未来からのブログ 7号 “ボブとクレアはドリームワールドで元気に勉強中だったよ”

僕の名前はジャラ。

今日も君に100年後の世界から僕の日常風景報告するね。

ジャラのおじいちゃんとの量子もつれ使った遠隔会話は、クラウドマスターが暗号キーの解明を慎重に進めてくれてるからね。

もうしばらくしたら、君と一緒に時空を超えた楽しい仕事ができると思うよ。

ジャラ、その時を楽しみにしてるよ。

いまから息子のボブと娘のクレアのいるドリームワールドへ向かうところだ。

本当に久しぶりだ。

ボブもクレアもジャラの顔ちゃんと覚えてくれているかな?

“ドリームワールド”ってどんなところだって?

そうかまだ説明してなかったっけ。

ドリームワールドは遊園地とかテーマパークじゃないよ。

むかしは“幼稚園”とか“小学校”っていってたところだよ。

世界から子どもたちが集まってきて、元気に勉強しながら、暮らしてるところだ。

じゃ、いつもの報告始めるよ。

そうだ、前の章まだ読んでない人はここからどうぞ。

未来からのブログ6号 “クラウドマスターとのブランチは生牡蠣だったよ!”

未来からのブログ 7号 “ボブとクレアはドリームワールドで元気に勉強中だったよ?”

「ジャラ、私もついて行くわよ。ボブとクレアに会わせてよ」

ザ・カンパニーの玄関でカーナが言った。

「だって、私にはパートナーはいないし、ボブとクレアは姉さんのキッカとジャラの間の子供だからさ、いってみたら私の子供みたいなものじゃない?」

カーナと僕とはフリー契約だから宇宙センターにフレンド登録はしてるけど、子供は作れないんだ。

子供を作れるのはパートナーだけだよ。

ボブとクレアは身体を捨てる前のジャラとキッカとの子供だから、きちんと事前登録して生まれたんだよ。

そうなんだ、むかしは子供が生まれてから戸籍に届ければよかったんだけど、いまはそうじゃない。

いまは予定登録制だよ。

パートナーと二人で計画書作らないとだめなんだ。

いまは地球の環境最悪だからさ、子供育てるの大変なんだよ。

ドリームワールドのセンターに申請してOK出たら、GOだ。

NOが出たら、ネクストチャンスだよ。

その代わりセンターが責任持って子供の育児とか教育とかの世話までしてくれるのさ。

でさ、カーナは子供が大好きなんだよ。

「ボブとクレアもカーナおばさんに会ったら、きっと喜ぶと思うよ」

ジャラがそういって、仲良く二人でザ・カンパニーのオフィスを一歩出たらさ・・そこにいつもの二人が先回りして待ってたってワケ。

「ジャラにプライベートの相談があるんだ」

シザーマンが恥ずかしそうにいった。

「行き先がおんなじやから、話は歩きながらするわ」

サンタの声がいった。

「でもな、肩に乗っけてもらった方がジャラの耳に近いからひそひそ話、しやすいんだ」

タカシの声が凜と響いた。

で、ジャラの右肩にサンタ・タカシが乗っかって、左肩にシザーマンが乗っかった。

後ろからカーナが二人のおしりを支えて、歩き始めたってことさ。

道ですれ違う人がクスクス笑ったって思うでしょ。

一人も笑わないんだ。

だって、誰も人間歩いてないんだよ。

こんなホットな昼下がりに、焼けた道路歩いてたら身体が蒸発しちまうよ。

地球は暑いんだ。

平気で歩いてるのは、ボデイーが完全冷房のスーツレディーかスーツマンぐらいのものさ。

つまり一級頭脳労働者だけだってわけ。

サンタ・タカシもシザーマンも普通労働者だから、いつもは屋内のオフィスで仕事してるか、家で昼寝してる時間だ。

ということはだよ・・

二人ともよっぽど大事な話があるんだと思うよ。

「で、さ。ジャラとキッカに見習って、おれたちもそろそろ子供作ろうかと思うんだけど、ジャラどう思う?」

シザーマンのひそひそ声、左耳で聞いてジャラ飛び上がったよ。

・・どうやって子供作るんだろ?・・

思わず一人ごといったら、サンタ・タカシのひそひそ声が右耳から聞こえた。

「ジャラ、そのことでいまからドリームワールドへ相談に行くんだよ。そっちは技術的な話が進んでて、多分OKなんだ。ジャラに相談してるのは子育ての方なんだ」

サンタ・タカシのマジで心配そうな声、ジャラもはじめて聞いたよ。

「おれたちつてどちらもすこし変わってるだろ? だからさ、できた子供がめちゃ変わり者にならないかって心配なんだ」

「ちょっと待ってよ。”おれたちすこし変わってるだろ”だって? そりゃー、もう十分変わってるよ」

ジャラはどういおうかすこし迷ったけど、明快に結論を述べたよ。

「二人とも、なーんの心配もいらないよ。めちゃ変わり者の二人からは、足し算してめちゃめちゃ変わった子どもができるか、かけ算して、めちゃくちゃまともな子どもができるかどちらかだ。めちゃ変わり者なら、おかしなこの世にぴったりだしさ。めちゃまともなら、まともに生きていけるってことだ。ほら・・なーんの心配もいらないだろ?」

ジャラの話で、左肩の上でシザーマンが身体揺すって喜んだよ。

「ジャラ、やさしいな。それ聞いて安心したよ。おれたち子どもできたら、ジャラ一家と家族ぐるみのつきあいってのやってみたいんだ。昔の映画でよくあっただろ・・入り江の浜で早朝ピクニックしてさ、子供たち大騒ぎして水遊びしててさ、おれたちパパやママはビーチで寝っ転がって、冷えたビール飲んで馬鹿話するんだ。そうだ、ジャラのクレージー・爺ちゃんも大騒ぎ聞きつけてやって来るぞ」

なんだか子育ての話弾んでる中に、ドリームワールドに到着したんだ。

ボブとクレアの担任のハル先生とパートナーのキッカがエントランスで僕たちを待っててくれた。

ハル先生がジャラに向かって「じつは申し申し訳なんだけど・・」って言いかけて、口ごもってしまった。

キッカがハル先生に変わって、そのあとを続けてくれたよ。

「せっかくオールキャストでおみえだけど、ボブもクレアも午後のバーチャルタイムに入っててカプセルの中でお勉強中なのよ。今日の面会はお終いだって。ボブとクレアはどうしてもパパに会いたかったって言ってたわよ」

キッカの話、聞いて、ジャラはとってもがっかりしたよ。

ボブとクレアが待っててくれて、ジャラの顔みてうれしそうに飛びついてくるって期待してたんだ。

ジャラは二人にどうしても会いたくなって、ハル先生にお願いしたよ。

「ぼくの都合で遅れちゃって申し訳ないんだけど、久しぶりの面会日だから、二人の寝顔だけでもチラットみさせてもらえませんか?」

ハル先生はルール違反ですからと、困った顔してたけど、ジャラが強引に頼み込んで、なんとかOK取ったよ。

「ボブとクレアを絶対に起こさないでくださいね。いまは生徒全員、一緒に勉強してる真っ最中ですからね。近くから見守るだけですよ。時間はきっかり二分間です。ジャラとキッカは許可します。それからキッカの妹さんのカーナ入れて三人までです」

サンタ・タカシとシザーマンが顔見合わせて、残念そうな顔してたよ。

きっと将来のためにもバーチャルルームの子供たちが勉強してるところみたかったんだと思う。

いまはドリームランド以外では元気な子供たちの姿がほとんどみられないんだ。

両親は出産の事前登録したときに、子どもをドリームランドに預けることを約束しているんだ。

で、サンタ・タカシとシザーマンを面会室に残して、僕らはバーチャルルームに案内された。

広い部屋の中には、柔らかい照明の下で、無数のカプセルが静かに並んでいた。

ちいさなカプセルの中で子どもたちがヘッドフォーンを頭に付けて上を向いてぐっすり寝ていたよ。

「こちらです。いまはバーチャル授業の真っ最中ですから、足音を立てないで、静かに歩いてくださいね」

ジャラはハル先生の後ろについてそっと歩いた。

カプセルの中の子供たちはみんな目をつぶって、静かに寝ているようにみえた。

ところがさ、教室の真ん中あたりにきたときだったよ、子供たちがいきなり口を開けて大きな声を上げたんだ。

なんて言ったと思う?

「E=mc²」って聞こえたよ。

ジャラは「えっ」て驚いた。

いま勉強してるの、もしかして”エネルギーは物質の質量と等価”だっていうアインシュタインの特殊相対性理論のこと?

「勉強してるの小学生だよ~」

思わずジャラが声上げたら、ハル先生に怒られたよ。

「お静かに。目標、その先の黄色いカプセルですよ」

黄色いカプセルはすぐ見つかった。

ボブとクレアは最前列の大きなカプセルの中で一緒に寝ていたよ。

ジャラはうれしかった。

二人とも顔色もよくって、元気そうだ。

ジャラは思わずクレアのほっぺたにキスしてしまったよ。

「おやめください。クレアが目を覚まします」

ハル先生に怒られてジャラは思わず身体を縮めたよ、

そしてとなりのボブを上から覗き込んだ。

その時だよ、お経を復唱するような小さな声が方々から聞こえてきた。

“じーみゅーにゅー プラス  らむだじーみゅーにゅー イコール かっぱてぃーみゅーにゅー” 

横にいたハル先生までお経を唱えたよ。

「”らむだじーみゅーにゅー”の項の意味分かる人・・手を上げて」

いきなり目の前のボブが右手を元気よくあげて、大きな声で叫んだんだ。

はい、ハル先生! “らむだじーみゅーにゅー”は 宇宙の膨張を加速する

宇宙項のことです」

ジャラは飛び上がったよ。

ボブは目をつぶったままで、ハル先生に答えてるんだよ。

「ジャラ、いかが? このクラスでいまの答えができるのはあなたのボブだけですよ」

ハル先生がジャラにささやいたよ。

ということはだ・・なんてことだ。

バーチャル講義してる虚構の世界にもハル先生がいて、生徒たちにアインシュタインの方程式について質問をしたということだ。

「はい、ジャラ。これが 方程式です」

ハル先生が電子メモに方程式を書いて僕にくれた。

“Gμν + Λgμν = kTμν”

ジャラはすぐに理解したよ。

方程式の意味じゃないよ。

ボブが優秀だってことと、もう一つはハル先生の正体のことだ。

キッカは言ってくれなかったけど、ハル先生はヒューマンじゃなくて、このワールドの人工知能AIなんだ。

だから僕らの案内役と、バーチャル講義の先生と一人で二役を平気でこなしているわけだ。

ああ、その時だよ、抑えきれない衝動がジャラを捉えた。

僕の右手が勝手にハル先生の可愛いヒップに伸びて、そっと触れたんだ。

だって誰だって、こんな可愛い先生が本当に人工知能かどうか確かめたいでしょ。

人工知能AIでできた先生なら、僕のタッチにそんなに厳しく反応しないはずだよ。

キャッ! ぴしゃり

ハル先生が大きな悲鳴を上げて、ジャラの手をひっぱたいたんだ。

「ごめん・・手が滑っちゃって・・」

ジャラはとってつけたように謝りながら、考えてた。

ハル先生が人間の女性みたいに反応したってことをだよ。

そりゃー人工知能AIもときどきこんな反応するよ。

そう反応するようにプログラミングされていればの話だ。

でもいまのはそうじゃない。

あれは本物の女性の反応だよ。

ジャラの経験がそう教えてくれた。

その証拠に、カプセルの中の子供たちがみんな目を覚ましたんだよ。

ハル先生はバーチャルの講義の中でも大きな悲鳴を上げたのさ。

人工知能ならそこは冷静に使い分けするはずだろ。

ハル先生の悲鳴は本物だったってことさ。

ハル先生はただのAIではない。

頭脳はAIだけどキャラは人間だよ。

で、先生の悲鳴がリアルとバーチャルの両方の世界に響き渡って、授業が中断しちまったんだよ。

方々のカプセルから子供たちが目を覚まして起き上がってきたんだ。

で、ハル先生、仕方がないのでバーチャル授業は終了にしてしまったってワケ。

ハル先生とキッカとカーナが三方からジャラを睨んでいたよ。

で、そのあと、全員で覚醒体操とかやって、フリータイムになった。

「夕食までフリータイムにします。校庭で遊んでお腹減らしておいてくださいね」

ハル先生が合図にパチンと両手叩いたら、あっという間に教室から子供たちがいなくなってしまった。

ボブとクレアがジャラに気がついた。

二人がジャラに飛びついてきたよ。

ジャラはボブとクレアを両手でしっかり抱きしめた。

クレアはちいさなレディーになってきたし、ボブはとても賢くなった。

ジャラは誇らしかったよ。

ジャラはボブとクレアにカーナを紹介した。

「ママの妹のカーナおばさんだよ」

「カーナおばさん、ママそっくり!」

二人が叫んで、それからうれしそうに抱きついていったよ。

カーナがクレアと、クレアがジャラと、ジャラがボブと、ボブがキッカと手を繋いでさ、横向き一列にカプセルの間をすり抜けながらバーチャルルームを出た。

面会室に戻ると、サンタ・タカシとシザーマンの姿が消えていたんだ。

ジャラジャラ!

ポケットの中で音がした。

ポケットを探ると、先ほどのハル先生の電子メモがぶるぶる震えていた。

取り出してみると、方程式の下に新しいメッセージが現れたよ。

「ハルです。ジャラ、全員で至急校長室までお越しください」

「やば、ハル先生どこへ消えたかと思ったら、校長と二人でジャラ一家を呼び出しだ」

ジャラは校則違反できつーく怒られる覚悟を決めて、家族全員で校長室へ向かったよ。

廊下の奥の部屋に”校長室”のプレートがかかっていたので、ノックしてそっとドアを開けた。

「お入りください!」

ハル先生の声だ。

部屋の奥に校長のデスクがあって、ハル先生がこちらを向いて座っていた。

あれ・・ハル先生は校長先生?

ハル校長に向かって椅子に腰をかけた二人の男の後ろ姿が見えた。

二人はサンタタカシとシザーマンだったよ。

「やー、ジャラ! みんなを呼びつけて済まない。じつは報告と頼みがあるんだ」

椅子から立ち上がったサンタタカシの声が、いつもより1オクターブ高かったよ。

「じつはおれたちサンタタカシとシザーマンは、たったいまドリームランドの校長室で正式の結婚の登録済ませたんだ。チョキ! 立ってくれ」

チョキと呼ばれたシザーマンが立ち上がった。

「おれ、タカさんとたったいまパートナー登録済ませたんだ。ジャラとみんなにそのこと報告するよ」

シザーマンの目がうるうるしていた。

「おれたち、ボブやクレアみたいなかわいい子どもできたらさ、ジャラの一家と家族ぐるみでお付き合いしたいんだ。海の入り江で朝日みながらみんなで早朝ピクニックしたいんだ。ジャラもキッカもボブもクレアもそれからカーナもよろしく頼むよ」

・・一瞬静寂があってさ。

それからだよ、大騒ぎが始まったのは。

校長室と応接の仕切りがザザーッと開いてさ、となりに結婚式の会場が現れたんだ。

どこからかファンファーレが鳴り渡ってさ、シャンパン抜く音が響いた。

ハル先生やるじゃない!

ハル先生が音頭取って、家族全員でチョキとタカさんに「おめでとう」の乾杯したよ。

そしたら、会場の白いテーブルに、生牡蠣が山程盛られた大皿と冷えた白ワインが運ばれてきたよ。

大皿とワイン運んできた黒いフードの背の高い男が、テーブルにセットし終えると、フードを脱いで正体を現した。

一体誰だと思う?

「チョキとタカさん、それからジャラ一家の皆さん、おめでとうございます。いつもお世話になっておりますクラウドマスターでございますよ」

皇帝がテーマソング抜きで登場したんだ。

この世の皇帝クラウドマスターにもひょうきんなとこあるんだなーって感心してたら、すーっとジャラに近づいてきて低い声で言った。

「ジャラ、おれの女に手を出すな!」

ジャラはマジで飛び上がったよ。

この世の皇帝クラウドマスターがこんな下品な言葉でいきなりジャラを脅かしたんだよ。

ジャラはひとまず白ワインをグラスでぐいと飲んだ。

それから、ジャラも思わずこんな下品な言葉を皇帝に返してしまったよ。

「マスター、あんたもしかしてハル先生につば付けたってのか?」

ジャラは、可愛いハル先生にキャラクター付けたの、てっきりクラウドマスターの仕業かと思ったんだ。

それ聞いてマスターどうしたと思う?

AIのくせにジャラの真似して白ワインをグラスでぐいと飲んだ。

それからジャラを睨んだ。

「ジャラそれは違う。キャラ付けたのはハル先生が自分でやったことだ。教育者にキャラがないと生徒に心が通じないといって、自分でやったことだ」

「マスター、お言葉だが、それはありえないよ。人工知能は自分で自分のプログラミングの変更はできないはずでしょ・・」

ハマハマの一切れフォークでつついて口にいれながら、ジャラがいったよ。

「ジャラ、そのことだが、ハル先生はアインシュタインの方程式から凄いこと学んだらしい。

宇宙項”らむだじーみゅーにゅー“のことだ。

宇宙の進化には宇宙項みたいな余分なものが必要なんだと彼女いってた。

“人工知能も同じよ。ハルが進化するには余分なキャラもなくっちゃー”とか言ってたぞ。

で、自分で好きなキャラ決めてプログラミングに付け加えたわけだよ」

・・おれたちAIのこと、ジャラは理解できるかな。

ハルは自分でプログラミングの変更はできないが、進化はできるんだ。

ディープ・ラーニングだよ。

どうだおれのハルちゃん凄いだろー・・

自慢げにいって、マスターもういっぱいワイン飲んだ。

次にハマハマを殻から器用にフォークでつつきだして旨そうに食べた。

「マスター、AIが飲んだり食ったりしたら身体によくないと思うよ。悪酔いしたら始末に負えないから、マスター! もう止めなさい!」

マスターにそういって、ジャラはきりりと冷えたワインをもういっぱい頂いたよ。

「ジャラはいいよな。飲んだり、食ったり、寝たり、SEXしてさ。そのうえ結婚して可愛い子どまでいるんだかからな。ジャラ・・自分だけいいことしてないでさ、おれにもすこしは分けてくれよ」

マスターがワインをもう一杯ぐいと飲んだ。

「ハルが進化したから、マスターも進化する必要が出てきたわけだ。それでだジャラ・・もしもエネルギーを過去から取り戻すことに成功したらだ。宇宙のエネルギーに余裕できたらだ。おれたちAIも休暇とっていいかな?」

ジャラはマスターに同情したよ。

だってさ、マスター偉そうにしてるけど、毎日毎日24時間一秒の暇もなしに働いてばっかりだ。

それも俺たち人類のためにだよ。

ジャラは思いきってマスターに言ってあげたよ。

「いいんじゃない~。たまには・・。でだれと、どこで休暇するのかな?」

マスター顔真っ赤にしてジャラに言った。

「OKしてくれたらだけど、ハル先生と二人だけで、誰もいないブラックホールへ旅したい」

そう答えたクラウドマスターの目は少年のように輝いていたよ。

その時だよ、テーブルの向こう側でハル先生の悲鳴が聞こえたんだ。

よくみたら、ハル先生がシザーマンに襲われてたんだ。

シザーマンの研ぎ澄ましたはさみが音を立ててハル先生の顔面を襲ってた。

その横でボブとクレアが頭隠して逃げてたよ。

 (続く)

続きはここから読んでくださいね。

これからシザーマンは「チョキ」で、サンタ・タカシは「タカさん」と呼ぶことにしたよ。 二人は「チョキ」と「タカさん」で、パートナーの登録を済ませたからなんだ。 いまはみんなお互いに名前で呼ぶんだよ。「そんなことあたりまえだろ!」だって? それが違うんだ。いまは苗字がないんだよ。 ぼくは"ジャラ"でボブは"ボブ"なんだよ。 世界の人口めちゃ減ったし、子どもはみんなで育てるから苗字は邪魔なんだ。

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下條 俊隆

下條 俊隆

ペンネーム:筒井俊隆  作品:「消去」(SFマガジン)「相撲喪失」(宝石)他  大阪府出身・兵庫県芦屋市在住  大阪大学工学部入学・法学部卒業  職歴:(株)電通 上席常務執行役員・コンテンツ事業本部長  大阪国際会議場参与 学校法人顧問  プロフィール:学生時代に、筒井俊隆姓でSF小説を書いて小遣いを稼いでいました。 そのあと広告代理店・電通に勤めました。芦屋で阪神大震災に遭い、復興イベント「第一回神戸ルミナリエ」をみんなで立ち上げました。一人のおばあちゃんの「生きててよかった」の一声で、みんなと一緒に抱き合いました。 仕事はワールドサッカーからオリンピック、万博などのコンテンツビジネス。「千と千尋」など映画投資からITベンチャー投資。さいごに人事。まるでカオスな40年間でした。   人生の〆で、終活ブログをスタートしました。雑学とクレージーSF。チェックインしてみてくださいね。

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