NASA/ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が撮影したディープな宇宙の星たちを初めて公開!

2022年7月12日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が撮影した深い宇宙の星たちの驚異の映像をNASAが公開しました。星の誕生が見られる若い星雲から、生涯を終えつつある年老いた星たちの様子。踊るように見える5つ子の星や、水の存在を示す観測データ。130億光年離れたディープフィールドの銀河まで、エキサイティングな5つの映像をNASAの公式サイトからご紹介します。

1. カリーナ星雲  Carina nebula

Carina nebula カリーナ星雲(NASA公式)

生まれたばかりの若い星たちを包む星雲「カリーナ星雲」の画像です。山や谷や、雲のように見える風景は、実は巨大なガスや塵でできています。ガスや塵が落ち着いたところでは、集まって新しい星が形成されていきます。

この画像はカリーナ星雲の一部、NGC3324と呼ばれる若い星形成領域の端のゾーンを撮影した画像です。この星雲の高さは最大で約7光年・光の速さで7年掛かる距離があるそうです。

ガスの中にある若い星からの熱くて強い紫外線と恒星風が星雲を彫り上げています。高性能のジェームス・ウエブの赤外線望遠鏡でキャプチャーされたこの画像は、星が誕生する領域を始めて明らかにしました。

最新のウエブ赤外線宇宙望遠鏡によって、星が誕生するメカニズムがさらに詳しく解明されることが期待されています。

2. ステファンの5つ子 Stephan’s Quintet

ステファンの5つ子 Stephan’s Quintet (NASA公式)

「ステファンの5つ子」は近接した5つの銀河がダンスをしているように見えます。1877年にエドゥアール・M・ステファンによって発見された「ステファンの5つ子」が、この度、ウエブ望遠鏡で鮮明に映し出されました。この画像は、遠近の異なる5つの銀河を視覚的に近くに見えるように撮影した画像です。

銀河は4つに見えますが、上の大きな3つの銀河の中、一番下にある銀河をよく見ると白く光る部分が2か所あります。この銀河には中心が二つあるように見えますが、実はNGC 7318A と NGC 7318B という二つの銀河が存在しています。二つの銀河は接近しているので、接近遭遇による相互作用によって、いまも若い星が劇的に誕生していると報告されています。

実は、左サイドにある矮小銀河 NGC 7320 は地球から4,000万光年の距離に位置して、他の銀河は約3億光年先のペガスス座にあります。5つ子とはいえ、一つだけ約7倍も地球に近いので「5つ子」とはいえないかもしれませんね。

下の画像は、ウエブ宇宙望遠鏡の兄貴分に当たるハッブル望遠鏡で2,009年半ばに観測した「5つ子」です。赤外線望遠鏡のウエブの最新画像と比較してみると特徴が異なるので興味深いですよ。

「ステファンの5つ子」ハッブル撮影・合成(NASA公式)

ハッブルの観測は、青、緑、赤外線とフィルターを用いて、合成画像を作成しています。赤外線望遠鏡のウエブ画像よりもカラフルに見えるのはそのためです。

3. 南のリング星雲 Southern Ring Nebula

南のリング星雲 Southern Ring Nebula(NASA公式)

“Some stars save the best for last.” 

「いくつかの星は、最高のものを最後まで取っておきます」(NASA公式)

ロマンティックなキャッチコピーで紹介されているのは、約2,500光年の距離にある、生涯を終えかけて美しく輝いている「南のリング星雲」NGC 3132 の画像2点です。NASAは、この画像はこの星が塵に覆われた惑星状星雲であることを明らかにしたと報告しています。

惑星状星雲とは死にかけた星が放出するガスや塵でできた星雲のこと。惑星状星雲になるのは太陽の8倍以下の質量の恒星で、核融合の材料がなくなる最終段階で膨張して赤色巨星となります。星の外層のガスが周囲に放出されて、中心に取り残された白色矮星からの紫外線が周囲のガスを電離して天体がこのように輝くのです。

左右に2枚の画像がありますが、「左の“近赤外線カメラ”の画像では、星とその光の層が際だっており、右の“中間赤外線カメラ”の画像では、二番目の星が塵に囲まれていることが初めて明らかになった」と、NASAは報告しています。

中心に見える明るい方の星は星形成の初期段階にあり、将来的には自らの惑星状星雲を放出すると考えられているとのことです。

4. WASP-96b

恒星の周りの巨大ガス惑星の大気中に水の存在を示すサインを確認(NASA)

恒星の周りの巨大ガス惑星の大気中に水の存在を示すサインを確認(NASA)

NASAによれば、ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が、太陽に似た恒星の周りを周回する高温の巨大ガス惑星WASP-96 b の大気中に水の存在を示す明確なサインを捉えたと発表しました。

WASP-96 b は、天の川銀河系で確認されている太陽系外惑星の一つ。南天のフェニックス座から1,150光年の距離に位置するガス惑星で、太陽系には存在しないタイプです。質量は木星の半分以下、直径は1.2倍、水星と太陽の距離の9分の1という近距離を公転しています。

WASP-96 b は、大きさ、公転周期の短さ、大気の膨らみ具合などから大気観測に理想的な天体だとのことです。ハッブル宇宙望遠鏡は20年以上をかけて太陽系外の惑星の大気を分析して、2,013年に始めて水を検出しましたが、ウエブ宇宙望遠鏡は即時に何百光年離れた惑星の水の大気を検出しました。

水は生命の誕生に不可欠です。ウエッブ宇宙望遠鏡は、地球外の居住可能・ハビタブルな惑星の特徴を探る上で、大きな期待をかけることができる存在と言えます。

5. SMACS 0723

デイープフィールドの銀河団SMACS0723(NASA公式)

ウエッブ宇宙望遠鏡が撮影したディープ・フィールド(最も遠い宇宙)の銀河団SMACS0723の画像です。“最も暗い天体を含む何千もの銀河”が、ウエッブの前にその姿を現しました。この画像は手のひらサイズの砂粒のようなもので、広大な宇宙の一角に過ぎないとのことです。

画像に映っているのは、46億年前に出現したSMACS 0723 という銀河団とその前後にある銀河の映像です。46億年前に宇宙に飛び出した光は宇宙の膨張によって引き延ばされ、波長の長い赤外線となって、ウエッブ赤外線望遠鏡に素早くキャッチされ映像化されたのです。NHKが専門家に問い合わせところ、画像の中には130億光年離れた銀河も映っているとのことです。

不思議な特徴として、NASAはこのフィールドが極めてアーク状であると報告しています。銀河団による強力な重力場が、背後にある遠くの銀河からの光線を曲げているとのことです。虫眼鏡が画像を曲げて歪ませるように、背景の画像は歪んでいるのだそうです。

ウエッブの今後の活躍

ウェッブの中間赤外線観測装置(MIRI)は、星の形成や生命の誕生に重要な要素であるダスト(塵)の存在を探しています。今後、さらにディープなフィールドからの赤外線がキャッチできれば、生命の誕生や、宇宙の始まりの謎が解明できるかもしれません。

(おわり)

ウエブ宇宙望遠鏡のミッションについてはここからどうぞ。

原始の星を探れ!ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡に与えられたミッションとは?

参照:NASA公式サイト

ウエブ宇宙望遠鏡の画像はここからどうぞ。

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下條 俊隆

下條 俊隆

ペンネーム:筒井俊隆  作品:「消去」(SFマガジン)「相撲喪失」(宝石)他  大阪府出身・兵庫県芦屋市在住  大阪大学工学部入学・法学部卒業  職歴:(株)電通 上席常務執行役員・コンテンツ事業本部長  大阪国際会議場参与 学校法人顧問  プロフィール:学生時代に、筒井俊隆姓でSF小説を書いて小遣いを稼いでいました。 そのあと広告代理店・電通に勤めました。芦屋で阪神大震災に遭い、復興イベント「第一回神戸ルミナリエ」をみんなで立ち上げました。一人のおばあちゃんの「生きててよかった」の一声で、みんなと一緒に抱き合いました。 仕事はワールドサッカーからオリンピック、万博などのコンテンツビジネス。「千と千尋」など映画投資からITベンチャー投資。さいごに人事。まるでカオスな40年間でした。   人生の〆で、終活ブログをスタートしました。雑学とクレージーSF。チェックインしてみてくださいね。

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