠の鋭い指摘で我に返ったパパは、考え方の違う、別の記事を探しました。

 

小学館の日本大百科全書が、匠の疑問に答えていました。

合計のNは上記のNsのような項目の数値の取り方により大きく変わる。Nsからneまでの数値は最近だいぶ確からしい値が観測されつつあるが、flからLまでの数値は不確実性が大きく正確なNが出せていない。とくに文明を維持継続できる時間であるLはむずかしく、合計のNは1から100万まで種々の値が提案されている。

(出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))

 

「匠、どうやら現在の計算ではNの数字は1から100万まであるそうだ。匠の言うとおり“たとえば”だらけみたいだ。それでも0がないからエイリアンはかならず銀河系宇宙のどこかにいるってことかな?」

「パパ、この1って数字、もしかしたら僕らの地球のことじゃないの?」

 

パパと匠は顔を見合わせていましたが、一緒に吹き出してしまいました。

「でもさ匠、エイリアン文明が100万もある可能性を計算した学者もいるわけだから、楽しいじゃないか? もしかしたらエイリアンはうじゃうじゃいるぞってこわ~い話だ」

 

そう言ってパパはパソコンに向かって座り直し、さらに新しい記事を探し始めました。

しばらくして、パパはとんでもない記事を見つけ出したのです。

 

存在説 3 “地球は宇宙人が作る動物園?”

 

地球は宇宙人が作った動物園

 

 

 

 

 

 

 

パパが英語の記事を読んで、日本語に訳してくれました。

高度な知能を持った宇宙人がもう既に我々を発見して、人類を地球と言う巨大動物園の中で飼っている

Intelligent alien life may have already found us and enslaved humanity in a giant zoo: planet Earth。

 (2016年7月2日のWIRED NEWS(英))

 

ニール・ドグラース・タイソン(Neil deGrasse Tyson)というアメリカの有名な天文物理学者が、スペインで行われた「科学と芸術の祭典」でこんな発言をしていました。

宇宙人達は地球と言う動物園を作って、秘かに人類を観察して楽しんでいるというのです。

 

「人間自然動物園かな?」

パパが言うと匠がすかさず返しました。

 

「もしかしたら“猛獣につき注意”って看板立ってるかもね」

「それとも俺たち宇宙人のペットかも」

 

パパはさらに記事を読み進めました。

博士は次のように言っています。

 

・・・私は人類が知性を持った宇宙人と遭遇する可能性については悲観的だ。人間の知性は宇宙人と比べて低いから、宇宙人を発見する可能性が大変低い。

そして、できれば宇宙人の存在などなにも知らずに“動物園で過ごす方が“人類は幸せかもしれない・・・と。

 

「匠、これどう思う」

「パパ、それ無理だよ。僕たち、怖くても、知りたいことはどうしても知りたいんだよ!」

 

匠の好奇心はもう抑えられそうにありません。

「匠、ちょっと待った! このタイソン博士の発言、あの高名なホーキング博士が言った警告に答えたものだって書いてあるよ。ホーキング博士の警告って、いったい何なのか調べてみよう」

 

 “ホーキング博士の警告”

 

ホーキング博士の警告

 

 

 

 

 

 

 

 

調べていくと、その前の年、2015年にホーキング博士が“警告”を発しています。

警告の内容を紹介したのはスペイン紙「エル・パイス」でした。

 

「地球外生命体がわれわれ人類を絶滅させる可能性があるため、エイリアンとは関わりを持たない方がよい。エイリアンが地球に来た場合、コロンブスの米大陸上陸時のように、先住民族のことをよく知らないために起きた結果・・“大虐殺”になる」

 

このショッキングな発言は、いろんなメディアで世界に報道されて、広がったのです。

パパが調べを進めると、ホーキング博士はそれまでにもテレビ番組で自分の宇宙観を述べていました。

 

「地球以外に生命が存在する可能性はかなり高く、自分の惑星の資源を使い果たした後、資源や居住場所を求めて宇宙を彷徨っている恐れがある」

・・だから、宇宙人と接触しようとすることは危険なことだ・・

 

ホーキング博士の警告の趣旨をパパは匠に説明しました。

匠は腕組みをして聞いていましたが、しばらく考えていいました。

 

「僕のエイリアン探査も慎重にやれってことだね」

匠が偉そうにぼそっと言ったので、パパは吹き出してしまいました。

 

匠はもうエイリアンの調査に命がけなのです。

パパは最後にもう一度NASAのニュースを調べてみました。

 

「おっと、地球外生命の探査計画(SETI)についてNASAの最新のニュースが出てきたよ」

2019年2月11日、NASAの最新の発表記事が出てきました。

 

NASAが生命探知科学センターを新設

 

NASAは生命探知科学センター(Center for Life Detection Sciense, CLDS)という組織を新設していました。

CLDSの目的は「生命の起源と地球外生命体の可能性を探ること」とされています。

 

主任研究員トリ・ホラーさんはCLDSの使命について次のように語っています。

「これまでと違う最善の策は、地球とは全く違う世界の独特の状況においても生命を検出できる新しいツールや戦略を開発することだ」

 

そのための知恵を結集しようと・・CLDSはシリコンバレーにあるNASAエイムズ研究センターの中に本部を置いて、宇宙生物学、天体物理学、物理化学などの専門家を全米から集めています。

すでに、ジョージタウン大学やジョージア工科大学を始め、多くの研究者がCLDSの研究チームを立ち上げています。

 

「匠、NASAはどうやら本気でエイリアン探索に乗り出したようだぞ」

「やった!NASAが本気なら僕も頑張らなくっちゃ!」

 

大きく叫んで、匠がもう一度両手を天井に向かって突き上げました。

エピローグ

 

その夜のことです。

夕食を済ませたパパと匠はテラスに出て夜空を眺めました。

 

匠がいつもの小さな天体望遠鏡を持ち出してきて、惑星の探索を始めました。

「エイリアンはどこかな、僕たち人類はこの広い宇宙に一人ぼっちなのかな?」

 

匠が囁いて、パパが答えました。

「パパはどうしてもドレイクの方程式の最後の項目“L”が気になるんだ。

“高度な文明はどのくらいの期間存続するのか?”のところだよ。

このまま地球温暖化が続いたら地球内生命体の寿命もそれほど長くはないのかも知れないって、アダム・フランク先生は言ってるよ。

そのためにもエイリアンの研究は必要だってね」

 

「将来、どこかの宇宙人が地球をみつけてさ、“知的生命体の遺跡発見”なんてことないように、パパと二人でがんばらなくっちゃね」

匠がマジで答えて、二人は大笑いしました。

 

 (おわり)

 

匠とパパの「宇宙シリーズ」はここからどうぞお読みくださいね。

 

https://tossinn.com/?p=2062

 

https://tossinn.com/?p=80

 

 

【記事は無断転載を禁じられています】

 

ブラックホールは本当にあるの?ホワイトホールって何者? 

日曜日の朝のことです。

「パパ、ブラックホールは本当にあるの? ホワイトホールって何者か教えて」

 

「ブラックホールゲーム」に熱中している小学三年生の長男・匠が、リビングルームに飛び込んできて、テレビを見ていたパパにいきなり質問をしました。

 

「ブラックホールは写真も公開されていて、本当にあるよ。どんな物質も食べてしまう宇宙の穴だというけど、ホワイトホールはパパも始めて聞いたよ」

 

パパはそう言って、世界ではじめて撮影されたブラックホールの報道画像をテレビのニュースでみて、思わず記念に撮影しておいた写真を取り出してきました。

 

ブラックホールは実在していた! 世界初・国際協力で撮影に成功!

 

これがパパが写しておいたブラックホールの報道写真の一枚です。

ブラックホールをはじめて撮影。
 2019 /4/11
NHK・BSの報道写真

 

 

 

 

 

 

 

2019年4月10日に、世界ではじめて撮影されたブラックホールの写真が公開され、大きな話題を呼びました。

この画像は発表の翌日、11日の朝にNHKのBSニュースで報道されたテレビ画面をパパが撮影したものです。

 

公開されたブラックホールの写真は、世界6カ所の天文台が国際協力をして、電波望遠鏡で観測した映像を二年かけて解析し、統合してできあがったものでした。

撮影したブラックホールは地球から55万光年離れたところにあり、乙女座銀河団(銀河の集まり)の中の一つの銀河「M87」の真ん中あたりにあります。

 

これが、人類がはじめて目にした巨大ブラックホールの映像です。

巨大ブラックホールM87

 

 

 

 

 

「匠みてご覧、これがブラックホールが存在する証拠写真だよ」

パパが自慢げに、匠に画像を見せました。

 

 写真の赤い輪の中に、黒い穴がはっきりと見えます。

「匠、赤や白く見える部分は周囲のガスやちりが電波を出しているのを写したものだそうだ。この黒い穴がくせ者だよ。“ブラックホールの影”と言うんだそうだ」

 

「みつけた。これがブラックホールの正体さ。ブラックホール・ゲームの主人公、ミスター・ブラックはここに隠れていたんだ!」

匠がゲームを思い出して、興奮してきたようです。

 

「匠、すげーぞ! この黒いところの直径は1000億キロだそうだ。俺たちの住んでる太陽系がすっぽり丸ごと収まる大きさだって言うぞ!」

パパもすっかり興奮してしまいました。

 

ブラックホールが宇宙に存在することは、100年程前にアインシュタイン博士が発表した「一般相対性理論」から予言されていました。

この写真はその証拠写真といえます。

 

次にパパは、スマホでブラックホールとホワイトホールをざっくり調べてみました。

出てきた答えは、「ブラックホールは宇宙に実在しているが、ホワイトホールは理論上の存在」ということでした。

 

ブラックホールとホワイトホールのもっと詳しい正体が知りたくて、パパは匠と二人でパソコンの前に仲良く椅子を二つ並べて、本格的調査を開始しました。

 

ブラックホールは宇宙の蟻地獄!つかまったら二度と脱出できないその構造とは?

 

 

二人はまず始めに、NASAがYouTubeにアップしたいろんなブラックホールの映像を調べてみました。

NASAは米国の航空宇宙局のことで、米国の宇宙開発の中枢機関です。

 

NASAが掲載したブラックホールの映像の中で、もっとも迫力があったのは2015年10月に3機のX線観測衛星が観測した記録結果をもとに、ブラックホールが星を飲み込む瞬間を再現した映像でした。

 

ブラックホールは、周囲にあるすべての物質を引き寄せ、飲み込んでしまう・・光までも逃がさないほどの強烈な重力(引力)を持つ天体のことです。

光もそこからは脱出できないので、内部の風景は外から見ることができません。

 

だからNASAの映像は光で視覚的にとらえられたものではないのです。

宇宙の空間に含まれるガスが、ブラックホールに吸い込まれて、圧縮されるときにお互いにぶつかって、X線など超高温の電磁波を放射します。

 

NASAの映像はこれを観測したデータをもとに視覚的な映像に構成し直したものでした。

この動画を二人で見てみました。

 

NASA:星を飲み込むブラックホール

 

次々と星が飲み込まれていく圧倒的な映像に興奮した匠が、ブラックホールに感情移入してしまいました。

「その星、早く食っちゃえ!」とブラックホールに向かって叫んだのです。

 

匠はブラックホールゲームの主人公「ミスターブラック」になったつもりです。

パパはそこは大人として、冷静に解説をしました。

 

「ブラックホールは本物の星や物質をいくらでも食べ続ける天体らしいぞ。

蟻地獄のように、一度穴の中に滑り込んだ物質は、二度と逃げ出せないところだ」

 

熱中してきた二人は、ネットのサイト・チェックを進めました。

調べてみると、私たちの銀河系宇宙にブラックホールは5000万個も存在しているといわれていました。

 

小さなものでは、半径わずか30キロメーターくらいなのに、質量は太陽の400万倍もあります。

こんな小さな天体が自分より大きな星をいくらでも食べ続けているというのですから、とても神秘的です。

 

さらにブラックホールの調査を続けていくと、おかしな言葉が出てきました。 

【事象の地平線】です。

 

これは一体、何者でしょう。

事象の地平線とは、そこからは決して後戻りできないブラックホールの外界と内界との境界のことでした。

 

「事象の地平線から逃げ出せるのは、光より早いスピードを持つ者だけだって」

パパが大きな声を上げました。

 

「光より早い者なんてどこにもいないよ。だからブラックホールからはだれも逃げ出せないわけだ」

匠がパパに逆に解説を始めました。

 

事象の地平線を超えて、ブラックホールの中心に進むと、さらに怪しげな名前のところに到達しました。

そこは【特異点】“シンギュラリティー”と呼ばれています。

 

【すべての物質が、それ以上押しつぶされない限界にまで押しつぶされている】ところです。

「ここはまるで星や物質の墓場みたいだ」パパが低い声で呻きました。

 

(方々のサイトに出てくるこの画像は大変わかりやすいので、借用しました)

 

特異点に落ち込んだ星や物質は押しつぶされて存在が消滅すると言われていました。

ここは密度や重力が無限大に拡散していて、時空をねじ曲げている場所なのです。

 

物質が消滅するのなら、時間も空間も終わりを迎えるのかもしれません。

 

「飲み込まれた物質にも、ブラックホールにも、いつかは終わりがあるってことかな?」

匠がぼそっと言いました。

 

なんだか悲しそうな匠を横目で見て、パパは必死で別の学説を探しました。

「特異点と呼ばれるくらいだから、ブラックホールは無限に物質を食べることができるはずだ。食べた物質は消えるのかな? それともどこかへ行くのかな? ・・ちょっと待った!」

 

パパがなにかの記事を見つけて大声を上げました。

 

ホワイトホールの正体は、ブラックホールから生み出された新しい宇宙?

 

「別の学説が出てきた。この説だとブラックホールは無限大近くまであらゆる物質を食い尽くして、圧縮して、最後には腹一杯で我慢できずに爆発して、すべての物質をどこかへはき出すらしいぞ」

 

圧縮された物質はワームホールを通って、ホワイトホールに入り、爆発する。

そして新しい宇宙が誕生する。

 

無限に圧縮された圧倒的な質量と、光速に近いブラックホールの自転でできた強力な時空の歪みによって、自らを抑えきれなくなったブラックホールがついに大爆発を起こし、ホワイトホールから新しい宇宙を誕生させる。

 

・・ブラックホールが大爆発・ビッグバンを起こすことで、宇宙は圧縮と誕生を繰り返しているのかもしれない・・

 

これはニューヘイブン大学のニコデム・ポプラウスキーという学者が唱えた学説でした。

私たちの住むこの宇宙も、どこかのブラックホールの爆発から生まれたのかもしれないとこの学説は言っています。

 

新しい宇宙が別の宇宙のブラックホールから誕生したと主張すれば、この世界に宇宙はいくつも存在することになります。

この説は「マルチバース、多元宇宙論」といわれているものです。

 

この宇宙にあると推定されるブラックホールの数は5000万個と言われています。

「匠、エライ事だぞ。ブラックホールが新しい世界を生み出しているとすれば、この世にある世界の数は一体いくつになるのかな?」

 

パパと匠の背中がぞくりと震えました。

「異次元の世界は無数に存在する」

 

そんな怖ろしい世界観が浮かび上がってきたのです。

この説によると“新しい宇宙は古い宇宙であるブラックホールと、ワームホールでつながっている”とされていました。

 

ワームホールとは二つの宇宙をつなぐ虫食い穴です。

次の絵を見て想像してみてください。

 

 

左のブラックホールに吸い込まれた物質は圧縮され、真ん中のワームホールを通って、時空を超え、右側のホワイトホールからはき出される。

 

そして新しい宇宙ができあがるというのです。

 

「やった!ホワイトホールの正体見つけた! ミスター・ブラックの正反対の性格だ。分身みたいな奴だ。ミスター・ブラックが食べて、ホワイトがはき出す。新しい宇宙の入り口だ」

匠が大喜びで両手を突き上げました。

 

「物質にも、時空にも終わりはないらしい。この二つの宇宙をつなぐトンネル、ワームホールを自由に行き来することができれば、タイムトラベルが可能だということになるらしいぞ」

パパはもうすっかり興奮しています。

 

「パパ、もしかして僕らのこの宇宙も、ホワイトがはき出してできたものかもしれないよ。ホワイトを探せば、昔の宇宙へタイムトラベルができるってわけだ」

 

「しかしだ、匠、残念だけどホワイトホールはまだ理論上の仮の姿のようだぞ。パパにはまるで理解できない理論だけど・・」

 

そこまで言ってパパは頭を抱え込んでしまいました。

・・ブラックホールで押しつぶされて物質が素粒子になっても「情報は失われない」とか、「情報パラドックス」だとか、「ひも理論」とか・・まるで理解を超える話にパパはすっかり悩んでしまいました。

 

「悩まなくてもきっと大丈夫だよ、パパ! 昔はブラックホールも理論上の存在だったって言うよ。ホワイトおじさんもいつか、現実に姿を見せてくれるかもしれないよ」

 

「ワオ! 匠、また新しい記事が出てきたよ」

パパがなにか見つけて、叫びました。

 

「高名な車いすの物理学者、ホーキング博士が亡くなる少し前に、ブラックホールは別の宇宙に通じている可能性があるっていう発言をしたそうだ」

「やった!ミスター・ホワイトはきっと実在するんだ」

 

匠が大喜びして、跳び上がりました。

 

エピローグ

 

その晩、夕食を終えたパパと匠はテラスに出て、星空を見上げました。

「ホワイトはどこかな?」パパが匠に聞きます。

 

「パパ、もしかして僕らホワイトの中にいるのかもしれないよ」

匠がぶるんと身体を振るわすと・・。

 

「それとも匠もパパも、ブラックホールの特異点あたりで圧縮寸前かな?」

パパが答えて、二人は大笑いをしました。

 

 (おわり)

 

匠とパパの「宇宙シリーズ」続きはここからどうぞお読みくださいね。

 

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