未来からのブログ6号 “クラウドマスターとのブランチは生牡蠣だったよ!”

僕の名前はタンジャンジャラ。

「ジャラ」って短く呼んでくれていいよ。

 

ところで君の名前はなんていうの?

君、きっとすこし変わってるんだろうね。

 

おじいちゃんのクレージーSF読んで、ジャラともつれてくれてるんだものね。

「ありがとう!」

 

それじゃ、いつものように100年先の未来からブログ送るよ。

・・クラウドマスターと重要会議してるとき、いきなり二人の男が乱入してきた・・っていう話の続きだったよね。

 

前回のストーリーはここからどうぞ読んでくださいね。

 

未来からのブログ5号“皇帝クラウドマスターはクールで可愛い人工頭脳だったよ”

 

未来からのブログ6号 “クラウドマスターとのブランチは生牡蠣だったよ!”

「腹減った~」

「なんだこの匂い、たまらんぞ!」

 

突然の乱入者は、もち、いつもの二人さ。

サンタ・タカシとはさみ男だよ。

 

「やー! ジャラにカーナ、重要会議に遅れて済まない」

サンタ・タカシがそういって、はさみ男がすかさず続けたよ。

 

「ちょっと寄り道しててさ、約束に遅れちまった」

ジャラもカーナも約束した覚えがない。

 

クラウドマスターも、あっけにとられて突っ立ってたよ。

「どうやってあの最高機密のセキュリテイー・ドアこじ開けたのかな?」

 

マスターの問いにシザーマンが軽く答えた。

「俺のブレーン、みくびるんじゃないよ」

 

不気味に光る右手を差し出して、マスターの目の前でチャカチャカはさみ鳴らしたよ。

「シザーマン! あの暗号アルゴリズムが解読できたというのか?」

 

そういったクラウド・マスターが、シザーマンのはさみの先が折れてるのに気がついた。

「シザーマン、大事のはさみの先っぽ、折れてるみたいだぞ。お前、力任せでやったな?」

 

「うっ!」

シザーマンがあわててはさみを隠したよ。

 

サンタ・タカシがソファーに深々と腰掛けて、マスターに偉そうに聞いたよ。

「で・・俺たちのブランチは?」

 

クラウドマスターはクスッと笑って二人分のブランチをテーブルに用意してあげたんだ。

もち、ハマハマとくまもとだ。

 

マスターはサンタ・タカシとはさみ男の二人にはとくべつ優しい。

二人をまるで自分の子供だと思ってるみたいだ。

 

前にもいったけど、デザイナーズ・ベビーのサンタ・タカシはクラウドマスターが親権代理人だよ。

二人のスーパースターのDNAを人工編集して生まれたサンタ・タカシには父親がいないから、サンタ・タカシに事業投資したクラウドマスターが父親になったのさ。

 

それから、ある貧乏なヘヤー・デザイナーが自動運転の車とぶつかって、右手を大けがしたときのことだ。

その車を運転していたクラウドマスターの分身が、自分の身体のコンピューターの一部を使って、応急手当をしたのさ。

 

その手が、ヘヤーカットができる特殊な金属の“はさみ”になっててさ・・・貧乏デザイナーがすっかり気に入ってしまって、はさみそのままにしてシザーマンになったってワケ。

これで生牡蠣出てきたワケ、わかった?

 

「ワインはどちらにする?」

シザーマンがサンタ・タカシに聞いた。

 

「きりりと冷えた白だろうな」

サンタ・タカシが答えた。

 

そしたら、テーブルに白ワインが二つのグラスで出てきたよ。

もちろんマスターの特製・合成ワインだよ。

 

「俺たちのこと気にしないで、会議続けてくれていいよ」

シザーマンがそういったので、ジャラはカーナに確かめたよ。

 

「僕はどこまで話たっけ?」

「盗まれたエネルギーを“過去の世界から取り戻すいい考え浮かんだ”ってとこからよ」

 

「誰がそんなこといった? カーナかな?」

「ジャラよ。とぼけてないでいい考えっての、早く思い出しなよ。それともまた得意の口からでまかせだったっての?」

 

ジャラは思い出した。

口からでまかせをいおうとしたときのことをさ。

 

ジャラはとうとうとみんなに話したよ。

「そうだ、思い出した。僕は良いことを思いついたんだよ。

ジャラはその良い考えをこれからおじいちゃんに伝えることになるのさ。

そうしたら、それがおじいちゃんのブログに掲載される。

そのブログのタイトルは“未来からのブログさ”。 

そのブログはいまから100年前のものだから、クラウド・マスターのデジタル・アーカイブに残ってるはずだ。

マスターにお願いがあるんだ。

アーカイブをひっくり返して探してほしいんだ。

僕の凄い考えはマスターのメモリーの中にかならずある。

頼んだぜマスター!

ジャラの答えは、マスターの頭の中にあるんだよ」

 

どう~? ジャラのこの考え凄いだろ。

全員、感心して口あんぐりしてたよ。

 

その時だよ。

クラウドマスターが瞑想に入ったのさ。

 

古い過去の記録をアーカイブの底から探し出そうとしてたのさ。

「ない!」

 

クラウドマスターが唸った。

「未来からのブログというタイトルは数ページ出てきたが、中身は白紙だ!」

 

マスターが冷たく言い放ったよ。

「ジャラ、口からでまかせ言うんじゃない。

君はまだそのいい考えというのを思いついていない。

思いついてもいない考えが記録に残るわけがない。

時空のパラドックスを馬鹿にするんじゃない。

ジャラ、悪いが、早く思いつくことだな。

でないと思いつくまで今日は帰さないよ。

明日も、あさっても、ずーっと、ずーっと、つらーい残業が続くよ」

 

ジャラは唸った。

だって今日の午後はドリーム・ワールドで、久しぶりに娘のクレアと息子のボブに面会する予定だからさ。

 

今日は帰れないよ? 残業は続くよだって? これじゃ永久にクレアにもボブにも会えない。

そのうちクラウドマスター退場のテーマソングがはじまった。

 

「チャンチャカチャー、ちゃかちゃ~、チャカチャー」

「ずっと残業だって? 悪いのは僕じゃない。エネルギー盗んでるのは過去の人たちだよ!」

 

その時だよ、答えがひらめいたのは・・。

エネルギー返してもらう答えのことさ。

 

凄い答えだよ。

・・残業は過去の人達にしてもらうことにしよう・・だよ。

 

あのね・・ブレーン・ネットワークでワーキングするのってとんでもないエネルギーがいるんだ。

いまも宇宙の総エネルギーを計算してる真っ最中だよ。

 

過去の世界の使いすぎで、僕らの宇宙のエネルギーがとても少なくなったのにさ、いまもまだ過去の世界に盗まれてるんだよ。

すこしは返してもらわなくっちゃね。

 

で、この世の仕事を手伝ってもらうことにするよ。

もち、君にだよ。

 

その代わりにジャラが未来の情報を提供するよ。

おじいちゃんとの量子もつれ使ってこれから毎日送るからさ、情報を参考にして立派な未来作り上げてほしいのさ。

 

これならクラウドマスターも、未来の情報送ることに賛成してくれると思うよ。

・・昔の人、つまり君がOKすればの話だよ。

 

ブレーン・ネットワーキングの仕事の仕方はこれまでずいぶん説明したから、もう理解してくれてるよね。

ジャラの世界の人口なんてすこしかいないけどさ、過去の世界には数十億の人がいるからさ、凄いネットワークができあがると思うよ。

 

それじゃまずクラウド・マスターに話してみることにする。

 

「待ってマスター!」 

ジャラは立ち去るクラウドマスターを呼び止めたよ。

 

そして僕の考えを話した。

・・いまから言うジャラの考えを取り入れたら、エネルギー不変の方程式が完成します。

この方程式は、時空を超えた方程式です。

うまくいけばこの世の宇宙のエネルギー問題もすこしは解決します。

説明しますからよく聞いてくださいね・・

 

ジャラのアイデアを聞いたマスターの表情が晴れ上がった。

「私の宇宙おむつがとれるのなら大賛成だよジャラ!」

 

「宇宙おむつまでとれるかどうかは、過去の人達の熱意次第です。では過去とのもつれを進めてみます」

ジャラはもう得意満面だったよ。

 

カーナが尊敬の目でジャラを見てた。

サンタ・タカシとシザーマンは「ジャラのおかげだ!」って、白ワインうまそうに飲んでたよ。

 

でもさ、気分よかったのはそこまでだった。

「で、ジャラ! 次のおじいちゃんとの連絡はどうするんだね?」

 

マスターに聞かれてジャラのおつむは真っ白になった。

・・次のおじいちゃんとの連絡方法だって?・・

 

「ジャラ、次の連絡はサンドレターだぞ」

昨日の夜、おじいちゃんの言った最後のセリフが聞こえたよ。

 

タンジャンジャラの白い砂を混ぜた七色カクテルの最後の一滴のおかげだよ。

“あのサンドは使い果たした。”

 

・・おじいちゃんと量子もつれするためのサンドがない・・。

ジャラは呟いて、下を向いた。

 

「ジャラいまなんて言った?」

クラウドマスターのクールな一言がジャラを冷やした。

 

「おじいちゃんと話をするためのサンドがない。昨日の夜、全部飲んでしまった」

仕方なくジャラは繰り返した。

 

マスターはさらにジャラを追い詰めたよ。

「ジャラ、一言付け加えると、マスターの計算によれば、昨日のおじいちゃんとの量子もつれは、110年に一度のチャンスだったと言っておこう。

おじいちゃんとジャラのDNAが粒子状でもつれて、お互いに影響を及ぼすのは、太陽と月と時空の関係で110年に一度しかない。

今日以降の時間で、時空を超えてつながるにはその白い砂が必要なんだよ」

 

「タンジャンジャラのサンドがないとジャラはおじいちゃんとつながらない。マスター、どうして昨日のうちにそう言って忠告してくれなかったんだ!」

ジャラはむかっ腹がたって、マスターに噛みついたよ。

 

「ジャラはまたそんな無茶を言う。人工知能が人間にできるのは差し迫った“注意”だけだ。忠告なんて贅沢なものが欲しいときは人間同士でやりとりしてほしいね。わかってて無理いうなよジャラ!」

マスターが珍しい言葉を使ったよ。

 

斜めになったイタリック体のところだよ。

ジャラが感心してマスター見つめてたら、サンタ・タカシがにやにや笑って近づいてきたんだ。

 

「AIと人間の喧嘩はじめてみたぞ。面白いぞ。もっとやれ!」

はさみ男も近づいて来て、なにか言ったよ。

 

「サンドほしいか?」

はさみ男がポケットから折りたたんだ小さなハンカチ取り出してきたよ。

 

「サンドほしいか?」

サンタ・タカシもポケットから折りたたんだハンカチ取り出してきた。

 

ジャラとマスターが同時に大声上げたよ。

「サンドほしい!」

 

ジャラは思い出した。

昨日のことをさ。

 

・・入り江の海、ホットクロス・スポットでの出来事だ。

「それ“量子もつれ”・・か」

 

はさみ男とサンタ・タカシが砂粒を一粒ずつ大事に指に挟んで調べてた。

それからハンカチに包んでポケットにしまい込んだシーンをさ・・。

 

「本物だぞ!」

サンタ・タカシとシザーマンが唸るように吠えた。

 

それからハンカチを開いた。

カーナとジャラとマスターは顔見合わせたよ。

 

二つのハンカチの中で白く輝いていた砂の粒子は・・

合わせてたったの二粒だった。

 

ただちにジャラは決断したよ。

「一粒は今すぐ飲んでおじいちゃんの話の続きを聞く。きっと大事な話が聞けるはずだよ。もう一粒はおじちゃんとの最後の連絡のために取っておく」

 

ジャラの宣言を聞いて、クラウドマスターはあわてて両手を宙に挙げて指先からプラズマを放射したんだ。

中空に白ワインのグラスが一つとストローが五本出現したよ。

 

マスターが指先を下に向けると、ワインの入ったグラスとストローがテーブルの上に静かに着地した。

で、全員が席に着いた。

 

「ワインにサンタ・タカシの一粒入れてくれるかな」

ジャラがサンタ・タカシに頼んで、白い砂のひとかけらがそっとグラスに入れられたんだ。

 

砂がワインに溶け込んだのをみて、五人がストローをグラスに入れた。

顔をくっけながら、ワインを飲んだ。

 

グラスが空になって、五人は顔を見合わせた。

そろそろだ。

 

その時、あのしゃがれ声がみんなの耳に届いたんだ。

 

・・・で、生牡蠣にはなんといっても白だ。

間違っても赤はいかんぞ。

できれば、すこし値段が高いがナパの白“ファーニ××”だ。

冷やし過ぎるなよ・・。

で、ここから××しろよ・・

 

そこで、声が消えていった。

五人は顔を見合わせたよ。

 

「ほらみろ、白が正解だったろ!」

サンタ・タカシが自慢したよ。

 

「”××しろよ”って何の意味かしら」

カーナが口とがらせて聞いたよ。

 

「ワインのブランドだ」

はさみ男が答えたよ。

 

「違うわよ、聞きたいのは“ここから××しろよ”の方よ」

カーナがいったので、ジャラが答えたよ。

 

「ここからのここは最後の一粒のことかもしれないよ。マスター、××の答えを計算して教えてよ」

ジャラがそう言ったらクラウドマスターが明快に返したよ。

 

「”ここから××しろよ”の解釈は宇宙の星の数ほどある。計算はできるが答えは出ない。ここは人間の出番だ! だれか“どて感でいい、答えろよ”

「うーむ・・」

 

ジャラとサンタ・タカシとシザーマンは唸ったが、どて感が働かなかったよ。

どて感が働いたのは、アマゾン出身のカーナだった。

 

「何をうじゃうじゃ言ってるのよ。マスターが自分で答え言ってるじゃない。最後の一粒は飲んでしまわずに“答えろよ”なのよ。手紙でいったら返信覧じゃないの。最後の一粒に返信書けってことよ!」

 

カーナが明快に結論を出してくれて、重要会議はなんとか終わったんだ。

最後の一粒は、はさみ男のシザーハンドからクラウドマスターに慎重に手渡されたよ。

 

「粒子の検査ともつれをほぐすキーワードをみつけるのに二日はかかる。また会議を招集する。ジャラはおじいちゃんへの返信の内容を簡潔に36文字で考えておくこと。それでは解散する。お疲れ様!」

 

ようやくミーティングは終了したよ。

で、ジャラはすぐにスーツマンに命じて、クレアとボブに会うためにドリームワールドへ急いだんだ。

 

二人に会うのは久しぶりだよ。

・・クレアもボブも僕のこと忘れてないか、すこし心配だよ・・

 

(続く)

続きはここからどうぞお読みください。

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この世の果ての中学校11章 大きなエドから生まれた空飛ぶ小さな子供たち!

 緑の第二惑星に、最後の一人として生き残った少年エドは、凶暴な虫たちの襲撃からはぐれ親父や男子生徒に助けられ、HAL号で調査隊とともに第三惑星に向かった。

 はぐれ親父の予言通り、第三惑星の裏側には緑の森が続いていた。

 

 ・・・宇宙艇のデッキから、エドが草原に飛び降りた。

 エドは、新しい世界の空気を胸いっぱい吸い込み、確かめるように足元の大地を踏みしめる。

 

 準備運動が終わると、エドは頭を下げ、顎をぐいと引く。

 そして前方に広がる深い森に向かって全速力で走りだした。

 

 はぐれが併走して、裕大と匠とペトロが後に続く。

 森が近づくとエドは一段とスピードを上げた。

 

 エドと、四人との距離が一気に開いていった。

 エドは森の手前で立ち止まり、振り向いて手を振った。

 

「ありがと~う!」

 大きな声でお礼を言うと、エドは、あっという間に森の中に消えていった。

 

 はぐれ親父と、四人の生徒もエドのあとを追って森の中に入っていった。

 

・・・前回のストーリーはここからご覧ください。

この世の果ての中学校 10章  生き残った少年エドと黒い絨毯

 

11章 エドから生まれた空飛ぶ小さな子供たち

 

 しばらくして森の頂きから、バン! という小さな破裂音が聞こえた。

 丘の上の空に一筋の青い煙が立ち上っている。

 

 煙は風に乗って麓の森にたなびいて消えていった。

 

 エドを追って森に消えたはぐれ親父がしばらくして森から出てきた。

”この森にでかい昆虫は見当たらない。エドの子供たちは一安心だ!”

 親父は独り言ちて、安堵のため息をつき、バタリと草原に座り込んだ。

 

 エドを追いかけて、森の頂上まで駆け上っていった裕大と匠とペトロが、息を弾ませながら、はぐれのもとに帰ってきた。

「エドは空に消えました。どこにも遺体はありません。これだけが残っていました」

 裕大がぼろぼろに裂けた衣服を親父に差し出した。

 匠は、使い込んだ大ぶりのナイフを、ペトロは履きつぶされた靴をはぐれに渡した。

 

 はぐれはエドの遺品を一つ一つ丁寧に調べた。

 裂けた衣服を小さくたたみ、靴は形を整えた。

 ナイフは鞘から抜き出して、手ぬぐいで汚れを拭い、もう一度鞘に戻した。 

 終わると、三人の顔を見つめた。

 

・・・お前たちに頼みがある。

 エドは立派に責任を果たして、空に散った。

 エドから生まれた子供たちが、この惑星で元気に育ってくれることを祈ろう!

 これは若い英雄の記念品だ。

 レジェンドとして名誉ある形をこの惑星に残してやりたいと思う。

 どうするか、生徒たち、みんなで知恵を絞って欲しい・・・

 

 そう言って、はぐれはエドの遺品を三人に預け、宇宙艇に戻っていった。

 途中で立ち止まって、空を見上げ、森の頂にかすかに漂う青い煙の跡を見つけた。

 

 「エド、よくやった!」

 輝く太陽に照らされて、はぐれ親父の無骨な顔にきらりと光るものが一筋見えた。

 

 ・・・宇宙艇のキャビンに生徒全員が集まって相談を始めた。

 結論がまとまると、六人は直ちに作業に取りかかった。

 

 宇宙艇の工具室から円筒型の金属製のボックスと、細長いプレート板を探し出した。

 次にハル先生に助けて貰って、プレートの裏面に特殊な仕掛けをした。

 

 それがおわると、プレート板の表面にみんなで考えた記念の文字を彫り込んでいった。

 六人は、エドの消えた森の近くに日当たりのいい平地を見つけて、縦型の穴を掘った。

 

 金属ボックスにエドの靴と、ナイフと、緑の衣服の切れ端を収めると、しっかりと蓋を締めて穴に埋め、細長いプレート板をボックスの上部に接合させた。

 最後に穴の周りの土をみんなで踏み固めた。

 

 円筒ボックスの上半分にプレート板を取り付けた1メーターほどの高さの記念碑が、地面から立ち上がった。

 大きな白い布で記念碑を覆って、準備が完了した。

 

 夕刻になり、森のそばで二日目のキャンプの準備が始まった。

「小さなエドはどこ? どこにいるの」

 

 マリエが森の中で乾いた薪を拾い集めながら、小さなエドを探していた。

 

 頭の上でブーンと小さな羽音が聞こえた。

 薄青い煙の中で10センチ位の小さな少年が羽根を震わせて浮かんでいる。

 

「エド、エドなのね!」

 目を丸くしたマリエの声が弾んだ。

 

「違うよ、僕はリトル・エドだよ」

 小さなエドが、小さな羽根を左右に振って、偉そうな挨拶をした。

「しばらくは羽が生えて空を飛べるんだぞ!」

 

 生まれたばかりのリトル・エドは、からだがとても柔らかそうに見えた。

 マリエはそっと右手の人差し指を宙に差し出した。

 小さなエドはマリエの指先に止まって羽を休ませる。

 

 エドにそっくりの小さな緑の目が必死にマリエを見つめた。

 羽が細かく震えている。

 

 マリエの胸はきゅんとつぶれた。

 

「お腹空かない?」

 マリエが尋ねた。

「一週間は大丈夫だよ。大きなエドから栄養分をもらってるんだ」

「寒くはない?」

「少し寒い」

 リトル・エドがぷるっと羽根を震わせた。

 

 マリエはリトル・エドを自分の頭に乗せて、暖かい髪の毛でしっかり包み込んだ。

「リトル・エド、動いちゃだめよ」

 

 小さなエドに言い聞かして、マリエは乾いた薪をもう少し集めた。

 キャンプ地に戻ると、仲間もエドの子どもたちを連れて帰っていた。

 

 ペトロは小川の上を気持ちよさそうに低空飛行しているアナに出会った。

 エーヴァは楓の幹に止まって、美味しそうに樹液のシロップをなめているボブを見つけた。

 

 匠は鼻にぶつかってきたクレアを連れて帰ってきた。

 エドの小さな子ども達は、柔らかくて丈夫な森の葉っぱを使って、可愛い緑の服を作り上げて身につけていた。

 

 元気なボブが、ぶんぶん飛び回りながら、お喋りを始めた。

 

「僕たちはみんな虫に食べられそうになって、大きなエドの中に隠れていたんだよ。今日は僕たちの誕生日なんだ。そうだ、大きなエドがいなくなったから、子供四人で家族しようよ」

 

 ボブが緊急提案をした。

 

「それじゃ、僕がパパをするよ」

 リトル・エドが、偉そうに胸を膨らませた。

 

「私はママよ」

 アナが長い髪の毛をひっつめると、くるりと結わえて丸い束にした。

 

「僕は弟で、クレアが姉さん」

 元気なボブが細身のクレアに甘えたくて、勝手に宣言をした。

 

「エド・ファミリーだよ」

 ボブが先頭になって、四人は輪になって宙を舞った。

 

「大きなエドはどうしてるかな」

 リトル・エドが心配そうに空を見上げる。

 エドの子どもたちは、赤く染まり出した夕暮の空を見上げた。

 四人は、必死に涙をこらえた。

 

 座っていた裕大がいきなり立ち上がった。

「今から全員で大きなエドとお別れの式典を行う!」

 匠が号令をかけた。

「全員整列、出発!」

 

 裕大が森の外れの小さな広場に向かって先頭で歩く。

 エドの子どもたちが羽音をぶんぶんたてながら、裕大の背中に一直線に並んで付いて行く。

 

 子供たちの周りを生徒たちが守って歩いた。

 森の側の小さな広場に、白い布で包まれた長方形のプレートが立っていた。

 

「これ、大きなエドの記念碑。今から除幕式を始めるわよ。位置について!」

 咲良が指揮して、四人のエドの子供たちが羽音を立てて、記念碑を覆う布の四隅を下から持げた。

 

「一、二の三!」

 

 咲良のかけ声で、エドの子どもたちが空高く飛んだ。

 布は高く持ち上げられ、ふわりと横の地面に落ちた。

 

 記念碑が現れ、夕陽を反射して黄金色に輝く。

「うわーを!」

エドの子どもたちが歓声を上げて、碑の周りを囲んだ。

 

「若き勇者・大きなエド 地球歴2092年 ここ第三惑星テラに眠る」

 ボブが大きな声で彫り込まれた文字を読み上げた。

 

 マリエが碑の前に跪いて、お祈りの言葉を勇者に捧げる。

 エドの子どもたちは順番に大きなエドにお別れの挨拶をした。

 

 リトル・エドが代表で、生徒たちに記念碑のお礼を言って、大きなエドとのお別れの式典が終わった。

 森の影から、はぐれ親父がこっそり記念碑に手を合わせていた。

 

・・・キャンプのたき火を囲んで、暖かいお茶が入り、お喋りが弾んでいった。

 丸太で作ったテーブルの上に小さな平底のお皿が二つ置かれている。

 リトル・エドとアナ、ボブとクレアが仲よくお皿の縁に止まって、暖かくて甘いハーブテイーを美味しそうに飲んでいた。

 

 同じ頃・・・宇宙艇の操縦室では地球へ帰るルートの検討会が始まっていた。

 はぐれが勧める、めちゃくちゃ時間が稼げるが、かなり危険な最短ルートを取るか、パイロットのエーヴァ・パパが主張する、かなり安全だが数日はかかりそうなルートを取るか、議論が盛り上がっていた。

「燃料が残り少なくなっています」

ハル先生がナノコンから顔を上げて報告して、直ちに結論が出た。
 

・・・森の側で、裕大が薪をたき火に追加した。 

 リトル・エドはマリエの頭、アナはペトロの右の肩。

 ボブはエーヴァの耳の上、クレアは匠の鼻の上に止まった。

 

 エドの子供たちの落ち着く場所が決まって、お喋りが弾んでいった。

 

 裕太が口火を切った。

「ここには小さな虫しかいなくてよかったぜ。森に凶暴な奴らが潜んでたら、俺たち今頃、派手にドンパチやってたとこだよ」

 裕大が電子銃をぶっ放す格好をする。

 

 つづいて、リトル・エドが賢そうなセリフを吐いた。

「僕はあの凶暴な虫たちを恨まないことにしたよ。

 虫たちだって、僕らが来るまでは平和に暮らしてたんだと思うんだ。

 戦争の原因は、大きな僕たちがやってきて、虫たちを少しづつ食べ出したからだよ。

 凶暴にしたのは僕たちの方だと思うんだ」

 

「そりゃ甘いな!」

 匠がリトル・エドを挑発した。

 

「とにかくさ、食べ物がないのが戦争の始まりだよ。

 驚くなよ、地球も緑の第二惑星と同じだ。

 地球の食料なんかとうの昔になくなってるんだ!

 食べられる側の植物や動物たちが、俺たち人類への逆襲を始めたんだ。

 ゲノムの逆襲だってカレル先生が言ってたぞ。

 もう終わった話だけどな・・・食うか食われるかなら、地球もここといい勝負だ」

 

 ボブが口をとんがらかして、反論した。

「そりゃー、この勝負は僕たちの勝ちだよ。

 なんてったってここじゃ、小さくならないと生きていけないんだもの。

 大きなエドと仲間の科学者が昔、難しいこと話してたよ。

 僕たちの生き方、これって『共生』とかに近いって・・・。 

 爆発して胞子で繁殖するのは人類の植物化現象だって。

 僕たちそのたびに小さくなっていくんだ。

 もう消滅寸前だよ」

 

 ペトロが割って入った。

「でもさボブ、ここにはまだ緑が一杯あるじゃない。

 自慢するわけじゃないけどさ、僕たち地球じゃ、緑の森なんて見たこと無いよ。

 これ、匠の決めのセリフだけどさ 

 ”俺たち、実は既に絶滅してるのかもしれねーんだ”。

 どうだ僕たちの勝ちだ」

 
「結構いい勝負ね?」

 ママ・アナが判定に困った。

「引き分けってとこかな」

 咲良が結論を出した。

 

 ”バン!” 

 焚き火がいきなり弾けて、みんな跳び上がった。
   大笑いしてまたお茶を飲んだ。

 

「私たちって、友達だよね」

 細身のクレアが焚き火に向かって確かめるようにいった。

 

「そうよ、私たちみんな友達よ」

 エーヴァが答えた。

 

「僕たち、これでもまだ人類なの?」

 小さなボブが心配そうに聞く。

 

「ボブ、安心なさい! 私たちいつまでも人類よ。だからこうして家族とか友達とかしてるのよ」

 マリエが優しくボブに微笑む。

 

“ブーン!”

 ママ役のアナが息をいっぱい吸いこんで胸を膨らませると、ペトロの肩から空中に浮かび上がった。

 

“ブン、ブーン、ブーン!” 

ボブとクレアとパパ役のリトル・エドも、胸を膨らませて、空中に浮かぶ上がった。

 

エドの家族が空中に輪を描いて生徒たちの頭の上をブンブン飛び回った。

「全員で、家族になろうよ。儀式だよ。立ち上がって、整列だよ」

 

 小さなボブが呼びかけた。

 地球のみんなが立ち上がって、エドの家族の輪の下で横一列に並んだ。

 

 マリエが一歩前に出た。

「いまから全員を人類の家族とする。仲よく助け合って生きていけますように・・・神のご加護を!」
 

 マリエが宣言して、胸の前で十字を切る。

 みんなで復唱して、人類の守り神に祈った。

 

「遅くなっちゃった。そろそろ失礼して、新しい家族の家を作らなくっちゃ。さー、忙しくなるぞ!」

 リトル・エドが生徒たちにお別れの挨拶をしようとした。

 

「あら、ボブとクレアがいないわよ」

 ママ・アナがボブとクレアの姿が消えたことに気がついてあわてだした。

 

 二人はテーブルの下や、裏返したお皿の中や、近くの藪の中まで調べてみたがどこにもいない。

 
・・・騒ぎを聞きつけて、はぐれ親父がどこからか現れた。

 

 親父はエーヴァのジャケットの胸ポケットを指さして「だめだよ」と首を横に振った。

 ボブとクレアがエーヴァの胸ポケットから首を出した。

 

「見つかっちゃった。お別れね」

 二人が残念そうに声を合わせた。

 

「悔しいけど、これでお別れね」

 エーヴァがそっと二人にキスをした。

 

 それから、みんなでやさしく抱き合ってお別れをした。 

 小さな4人の家族は、生徒達にもう一度お礼をいって、小さな羽音と共に森の中に消えていった。
 

・・・ 翌朝早く、HAL号は森の上空で静止して、宇宙に飛び出す準備をしていた。

 昨日大きなエドの消えたあたりの空に、森や草原の方々から薄青い煙の様な物が立ち上ってきた。

 

 煙は漂いながら一つに集まって、なにかの形を作り始めた。

 朝日に照らされて、大きなエドが空に現れた。

 

 数百の小さなエドたちが空いっぱいに大きなエドを描き出していた。

 大きなエドが、笑って、宇宙艇に手を振った。

 

 生徒たちが歓声を上げて、窓から手を振った。

 HAL号は両翼を交互に上下して、エドの子供たちに別れの挨拶を済ませると、船首を宇宙に向け、エンジンを全開した。

 

 はぐれ親父が大声で宣言した。

「いまから地球に向けて帰還する! でっかいブラックホールをいくつかくぐり抜けるが、時空の歪曲は無視することにした。非常識航法で一気に時間を遡る。みんな、驚くな!うまくいけば学校到着はだ・・・なんと・・・出発した日の昼すぎになる・・・予定だ!」

 

「帰りも、なんだか凄そうだな」

 生徒たちが顔を見合わせて、首をすくめた。

 

 (つづく)

 

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宇宙人は本当にいるの? 存在するという3つの説とホーキング博士の警告!

「パパ正直に答えて! 宇宙人は本当にいるの?」

 

日曜日の朝のことです。

小学生の匠が、リビングに飛び込んできて、新聞を読んでいたパパに突然の質問をしました。

 

「アメリカの海軍がパイロットに、UFO目撃したらきちんと報告するように指導したそうだよ」

匠はテレビでそんなニュースをみて、ビックリしてパパに聞いてきたのです。

 

パパはどう答えていいのか困りました。

・・「宇宙人がいる」という証拠はどこにもないし、「宇宙人はいないよ」というのも夢がなくてつまらないし・・。

 

小さな天体望遠鏡をパパから買ってもらった匠は、夜の空を観測して、いろんな夢を膨らませているようです。

宇宙人もその一つです。

 

「宇宙はとっても広いからどこかに宇宙人がいる可能性があると思うけど、UFOも宇宙人も発見はされていないというのが現実だと思うよ」

パパがそう答えると、匠の表情がすこし曇りました。

 

「パパお願い、一緒に調べてみようよ」

そう言って匠はパパのパソコンの前に椅子を二つ並べました。

 

匠はパパと一緒の調査が大好きになったようです。

「よっしゃ、エイリアンの調査開始だ!」

 

パパが大きな声で答えました。

パパと匠は、仲良くパソコンの前に座り込んで、宇宙人についての科学記事の調査を始めました。

 

存在説1 NASAの科学者コロンバーノ氏「エイリアンはもう地球に来ているかも知れない!」

 

newsweekjapanより。
地球外生物が人間と同じく炭素ベースでできているとは限らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりショッキングな科学記事が見つかりました。

2018年12月6日の米ニュース・ウイーク日本版が、米航空宇宙局(NASA)の科学者の発表を次のように伝えていました。

 

エイリアンはもう地球に来ているが、予想もしない外見であるために発見されずにいるだけかもしれない

 

記事によれば、発表した科学者はNASAエイムス研究センターの研究者、シルバノ・コロンバーノ氏で、「エイリアンが発見されない理由は我々の固定概念にある」といっています。

 

続いて「エイリアンが、地球上の生物のように炭素をベースにした生命体でない可能性がある。その時には、生命体だと認識できない姿だったり、目に見えないくらい小さな超知能体であるかもしれない」といっているのです。

 

パパが記事を声を上げて読むと、匠が驚いて叫びました。

「パパ、エイリアンがわんちゃんだったり、ニャンコだったり、ゴキブリだったりする映画見たけど、このエイリアンそれどころじゃないよ。小さすぎてどこにいるかもわからない相手だ」

 

「この宇宙人、埃みたいに風に漂ってるのかな。吸い込んだらエライことだ。そのうえ、超知能体だというから、たとえ遭遇して会話しても、パパにはとても理解できないおかしなやつだったりして・・・」

パパはそういって、さらに記事を読み進めました。

 

コロンバーノ先生は、“宇宙人は人間のような短い寿命の制約を受けずに、広い宇宙を凄い技術で飛び回っているしれない”と発言していました。

 

「パパ、知能が人間を超えていて、身体が僕らよりつよくて長持ちする生き物といったらさ・・・それスーパー知能を持ったアンドロイドだよ」

匠の言葉にパパは驚きました。

 

「匠、お前大したもんだ。この科学者も同じこと言ってるぞ。エイリアンは究極的にはロボット的になる可能性があるってさ」

パパは匠の成長ぶりがうれしくてたまらないのです。

 

「そのうえ超小さくて、目に見えないエイリアンときたらもう僕、お手上げだよ。・・・でもパパ、この話“たとえば”の話でしょ?」

「そうだよ、“”たとえば”・・・エイリアンが宇宙にいたら、こんな凄いのかも知れないという仮定の話だよ」

 

「そうだとしたら、その“たとえば”はどのくらいのたとえばなの?」

「うん? 宇宙にエイリアンがいる可能性のことだな?」

 

「そうだよ。その可能性ってやつだよ」

パパはうーんと唸って、考え込みました。

 

しばらくしてなにか思い出したみたいです。

「たしか最近買った本の中に、なんとかの方程式というのがあったぞ」

 

「思い出した!」

パパは凄いスピードで本棚に走って、一冊の本を取り出してきました。

 

存在説2 ドレイクの方程式/高度文明が存在する惑星は1から100万個?

 

パパが取り出してきたのは「地球外生命体と人類の未来」という本でした。

「じつはこの本買ってきて、まだ読んでないんだよ」

 

パパは大急ぎでページを繰りながら、声を上げて、斜め読みを始めました。

・・・昔、「オズの魔法使い」の話が大好きな子供がいたんだ。

 

その子は1930年シカゴで生まれたフランク・ドレイクで、8才の時に科学技師の父親に「地球によく似た世界が他にもある」と言ったそうだ・・。

「ドレイク少年は匠そっくりだよ」

 

クスッと笑うと、パパは声を上げて本を読み進めました。

 

・・・若者に成長したドレイクは天文学の道に進んで、オズの名前を採って“オズマ計画”というプロジェクトを推進したんだ。

電波望遠鏡を使って、他の世界に存在する知的生命の兆候を探査するという計画(SETI)だ。

 

その目的は地球外文明との交信だったのだよ。

そしてそのためにまず取り組むべき課題は「交信が可能な地球外文明がどれくらいあるかの計算式だ」とドレイクは思ったんだ。

 

ドレイクはこの方程式を1961年のグリーンバンク会議で発表したんだ。

これが有名なドレイクの方程式だ。

 

ドレイクの方程式

銀河系に星間通信できるような文明がどれくらいあるか、を推定する式

 N=Ns × fp × ne × fl × fi × fc × L
 

(アダム・フランク著「地球外生命体と人類の未来」)

 

・・・ドレイクの方程式は、地球と通信できる技術を持った文明が銀河系宇宙にいくつあるのか求める式だ。

難しそうだけど、これ全部かけ算だからパパや匠にもわかるかもしれないよ・・

 

パパはそう言って本を伏せて、今度はパソコンからウイキペディアで「ドレイクの方程式」を開きました。

 

・・・それじゃパパができるだけわかりやすく説明するから、聞いてくれる?

順番にそれぞれの記号の意味と、当てはまる数字を説明するよ。

 

Nは、これから求める答えだ。

銀河系に、星間通信できるような地球外文明がいくつあるかの数だよ。

 

Nsは、銀河系に毎年生まれてくる恒星の数。

・・・恒星というのは、その周囲を回る惑星に膨大なエネルギーを放射する太陽のような星のことだ。

当時の答えは10個だった。

 

fpは、その恒星に惑星がある確率。

当時の答えは0.5つまり50%だ。

 

neは、その中、生命が存在可能な惑星の数。

・・・燃えている恒星に近すぎず、遠すぎず、水が蒸発や、凍結しない温度環境にある星のことだ。

当時の答えは2個だ。

 

flは、その惑星に生命が発生する確率。

・・・もっとも単純な原始的生命が誕生する可能性のことだ。

当時の答え:1  つまり100%だ。

 

fiは、その生命が知的生物に進化する確率。

・・・誕生した原始的生物がどのくらいの割合で知的生物に進化できるのかだ。

当時の答え:0.01 つまり1%

パパは専門家者じゃないけど、ここ凄く楽観的な気がしない?

 

fcは、その知的生物が星間通信できるような文明に発展する確率。

・・・ドレイク先生は先進技術を電波を発する能力と捉えていたようだよ・・つまり古代ローマは文明を持っていたけど、ここで言う技術文明には含まれないということだ・・

当時の答え:0.01つまり1%

 

Lは、その文明を維持継続できる時間のこと。

・・この最後の項目は、人類が持つような高度な文明はどのくらいの期間存続できるのか?という僕ら人類にとっての核心的テーマだよ。

 

ドレイクがこの方程式を提起した1961年のグリーンバンク会議では、この項目で激しい議論が巻き起こったんだ。

資源の浪費に関するテーマ “今で言えば地球の温暖化”のことや、“核戦争勃発の脅威”のことが議論されたようだ。

 

当時の答え:一万年だそうだ。

 

で、計算の合計をしてみよう。

(注:この数値と、計算はウイキペデイアから引用しています)

 

合計は10になったよ。

銀河系に知的生命体の文化が存在する惑星の数は想定10個ということだ。

 

「説明長かったけど、匠、これがドレイクの方程式の答えだったんだ」

 

「ヤッター! エイリアンのいる惑星は銀河系宇宙に10個もあるということだ」

匠が両手を天上に突き上げて大喜びしました。

 

「でもさ、パパ! この計算よくわかんないけど、この七つの数字って“たとえば”だらけだよ」

匠の鋭い指摘で我に返ったパパは、考え方の違う、別の記事を探しました。

 

小学館の日本大百科全書が、匠の疑問に答えていました。

合計のNは上記のNsのような項目の数値の取り方により大きく変わる。Nsからneまでの数値は最近だいぶ確からしい値が観測されつつあるが、flからLまでの数値は不確実性が大きく正確なNが出せていない。とくに文明を維持継続できる時間であるLはむずかしく、合計のNは1から100万まで種々の値が提案されている。

(出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))

 

「匠、どうやら現在の計算ではNの数字は1から100万まであるそうだ。匠の言うとおり“たとえば”だらけみたいだ。それでも0がないからエイリアンはかならず銀河系宇宙のどこかにいるってことかな?」

「パパ、この1って数字、もしかしたら僕らの地球のことじゃないの?」

 

パパと匠は顔を見合わせていましたが、一緒に吹き出してしまいました。

「でもさ匠、エイリアン文明が100万もある可能性を計算した学者もいるわけだから、楽しいじゃないか? もしかしたらエイリアンはうじゃうじゃいるぞってこわ~い話だ」

 

そう言ってパパはパソコンに向かって座り直し、さらに新しい記事を探し始めました。

しばらくして、パパはとんでもない記事を見つけ出したのです。

 

存在説 3 “地球は宇宙人が作る動物園?”

 

地球は宇宙人が作った動物園

 

 

 

 

 

 

 

パパが英語の記事を読んで、日本語に訳してくれました。

高度な知能を持った宇宙人がもう既に我々を発見して、人類を地球と言う巨大動物園の中で飼っている

Intelligent alien life may have already found us and enslaved humanity in a giant zoo: planet Earth。

 (2016年7月2日のWIRED NEWS(英))

 

ニール・ドグラース・タイソン(Neil deGrasse Tyson)というアメリカの有名な天文物理学者が、スペインで行われた「科学と芸術の祭典」でこんな発言をしていました。

宇宙人達は地球と言う動物園を作って、秘かに人類を観察して楽しんでいるというのです。

 

「人間自然動物園かな?」

パパが言うと匠がすかさず返しました。

 

「もしかしたら“猛獣につき注意”って看板立ってるかもね」

「それとも俺たち宇宙人のペットかも」

 

パパはさらに記事を読み進めました。

博士は次のように言っています。

 

・・・私は人類が知性を持った宇宙人と遭遇する可能性については悲観的だ。人間の知性は宇宙人と比べて低いから、宇宙人を発見する可能性が大変低い。

そして、できれば宇宙人の存在などなにも知らずに“動物園で過ごす方が“人類は幸せかもしれない・・・と。

 

「匠、これどう思う」

「パパ、それ無理だよ。僕たち、怖くても、知りたいことはどうしても知りたいんだよ!」

 

匠の好奇心はもう抑えられそうにありません。

「匠、ちょっと待った! このタイソン博士の発言、あの高名なホーキング博士が言った警告に答えたものだって書いてあるよ。ホーキング博士の警告って、いったい何なのか調べてみよう」

 

 “ホーキング博士の警告”

 

ホーキング博士の警告

 

 

 

 

 

 

 

 

調べていくと、その前の年、2015年にホーキング博士が“警告”を発しています。

警告の内容を紹介したのはスペイン紙「エル・パイス」でした。

 

「地球外生命体がわれわれ人類を絶滅させる可能性があるため、エイリアンとは関わりを持たない方がよい。エイリアンが地球に来た場合、コロンブスの米大陸上陸時のように、先住民族のことをよく知らないために起きた結果・・“大虐殺”になる」

 

このショッキングな発言は、いろんなメディアで世界に報道されて、広がったのです。

パパが調べを進めると、ホーキング博士はそれまでにもテレビ番組で自分の宇宙観を述べていました。

 

「地球以外に生命が存在する可能性はかなり高く、自分の惑星の資源を使い果たした後、資源や居住場所を求めて宇宙を彷徨っている恐れがある」

・・だから、宇宙人と接触しようとすることは危険なことだ・・

 

ホーキング博士の警告の趣旨をパパは匠に説明しました。

匠は腕組みをして聞いていましたが、しばらく考えていいました。

 

「僕のエイリアン探査も慎重にやれってことだね」

匠が偉そうにぼそっと言ったので、パパは吹き出してしまいました。

 

匠はもうエイリアンの調査に命がけなのです。

パパは最後にもう一度NASAのニュースを調べてみました。

 

「おっと、地球外生命の探査計画(SETI)についてNASAの最新のニュースが出てきたよ」

2019年2月11日、NASAの最新の発表記事が出てきました。

 

NASAが生命探知科学センターを新設

 

NASAは生命探知科学センター(Center for Life Detection Sciense, CLDS)という組織を新設していました。

CLDSの目的は「生命の起源と地球外生命体の可能性を探ること」とされています。

 

主任研究員トリ・ホラーさんはCLDSの使命について次のように語っています。

「これまでと違う最善の策は、地球とは全く違う世界の独特の状況においても生命を検出できる新しいツールや戦略を開発することだ」

 

そのための知恵を結集しようと・・CLDSはシリコンバレーにあるNASAエイムズ研究センターの中に本部を置いて、宇宙生物学、天体物理学、物理化学などの専門家を全米から集めています。

すでに、ジョージタウン大学やジョージア工科大学を始め、多くの研究者がCLDSの研究チームを立ち上げています。

 

「匠、NASAはどうやら本気でエイリアン探索に乗り出したようだぞ」

「やった!NASAが本気なら僕も頑張らなくっちゃ!」

 

大きく叫んで、匠がもう一度両手を天井に向かって突き上げました。

エピローグ

 

その夜のことです。

夕食を済ませたパパと匠はテラスに出て夜空を眺めました。

 

匠がいつもの小さな天体望遠鏡を持ち出してきて、惑星の探索を始めました。

「エイリアンはどこかな、僕たち人類はこの広い宇宙に一人ぼっちなのかな?」

 

匠が囁いて、パパが答えました。

「パパはどうしてもドレイクの方程式の最後の項目“L”が気になるんだ。

“高度な文明はどのくらいの期間存続するのか?”のところだよ。

このまま地球温暖化が続いたら地球内生命体の寿命もそれほど長くはないのかも知れないって、アダム・フランク先生は言ってるよ。

そのためにもエイリアンの研究は必要だってね」

 

「将来、どこかの宇宙人が地球をみつけてさ、“知的生命体の遺跡発見”なんてことないように、パパと二人でがんばらなくっちゃね」

匠がマジで答えて、二人は大笑いしました。

 

 (おわり)

 

匠とパパの「宇宙シリーズ」はここからどうぞお読みくださいね。

 

https://tossinn.com/?p=2062

 

https://tossinn.com/?p=80

 

 

【記事は無断転載を禁じられています】

 

未来からのブログ5号“皇帝クラウドマスターはクールで可愛い人工頭脳だったよ”

僕はジャラ。

約束通り、今日も100年前の君に、未来の世界の情報送るね。

 

日記風で、情報量は少しずつだけど我慢して読んでよ。

このスタイルが、日常の風景写してリアルだから、一番良く理解してもらえると思うんだ。

 

それでは「未来からのブログ」に投稿始めるよ。

そうだ、前回の記事まだ読んでない人はここから読んでね。

 

未来からのブログ4号 “ ザ・レストランで三色カクテル飲んで唄ったよ” 

 

未来からのブログ5号“皇帝クラウドマスターはクールで可愛い人工頭脳だったよ”

 

「ジャラジャラ」

「うるせー!」

 

「ジャラじゃら!」

「しつこいぞ!」

 

「ジャラ、お目覚めください。クラウドマスターがジャラとカーナをお呼びです」

スーツマンが僕に起きろと言ってるけど、今朝のジャラはひどい二日酔いだよ。

 

昨日の夜飲んだザ・レストランの七色カクテルと、そのあとのプレーのせいだ。

でもさ、クラウドマスターのお呼びなら、仕方が無い。

 

「うーん!」って唸りながら、ベッドで両手伸ばしたら二つのボデイーにコンタクトしたよ。

「あれッ!」

 

ジャラはスーツマンのボディー着たままで寝ていたよ。

そのうえパートナーのキッカと、フリー友達のカーナもボディーを身につけてた。

 

昨晩は、三人でボディー装着したまま、プレーしたみたいだ。

そんなことできるのかって?

 

そりゃーできるさ。

もともとスーツマンは僕のボデイーを再現したものなんだよ。

 

だから、スーツマンの頭のところに僕が収まったら、昔のジャラが完成するってわけ。

身体を失う前の僕の姿にさ。

 

そのうえ、ボデイーはグレードアップされてるよ。

ボデイーはジャラ専用の自動運転の最高級車みたいなものさ。

 

もち、身体の末端まで人工神経がジャラのブレーンとニューロンでつながってるから、ボディー感覚は最高さ。

滑るようになめらかな動きの感触をシナプスがキャッチするんだ。

 

これって、最高さ!

カーナもキッカも同じ。

 

「あっ、思い出した。ときどきカーナが僕の動きを細かく指導してくれたよ」

・・修正! 右上方13度! とか言ってたよ・・。 

 

わかった?

ひどい二日酔いの原因が・・。

 

きっと・・

おいしいこと二つもしたあとの罰だよ。

 

「カナカナカナ」

「きやっきやっ」

 

可愛い声でスーツレディーがやさしくカーナとキッカを起こしたよ。

で、三人で出かけることにした。

 

良い天気だ。

三人で手を繋いで歩いたよ。

 

ジャラが真ん中だよ。

またあの唄が始まった。

 

「I left my heart  in Sanfrancisco・・」

大きな交差点にやって来て、パートナーのキッカは二人と別れた。

 

キッカは娘のクレアと息子のボブに会いに行くんだ。

二人が「勉強してる」ドリームワールドへだ。

 

月に一度の面会日だから、ジャラも一緒に行く予定でとっても楽しみにしてたんだけどさ、皇帝がお呼びだから仕方が無い。

ジャラとカーナはキッカと別れて、ザ・カンパニーに向かったよ。

 

・・・

「♯チャンチャカチャン、チャカチャー、チャカチャー♭」

ザ・カンパニーの最上階にあるミーティングルームに、いつものテーマソングが響いて、皇帝クラウドマスターが登場した。

 

「二人とも、せっかくの休みのところ急に呼びだしてすまない。・・で、ジャラ、おじいちゃんとの話はどうなった?」

マスターはいきなり攻勢をかけてきた。

 

マスターは史上初めて人類のレベルを超えた人工の知能“シンギュラリティー一号”だからいくら考えても、疲れることが無い。

でも、ジャラは二日酔いだ。

 

この差は歴然だ。

ジャラは大事なおじいちゃんとの固い約束があるから、うかつにマスターと話を進めるわけにはいかない。

 

ジャラは当たり障りのないところから話を始めたよ。

「僕は入り江の海で、おじいちゃんと話をしたよ。量子もつれでコミュニケーションしたから、話は途切れ途切れでわかりにくかった。でも、おじいちゃんは未来のことをとっても心配してたよ」

 

ジャラの予感では、マスターとおじいちゃんの二人は天才と奇才だから、二人の関係式は平行線で、話の折り合いはつかないと思ったんだ。

そのうえ二人ともせっかちで、頑固だからね。

 

「ジャラ、話を早く進めよう。ジャラとジャラのおじいちゃんとの話は、すべて聴こえた。スーツマンが実況中継してくれた。そのあとのザ・レストランの一部始終もだ。だから説明抜きだ。このあとの過去の世界との交渉ごと、つまりおじいちゃんとの話の進め方、ジャラはどうするのか早く答えが聞きたい」

 

予想通り、マスターがいきなり押してきたので、ジャラはすこし引いて、斜めから押し返してみたよ。

「マスター! 僕の話が“聴こえた”と言ってたけど、その言い方間違ってるよ。“盗み聞きした”と言うべきだよ。クラウドマスターがこの世の世界と人類のために、いろんな情報を集めることはとても大事で、必要なことだと思うよ。そのうえ、スーツマンはマスターの身体の一部で情報ネットワークでつながってるから、ジャラの話がマスターに筒抜けだってことも知ってる。でもさ、いやなことはいやなんだ」

 

マスターが黙ってしまったので、ジャラは続行したよ。

「マスター、ジャラの気持ちわかってくれる? まさかそのあとの僕とカーナとキッカのプレーまで聴いた・・なんてことないだろうね?」

 

そしたらだよ、マスターの顔が赤く染まったのさ。

人工頭脳に年齢はないけどさ、ジャラに言わせたら、マスターの感情線は人間の高校生ぐらいかな。

 

どう~? マスターって可愛いだろ・・?

・・聴いてたんじゃなくて、感じてたんだよ・・

 

その時だよ、ジャラのお腹が“グーッ!”て鳴ったのさ。

そしたら釣られたみたいにカーナのお腹も“クーッ”てちいさな音を立てた。

 

僕たち一級頭脳労働者は身体を使わないので朝食を取らないけど、今朝はずいぶん歩いて来たので、お腹が減ったみたいだ。

次の瞬間、僕とカーナの前のテーブルに、銀の皿に載せられた二品が、ナイフとフォークと共に差し出されたよ。

 

「盗み聞きしたこと、これでチャラだよ。ジャラ」

マスターがすまし顔で言ったので、よく見たらそれ生牡蠣の形してたんだ。

 

「ハマハマとくまもとのブランチだよ。サンフランシスコの名物、生牡蠣って、一体どんな味か、レシピ調べて作ってみたんだ」

 

マスターが勧めるので、僕とカーナは遠慮無く頂いたんだ。

舌の上で転がしたら、濃厚なソースが絡まって絶品だったよ。

 

最後は、のどごしでつるりと、とろけたよ。

流石、マスターが僕らのために用意してくれた手作りの二品、合成品だけど凄い技に感動したよ。

 

宇宙皇帝のピュアー・エネルギーを吸収して、二日酔いがどこかへ飛んでった。

「で、ジャラ、急がせて悪いが、早く結論を聴きたい」

 

ジャラのブレーンが一気に動き始めたよ。

「マスター! この話ぐるぐる回るから良く聴いてよ」

 

ジャラは紙ナプキンで口のまわりについた生牡蠣のソースをきれいに拭った。

それから、頭に浮かんだことを整理しながら話した。

 

「始めるよ」

・・おじいちゃんは、未来の情報が欲しいと言ってる。

それで、僕は現在の僕の日常を少しずつ切り取って、おじいちゃんのブログに投稿しようと思う。

 

“未来からのブログ”と言うタイトルだよ。

投稿の方法はこれから考えるところだ。

 

ところが、この間、宇宙基地のクラウド情報センターで、たまたま過去のブログ集をライブラリーでみてたらそのブログが既にあった。

ただし記事の大部分が白紙のままになってた。

 

多分空白のところをこれからジャラが埋めて書くんだと思う。

ジャラが日常を書いておじいちゃんに送る。

 

おじいちゃんはそれを読んで、未来への対策を立てると言ってるんだ。

おじいちゃんの世界は、人間がエネルギーを使いすぎて、地球がだんだん熱くなってるって言ってたから、その対策だよ。

 

つまり記事をネットに公開して、未来への警鐘を鳴らしたいんだと思う。

このままだと、こんな未来になっちゃうぞ!って言いたいわけだ・・。

 

「ここまでの話、マスターは理解できる?」

「理解できるが、問題が山ほどある」

 

クラウドマスターはそう言ってジャラを見つめた。

「次はジャラが聞いてくれる順番だぞ」

 

・・この世に世界は山ほどある。

 

ジャラやマスターのいるこの世界Aもそのうちの一つにすぎない。

ジャラが昨日量子もつれで話したおじいちゃんのいる世界Bもそのうちの一つに過ぎない。

 

山ほどある世界を繋いでいる時空の穴も山ほどある。

エネルギーの法則で計算すると、世界Aは世界Bとブラックホールからワームホールを通じてお互いにつながっている可能性がある。

 

昨日の計算で私たちの世界Aからは大量のエネルギーが減少し、おじいちゃんの世界Bではエネルギーを大量に使いすぎてるという現実が確認されたからだ。

つまり過去の世界Bが未来の世界Aのエネルギーを先食いしていると言うことだ。

 

言い換えれば盗んでいると言うことになる。

この世の世界は無数のブラックホールとワームホールでつながっているから、エネルギーをお互いに”食い合い”しているわけだ。

 

世界は無数にあるから、マスターが認識できる世界観にも限度がある。

宇宙センターのスパコン・シンギュラリテイー一号・・つまり私のことだが・・にも計算の限度があると言うことだ。

 

ジャラが世界Aの情報を投稿して、おじいちゃんの世界Bがそれを参考にして、未来を軌道修正したとしよう。

世界Bの将来は修正されるとしてもだ、そのことが我々の世界Aにどのような影響を及ぼすのかが計算できない。

 

二つは平行世界だから、世界Bが省エネしたからと言って、世界Aの現状を改善するとは思えない。

今から盗まれるエネルギーは減るかも知れないが、我々の現状を変えるまでには至らない・・。

 

マスターがジャラに頼みたいのは、今後のことでなくて、盗まれたエネルギーを過去の世界Bから取り戻して欲しいと頼んでいるんだ。

と言うことで、マスターは、ジャラが“未来からのブログ”に投稿することは許可するが、それからどうすれば良いのかわからなくて、今“すさまじく悩んでいる”。

 

「ここんところ“流石の”クラウドマスターも計算できない領域に入るから、エネルギーを取り戻すための計画について、ジャラの“どて感”を聞かせて欲しい」

 

・・・

凄いだろ、宇宙皇帝クラウドマスターがジャラの考えを聴いてきたんだぜ。

クックッ! シンギュラリティー一号は悩むと言語中枢が乱れてくるんだよ。

 

イタリックで斜めに発音してるところだよ。

シンギュラリテイー一号はまだ思春期の成長過程にあるんだよ。

 

感情曲線でいえば僕の娘のクレアと同じくらいかな。

そうだ、ミーテイング早くフィニッシュしてクレアとボブに会いに行こう。

 

極秘だけれどさ、ボブにはおじいちゃんの量子もつれ遺伝子DNAを仕込んであるんだ。

ジャラはクレイジーSF書いてる爺ちゃんの末裔だからさ、そのくらいの技は持ってるのさ。

 

「ジャラジャラ! なに考えてる。また他のこと考えてるな」

スーツマンが警告してきて、ジャラは正気に戻ったよ。

 

「過去からエネルギーを取り戻す良い考えがあるよ!」

いつものように、“口からでまかせ”を考えついたときのことだ。

 

会議室のドアが外側からこじ開けられて、怪しい男が二人乱入してきたんだ。

 

(続く)

 

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シニア限定/小学校の同窓会でめちゃ受け?あの懐かしいゲーム遊びに再挑戦!

 

小学校の同窓会というのは、遠い子供の頃の思い出話に話が弾むとても楽しいひとときです。

でも数十年ぶりの顔合わせとなると、みんなの顔を思い出すまでが一苦労です。

 

そんな同窓会で、シニアになった卒業生のテンションを一気に盛り上げるイベント企画があります。

それは「むかし学校で遊んだゲームや遊技に、同窓会場でもう一度挑戦してみよう」という企画です。

 

卒業数十年の記念同窓会で実施してめちゃ受けしましたので、ぜひ一度試してみてくださいね。

 

小学校へタイムスリップ、あの懐かしい遊びをもう一度!

 

それでは小学校へタイムスリップして、企画の進め方について説明します。

 

  1. 遊びの種類をいくつか選ぶ
  2. 遊びの道具を準備する
  3. チャンピオンは誰だ
  4. お囃子パンフを作ろう

 

企画の進め方①遊びの種類をいくつか選ぶ

 

日本全国どこの地域でもよく遊ばれている昔の遊技を書き出してみました。

これを参考にして、あなたの小学校で昔よく遊んだ遊技をピックアップしてみてください。

 

お手玉

 

 

 

(絵:昔のあそび/甲賀市

 

お手玉(おじゃみ) あやとり おはじき 

ビー玉 こま回し メンコ(べったん) 

どうま(胴馬) 缶けり なわとび(おいちだん)

 

おはじき

            

        

 

 

(絵:昔の遊び/甲賀市)

 

竹馬 グリコ 花いちもんめ 

鬼ごっこ だるまさんが転んだ 陣取り

 

 

駒回し

 

 

 

 

 

 

(絵:昔の遊び/甲賀市)

 

タンポポの頭どり 草笛や笹笛

ホオずき 折り紙 

 

あやとり

 

 

 

 

 

これ以外にも、遊技はたくさんありますので、記憶をひもといてみてください。

それでは、昔良く遊んだ遊技の中から、同窓会の会場でみんなで楽しく遊べそうなものをピックアップしましょう。

 

私たちが選んだのは次の四つでした。

① お手玉(おじゃみ)

② おはじき

③ 駒回し

④ あやとり

 

選んだ理由は

① よく遊んで、人気があった。

② 誰にでもできそう。

  (駒回しは別)

③ 会場で遊んでも危険でない。

  (駒は気をつけよう)

④ 道具の準備ができやすい。

 

もちろんこの四つの遊びは参考です。

同窓会の年代によって遊びの種類が違ってきます。

 

昔を思い出して、会場で再現できるいろんな遊びを、企画仲間で楽しく検討してみてください。

できれば、仲間を二人から四人ぐらい募って、企画の内容や準備を進めることをお薦めします。

 

遊びの経験や好みの種類は相当異なりますので、男女のメンバーを組み合わせることが必要でしょう。

相談の結果、遊びの種類が決まれば具体的な準備に入りましょう。

 

企画の進め方②遊びの道具を準備する

 

まず、実施することに決めた遊技の道具を調達する必要があります。

 

道具は手作りができれば良いのですが、できなければネット通販で簡単に手に入ります。

同窓会の参加者の数に合わせて必要な数を入手します。

 

4種類×2 セットで8セットもあれば、20人から30人くらいの人数が同時に楽しめます。

プレイヤーが16人と、観客が16人で、一度に32人がわいわい楽しめる計算です。

 

ここでは私たちが取り上げた4種類の遊技について、準備した道具をご説明します。

 

お手玉(おじゃみ)

 

お手玉を遊ぶときには、親玉を入れて、5~7個を使います。

同窓会に集まる人数が多ければ、このセットを二つ用意すると良いでしょう。

 

昔、お手玉は子供たちが自分で裁縫をして作りました。

私たちの同窓会では、親切なおばさまが二人で手作りをして、当日持参していただきました。

 

作り方は簡単で、小豆を手に入れて、布で縫い込んだらできあがりです。

色の違う布で縫い合わせるとかわいいおじゃみができます。

 

手で遊ぶと、お手玉の中で小豆がこすれ合ってジャラジャラと音がするので、関西では「じゃみ」に「お」を付けて「おじゃみ」と名付けたといわれています。

 

手作りしないで、ネットで商品を購入したいときには、2セット分、10個から12個位を手に入れると良いでしょう。

ネットで買うと、1セット五個で750円から1000円くらいで、巾着の袋付きのかわいいお手玉が手に入りますよ。

 

おはじき

 

おはじきは数人が一人5個以上出し合って、順番にプレーして玉を取り合う遊技です。

私たちの同窓会では、30個から40個位を用意して、机の上にまき、数人で取り合ってたくさん手に入れた人をチャンピオンにしました。

 

ネットで手に入れるとすれば・・一度に数人が遊べますので、1セットで十分と思います。

ガラス玉40個いり、200円。

 

安いですが郵送料が500円位しますので、他の商品とまとめ買いがお得です。

 

駒回し

 

駒回しの道具には駒とひもが必要です。

この道具は手作りができませんので、ネットで買い求めると良いでしょう。

 

駒回しは男の子が中心の遊びです。

室内の会場では、下手をすると駒がとんでもない方向へ飛んだりして、とても危険です。

 

経験のある人に限り、プレーできることにしましょう。

なので、駒回しの道具は一組あれば十分です。

 

立派なものでなく、使いやすい実用的なものを選びましょう。

木製白木の紐付き700円が実用的で、使いやすかったです。

 

あやとり

 

あやとりの紐は、すこし太目のものであれば毛糸でも何でもOKです。

家にあるもので用意をしましょう。

 

あやとりは一人で遊んだり、友達同士で交互に取り合って遊びます。

できあがった形を競い合って、チャンピオンを決めましょう。

 

 

・・・前にもいいましたが、道具をネットで購入するときは別々でなくて一カ所でまとめて買うと、郵送費が安くつきます。

アマゾンとか楽天、あるいは大きなおもちゃ屋でまとめて買うことをお薦めします。

 

それでは道具が揃ったところで、同窓会の当日の遊び方を決めてしまいましょう。

 

遊技の種類や遊び方、詳しいルールについては「昔の遊び/甲賀市」のページが良くできていますので、参考にしてくださいね。

昔のあそび/甲賀市

 

企画の進め方③チャンピオンはだれだ?

 

遊技が決まり、道具が揃ったら、同窓会の会場での遊び方をアバウト決めておきましょう。

まず司会者は遊技毎に参加者を募ります。

 

参加者が決まれば、お手玉組み、おはじき組み、あやとりのチームに分かれて試合開始です。

駒回しだけは、危ないので最後にしましょう。

 

そしてみんなでチャンピオンを選びましょう。

 

お手玉の名人。

あやとりの美しい形を作った技ありの人。

おはじきを一番たくさん手に入れた人。

最後に駒回しの達人。

 

わいわいがやがやと「誰が上手か」意見を言って、チャンピオンを決めましょう。

チャンピオンの賞品は道具です。

 

駒回しの達人は駒と紐を手に入れます。

お手玉の名人はお手玉を1セット、ゲットします。

 

おはじきは一人取りでしょうか?

あやとりの紐も大事な賞品ですよ。

 

司会者は手作りの人の紹介を忘れずにしましょう。

 

チャンピオンが辞退したり、余った道具は希望者がもらいましょう。

希望者多数の時はじゃんけんで負けた人がもらうことにしましょう。

 

「負けるが勝ち!」の新ルールですよ。

お孫さんのいる人は持ち帰って孫と遊びましょうね。

 

企画の進め方④お囃子パンフを作ろう!

 

昔の遊びには囃子(はやし)唄がついています。

 

(手まり唄)

あんたがた どこさ  ひごさ ひごどこさ         

くまもとさ くまもと どこさ  せんばさ             

せんばやまには   たぬきが おってさ             

それをりょうしが  てっぽで うってさ             

にてさ  やいてさ  くってさ                 

それを  このはで  ちょっと かくす           

 

こんな歌の歌詞を入れたお囃子集をパンフで配ってみんなで唄うのも楽しいと思いますよ。

 

おわりに

 

20代、30代の男女にリサーチして、子供の頃の遊びを思い出してもらいました。

 

いろいろ聴いてみますと、小学校の遊びとして生き残っていたのは、あやとりくらいでした。

おはじきはいまは算数の教材として使われています。

 

お手玉は昔の遊びとして授業で習った、と言う話までありました。

既に、遊びの歴史の一部になっていました。

 

駒回しは、いまも形を変えて生き残っています。

カスタマイズできる高級品(ベイブレード)とか、スタジアム(球技場)付きとか、身体を使ってコマを回す技術のいらない、ゲーム性の強い競技になっているようです。

シニア世代は、お手玉はもちろん、竹馬や、ゴム飛行機や、凧揚げのたこまで工夫して作った記憶があります。

 

日本の「物作り」技術の原点みたいな昔の遊びは、時代と共に忘れられようとしています。

せめて同窓会の景品の道具を持ち帰って、お孫さんに遊び方を教えて、一緒に楽しんでください。

 

・・それでは小学校のシニア同窓会、お遊び企画でどんと盛り上げてくださいね。

 

 (おわり)

 

【記事は無断で転載することを禁じられています】

この世の果ての中学校 10章 生き残った少年エドと黒い絨毯の危機!

 21世紀の末、荒廃した地球に残された最後の人類、わずか六人の中学生が自分たちの未来を逞しく切り開いていく物語です。

 ブラックホールから外宇宙に食料を求めて、六人は異世界への旅に出ます。

 宇宙探査艇HAL号は「時空の歪み」を抜け、緑の第二惑星テラの大気圏に入りました。

 その惑星には、はぐれ親父が昔世話になった少年エドが、ただ一人、生き残っていたのです。

 エドはナイフを手にして山の頂に立ち、黒い絨毯のような無数の昆虫たちに取り囲まれていました。

 

 前回のストーリーは、ここからどうぞお読みください。

この世の果ての中学校 9章 緑の小惑星テラ 誕生の謎

 

10章  生き残った少年エドと黒い絨毯の危機!

 

 エドは緑の丘陵の頂に佇んで、午後の日差しを浴びながら、碧く澄み切った空を見上げていた。

 今日は、虫たちは朝早く僕の様子を見に来て、何事もないと分かると深い森の大きな木の祠に帰っていった。

 

 僕の身体は大きいからまだまだ虫たちには負けない。

 それでも気をつけないと奴らはこっそりと身体の中に入り込む。

 

 仲良しのアナは、森を出て川に続く下り坂で転んだところをやられた。

 知らないうちに長い細い針で虫の子供を植え付けられていた。

 

 小さなボブは虫たちと勇敢に戦ったが、無数の虫たちに内部に入り込まれて、中から守りを破られた。

 クレアは弱っていたところを鋭い口を差し込まれて、血液を吸い取られてしまった。
 

 ついに仲間は誰一人いなくなった。

 それでも僕はみんなから引き継いだ肉体と魂のおかげで、十分に大きく、逞しくなって今日まで生き残ってきた。

 

 僕は虫たちにやられるわけにはいかない。

 僕の体の中にはアナもボブもクレアも、一族の魂がいっぱい生き続けているからだ。

 

  まだまだ「爆発」するのは我慢しなければならない。

 僕の中にいる小さなアナや、小さなボブや、小さなクレアを、少しでも成長させてからでないと、危なくてこの惑星に送り出せない。

 

 この森は食べ物は少ないけれども、平和だった。

 しかしいつの頃からか、虫たちが僕たち人間を狙うようになった。

 

 虫たちは古い朽ちた樹木や、甘い樹液や、葉っぱを食べ、花の季節には大好きな蜜を吸って暮らしていた。

 それがお互いを食べ合うようになってから少しずつ凶暴になった。

 

 いまでは虫たちが、僕たち人間を襲って来る。

 それも役割を分担して、一軍となってだ。

 

 またあの嫌な音が聞こえる。

 がさごそと虫たちが近づいてくる。

 

 偵察役の先兵が、どこか近くに隠れて僕の動きを探っている。

 

「お前たちに渡してたまるか!今爆発したら子ども達はみんな奴らの巣に連れて行かれる」

 

 エドは多目的ナイフを取り出すと、鞘を捨てて立ち上がった。

 最後の戦いに備えて、使い込んだ武器のナイフを両手で構えた。

 

 空を見上げる少年の目には絶望が浮かんでいた。

 碧い空に銀色の光が一筋現れて、細い円周軌道を描いて走った。
 

 「もしかするとあれは希望かな」

・・・違う、きっと僕の涙だ。今に消えてなくなる・・・

 

 

 宇宙探査艇はHAL号は、太陽の光線を反射して銀色に輝きながら、緑の峰々の上空をゆっくりと旋回していた。

 生徒たちは宇宙艇の両側の窓に分かれて、上空から惑星の地表を眺めた。

 

 第一惑星の切り立った山々とは違って、第二惑星は、丘陵がなだらかに続いている。

 昔の平和な地球がこの惑星で生き続けているように見える。 

 生徒たちは、はぐれ親父を助けたというエド一族の気配を探した。

 草原の小さな住居や、立ち上がる白い煙、森の中の小さな道や、林を焼いて作った畑など・・・はぐれ親父の話に出てきた風景や人影はどこにもない。

 

 生徒達が探すのを諦めかけた頃、裕大の叫ぶ声が操縦室の沈黙を破った。

「左前方の山頂に人影が一つ見えます!」

 

 はぐれ親父が副操縦士の席から飛び出して、裕大の覗く窓に走る。

 裕大の指さす先、緑の山の頂上付近に、身構えて立つ少年の姿が見えた。

 

「裕大! あの人影、エドに似てる!」

 裕大の頭を叩いて喜んだ親父の顔が、急に引き締まった。

 

・・・ちょっと待て、山の頂上にたった一人で身構えて、あいつ、一体なにしてるんだ? どこかに敵でも・・・ 

 見えない相手に構えて立つおかしな姿勢に気がついたはぐれ親父がパイロットのエーヴァ・パパに向かって叫んだ。

 

「旋回を頼む! 左前方の山頂に接近して、上空で船を静止させてくれ」

 はぐれ親父は副操縦士席に戻り、操作パネルを使って船外カメラを山頂に向けた。

 スクリーンの中から、ナイフを構える少年の先に細く黒い線が見える。

「あの黒いすじみたいなものはなんだ」

 少年の周りに黒い絨毯のようなものが拡がり、それは頂上から何本かの細い条に別れ、川の流れのように山の麓にまで達していた。

 はぐれ親父はうなり声を上げて、スクリーンの映像をズーム・アップした。

 

 パイロット席からエーヴァ・パパが呻いた。

「おい親父!あれ動いてるぞ」

 

 はぐれ親父の目が画面に釘付けになる。

 たしかに黒い絨毯は、細かく蠢(うごめ)いていた。

 

「あれは虫の群れじゃないか?」

 はぐれ親父の身体がシートから跳び上がった。

 

 小年は無数の虫に取り囲まれている。

 少年が立つ山は、頂上から麓まで小さな虫に覆われていた。

 

「全員、直ちに戦闘準備だ!」

 裕太、匠、ペトロの三人は電子銃を迷彩服のベルトに装着して戦闘態勢に入る。

 

 エーヴァ・パパの操縦する宇宙艇は静かに頂上に近づき、少年の頭上で静止した。

 

 はぐれ親父は、攻撃用の放射光線銃を立ち上げ、銃砲を艇先に突き出して、パイロットに頼んだ。

「エーヴァ・パパ! そのまま少年の上で、ゆ~っくり一回転してくれ!」

そういって、親父は放射光の照準を少年を取り囲む黒い絨毯に合わせる。

 

 ・・・少年は、頂上で立ち尽くしていた。

 まわりの がさごその音がすぐ側までやって来た。

 

 「もう待ちきれなくなって、僕に爆発を強制しに来たんだ。僕は虫たちに取り囲まれてしまった」

 

 そのうえ、頭の上に大きな影が現れ、ブーンと低い音で唸った。

「太陽の光と僕の涙で、かすんでよく見えないけど、こいつはとんでもなくでかい奴だ」

 

 少年は覚悟を決め、ナイフを両手で握りしめた。

 銀色に輝くそいつは頭の上でぐるりと一回転した。

 

「来るなら来てみろ!」

 少年はナイフを空に向かって突き上げた。

 そいつは口から白く輝く光を放射した。

 

 気がついたら、まわりの草むらにきれいなこげ茶色の焼け跡ができた。

 そいつは銀色の羽根を一振りして少年に合図をした。

 

 まるで少年に挨拶するようにだ。

 

 それから、大きく向きを変え、丘陵を斜めに回転しながら降下して、白い光線で丘の斜面を焼き尽くしていった。

 

 なにかが焼け焦げる嫌な匂いが立ちこめて、虫たちの気配が消えていった。

 

・・・黒いすじを焼き尽くしたHAL号は、麓から上昇して頂上に戻り、焼け焦げた地面に着陸した。

 HAL号の外部ドアが音を立てて開き、大きな男が飛び出してくる。

 男は、呆然と立ち尽くしている少年に駆け寄った。

 

 「大丈夫か?俺ははぐれだ!」 

 少年は男の顔を、確かめるように見つめた。

 遠い記憶が蘇ってきて、少年の顔が歓びで弾けた。

 

・・・この人は、昔、空を飛ぶ小さな一人乗りの乗り物でやってきた男だ。

 全身から血を流しながら乗り物から下りてきて、僕に「助けてくれ」と叫んだまま、意識を失って倒れた。

薬草で手当をすると、一日で意識が戻り、水を飲ませ、食料を食べさせると、たった三日で元気になった・・・

 

「エドか?」男が少年に聞いた。

「はい!エドです」と少年が弾ける声で答える。

 

「もう安全だ!悪いやつらはやっけた!」

 男は大きな手をエドの肩にやさしく置いて言った。

「その節は大変世話になった」

 

 エドは虫たちの攻撃から助けられたことに気づくと、地面に座り込んだ。

 嬉しくて泣き出してしまった。

 

「安心しろ、もう大丈夫だ」

 はぐれの大きな身体が、エドを抱きしめる。

 

 エドは手の中に握りしめていた大ぶりのナイフを男に手渡した。

 そのナイフは、元気になった男がここから去って行くときに、介抱のお礼にくれた物だった。

「あれからずっと愛用してます」とエドが報告する。

 

 はぐれは、少年が使い込んだナイフを手にとって、懐かしそうに眺めた。

 地面に落ちている鞘に気がついて拾い上げ、ナイフを収めてエドに返した。

 

 それから、エドに聞いた。

 「他の仲間はどこへ行った?」

 エドは言葉が出てこなくて、無言で首を横に振る。

 

 はぐれはそれ以上なにも聞かず、銀色の乗り物に向かって合図の手を振った。

 宇宙艇から、三人の少年が手に武器を持って駆けだしてきた。

 

 三人はエドに頷いてから、はぐれの前に整列した。

 はぐれが丘の斜面を調べるように指示をすると、三人は焼け焦げた草むらを調べながら、麓に向かって下っていった。

 

 はぐれはエドを座らせ、横に並んで腰を下ろす。

 エドは仲間の話を始めようとしたが、喉が詰まって言葉が出てこない。

「エド、息を整えろ!話は落ち着いてから、ゆっくり聞かせてもらう」 

 

 親父の声は低く、優しかった。 

 エドは嬉しかった。

 あの憎らしい虫の群れをやっつけてくれたはぐれがとても頼もしく見えた。

 

 数十分が経ち、二人の少年が息を切らせて戻って来た。

「小さな虫の死骸が山ほど残っていました。大きな虫は逃げていったようです。まだ近くに隠れているかも知れません」
 

 三人目の大柄な少年が少し遅れて帰ってきた。

「下の森にはもっとでかい奴が潜んで、僕の様子を窺っていました。どうも僕たちは彼らに監視されているようです」

 

 はぐれの顔色が変わった。

「ここは危険だ。全員、HAL号に戻るぞ!」

 エドに付いてくるように言って、早足で宇宙艇に向かう。

「裕大だ!」

「匠だ!」

「ペトロだ!」

 少年たちが駆けながら、エドに声をかける。

 

「ありがとう。エドだ!」

 元気な仲間に会うのは久しぶりで、エドは気持ちが弾んだ。

 

 宇宙艇のデッキで、エーヴァ・パパとカレル教授が一行を待ち構えていた。 

 

「エド、こちらだ」

 閉じられたハッチの金属音を背後に確認しながら、裕大がエドをキャビンに案内した。

 クルーの全員がキャビンに集まっていた。

 

・・・

「ハーブ・テイーですよ」

 ハル先生が熱いアップル・テイーに甘いステピアを少量とミントを加えたお茶を、大きなカップに入れて運んできた。

 

「エドね、私はハルよ。慌てずにゆっくりとお飲みなさいね」 

 エドはハル先生に一言お礼を言ってから、カップを受け取り、少しずつ喉に通していった。

 

 甘くて、鼻を射す刺激的な香りで一気にエドの力が戻ってきた。 

 落ち着きを取り戻したエドから「爆発」の兆候がすこしずつ遠のいていった。 

 

 乗組員が集合してエドを取り囲んだ。

 鮮やかな制服をきた少女が順番に挨拶してくれた。

 

「咲良よ」

「エーヴァよ」

「マリエだぞ」

 

それからはぐれ親父がクルーを紹介した。

「ハル先生にベテラン・パイロットのエーヴァ・パパだ。 

 こちら団長のカレル教授だ。

 それに俺を入れた十人で乗組員全員だ。

 エドの故郷、地球からの宇宙調査隊だ」 

 

 エドが立ち上がって、虫の群れの攻撃から命を助けてもらったお礼を言った。

 少年の言葉は地球の北米の言葉だった。

 

「僕の名前はエドです。こんな格好で失礼します」

 植物の繊維で縫い上げたエドの上着とズボンは、方々が擦り切れて、血のこびりついた膝と右の腕が露出していた。

 

 はぐれがエドの肩に手を置いて、みんなに紹介をした。

「この少年が、昔、死にかけていた俺を介抱して、生き返らせてくれた恩人のエドだよ。エド、早速だが、いまの状況を俺たちに聞かせてくれないか?」

 

・・・座ってゆっくり話してくれ。はぐれが優しく促した。

 

「僕はこの惑星に残された最後の人間です。地球からやってきた移住民の末裔です」

 エドは椅子に座り、考えをまとめながら話し始めた。

 

・・・いま僕は大きな問題を抱えています。

 数時間後には僕は間違いなく爆発の時を迎えます。

 それは最後まで生き残った者の宿命なのです。

 爆発が起こると、僕の身体は飛び散り、預かっている仲間の魂が、無数の子供たちとなって生まれ落ちて、新しい未来に向かって飛び立って行きます。

 でも、僕はこのあたりの山の中で爆発するわけにはいきません。

 あいつらが、腹を空かせた虫たちが、山にまだまだ、うじゃうじゃいて、僕の小さな子供たちが生まれ出るのを待ち構えているからです・・・
 

 エドは上を向いて、悔し涙を必死にこらえた。

 キャビンを沈黙が流れた。

 間もなくエドから生まれ出る新しい命の運命を知って、全員が息をのんだ。 

 

 ハル先生がナノコンを取り出して、カタカタと計算を始めた。

 

 間もなく答えがでた。

「宇宙艇で数時間の中に昆虫を壊滅出来る確率、3%以下。そのときのエドの子供たちの初期生存確率、1%以下。ただしこの惑星の緑も同時に破壊し尽くさねばならない」
 

 ナノコンが先生の膝の上から滑り落ちた。

 エドには逃げ場がなかった。

 

 パイロットのエーヴァ・パパが思いついて、エドに尋ねた。

「ここから数時間で行ける安全なところがあるぞ。エド、直ちに第一惑星テラに向かうというのはどうだ? 食糧事情はさらに悪そうだが、外敵はいないぞ」

 

エドが即座に答えた。

・・・第一惑星には、歪みを抜けないと到達できないはずです。途中であの空間を通り抜けるのは、今の僕にはとても無理です。歪みの中で爆発が起ってしまいます。

 それより、この惑星の裏側の方が少しは、ましかもしれません。裏側はここと違って荒れ地ばかりですが、そのせいで虫はほとんど棲息していません。

 子供たちが生きていける環境ではありませんが、頑張ってくれれば、ここよりは生存の可能性があります。

 いまの僕に思いつけるのは、この宇宙探査艇で惑星の裏側に送り込んで頂くことぐらいです・・・

「無念です!」といって、エドは沈鬱な面持ちで黙り込んだ。

 

 咲良とエーヴァとマリエが、顔を寄せて相談を始めた。

「エド、この宇宙艇で爆発をして、そのあとは私たちがあなたの子供たちを地球に連れ帰って育てるというのはどうかしら」

 咲良が真剣な表情でエドに尋ねた。

 

「咲良、嬉しい話ですが、とても無理です。子供たちは植物の胞子と同じで、爆発のあと風で運ばれて、できるだけ遠くの緑の中に落ちていく様にプログラムされています。数百人の子供たちがこの宇宙艇で散らばったら収拾不可能です」

 

 眼を閉じて考え込んでいたはぐれ親父が、目を見開いてシートから飛びあがった。

「第三惑星テラだ!」

 

 続きを親父が話し出す前にエドが遮った。

「第3惑星テラはこの惑星からも観測できますが、この星の裏側と同じで、赤茶けた荒れ地ばかりですよ」

 

「違うぞ、エド!お前に助けられた後、俺はここから地球に向かった。

 来た方向とは逆のルートを取ったら、もう一つの惑星を見つけた。

 荒れ果てた惑星だと思ったが、向こう側に回ると緑がいっぱいだった。

 この惑星と形状が逆さまなんだよ。

 おそらく元は一つの小惑星だったんだろう。

 あそこなら歪曲なしで、二時間もあれば到着できる。

 エドの子供たちが生きていける環境であることを祈って、思い切って賭けてみる値打ちはあると思うが、どうだ?」

 

 エドの表情がパッと輝いて、椅子から跳び上がった。

「親父、やってみます!」

 

「発進だ! 全員シート・ベルトだ!」

 はぐれ親父が大声で叫んだ。

 

 エーヴァ・パパが直ちに操縦席に滑り込んで、宇宙艇を急発進させた。

 HSAL号は山を離れ、轟音と共に宇宙に向かった。

 

・・・エドは遠ざかる故郷の星を複雑な気持ちで眺めている。

 エドの中のたくさんの魂がそれぞれの記憶を囁き合っている。

 昔、僕たちは、緑を失った地球を後にして最後の難民宇宙船に乗った。

 

 人間の住める環境を探し求めて銀河系宇宙を彷徨ったけれども、地球みたいに水と緑に恵まれた惑星はどこにもなかった。

 僕たちは永い旅路の果てに、おかしなところにたどり着いた。

 そこへ近づくにつれて、宇宙船がおかしな形に歪み始めたんだ。

 そのうち僕たちの身体もまともじゃなくなった。

 

 エドという名前のパイロットが、恐ろしい提案をした。

 

・・・ここから向こうは空間が歪んでいて、生命体は存在することが許されないかも知れない。

 しかしだ、これはもしかしたら神様から頂いた最後のチャンスかもしれない。

 どうせ食料も、帰るところもない俺たちだ。

 歪曲空間に突入して、向こうに何があるのか試してみたいと思うのだがどうだろうか・・・

 

 多分、もうすでにみんなの頭は歪み始めてたんだと思う。

 ゲラゲラ笑いこけていた小さなボブが「やっちゃえ!」と最初に賛成した。

 女の子のアナとクレアが澄まし顔で「突入して早く楽になりましょうよ」と言い放った。

 大人たちはもう反対する気力がなかった。

 

「やっちまえ!」

 エドが奇声を上げながら、宇宙船を一直線に歪曲空間に突入させていった。

 宇宙船も、キャビンも、シートも、みんなの身体も、頭の中も、グルグル廻って、ばらばらに飛び散った。

 気が付いたら、僕たちは宇宙の外に飛び出していたんだ。

 

 そして奇跡が起こった。

 最初に緑の第一惑星を見つけたが、そこには先住民の恐ろしくでかい巨人が住んでいた。

 第一惑星を諦めた僕たちは、もっと凄い歪曲空間を通り抜けて、緑の第二惑星を発見した。

 そこは豊かとはとても言えない厳しい環境だったけれども、僕たちは全員そこで新しい生活を切り開こうと決めた。

 

 「僕たちはどの惑星で暮らしたら、一番幸せになれたのかな。地球かな、それともテラ1かなテラ2の荒れ地かな・・・」  エドの中でボブの声がした。

 

 「いやこれから行くテラ3に決まってる。きっと幸せになれるさ!」 

 エドが力強く言い切った。

 

 「でも、幸せってどんなものだったのかな。ずいぶん昔のことで、とても思い出せないよ」

 ボブやクレアがささやき合った。

 

・・・

 第三惑星テラがHA号の操縦席の前面スクリーンに姿を現した。

 正面の茶色の荒れ地を避けて裏側に回ると、そこは緑の山と青い川と豊かな草原でできていた。

 

 ハル先生が監視カメラで惑星の大気を少量切り取って、分析をした。

「朗報です。大気の状態は良好。環境は第二惑星と酷似。人類の生存可能です」

 

「うわおー!」

 エドがはぐれ親父の髪の毛を両手でぐちゃぐちゃにかき回した。

 

HAL号が地上に着陸すると、窓際に立っているエドを女生徒たちが取り囲んだ。

「爆発したらエドはどうなるの」咲良が聞いた。

「僕は消滅する」

 

「どこへ消えるの」エーヴァが尋ねた。

「空だと思う。僕は消えるけれど、小さな僕らがいっぱい生まれる」

 

「小さな僕らとはいつか会える?」マリエが聞いた。

「小さな僕らとはすぐに会える」エドが答えた。

 

「ほんと?どこで会える?」

「この惑星の森の中で」

 

・・・

「着陸するぞ。エド、出発準備だ」

 はぐれ親父がエドの背中に向かって怒鳴った。

 

「もう行かなくっちゃ」

慌てたエドに、 咲良とエーヴァとマリエがほっぺたにお別れのキスをした。

 

「驚いた。食べられるかと思った」

 エドがおどけて緑の目を大きくまばたいた。

 

・・・宇宙艇のデッキから、エドが草原に飛び降りた。

 エドは冷たい空気を胸に吸い込み、確かめるように何度か大地を踏みしめた。

 

 準備が終わると、エドは頭を下げ、顎をぐいと引いた。

 そして前方に広がる深い森に向かって、全速力で走りだした。

 

 はぐれが併走して、裕大と匠とペトロが後に続いた。

 森が近づくとエドは一段とスピードを上げた。

 

 エドと、その後を追う四人との距離が一気に開いていった。

 (続く)

 

続きはここからどうぞお読みください。

https://tossinn.com/?p=1938

 

【記事は無断天才を禁じられています】

「令和」の「令」の正しい書き方とは!「令」とマ文字の令/あなたはどちら派? 

 

教科書体の「令」

  

または 

 

 

 

【令和元年○○月××日】

これから新元号の「令和」を自筆で書く必要が出てきたとき、あなたは「令」の字をどのように書きますか。

 

楷書できっちり「令」でしょうか?

それとも上の写真のような小学校四年で習った教科書体のマ文字でしょうか。

 

普段は書きやすいのでマ文字を使っている人も、元号となるとどちらが正しいのか考え込んでしまいそうです。

新聞を見ても、雑誌を見ても、ネットの文字もすべて印刷文字で「令」となっています。

 

昔、新生児の届け出を、鈴木令子さんの令をマ文字で書いて、役所の戸籍の窓口で受け付け拒否されたという有名な話がありました。

令和の令がマ文字の「令」では役所や銀行で、届け出の書類が無効になったりしないでしょうか?

 

そんなことはありませんので、どうか安心して使ってください。

「令」のマ文字は正しい書き言葉なのです。

 

ここでは「令」という漢字の正しい書き方を歴史とルーツから詳しく調べてみました。

 

「令」と「マ文字の令」どちらも書き文字として正しい

 

「令和」の「令」 子供はみんなマ文字です。 mainichi.jp より。

 

 

 

 

 

 

 

 

「令」のマ文字は正しい書き言葉として、国が認めていました。

 

漢字の使い方として国の考え方・目安を示すものとして常用漢字表というものがあります。

現行の常用漢字表は2010年(平成22年)11月30日に内閣告示されたものです。

 

「常用漢字表」によりますと、付表「字体についての解説」の中で「明朝体と筆写の楷書の関係」は印刷文字と手紙文字における習慣の相違に基づくものにすぎない・・とされています。

 

その例として「令」の印刷文字と二つの書き文字が次のように表示されていました。

 

常用漢字表の例

 

 

 

 

 

左端が「令」の明朝体の印刷文字

次は「令」を楷書で筆写した文字

そして右端が「令」のマ文字です。

 

「令」のマ文字は、常用漢字の正しい書き文字として認められているのです。

 

最近では文化庁の発表・・平成28年2月29日の文化審議会国語分科会の報告・・の中で、

「常用漢字表」の字形比較として、書き文字として使用可能な2087番目の例として「令」のマ文字があげられています。

 

またこの分科会では「令」の2種類の書き文字による社会でのトラブルがいくつか報告されています。

『令子』という女性が、ある金融機関の窓口で、記名の箇所に『令』をマ文字で書いたら、ちゃんと活字の通りに書き直して欲しいといわれたそうです。

 

金融機関や郵便局で「令」のマ文字は「令」とは違う文字であるという間違った解釈がされているケースが報告されています。

令和○○年の「令」をマ文字で書いたとしても、役所とか金融機関の窓口で、訂正しろといわれることはないでしょうが、やはり気になるところです。

 

それではなぜ、小学校の四年生のときに国語教科書でわざわざ「令」でなくて「令」のマ文字を教えるのでしょうか。

不思議に思って調べてみると、話は戦後の初等教育にまでさかのぼりました。

 

戦後の新しい国語教育では、識字率を高めるために、できるだけ手書きに近い形で文字を表示することが必要だとされたのです。

漢字は小学生のときに何度も書いて覚えるようにという教育方針でした。

 

そのために書いて覚えやすいような新しい書体が作られました。

「令」のマ文字もそうした教育方針で作られたのでした。

 

教科書は、国の定める国定教科書から民間の会社に編集が委ねられましたが、このときの教

科書体が大きく変化することなく現在まで引き継がれているということです。

(参照:阿辻哲次書『漢字最入門』)

 

ところが、中学校や高等学校の教科書からは「令」は、明朝体の「令」が使われているのです。

私たちは2種類の「令」の漢字を教育されたことになります。

 

どうやら、このことが「令」の書き文字が2種類あって、社会に出てからトラブルが起こる原因になったようです。

 

それでは「令」のマ文字はいつ頃、誰が作ったのでしょうか。

「令」のマ文字が戦後教育の中で、国の方針と作られたことはわかりましたが、マ文字の原型はどこかにあったのでしょうか?

 

子供の頃から愛着のあるマ文字なので、「令」と言う字のルーツを古代の中国にまでさかのぼって徹底的に調べてみました。

 

「令」のルーツを中国の象形文字から調べてみたら、マ文字が出てきた!

 

中国の象形辞典 [vividict.com] をネットで開いてみました。

検索窓に日本文字のまま「令」と打ち込んでみますと、次のような象形文字が現れました。

 

 

『令』象形文字の変遷 ①
『令』の変遷 ②

 

 

 

 

 

”是“”的本字。,甲骨文朝下的“口”人,等候指示的下级),表示上级指示下级。

 

『令』を意味する象形文字が左から右に並んでいました。

文字を写真に取り、二枚のパネルに並べました。

 

下段の記事は解説文の一部です。

まず「『令』象形文字の変遷 ①」のパネルをご覧ください。

 

左から二つの文字は共に甲骨文、次の二つの文字は金文、最後が篆文(てんぶん)です。

大辞林によれば、甲骨(こうこつ)文字というのは亀の甲(きっこう)や獣の骨に刻まれた中国の殷(いん)の時代の象形文字です。

 

紀元前15世紀頃に使われていた中国でもっとも古い文字といわれています。

また、金文(きんぶん)というのは青銅器などの金属製の器に刻まれた文字や文章で殷とそのあとの周の時代のものとされています。

(参照:大辞林)

 

それではこれらの文字は何を表した象形文字なのでしょうか?

白川静著「常用字解」によりますと次のように解説されています。

 

象形文字と見比べながら、お読みください。

 

 

深い儀礼用の帽子を被り、ひざまづいて(お告げ)を受ける人の形。

令は「神のお告げ」の意味。

甲骨文字・金文では「令」は「命」の意味。

令は命のもとの字である。

 

 

これが「令」と言う字のはじまり・ルーツとしての意味でした。

 

それでは次のパネル『令』の変遷②をご覧ください。

「令」のマ文字が鮮やかに出てきましたよ。

 

このパネルの一つ目の文字は隷書(れいしょ)・・篆書を省略して簡便にしたものです。

二つ目の文字が楷書・・きちっとした書き文字です。

次が行書・・楷書の画をすこし崩した書体ですが、楷書より先に発生しています。

草書・・筆画をもっとも崩した書体

最後は印刷字

 

・・となっています。

書き文字の楷書、行書はもちろん、最後の印刷字もマ文字でした。

 

・・中国では現在、印刷文字にもマ文字が「令」と併用して使われています。

ではマ文字の形が現れてくるのはいつ頃からでしょうか?

 

もう一度一枚目のパネルの象形文字を見直してください。

あれ、不思議です。

 

足を折り、跪いて祈る姿がなんだか「令」のマ文字に見えてきましたよ。

「令」のはじまりは、マ文字かもしれませんよ。

 

最後に・・

 

新元号の「令」の書き文字にマ文字を使うことは、常用漢字表の説明文で正しく認められていました。

そのうえ、3000年をさかのぼった「令」のルーツ探しの旅で、マ文字に似た姿を見つけることができました。

 

よく考えたら、この頃は印刷文字などはなくて、書き文字ばかりだったのですね。

せっかく小学校で覚えた愛着のあるマ文字・・

 

教科書体の「令」

 

 

 

 

 

 

胸を張って、書いてあげましょうよ!

 

(終わり)

 

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