未来からのブログ8号 “クレージー爺ちゃんがボブの身体に取り憑いた!”

これからシザーマンは「チョキ」で、サンタ・タカシは「タカさん」と呼ぶことにしたよ。

二人はドリームワールドに「チョキ」と「タカさん」の名前で、パートナーの登録を済ませたからなんだ。

 

いまはみんなお互いに名前で呼ぶんだよ。

「そんなこといつの時代でもあたりまえだろ・・」だって?

 

それが違うんだ。

いまは苗字がないんだよ。

 

“鈴木イチロー”君は、ただ”イチロー”君なんだ。

“鈴木イチローの長男のジロー”は、単に”ジロー”なんだ。

 

僕はジャラだし、キッカはキッカなんだよ。

ボブはボブだし、クレアはクレアなんだ。

 

世界の人口めちゃ減ったし、子どもはみんなで育てるから苗字は邪魔なんだ。

でもいまでも家族は家族なんだよ。

 

分かった?

でさ、前回の最後のシーンはタカさんとチョキの婚約発表パーティで、酔っ払ったチョキがハル先生を突然襲ったところだったよ。

 

それじゃあのあとどうなったか、量子もつれ使って100年昔の君に報告するね。

 

前回の記事まだの人はここから読んでくださいね。

未来からのブログ 7号 “ボブとクレアはドリームワールドで元気に勉強中だったよ”

 

未来からのブログ8号 ”クレージー爺ちゃんがボブの身体に取り憑いた?”

 

ハル先生のすごい悲鳴が聞こえてきて、ジャラとマスターは慌てて先生のところに駆けつけたよ。

そしたらさ、ワインで酔っ払ったチョキが金ぴかのはさみ振りかざして、ハル先生の頭にアタックかけてたんだ。

 

チョキは興奮すると、やたらとシザー振り回すんだ。

タカさんなんか、おかげでいつも服ぼろぼろだよ。

 

チョキはきっとうれしかったんだと思う。

チョキとタカさんが二人のこども作るのハル先生がOKしてくれてさ、そのうえ先生主催で婚約発表パーティーまで催してくれてるんだ。

 

チョキは御礼にハル先生のロングヘヤーをカットしたかっただけなんだよ。

ハル先生そんなこと知らないもんだから、チョキのシザーから悲鳴上げて逃げ回ってたってわけ。

 

タカさんが代わりにチョキの気持ちをハル先生に伝えたよ。

そしたら先生覚悟を決めて、タカさんが用意した椅子に座ったんだ。

 

喜んだチョキは腕まくりして、あっという間に先生のロングヘヤーをグラデーショ付きのショート・カットにしたよ。

チョキが自分のシザーを鏡にしてハル先生にできばえ見せたら、ハル先生、悲鳴上げて喜んでた。

 

ハル先生のグラデーション・ショートカット(画像はO-DANより)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハル先生のカットを済ませると、チョキが横にいたボブの頭をみて言った。

「ボブも相当伸びてるな!」

 

ジャラもそう思ったので、チョキにOKの目配せしたよ。

危険に感づいたボブがあわてて逃げようとした。

 

チョキはボブを捕まえて、頭ぐいと左手で抱え込んた。

それから右手のシザーをバリカンに変形してばりばり刈り込んだ。

 

「チョキ! ボブ痛いよ、頭になにか入ったよ!」

半分刈り込んだところで、ボブが叫んで、チョキの腕からするっと脱出した。

 

ボブはそのまま校庭でサッカーしてる仲間のところに逃げ込んだんだ。

「ボブ、お前その頭どうした?」

 

仲間のボスが聞いたので、ボブは咄嗟に答えた。

「シザーマンのアート・カットさ! どうだ、すげーだろ!」

 

仲間のボスが目をむいた。

「カッコつけたなボブ、おれもシザーマンのアート・カット、頼んでくれよ!」

 

ボブが仲間を連れてパーテイー会場に戻ると、クレアがチョキに三色グラデーション付きのショートカットしてもらってたよ。

クレアの後ろにおんなの子がずらっと並んで、行列ができてた。

 

その後ろに男子生徒の長い列ができたんだ。

チョキがはさみならして子供たちの髪の毛、片っ端からアートカットに仕上げていった。

 

タカさんがかいがいしくチョキのお手伝いしてた。

タカさんとても幸せそうにみえたよ。

 

騒ぎが落ち着いて、ハル先生となんだか深刻な顔して話し込んでいたクラウドマスターが、ジャラに近づいてきた。

「じつはジャラに相談したいことがあるんだ」

 

今度はマスターいやに礼儀正しい。

これいつもの困ったときの態度だ。

 

マスターの話はジャラの予想通りだったよ。

「ジャラのおじいちゃんに”量子もつれで返信するための暗号解読”だけど、スパコンでフル稼働して分析してるんだが、解読がうまくいかないんだ。

さっきもスパコンいじってたら、不思議なことが起こったんだ。

ハル先生の大好きな宇宙の方程式の一部がだ、なんてこった・・暗号解読のためのキーワードだといって画面にしつこく表示されるんだ。

これ、宇宙センターのマスターとして恥ずかしい話なんだけど、スパコンのAI本人にもどういうことかさっぱり分からない!

で、ハル先生とジャラの意見聞こうと思って、パーティーに駆けつけてきたってわけだ」

 

マスターに頭下げて頼まれたら、ジャラも悪い気がしないよ。

「うん? じゃ・・そのキーワードっての見せてご覧?」

 

ジャラ、ちょっと偉そうにいってみた。

マスターはぼくのためにメモを用意していたよ。

 

「ハル先生の連絡メモにキーワード書いておいたから、取り出して見てほしい」

ジャラはポケットの中を探して、ハル先生の電子メモを取り出した。

 

“全員で至急校長室へお越しください”のメモのあとにアルファベットが書いてあった。

 

Λgμν

「らむだじーみゅーにゅー」

 

ジャラは声を上げて読みあげた。

「マスター、これハル先生のお気に入りの宇宙項じゃない。さっきもボブがハル先生の質問に答えてた宇宙項だ。おじいちゃんに返信するための暗号となんの関係もないと思うよ!」

 

ジャラが軽く言い捨てたら、皇帝クラウドマスターの表情が”心なしか曇った”。

きっとジャラの同情ひいて、本気で協力させようって魂胆だ。

 

でもその表情、悲しいというより、笑ってるみたいだった。

マスター、”ハル先生の真似して人間並みのキャラの練習してるな”。

 

ジャラは、悲しい表情ってこうするんだよって、マスターの鼻を指でつまんで教えてあげたよ。

鼻つまんだら、息が詰まって眉毛が真ん中に寄るからとても悲しそうにみえるんだ。

 

本当だよ。

 

で・・そのときだった。

「パパ、ボブのこと呼んだ?」

 

目の前に片側スキンヘッドのボブが立ってた。

「”らむだじーみゅーにゅーっ”てボブが答えた話してるの聞こえたよ。恥ずかしいからぼくのことクラウドマスターに自慢なんかしないでね」

 

ボブのマジな顔見て、ジャラなんだかうれしくなった。

で、ボブの刈り上げヘアーを下から上に撫で上げて言った。

 

「パパはボブの自慢話じゃなくて、おじいちゃんと会話するための暗号解読の方法をマスターと話してるとこなんだよ」

「それじゃ、やっぱりボブのことだよ」

 

ボブが簡単に言うのでジャラは聞き直した。

「いまなんていった?」

 

ボブが答えた。

「だからさ、キーワードΛgμνの意味は、”おじいちゃんと連絡取りたいならボブと話をしろって”ことだよ」

 

ボブの言ってることが理解できなくて、ジャラはボブの顔をじっと見つめたよ。

ボブもジャラの顔を見つめ返していった。

 

「パパ、さっきのハル先生のバーチャル授業中におじいちゃんが現れてさ、ボブと話したんだ」

 

ジャラは驚いて、思わずボブに口走ってしまった。

「ボブ、お前、さっきの授業、サボって夢見てたな」

 

「夢なんかじゃないよ。ボブの話本当だよ。パパ信じないんならおじいちゃんの話、止めてもいいよ」

ボブが口とんがらせていったので、ジャラはすこしあわてたよ。

 

「ごめんボブのいうこと信じるよ、でもすこし驚いてるんだ」

ボブに苦しい言い訳したときだよ・・ジャラは、むかしボブの遺伝子に、いつかおじいちゃんと量子もつれできるように仕掛けをしておいたことを思い出したんだ。

 

もしかして・・昨日の午後入り江の浜で、ジャラがおじいちゃんと量子もつれを始めたから、”ジャラを中継地点にしてボブがおじいちゃんとつながった?”

 

クレージー爺ちゃんと天才ボブの二人だ、これありえない話じゃない!

 

ジャラとボブの話をだまって聞いていたクラウドマスターが、いかにも疑わしそうな猫なで声でボブにいった。

「で、ボブ坊やは、さっき100年も前のおじいちゃんといったいなんの話したというのかな?」

 

小馬鹿にしたようなクラウドマスターの話し方に小さなボブが怒った。

「マスターって態度良くないよ。ボブのこと馬鹿にするんなら・・もー、”なーんも話してあげないよー”だ」

 

次のボブのセリフが決まってたね。

「そうだ・・美人のハル先生に”クラウドマスターってキャラ良くないよ”っていいつけちゃうぞ!

・・どうだマスター、参ったか?」

 

「ボブ、参った!」

飛び上がったマスター、マジで答えたよ。

 

で、気分良くしたボブが話をした。

「さっき授業で”らむだじーみゅーにゅー”ってみんなと一緒に声上げてたらさ、しわがれ声がどこからか聞こえてきたんだ。”宇宙項の意味は膨張だよ”って、ぼくの頭撫でながら、内緒で教えてくれたんだ。間違いないよ、あんな不思議なことできるのクレージーじいちゃんに決まってるよ」

 

「それだけ?」マスターが聞いた。

「それだけ」ボブが答えた。

 

そのときだよ、ボブががたがたと震えだしたのは。

夕陽の入り江で僕とカーナに起こったあの現象だよ。

 

ボブにおじいちゃんが取り憑いていたんだ!

「ボブ、大丈夫か?」

 

ジャラはボブをおじいちゃんに奪われないように、後ろからしっかり抱きしめたよ。

でもボブは僕の腕の中で暴れた。

 

ボブはちいさな両手を前に突き出して、叫んだ。

「おじいちゃんでしょう、おじいちゃんだね!」

 

ボブは伸ばした手でなにかをつかんだみたいだったよ。

それからボブは安心したように、暴れるのを止めて僕の腕の中で気を失ったんだ。

 

ボブは気持ちよさそうに眠り込んだ。

バーチャル教室のカプセルの中にいたときのように穏やかな表情だったよ。

 

しばらくしてボブの表情が動いた。

目をつぶったままボブの口が動いたんだ。

 

その声しゃがれてた。

 

「ジャラなにをしてる、簡単だ。サンドに返事を書いて、早く入り江の浜に持ってきなさい。太陽と月の暦の関係で、もつれてる期限は明日中だ・・」

それだけいって、ボブが目を覚ました。

 

「おじいちゃんの声、ちゃんと聞いてくれた?」

ボブがジャラの腕から身をほどいて、自慢げにマスターにそういったんだ。

 

そしたらマスターがあわててボブに聞いた。

「ボブ、おじいちゃんは他になにかいってなかったかい? じつは一つしかないサンドの粒子が小さすぎて返事を書けないんだよ」

 

「マスター、ボブもう怒るよ。なんどもいってるじゃない。Λgμν だよ。宇宙は膨張してるんだって・・おじいちゃんがヒントくれてるんだ。サンド暖めてプーって膨らましたら、返事が書けるでしょ!」

 

「ジャラ、ボブは天才だ・・」

マスターの顔、感激したように紅潮してた。

 

マスターのボブへの見え透いた褒め言葉、ジャラにはみえみえだ。

砂粒暖めても、米粒みたいに膨らむわけないじゃない。

 

マスター、分かってて演技してるんだよ。

“クラウドマスターって素敵なキャラだよ”って、ボブがハル先生に報告するの期待してるんだ。

 

ジャラ思わず下向いて笑ったら、ボブもクックって笑ってたよ。

それからボブは頭にくっ付いていた小さな砂粒を指でつまんで、じっと見つめた。

 

その粒、真っ白できらきら光ってた。

「砂粒暖めるって、冗談だよ。代わりにこのサンドをマスターにあげる! ボブの頭にくっ付いてるのおじいちゃんがみつけたんだ。これきっと大事なものだよ。さっきチョキがカットしてくれたとき、はさみについてた粒、僕の頭に乗り移ったんだ。ぐりぐりして痛かったから、ボブ逃げたんだよ。ハイ!これマスターにあげるから、手を出して!」

 

クラウドマスターが一粒の砂をプラズマの掌で受け取って、慎重に触診した。

出てきたデータを直ちにセンターのスパコンに転送して、分析した。

 

分析結果がマスターに届いた。

「この粒子が昨日の粒子と同じ場所のものである確率、99.99%」

 

「ジャラ、奇跡が起こった。これタンジャンジャラのサンドだ。やったぞボブ、メッセージボードが二枚に増えた」

クラウドマスターの顔が興奮して、真っ赤になった。

 

そりゃそうだ、ボブのおかげですべてが解決したんだものね。

・・ボブの砂粒、どうしてタンジャンジャラの本物なのだって?・・

 

ほら、思い出してよ。

昨日、夕陽の入り江でチョキが僕の掌から真っ白いサンドをハサミで受け取ったでしょ。

 

あのときの砂粒、一つだけチョキのはさみのどこかに引っかかってたんだと思うよ。

・・ということで、ジャラはどうしても今日中におじいちゃんへのメッセージを作り上げなくちゃならないことになった。

 

ボブのおかげで36文字までOKだ。

“簡潔に、気持ちを込めて”だ。

 

これ難しいよ。

僕らの宇宙のエネルギー不足の解決と、君の世界のすべての仲間の未来が、これからぼくの書くメッセージのでき次第にかかってるんだからさ。

 

それじゃいまからすぐに取りかかるよ。

できたらすぐ送るからね。

 

もち、いま君が見てくれてる”未来からのブログ”にだよ。

 

(続く)

 

【記事は無断転載を禁じられています】

この世の果ての中学校 13章 学校の地下室は”国会議事堂”だった!

 ペトロとマリエのちびっ子スパイは、ママたちのあとをつけて秘密のPTAの会場に向かった。

 行き着いた地下道の突き当たりは明かりがついた踊り場になっていて、大きくて重そうな観音開きのドアがあった。

 

 そこには「国会議事堂」という立派な看板が掛かっていた。 

 右手には少し小さな自動ドアがあって、「国会電子図書館」と書いてあった。

 

 ここ、これ・・・なんだかヤベーよ!

 ペトロが口あんぐり。

 マリエは目を丸くしたまま、瞬きをしない。

 

  二人は手を繋いだまま、二つの扉の前で立ちすくんだ。

 

( 前回をまだの方は、ここから読んでくださいね)

この世の果ての中学校 12章 秘密のPTA “やっぱり~パパやママは幽霊だった”

 

この世の果ての中学校 13章 学校の地下室は”国会議事堂”だった!

 

「マリエ、国会議事堂ってなにするとこだったっけ?」とペトロが聞く。

 サンフランシスコで育ったペトロは、ワシントンの国会議事堂をみたこともない。

「国の未来を話し合う、とっても大事なところよ。でもどうして中学校の地下室なんかに議事堂があるのかしら」とマリエ。

「大事な国会議事堂は地下に隠して作ってさ、その上に僕らの学校を建てて、敵からカモフラージュしてたんじゃないかな? 中学校の地下にそんな大事なものあるなんて誰も思わないもんな。それよりママたち、国会議事堂と図書館のどちらにいると思う?」

ペトロが聞くと、マリエは小首をかしげて考え込んだ。

 

それから指をパチンとならした。

「分かった。ママたち国会議員で、今日は国会からの放送中継があるのよ。それでママ、たっぷり時間かけてお化粧してたのね。間違いなく議事堂の中よ」

 

「それでか? そういえば僕のママも、ずいぶん塗りまくってみたいだ!」

 二人で冗談いって、くっ!くっ!と笑う。

 

「でもね、議事堂じゃなくて、図書館で深夜の読書会なんてのもありかもね」とマリエ。

「わかった。それじゃ、だれかのパパかママが次にやって来てさ、どちらに入るか確かめようよ」とペトロ。

 

 二人でちいさく頷いて、ドアから少し離れた暗闇に隠れた。

 

 しばらくして、マリエとペトロが下りてきた同じ通廊から大勢の話し声が聞こえてきた。

 お喋りしながら踊り場の灯りの中に現れたのは、エーヴァのママとパパ、その後ろから裕大のママとパパだ。

 

 エーヴァのパパと裕太のパパが、二人がかりで国会議事堂の重いドアを大きな音を立てて開けると、ママたちが先頭で議事堂に入っていった。

 

 すかさず・・・葉隠れ帽子をかぶったペトロとマリエが、四人にぴったりくっついて議事堂に潜り込む。

 

 二人の目の前に、大理石の柱と白い壁に囲まれた立派な議事堂が現れた。

 

 丸い天井の照明灯から柔らかい光がおりてきて、場内をぼんやりと浮かび上がらせている。

 一段高くなった壇上に議長席が設けられて、その前に馬蹄型に会議テーブルが拡がっていた。

 

 議場の後方には少し高い位置に傍聴席が設けられている。

 ペトロとマリエは、誰もいない傍聴席に葉隠れの技を使ったまま座り込んだ。

 

「国会議員」と書かれたプレートが置かれた席に、ペトロとマリエのママが隣同士で並んで、澄まし顔で座っている。

 

 議長席には校長先生が座っていて、みんなが着席するのを腕組みしながら待っていた。

 テーブルの上のプレートには「日本国・総理大臣」と書かれている。

 

「やば! これ本物の国会?」

 ペトロが目をむいた。

 

「・・・みたいね!」

 マリエが喉を詰まらせた。

 

 裕大ママの議員席の隣には「リアルの王」と書かれたプレートが置かれていて、そこには裕太のパパが座っていた。

 

 やっぱりね、裕太パパがリアルの王で、リアルの王の使いでもあるのね。

 一人二役だったのね。 

 

 マリエが頷いたとき、咲良のママが悠然と姿を現した。

 横には、”ファンタジーアの郵便配達”がガードマンのようにピタリと付き添っていた。

 

 郵便配達は「ファンタジーアの女王」と書かれた席の椅子を手前に引いて、咲良のママが座るのをお手伝いしたあと、その横の「議員席」に着いた。

 

「あったりまえだけどさ・・・郵便配達のおじさんって正体は咲良のパパだろ? でもさ、ファンタジーアの郵便配達って、手紙なんてどこからも来るはずないから暇だろな。僕らのマイ・ワールドの鍵以外に一体なに運んでるのかな?」

 ペトロがマリエに小さな声で聞く。

 

「咲良おねーちゃんの話だと、郵便配達の仕事って、むかしはめちゃ忙しかったそうよ。ファンタジーアが北欧の森の中にあった頃は、世界に子供が一杯いて、みんな一つずつ秘密のマイワールド持つてたからなの。何十億という子供たちのマイワールドがファンタジーアと繋がってて、子供たちから女王様宛のお手紙が一杯来てたそうよ。 咲良もママと一緒にお返事書くのに大変だったっていってたわよ」

 

・・・「う~む、あと、お一人です」

 総理大臣が腕組みをしながら報告をした。

 

 最後に、匠のママがばたばたと議事堂に駆け込んできた。

「遅れちゃってすみません! 匠がどうしても離してくれなくて・・・なんとか言い含めてやっと出てまいりました」

 

「マリエ、匠はママっ子だもんな。きっとママのスカート引っ張って放さなかったんだぞ」

 天敵・匠の甘える姿を想像してペトロは必死で笑いをかみ殺した。

 

「それでは皆さんお揃いのようですので、本年度の臨時国会を開催いたします!」

 校長先生が立ち上がり、議事堂中に響き渡るような大声で開会を宣言した。

 

 人手不足で議長になる人がどこにもいなくて、総理大臣が議事を進行していた。

 校長先生は宣言を済ませると、面倒くさそうに議長席に座り込んで黙ってしまった。

 

 ファンタジーアの女王、咲良のママが手を上げて校長先生に発言を求める。

 総理がうなずくと、ママは勢いよく椅子から立ち上がって演説を始めた。

 

・・・いよいよ三界を一つにする大三界の日が近づいて参りました。 

 私たちは「リアル」「虚構」「幻想」の三界の力と知恵を統合して、子供たちが生きていくのにふさわしい未来世界、つまり”大三界”を地球に完成させたいと願っております。

 しかしながら私ども保護者や先生方が黄泉の国から毎夜頂いている生存のエネルギーにも限りがございます。

 ことは急ぎます。

 今日は子供たちにいつの日に、どの様に、この地球を引き継がせるのかを決める最終会議と聞いております・・・

 

 ファンタジーアの女王がぐんと背筋を伸ばして、総理を睨みつけた。

「ところで総理! 人類に残された時間、いいかえますと子供たちのための食料はあとどのくらい残っておりますのでしょうか? 総理、のんびり総理大臣の席に座ってなんかいないで、立ち上がって、正直にお答えください。どうなんですか! これ、校長先生!」

 

 女王の迫力に押されて、校長先生が椅子から跳びはねた。

「そ、その件は、担当大臣に答えさせます・・・担当大臣殿!」

 

 議事堂の奥から黒い影が現れて、トットっと歩いて総理の隣の「担当大臣」と書かれた席に座った。

「アッ! あれ、ヒーラーおばさまだ」

 

 マリエが思わず声を上げてしまった。

 ペトロが慌てて、マリエの口をふさぐ。

 

「ここ、絶対みんなに中継しないと!」

 マリエはポケットからスマホを取り出して、議事堂からの放送中継を始めた。

 

 ”ジャン!”

 四台のスマホが同時に鳴った。

 

 家のベッドで中継を待ちかねていた裕大と咲良とエーヴァと匠がスマホに飛びついた。

 スマホから、聞き慣れたヒーラーおばさまの声が聞こえた。

 

・・・質問にお答えします!

 もちろん、野菜とか肉類とかのフレッシュ・フードの備蓄はすでに使い切ってございません。

 残っておりますのは冷凍と保存食品ばかりですが、子供たち六人分で三年持つかどうかというところです。

 あとはコケ類、菌類の培養開発に期待するとしまして、どうしても足りないのは発育期に必

要な動物性のタンパク質です。

 ご存じの通り、人類が食べられる動物は、地球上から姿を消しています。

 あとは最近この辺りに住み着いている、宇宙からやってきたとみられるスペース・イタチを

増やして家畜化できないかと、検討を始めているところでございます・・・

 

 マリエのお腹の上でなにかが暴れ始めた。

 マリエが耳の後ろをなでて、”大丈夫、大人しくするのよ”と優しくなだめる。

 

「その子は人の言葉が分かるの?」

 ペトロが小声で聞く。

 

「地球の言葉を勉強中なの、この子の名前はゴルゴンよ」

「おいしそうな名前だな。昔、ピザで食べたことあるよ」

 

「アタリ! この子のおならはゴルゴンゾーラと匂いがとても似てるの」

・・・二人は会議の内容にうんざりして、お喋りを始めた。

 

♯「あ~と3年、あと3年。ペトロとあわせてあと6年。ゴルゴン食べてもあと7年」♭

 マリエが小さな声で歌っている。

 

 ゴルゴンがまた暴れだした。

 ペトロにはマリエの気持ちがわかった。

 

・・・とっても深刻な話のときはさ、歌でも歌ってないとやりきれないよ・・・

 ペトロが呟く。

 

 会議はまだ続いている。

 

 宇宙の外の異界まで飛び出して、食料の調査を済ませた宇宙艇ハル号の船長、エーヴァ・パパが代表質問をしていた。

「総理!  食料増産計画の件ですが、調査した外宇宙の惑星テラには緑の森がありました。あの緑を地球に移植できれば、野菜が手に入ります。野菜が手に入れば、家畜を育てられます」

 

エーヴァ・パパがあきらめ顔で質問を続けていた。

「ただし地球に移植するには宇宙空間の歪みを通過しなければならない。超大型の新航法宇宙船と大量の人手が必要となりますが、”総理” 資材と人材は調達可能でしょうか?」

 

「担当大臣殿」

 総理が担当大臣を呼んだ。

 

 暗闇からヒーラーおばさまが再び現れて、答弁席に着いて答えた。

「先日の宇宙への探索調査で資材は底をつきました。宇宙艇の燃料もあと往復一回限りです。人材はみな黄泉の国に参りました」

 
 やるせない溜息が国会議事堂を支配していた。

 ペトロのママが立ち上がって、校長先生に厳しく迫った。

 

「過去の世界から食料を手に入れたらどうでしょうか。こうなれば過去から輸入した”賞味期限切れ”でも、食べられるものなら何でもいいのじゃありませんか?」

 

「担当大臣殿」

 総理がだれかを呼んだが、声は虚しく議事堂に反響して、誰も現れなかった。

 

「虚構の手品師殿答弁をどうぞ! アッ、そうでした。彼は今日はここにはおりません。手品師は子供たちの未来探しの旅に行くと行って、先ほど出かけていきました。本日は担当大臣は欠席しております」

 

 ママたちが一斉に校長先生を睨み付けた。

 厳しい視線にたまりかねて、校長先生は自ら立ち上がって答弁を始めた。

 

・・・私は虚構の手品師にもうずいぶん前にその質問をしたことがあります。

 彼に笑われましたよ、虚構はあくまで虚構ですと。

 過去の世界にワープして美味しい料理を食べることが出来ても、所詮、それは幻影に過ぎない。

 食料をこの世界に持って帰っても、たちまち消えて無くなる。

 パラレルな世界とはそういうものだ。

 過去や未来を体験したつもりでも、それは私たちの世界とは違うレールの上を走っている別の世界を覗いているだけに過ぎない。

 私たちはリアルという一本のレールから外れることは決して出来ないのだと手品師が言ってました・・・

 

 答弁を終えると、校長先生は総理の席に戻ってドサリ!と座り込んだ。

 

・・・「ここのやりとり、なんだかお寒くない?」

 マリエが、放送中継を中断して、ペトロの背中を指で突つく。

 

「マリエ、そろそろ、ここ抜け出してとなりの電子図書館にいかない? ちょっと調べてみたいことがあるんだ」

 ペトロはそっと入り口の扉を指さした。

 

 マリエがうなずくと、二人は気付かれないようにそっと傍聴席を離れた。

 議事堂の扉は、匠のママが慌てて飛び込んできたときのまま、観音開きの真ん中が、少し開いた状態になっていた。

 

 二人は議事堂を抜け出した。

「念のため、葉隠れの葉っぱはかぶったままにしておこうよ」

 

 ペトロがそう言って、二人で電子図書館の扉の前に立つと、ドアが勝手に開いた。

「国会図書館にようこそ!」

 

 自動音声が数か国語で「Welcome!」とかいって、やさしく二人を迎えてくれた。

 その声はどこかで聞き覚えのある女性の声だった。

 

 二人が入り込むと、部屋の天井と壁から柔らかい照明が降ってきて、図書館の内部が浮かび上がった。
 二人はエントランス・ゾーンに立っていた。

 

 奥には教室位の大きさの部屋があって、ちいさな事務机がいくつか並んでいる。

 それぞれのデスクに図書検索用のパソコンが置かれていた。

 

 部屋の奥の壁は、一面に大きなガラスがはめ込まれていて、向こう側には体育館くらいの巨大な空間が広がっている。

 そこには、記録用と計算用のコンピューターが数列に分かれて並んでいた。

 

 そこは世界中の重要な記録がデジタル化されて収められている、電子図書館だった。

 二人は一つのデスクに椅子を二つ並べ、端末用パソコンに向かう。

 

「Welcome!ペトロ君! 深夜の国会図書館で君は一体なにを知りたいのかな?」

 マリエがおどけてペトロに尋ねた。

 

「ほら、タイムスリップしてカレル先生の昔の家にお邪魔したとき、庭の話、盗み聞きしたじゃない。あのときのカレル君とハルちゃんの話の続きがどうしても知りたいんだ」

 ペトロが知りたいのは、 カレル先生の子ども時代の家で、ペトロたちが二階のテラスから盗み聞きした話の続きだった。

 

 2016年の東京から、カレル少年とハル少女が世界の偉い科学者八人を引率して、今から二年前にこの世界を視察に来ているはずだった。

 2090年11月3日の祭日が、ペトロの記憶にある視察予定の日だった。

 

 ペトロとマリエはこの日付で、視察の記録がないかどうか、検索を開始した。

 数十分がたってマリエが小さな欠伸をしたとき、”やったよ!”とペトロの声が弾んだ。

 

【過去からの訪問者2090年11月3日】というファイルが目の前にあった。

 ファイルの頭には『最高機密』の赤い四文字が付いていた。

 

 なんとかしてファイルを開けようと、ペトロは”パスワード”の枠に思いつく限りのセンテンスを片っ端から放り込んでみる。

 すべての試みは無残に拒否されてしまった。

 

「このファイルは最高機密です。資格を持たずに侵入しようとするものは、法律で厳しく罰せられます」

 警告の赤い文字が派手に点灯した。

 

「最高機密っていったい誰に対して秘密なんだよ?」

 ペトロがキーボードをがんと叩いた。

 

「きっと私たちのことよ! だれかに閲覧拒否されてるのよ」

 マリエもドンと机を叩いた。

 

 そのときだった。
「ハーイ、ペトロ! 乱暴しないでよ。マリエと二人でこんな時間にどうしたの?」

 

 パソコンから呼びかけるその声は間違いなく聞き慣れたハル先生の声!

・・・電子図書館の中にハル先生がいる。マリエと二人でいるところを先生に見つかった・・・

 

 ペトロは椅子から転げ落ちそうになった。

 マリエがあわててペトロの身体を支える。

 

「ペトロもマリエもそんなに驚かないでよ。ばらしちゃうとね、このスーパーコンピューターも私の身体の一部なのよ。ハル先生、電子図書館の館長さんってとこかな・・・」

 ハル先生の声がなんだか眠たそう。

 
「あら、ハル先生!夜は電子図書館でお休みなのね。起こしちゃってごめんなさい」

 マリエが涼しい声でハル先生に答えた。

 

 神の子マリエは滅多なことでは驚かない。

「ハル館長にお願いします。閲覧拒否を解除して下さい。ハルちゃんとカレル君の計画、成功したのかどうか、ペトロもマリエもどうしても知りたいのです」

 

「ハル先生了解。でも館長自らは解除できないの。二人で考えてください。カレル教授が作った拒否解除の暗号。二人なら分かるはず。ヒント・・・”カレル家のディナーと関連あり”」

 

「豚のソテー」

 立ち直ったペトロが好物の名前を打ち込む。

 

 反応なし。

「タケノコ料理」

 

「近い・・・けど、あと1回限りです。カタカナと漢字で四文字」

 と、ハル先生の声。

 

「ブー太郎」

 マリエが四文字を叩くと、チャイムがピンポンと鳴って、ファイルが開いた。

 

【議事録または映像記録、どちらかを選択してください】の表示が出た。

 ペトロは「映像記録」にタッチした。

 

 マリエが慌ててスマホを取り出した。

 マリエはパソコンの横の小さな端子にスマホの細いケーブルの先をカチャカチャやって二つを繋いだ。

 

「ただいまから、国立国会図書館より、カレル少年とハルちゃん出演のドキュメンタリー番組『過去からの訪問者』を中継でお送りいたします」

 ”驚くな! 解説は図書館長のハル先生だよ”

 

 マリエのナレーションがスマホに流れて、ベッドで寝っ転がって次の中継を待ちわびていた四人の生徒が、ベッドから一斉に飛び起きた。

 

(続く)

続きはここからお読みください。

 

https://tossinn.com/?p=2681

 

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ビジネスエリート必見!財布にやさしい会社ゴルフの始め方!

いま、三密にならずに屋外でできるゴルフが若い人からベテランのシニアまで秘かな人気を呼んでいます。人気のゴルフ道具は品切れも出たとか? “ゴルフブーム再来?”

「営業やるならゴルフくらいは覚えておいた方がいいよ」会社の上司や先輩からそう言われてあなたはゴルフを始めるかどうか悩んでいませんか?

“ゴルフは道具もプレー費も高くつくみたいだし、ルールやエチケットも結構うるさそう。練習に時間も掛かって面倒くさいから・・・しばらく様子みるか?”

実は、知恵をひねれば会社ゴルフは10万円あればスタートが可能です。会社ゴルフは早く始めるほど後々の投資効果も大とか。

ここでは、将来のビジネスエリートを目指す方に向けて「財布に優しい道具の選び方と練習の方法」を紹介します。

 

会社ゴルフを始めるための費用は全部でいくら?

 

 

得意先や会社同士の懇親ゴルフでプレーをするためには、どのようにクラブや道具を準備すればいいのでしょうか?懇親ゴルフでコミュニケーションを図り、楽しくお付き合いをするためにはある程度の技術と恥ずかしくない道具が必要になります。

 

ラウンドするのに数万円かかっていた費用も、ゴルフ場の淘汰と経営の合理化が進んだおかげで、いまは1万円前後でゴルフを楽しめる時代がきました。一方、ゴルフクラブやファッションにかかる費用にはあまり変化はみられません。

 

一流ブランドでゴルフクラブをフルセット(14本)そろえたら、20万円近くかかってしまいます。これでは会社勤めのゴルフ初心者には負担が重すぎます。

“なんとかならないものでしょうか?”

 

じつは、ゴルフの道具も旧型や中古市場の充実で、初心者にも手に入れやすい環境が整っています。知恵をひねれば道具代は10万円すこしで準備できそうです。

 

それではコースでラウンドしている気持ちになって、ゴルフクラブの選び方と費用を具体的にみていきましょう。

 

ゴルフクラブは10本で十分!すこし前のモデルや中古クラブが狙い目

 

10本のクラブで十分

 

 

 

 

 

 

 

ゴルフクラブはドライバーからパターまで合計14本使えるというルールになっています。このルールはトーナメントプロに対してクラブの使用本数を制限するために始まりました。

 

海外のリゾートで外国人が日本人のゴルフバッグをみて「戦艦大和だ」といったというエピソードがあります。アマチュアの日本人のゴルフバッグから14本のクラブが大砲みたいにいっぱい突き出していたからです。

 

アマチュアのゴルフは10本のクラブをうまくセッティングすれば、ラウンドに十分な使い分けができます。ゴルフが上手になって次のステップを目指したくなったときに、スコアアップのためのクラブを増やしてセッティングをすればいいと思います。

 

始めての練習では、クラブはボールにまともに当たりません。とんでもないところにぶつけてクラブは痛みます。新品のニューモデルをセットで買って失敗したら目も当てられません。始めてのゴルフは中古品を買って練習を始めることをおすすめします。

 

中古品でも古いものから、新品同様のものまでいろいろあります。シリーズのモデルチェンジが二年で行われることが多いので、買い換えで中古品が出回りやすいのですね。

 

数年でクラブの性能が大きく変わることはありませんので、2世代から3 世代前のモデルを狙うのが得策です。ニューモデルが出ると、前回モデルの値段が8掛け位になります。中古なら使用程度によりますが、6掛けくらいです。

 

中古品や古いモデルでスタートして、上達できてから新しいモデルを検討するのが楽しくていいと思います。中古だって業者がネットで簡単に引き取ってくれますから、新品の原資になります。

 

初めてのクラブは、旧モデルか中古でセッティングしましょう。

 

それではデビューを目標に、ラウンドシミュレーションの開始です。

 

ドライバー

 

 

 

 

 

 

 

 

スタートホールのティイングエリアにやって来ました。1打目はティーの上にボールを置いて、地面からティーアップ(高く)して打つことができます。スタートホールは通常長くて広いホールになっています。ティーショットに使うのは、もっとも距離の稼げるドライバーです。

 

ドライバーは自分の身長や体力にあったクラブを選びましょう。クラブは長さ(レングス)と硬さ(フレックス)、ボールの上がりやすさ(ロフト角)や振ってみた調子(試打感)などで選びます。距離に重点をおく人は長い目のクラブを、方法性を重視する人は短めのクラブを選びます。

 

まずクラブを振ってみてヘッドの走るスピード(ヘッドスピード)によって、クラブのシャフト(軸)の硬さを選びます。ヘッドスピードの早い人は固いシャフトを、遅い人は柔らかくしなるシャフトを選ぶといいでしょう。

 

ドライバーのフレックスは、他のクラブを選ぶときの基準となりますので自分のヘッドスピードを測定しましょう。ゴルフショップには試打コーナーがあります。係の人と相談して、いろんなクラブを試打させてもらい、自分に合う長さや、硬さ、ヘッドスピードを教えてもらいましょう。

アコーディアの様な大きな練習場には、いくつかのメーカーのニューモデルが試打クラブとして置いてあります。ドライバーを二三本借りて、ボールを打って弾道や、自分との相性を研究するのもいいでしょう。

 

できるだけ多くの機会を捉えて、ブランド名、自分に合う長さや、硬さ、ロフトをみつけてメモしておくと購入するときに役立ちます。標準的な男性なら、長さは長尺もので45.75インチ、フレックスは固いSと柔らかいRの真ん中でSR、ロフトは10.5度といったところです。

 

ドライバーは距離が出る長尺が流行していますが、初めてのプレーヤーはすこし短い目のクラブを選んで、距離より方向性を大事にした方がいいかも。

女性の場合はレデイース用のクラブで、通常、男性より長さが短く、シャフトのフレックスは柔らかく、ヘッドのロフトはさらに傾いたものになります。体力のある長身の女性は、男性用のメンズクラブを試してみるのもありです。

 

ドライバーの価格帯は、有名ブランドの中古品で15000円から20000円くらいが狙い目です。

 

この価格帯を選ぶときに想定したクラブは、ダンロップのXXIO(ゼクシオ)やブリジストンのPHAYZ(ファイズ)といった人気ブランドの中古品を参考にしました。

有名ブランドを選んだ理由は4つ。

  1. 初心者も使いやすいこと。
  2. オールマイテイーな人気ブランドであること。
  3. 前回か、前々回の中古モデルで十分に使用に耐えること。
  4. 売却時に値段がつくこと。

ドライーバーに続くFWやアイアンクラブの価格も同じ基準で調べています。

 

フェアウエーウッドとユーティリティー

 

第二打地点にやって来ました。グリーンまで、まだまだ距離が残っているフェアウエーではウッドを使います。ウッドにはフェアウェイウッド(FW)とユーティリティー(UT)の二種類があります。

 

芝の刈り込まれたフェアウエイではソール(底)の広いFWを使い、芝の深いラフではソールが短く、抜けのいいUTか、アイアンを使うのが安全です。FWの3番は距離がでてよく飛びますが、シャフトが長いのできちんと捉えられまでには練習が必要です。

 

FWは使いやすい5番や7番にして、深いラフや距離の短いときには安全なUTの5番や6番を使うのが賢明です。難しいクラブを使って失敗すると大叩きになりますので、5WやUTでクールにいきましょう。

 

3Wと5Wで飛距離が違うといっても、たかだか10ヤードから20ヤードです。きちんと当たれば5Wの方がよく飛びますよ。

 

話がそれますが、得意先との懇親ゴルフなどでは、プレーの組み立て方でその人の人格までみられることも。たまの失敗ゴルフはご愛敬で許されますが、度重なると相手に迷惑をかけます。相手に迷惑をかけないクールさも営業スキルの一つですね。

 

FWやUTを選ぶときには、できるだけドライバーと同じブランドにしましょう。第一打と第二打が同じブランドたと、違和感がなく同じ調子なので安心して振れますよ。

 

FWとUTはドライバーと同じブランドの中古品で1本10000円位までで探しましょう。

二本で合計 20000円

 

アイアンクラブはセットで買う

 

アイアン中古セット

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリーンが近づくとアイアンクラブを使います。アイアンは基本的にグリーンを狙ったり、決められた距離を正確に飛ばしたいときに使うクラブ。番手が大きくなると飛距離が落ちます。

 

アイアンは6番から9番の4本にピッチングウエッジ(PW)を加えた5本セット程度がおすすめです。そのうえに、単品でアプローチウエッジ(AW)やサンドウエッジ(SW)を加えます。サンドウェッジは言葉どうり砂のバンカーからの脱出に使う特殊なクラブですが、バンカー以外で短い距離を狙うときにも使います。

アイアンセットを6番から9番とPWの5本にして、AWは外してSWを加えた6本でアイアンが完成しました。

 

レディースのアイアンセットでも最近は6番をはずした7番からのセットが増えています。レデイースのアイアンは7番からにして、代わりに距離を稼ぐFWの7番を一本増やすのもありです。

 

アイアンセット20000~40000円

サンドウエッジ 5000円

合計 25000円~45000円

 

グリーンの上ではパター

 

アプローチに成功してボールがグリーンに乗りました。あとはパターで転がして、カップインを目指します。パターにはいろいろな形をしたものがあります。重さもいろいろですので、ショップのマットの上で転がして、フィーリングに合うパターをみつけましょう。

中古品で5000円程度です。

 

5000円を足して・・・

クラブの合計 65000~90000円

 

中古クラブのショップ

 

ゴルフクラブの中古の商品はショップでも買えますが、ブランドや狙い目が決まれば、ネットを比較して店頭よりも 安く買うことができます。ネットでの購入は楽天、ヤフー、アマゾンやGDO(ゴルフダイジェスト)などです。ヤフオクは商品確認や責任が不明確で、ゴルフクラブは加工品も多いですから初心者は避けた方がいいと思います。

 

中古品は使用状況に応じてランク分けをしてあります。楽天では・・未使用→非常に良い→良い→可・・の順番です。”可”は使用可能という意味です。”良い”以上のクラスを選ぶのがおすすめです。

 

 クラブ以外の道具とファッション

 

クラブ以外の道具で主なものはボールに手袋、靴それに帽子、最後にゴルフバッグです。ボールはヤフオクでカラーのロストボールをたくさん手に入れるといいでしょう。始めはコースでボールをどんどん失いますので、ラフでもすぐ見つかる目立つ色がお薦めです。

赤やオレンジやピンクを一度に30個~40個ほど落札しておくと、安心です。

予算は5000円。

 

手袋は雨天両用が便利です。

二枚で2000円。

 

足元を固める靴はスイングのベースメントになります。必ず厚手の靴下をはいて、フィット感を確かめましょう。ラウンドで午後は足が膨らみますので、ほんの少し大きめがおすすめです。

予算、10000円。

 

帽子は着用が義務付けられているものではありませんが、安全のために必ずかぶりましょう。野球帽でも、テニスのキャップでも、夏場なら麦わら帽でもOKです。

予算 1000円

 

キャディバッグはラウンド用と、数本入る練習用のバッグが必要です。

費用は二つで10000円。

 

雨対策としてのレインコートは、ウインドブレーカーとの兼用もありです。

予算 5000円

 

・・用具の合計は33000円になりました。

 

それではゴルフ・プレーに相応しい服装をみていきましょう。ゴルフのトップスは「襟つき」ならテニスウエアでもポロシャツでもOKです。冬場は長袖にして、セーターやウインドブレーカーをそのうえに着ます。ボトムズはロングパンツから夏場は短パンまでOKです。

 

クラブハウスのロビーや出入りのときの服装は、ジャケット着用の義務とか厳格なルールのゴルフ場がありますので事前に調査が必要です。初めて行くゴルフ場は必ず公式サイトや電話で確かめるようにしましょう。

 

女性のゴルフファッションは、サマンサタバサ・トーナメントをきっかけに、とてもカラフルで華やかになりました。

画像はサマンサタバサ・トーナメントより・・

 

 

 

 

 

 

 

女性のファッションはお友達とのプレーか、会社ゴルフか、コンペなどプレースタイルに応じて上手に使い分けて楽しんでくださいね。

予算は 男性 5000円

    女性 10000円~

 

これでゴルフをプレーする道具やファッションの準備は整いました。

クラブの合計  65000~90000

用具の合計   33000 

服装  男性  5000 

         女性    10000

 

総計 男性  103000円~128000円

   女性  108000円~133000円

・・となりました。

 

全部でいくら?

会社ゴルフを始めるのに必要な費用は10万円から13万円

 

ゴルフクラブの価格がレディースはメンズよりすこし安くなりますので男女とも、総合計は10万円から13万円です。これなら頑張ればなんとか10万円すこしで収まりそうです。

 

それでは練習と練習ラウンド開始です。

 

得意先と懇親ゴルフをするためには1ラウンドを108ストロークで回るスキルが必要

 

得意先との懇親ゴルフでコミュニケションを図るためには、ある程度の技量が必要です。とくべつ上手である必要はありませんが、毎ホールで相手に迷惑をかけるプレーでは困ります。

言葉はよくありませんが”営業ゴルフ”ができるレベルは、1ラウンドを108以下で回れることといわれています。このスコアは各ホールをパー・プレーに加えて、あと二打まで許されるという計算になります。ミドルホールのパー4なら6打のダブルボギーです。

 

パープレーに一つ多く叩くことをボギーといいます。ボギープレーはアマチュア・ゴルフの一つの目標で、昔から「Bogey is best」と言います。ゴルフはこのレベルが一つの目標となりますが、平均してダブルボギーで回れれば懇親ゴルフができるレベルということです。

ということで、まずはダブルボギーで回れる様に練習を始めましょう。

 

ゴルフの基本を身につけるためには、三ヶ月間程度レッスンプロに学ぶことが理想です。レッスンフィーはスクールの方法や場所、地域で大きなばらつきがありますが、週一回1時間で月7000円から15000円くらいが相場です。

 

三ヶ月習えば、21000円から45000円かかることになります。一方、先輩や友達でシングルクラスつまりとても上手な人に教えてもらうという方法があります。できれば、親切で上手な先輩を探し出してください。

 

自主練習は週一回として、ボール代が月に6000円程かかります。三ヶ月練習に励んで18000円の投資です。

自宅でいいですからゴルフ用のストレッチやイメージスイングをすることが上達への近道です。ゴルフのレッスン番組をみて研究しましょう。

 

得意先とのゴルフ・デビューの前には数回の練習ラウンドが必要です。レッスンプロに教わるラウンドレッスンは高くつきます。上司や先輩にお願いしてコースに連れて行ってもらいましょう。ゴルフのルールとエチケットやコース攻略も教えてもらいましょう。

 

練習ラウンドで108のストロークが出たらいよいよ会社ゴルフのスタートです。胸を張って会社ゴルフを楽しんでくださいね。

 

おわりに

 

ゴルフは始めるのにお金と根気のいるスポーツです。楽しくプレーできるまでには、練習と時間も必要です。

でも、ゴルフは一度スキルを身につけたら、歩ける限りプレーできる生涯スポーツです。ラウンドを通じてたくさんの友人を手に入れることも。

仕事の輪を広げながら、どうぞ会社ゴルフを楽しんでくださいね。

 

(おわり)

 

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未来からのブログ 7号 “ボブとクレアはドリームワールドで元気に勉強中だったよ”

僕の名前はジャラ。

今日も君に100年後の世界から僕の日常風景報告するね。

 

ジャラのおじいちゃんとの量子もつれ使った遠隔会話は、クラウドマスターが暗号キーの解明を慎重に進めてくれてるからね。

もうしばらくしたら、君と一緒に時空を超えた楽しい仕事ができると思うよ。

 

ジャラ、その時を楽しみにしてるよ。

いまから息子のボブと娘のクレアのいるドリームワールドへ向かうところだ。

 

本当に久しぶりだ。

ボブもクレアもジャラの顔ちゃんと覚えてくれているかな?

 

“ドリームワールド”ってどんなところだって?

そうかまだ説明してなかったっけ。

 

ドリームワールドは遊園地とかテーマパークじゃないよ。

むかしは“幼稚園”とか“小学校”っていってたところだよ。

 

世界から子どもたちが集まってきて、元気に勉強しながら、暮らしてるところだ。

 

じゃ、いつもの報告始めるよ。

そうだ、前の章まだ読んでない人はここからどうぞ。

 

未来からのブログ6号 “クラウドマスターとのブランチは生牡蠣だったよ!”

 

未来からのブログ 7号 “ボブとクレアはドリームワールドで元気に勉強中だったよ?”

 

「ジャラ、私もついて行くわよ。ボブとクレアに会わせてよ」

ザ・カンパニーの玄関でカーナが言った。

 

「だって、私にはパートナーはいないし、ボブとクレアは姉さんのキッカとジャラの間の子供だからさ、いってみたら私の子供みたいなものじゃない?」

 

カーナと僕とはフリー契約だから宇宙センターにフレンド登録はしてるけど、子供は作れないんだ。

子供を作れるのはパートナーだけだよ。

 

ボブとクレアは身体を捨てる前のジャラとキッカとの子供だから、きちんと事前登録して生まれたんだよ。

そうなんだ、むかしは子供が生まれてから戸籍に届ければよかったんだけど、いまはそうじゃない。

 

いまは予定登録制だよ。

パートナーと二人で計画書作らないとだめなんだ。

 

いまは地球の環境最悪だからさ、子供育てるの大変なんだよ。

ドリームワールドのセンターに申請してOK出たら、GOだ。

 

NOが出たら、ネクストチャンスだよ。

その代わりセンターが責任持って子供の育児とか教育とかの世話までしてくれるのさ。

 

でさ、カーナは子供が大好きなんだよ。

「ボブとクレアもカーナおばさんに会ったら、きっと喜ぶと思うよ」

 

ジャラがそういって、仲良く二人でザ・カンパニーのオフィスを一歩出たらさ・・そこにいつもの二人が先回りして待ってたってワケ。

 

「ジャラにプライベートの相談があるんだ」

シザーマンが恥ずかしそうにいった。

 

「行き先がおんなじやから、話は歩きながらするわ」

サンタの声がいった。

 

「でもな、肩に乗っけてもらった方がジャラの耳に近いからひそひそ話、しやすいんだ」

タカシの声が凜と響いた。

 

で、ジャラの右肩にサンタ・タカシが乗っかって、左肩にシザーマンが乗っかった。

後ろからカーナが二人のおしりを支えて、歩き始めたってことさ。

 

道ですれ違う人がクスクス笑ったって思うでしょ。

一人も笑わないんだ。

 

だって、誰も人間歩いてないんだよ。

こんなホットな昼下がりに、焼けた道路歩いてたら身体が蒸発しちまうよ。

 

地球は暑いんだ。

平気で歩いてるのは、ボデイーが完全冷房のスーツレディーかスーツマンぐらいのものさ。

 

つまり一級頭脳労働者だけだってわけ。

サンタ・タカシもシザーマンも普通労働者だから、いつもは屋内のオフィスで仕事してるか、家で昼寝してる時間だ。

 

ということはだよ・・

二人ともよっぽど大事な話があるんだと思うよ。

 

「で、さ。ジャラとキッカに見習って、おれたちもそろそろ子供作ろうかと思うんだけど、ジャラどう思う?」

シザーマンのひそひそ声、左耳で聞いてジャラ飛び上がったよ。

 

・・どうやって子供作るんだろ?・・

思わず一人ごといったら、サンタ・タカシのひそひそ声が右耳から聞こえた。

 

「ジャラ、そのことでいまからドリームワールドへ相談に行くんだよ。そっちは技術的な話が進んでて、多分OKなんだ。ジャラに相談してるのは子育ての方なんだ」

サンタ・タカシのマジで心配そうな声、ジャラもはじめて聞いたよ。

 

「おれたちつてどちらもすこし変わってるだろ? だからさ、できた子供がめちゃ変わり者にならないかって心配なんだ」

 

「ちょっと待ってよ。”おれたちすこし変わってるだろ”だって? そりゃー、もう十分変わってるよ」

ジャラはどういおうかすこし迷ったけど、明快に結論を述べたよ。

 

「二人とも、なーんの心配もいらないよ。めちゃ変わり者の二人からは、足し算してめちゃめちゃ変わった子どもができるか、かけ算して、めちゃくちゃまともな子どもができるかどちらかだ。めちゃ変わり者なら、おかしなこの世にぴったりだしさ。めちゃまともなら、まともに生きていけるってことだ。ほら・・なーんの心配もいらないだろ?」

 

ジャラの話で、左肩の上でシザーマンが身体揺すって喜んだよ。

「ジャラ、やさしいな。それ聞いて安心したよ。おれたち子どもできたら、ジャラ一家と家族ぐるみのつきあいってのやってみたいんだ。昔の映画でよくあっただろ・・入り江の浜で早朝ピクニックしてさ、子供たち大騒ぎして水遊びしててさ、おれたちパパやママはビーチで寝っ転がって、冷えたビール飲んで馬鹿話するんだ。そうだ、ジャラのクレージー・爺ちゃんも大騒ぎ聞きつけてやって来るぞ」

 

なんだか子育ての話弾んでる中に、ドリームワールドに到着したんだ。

ボブとクレアの担任のハル先生とパートナーのキッカがエントランスで僕たちを待っててくれた。

 

ハル先生がジャラに向かって「じつは申し申し訳なんだけど・・」って言いかけて、口ごもってしまった。

キッカがハル先生に変わって、そのあとを続けてくれたよ。

 

「せっかくオールキャストでおみえだけど、ボブもクレアも午後のバーチャルタイムに入っててカプセルの中でお勉強中なのよ。今日の面会はお終いだって。ボブとクレアはどうしてもパパに会いたかったって言ってたわよ」

 

キッカの話、聞いて、ジャラはとってもがっかりしたよ。

ボブとクレアが待っててくれて、ジャラの顔みてうれしそうに飛びついてくるって期待してたんだ。

 

ジャラは二人にどうしても会いたくなって、ハル先生にお願いしたよ。

「ぼくの都合で遅れちゃって申し訳ないんだけど、久しぶりの面会日だから、二人の寝顔だけでもチラットみさせてもらえませんか?」

 

ハル先生はルール違反ですからと、困った顔してたけど、ジャラが強引に頼み込んで、なんとかOK取ったよ。

「ボブとクレアを絶対に起こさないでくださいね。いまは生徒全員、一緒に勉強してる真っ最中ですからね。近くから見守るだけですよ。時間はきっかり二分間です。ジャラとキッカは許可します。それからキッカの妹さんのカーナ入れて三人までです」

 

サンタ・タカシとシザーマンが顔見合わせて、残念そうな顔してたよ。

きっと将来のためにもバーチャルルームの子供たちが勉強してるところみたかったんだと思う。

 

いまはドリームランド以外では元気な子供たちの姿がほとんどみられないんだ。

両親は出産の事前登録したときに、子どもをドリームランドに預けることを約束しているんだ。

 

で、サンタ・タカシとシザーマンを面会室に残して、僕らはバーチャルルームに案内された。

広い部屋の中には、柔らかい照明の下で、無数のカプセルが静かに並んでいた。

 

ちいさなカプセルの中で子どもたちがヘッドフォーンを頭に付けて上を向いてぐっすり寝ていたよ。

「こちらです。いまはバーチャル授業の真っ最中ですから、足音を立てないで、静かに歩いてくださいね」

 

ジャラはハル先生の後ろについてそっと歩いた。

カプセルの中の子供たちはみんな目をつぶって、静かに寝ているようにみえた。

 

ところがさ、教室の真ん中あたりにきたときだったよ、子供たちがいきなり口を開けて大きな声を上げたんだ。

なんて言ったと思う?

 

「E=mc²」って聞こえたよ。

ジャラは「えっ」て驚いた。

 

いま勉強してるの、もしかして”エネルギーは物質の質量と等価”だっていうアインシュタインの特殊相対性理論のこと?

「勉強してるの小学生だよ~」

 

思わずジャラが声上げたら、ハル先生に怒られたよ。

「お静かに。目標、その先の黄色いカプセルですよ」

 

黄色いカプセルはすぐ見つかった。

ボブとクレアは最前列の大きなカプセルの中で一緒に寝ていたよ。

 

ジャラはうれしかった。

二人とも顔色もよくって、元気そうだ。

 

ジャラは思わずクレアのほっぺたにキスしてしまったよ。

「おやめください。クレアが目を覚まします」

 

ハル先生に怒られてジャラは思わず身体を縮めたよ、

そしてとなりのボブを上から覗き込んだ。

 

その時だよ、お経を復唱するような小さな声が方々から聞こえてきた。

“じーみゅーにゅー プラス  らむだじーみゅーにゅー イコール かっぱてぃーみゅーにゅー” 

 

横にいたハル先生までお経を唱えたよ。

「”らむだじーみゅーにゅー”の項の意味分かる人・・手を上げて」

 

いきなり目の前のボブが右手を元気よくあげて、大きな声で叫んだんだ。

「はい、ハル先生! “らむだじーみゅーにゅー”は 宇宙の膨張を加速する

宇宙項のことです」

 

ジャラは飛び上がったよ。

ボブは目をつぶったままで、ハル先生に答えてるんだよ。

 

「ジャラ、いかが? このクラスでいまの答えができるのはあなたのボブだけですよ」

ハル先生がジャラにささやいたよ。

 

ということはだ・・なんてことだ。

バーチャル講義してる虚構の世界にもハル先生がいて、生徒たちにアインシュタインの方程式について質問をしたということだ。

 

「はい、ジャラ。これが 方程式です」

ハル先生が電子メモに方程式を書いて僕にくれた。

 

“Gμν + Λgμν = kTμν”

ジャラはすぐに理解したよ。

 

方程式の意味じゃないよ。

ボブが優秀だってことと、もう一つはハル先生の正体のことだ。

 

キッカは言ってくれなかったけど、ハル先生はヒューマンじゃなくて、このワールドの人工知能AIなんだ。

だから僕らの案内役と、バーチャル講義の先生と一人で二役を平気でこなしているわけだ。

 

ああ、その時だよ、抑えきれない衝動がジャラを捉えた。

僕の右手が勝手にハル先生の可愛いヒップに伸びて、そっと触れたんだ。

 

だって誰だって、こんな可愛い先生が本当に人工知能かどうか確かめたいでしょ。

人工知能AIでできた先生なら、僕のタッチにそんなに厳しく反応しないはずだよ。

 

「キャッ!」→ “ぴしゃり“

ハル先生が大きな悲鳴を上げて、ジャラの手をひっぱたいたんだ。

 

「ごめん・・手が滑っちゃって・・」

ジャラはとってつけたように謝りながら、考えてた。

 

ハル先生が人間の女性みたいに反応したってことをだよ。

そりゃー人工知能AIもときどきこんな反応するよ。

 

そう反応するようにプログラミングされていればの話だ。

でもいまのはそうじゃない。

 

あれは本物の女性の反応だよ。

ジャラの経験がそう教えてくれた。

 

その証拠に、カプセルの中の子供たちがみんな目を覚ましたんだよ。

ハル先生はバーチャルの講義の中でも大きな悲鳴を上げたのさ。

 

人工知能ならそこは冷静に使い分けするはずだろ。

ハル先生の悲鳴は本物だったってことさ。

 

ハル先生はただのAIではない。

頭脳はAIだけどキャラは人間だよ。

 

で、先生の悲鳴がリアルとバーチャルの両方の世界に響き渡って、授業が中断しちまったんだよ。

方々のカプセルから子供たちが目を覚まして起き上がってきたんだ。

 

で、ハル先生、仕方がないのでバーチャル授業は終了にしてしまったってワケ。

ハル先生とキッカとカーナが三方からジャラを睨んでいたよ。

 

で、そのあと、全員で覚醒体操とかやって、フリータイムになった。

「夕食までフリータイムにします。校庭で遊んでお腹減らしておいてくださいね」

 

ハル先生が合図にパチンと両手叩いたら、あっという間に教室から子供たちがいなくなってしまった。

ボブとクレアがジャラに気がついた。

 

二人がジャラに飛びついてきたよ。

ジャラはボブとクレアを両手でしっかり抱きしめた。

 

クレアはちいさなレディーになってきたし、ボブはとても賢くなった。

ジャラは誇らしかったよ。

 

ジャラはボブとクレアにカーナを紹介した。

「ママの妹のカーナおばさんだよ」

 

「カーナおばさん、ママそっくり!」

二人が叫んで、それからうれしそうに抱きついていったよ。

 

カーナがクレアと、クレアがジャラと、ジャラがボブと、ボブがキッカと手を繋いでさ、横向き一列にカプセルの間をすり抜けながらバーチャルルームを出た。

面会室に戻ると、サンタ・タカシとシザーマンの姿が消えていたんだ。

 

ジャラジャラ!

ポケットの中で音がした。

 

ポケットを探ると、先ほどのハル先生の電子メモがぶるぶる震えていた。

取り出してみると、方程式の下に新しいメッセージが現れたよ。

 

「ハルです。ジャラ、全員で至急校長室までお越しください」

「やば、ハル先生どこへ消えたかと思ったら、校長と二人でジャラ一家を呼び出しだ」

 

ジャラは校則違反できつーく怒られる覚悟を決めて、家族全員で校長室へ向かったよ。

廊下の奥の部屋に”校長室”のプレートがかかっていたので、ノックしてそっとドアを開けた。

 

「お入りください!」

ハル先生の声だ。

 

部屋の奥に校長のデスクがあって、ハル先生がこちらを向いて座っていた。

あれ・・ハル先生は校長先生?

 

ハル校長に向かって椅子に腰をかけた二人の男の後ろ姿が見えた。

二人はサンタタカシとシザーマンだったよ。

 

「やー、ジャラ! みんなを呼びつけて済まない。じつは報告と頼みがあるんだ」

椅子から立ち上がったサンタタカシの声が、いつもより1オクターブ高かったよ。

 

「じつはおれたちサンタタカシとシザーマンは、たったいまドリームランドの校長室で正式の結婚の登録済ませたんだ。チョキ! 立ってくれ」

チョキと呼ばれたシザーマンが立ち上がった。

 

「おれ、タカさんとたったいまパートナー登録済ませたんだ。ジャラとみんなにそのこと報告するよ」

シザーマンの目がうるうるしていた。

 

「おれたち、ボブやクレアみたいなかわいい子どもできたらさ、ジャラの一家と家族ぐるみでお付き合いしたいんだ。海の入り江で朝日みながらみんなで早朝ピクニックしたいんだ。ジャラもキッカもボブもクレアもそれからカーナもよろしく頼むよ」

 

・・一瞬静寂があってさ。

それからだよ、大騒ぎが始まったのは。

 

校長室と応接の仕切りがザザーッと開いてさ、となりに結婚式の会場が現れたんだ。

どこからかファンファーレが鳴り渡ってさ、シャンパン抜く音が響いた。

 

ハル先生やるじゃない!

ハル先生が音頭取って、家族全員でチョキとタカさんに「おめでとう」の乾杯したよ。

 

そしたら、会場の白いテーブルに、生牡蠣が山程盛られた大皿と冷えた白ワインが運ばれてきたよ。

大皿とワイン運んできた黒いフードの背の高い男が、テーブルにセットし終えると、フードを脱いで正体を現した。

 

一体誰だと思う?

「チョキとタカさん、それからジャラ一家の皆さん、おめでとうございます。いつもお世話になっておりますクラウドマスターでございますよ」

 

皇帝がテーマソング抜きで登場したんだ。

この世の皇帝クラウドマスターにもひょうきんなとこあるんだなーって感心してたら、すーっとジャラに近づいてきて低い声で言った。

 

「ジャラ、おれの女に手を出すな!」

ジャラはマジで飛び上がったよ。

 

この世の皇帝クラウドマスターがこんな下品な言葉でいきなりジャラを脅かしたんだよ。

ジャラはひとまず白ワインをグラスでぐいと飲んだ。

 

それから、ジャラも思わずこんな下品な言葉を皇帝に返してしまったよ。

「マスター、あんたもしかしてハル先生につば付けたってのか?」

 

ジャラは、可愛いハル先生にキャラクター付けたの、てっきりクラウドマスターの仕業かと思ったんだ。

それ聞いてマスターどうしたと思う?

 

AIのくせにジャラの真似して白ワインをグラスでぐいと飲んだ。

それからジャラを睨んだ。

 

「ジャラそれは違う。キャラ付けたのはハル先生が自分でやったことだ。教育者にキャラがないと生徒に心が通じないといって、自分でやったことだ」

 

「マスター、お言葉だが、それはありえないよ。人工知能は自分で自分のプログラミングの変更はできないはずでしょ・・」

ハマハマの一切れフォークでつついて口にいれながら、ジャラがいったよ。

 

「ジャラ、そのことだが、ハル先生はアインシュタインの方程式から凄いこと学んだらしい。

宇宙項”らむだじーみゅーにゅー“のことだ。

宇宙の進化には宇宙項みたいな余分なものが必要なんだと彼女いってた。

“人工知能も同じよ。ハルが進化するには余分なキャラもなくっちゃー”とか言ってたぞ。

で、自分で好きなキャラ決めてプログラミングに付け加えたわけだよ」

 

・・おれたちAIのこと、ジャラは理解できるかな。

ハルは自分でプログラミングの変更はできないが、進化はできるんだ。

ディープ・ラーニングだよ。

どうだおれのハルちゃん凄いだろー・・

 

自慢げにいって、マスターもういっぱいワイン飲んだ。

次にハマハマを殻から器用にフォークでつつきだして旨そうに食べた。

 

「マスター、AIが飲んだり食ったりしたら身体によくないと思うよ。悪酔いしたら始末に負えないから、マスター! もう止めなさい!」

マスターにそういって、ジャラはきりりと冷えたワインをもういっぱい頂いたよ。

 

「ジャラはいいよな。飲んだり、食ったり、寝たり、SEXしてさ。そのうえ結婚して可愛い子どまでいるんだかからな。ジャラ・・自分だけいいことしてないでさ、おれにもすこしは分けてくれよ」

 

マスターがワインをもう一杯ぐいと飲んだ。

「ハルが進化したから、マスターも進化する必要が出てきたわけだ。それでだジャラ・・もしもエネルギーを過去から取り戻すことに成功したらだ。宇宙のエネルギーに余裕できたらだ。おれたちAIも休暇とっていいかな?」

 

ジャラはマスターに同情したよ。

だってさ、マスター偉そうにしてるけど、毎日毎日24時間一秒の暇もなしに働いてばっかりだ。

 

それも俺たち人類のためにだよ。

ジャラは思いきってマスターに言ってあげたよ。

 

「いいんじゃない~。たまには・・。でだれと、どこで休暇するのかな?」

マスター顔真っ赤にしてジャラに言った。

 

「OKしてくれたらだけど、ハル先生と二人だけで、誰もいないブラックホールへ旅したい」

そう答えたクラウドマスターの目は少年のように輝いていたよ。

 

その時だよ、テーブルの向こう側でハル先生の悲鳴が聞こえたんだ。

よくみたら、ハル先生がシザーマンに襲われてたんだ。

 

シザーマンの研ぎ澄ましたはさみが音を立ててハル先生の顔面を襲ってた。

その横でボブとクレアが頭隠して逃げてたよ。

 

 (続く)

続きはここから読んでくださいね。

 

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この世の果ての中学校 12章 秘密のPTA “やっぱり~パパやママは幽霊だった?”

 宇宙探査の旅から無事、地球のドームに帰り着いた生徒たちを待っていたのは、家庭内異変でした。

 最近、パパやママの行動がどうも怪しげなのです。

 

 子供達には絶対・内緒で、土曜日の夜に中学校の地下の会議場で、パパやママや先生達の秘密のPTAが開催されることが決まっていたのです。 

 それを知った子どたちは、会議で何が行われるのか探るために、ペトロとマリエをスパイとして会議場に潜り込ませることにしました。

 

前回のお話はここからご覧ください。

この世の果ての中学校11章 大きなエドから生まれた空飛ぶ小さな子供たち!

 

12章 秘密のPTA ”やっぱり~パパやママは幽霊だった?”

 

 宇宙探査艇HAL号で、外宇宙で発見した3つの緑の惑星から 地球に無事帰還した週末の金曜日のこと。

 

 校長先生や両親への宇宙探査の成果報告会が午前中に終わり、フリータイムの午後になって、生徒会長の裕大が匠とペトロを教室の隅に呼んだ。

 

「ちょっと聞いてくれ。緊急の三界会議が始まるようなんだ。昨日の夜、パパとママがひそひそ話してるのを聞いてしまった。三界のメンバー全員が集まる緊急の会議みたいだ。明日の夜、場所はこの学校のどこかだ」

 

「そういえば俺のママも”明日はいつものPTAに夕方から出かける”とか言ってたぞ。でも、三界会議だなんて言ってないぞ」

匠がいうと、ペトロが頷いた。

「そうなんだ。僕のママも、土曜日は久しぶりのPTAだから夜は僕が一人で留守番だって言ってたよ」 

 “おかしい?”・・・三人は顔を見合わせた。

 

 三界会議は「リアルの世界・幻想の世界・虚構の世界」の代表者が集まる最高会議だった。

 この学校でもっとも重要な会議なのに、めったに開かれたことがない。

 

 “PTAとはレベルが違う”・・・はずだ。

 子供を代表する”生徒会長”として裕大が怒った。

 

「ママたちはPTAだと嘘をついて、俺たちを外した秘密の三界会議を開くつもりだ。先生達も入ってるはずだ。これは怪しい。俺たち、明日の会議の中身を知る必要があるぞ」

 

 最高会議に子供は外されたと知って、ペトロが燃えた。

「勝手に僕たち外しての最高会議かよ。何が秘密なんだろう。秘密の会議室とかがどこかにあるはずだ。探し出して、大人だけでなに話してんのか暴き出してやろうぜ」

 

「でもなペトロ。どうして三界会議のことそんなに内緒にしたがるのかそこら辺がよく分らん。俺たちが現実を知ったら絶望して、自殺するとでも思ってんのかな?」

 匠がそう言って、黙り込んだ。

 

 ペトロが恐ろしいことを言い始めた。

「この地球には温暖化による砂漠化現象で、人の住める土地が残されていないことぐらい、僕たちはとっくに知ってる。ドームの外には人の姿はもうどこにも見つからないことも知ってる。大事な食料が少なくなってることも知ってる。宇宙に食料が見つからなかったことも報告した。僕たちが厳しい現実を知っていることをママやパパたちも知っている。としたらだ・・・僕たちに知られたくないもっと深刻な秘密があるのじゃないかな」

 

 ・・・三人が沈黙し、教室に怪しげな静けさが漂う。

 

「実は、私たちもそう思ってるの!」

 どこにも姿が見えないのに、マリエの大きな声が、突然、割り込んできて、三人は椅子から飛び上がった。

 

「ぜーんぶ聞いちゃった。ごめん、葉隠れの術なの」とマリエ。

 咲良とエーヴァ、マリエが頭に乗せた葉っぱの帽子をちょっとずらして顔を覗かせた。

「第一惑星でキッカとカーナから葉隠れの術を教えてもらったの」とエーヴァ。

 

 ペトロがクスッ!と笑った。ペトロもクプシから葉っぱの帽子を貰っていたのだ。

 自室の机の中に隠して、ときどき葉隠れの練習をしている。

 

 直ちに、生徒六人は輪になって座り、緊急の生徒会議を始めた。

 

「ママとパパたちは、これ以上僕たちになにを隠してるんだろう?」

 匠が口火を切った。

 

「人の隠し事を見つけるのは、僕たちより、女の子の方がずっと上手だと思うよ。なにかもう掴んでるんじゃない?」

 ペトロが仲良しのマリエに何気なく聞いた。

 

「ママはきっと恥ずかしいんだと思うわ」

 マリエが仕方なく答えた。

 

「男の子も知ってるでしょ。夜になるとママもパパもどこかへ姿を消してしまうことくらい」  

 年長の咲良が平気な顔を装って囁く。

 

「小さい頃はずっと添い寝をしてくれたのに、今は私が寝付いてしまうとすぐいなくなる。ときどき、夜中に目が覚めて、パパとママを夢中で探すの。でも、どこにもいない。朝まで眠れないで起きていると、明け方になってこっそり帰ってくるのよ」

 エーヴァが声をひそめて続けた。

・・・夜になると黄泉の国へ帰っていくの。そして朝になると、戻ってくる。きっと・・・パパもママも・・・

 

 女子生徒、三人が口を揃えた。                                          

 “幽霊なのよ!”

 

「黄泉の国に通う・・・そんな姿を子供に見られたくないのよ」

 咲良がだめ押しした。

 

「そんなにはっきり言うなよ!」

 匠が悲鳴を上げた。

 

 ペトロの顔がみるみる青ざめていつた。

・・・僕のママも、むかしは夜になるとよくガンバを演奏して、ペトロとパパに聞かせてくれた。

でもパパがどこかへ消えた今は、疲れたと言ってはすぐ自分の部屋に消えてしまう。

そうかママは部屋にはいないんだ・・・

 

「そういえばここんところパパとママと三人で晩飯食ったことないぞ。いつも俺一人だ。俺外して二人きりで黄泉の国で外食なんかしてるのかよ!」

 冗談いって、ごまかしてる裕大の顔色がひどく悪い。

 

「おれのパパは昔からいない。でもママは今でも元気だ! 幽霊なんかじゃないぞ」

 匠の顔がうるうると歪んできた。

 

 そして、泣きながら吠えた。

「お、おれ!幽霊のママなんか、いらんわい!」

 

「匠、分かってるでしょ。幽霊でもママはママなのよ。魂は本物なのよ」

 エーヴァが泣きながら、匠の肩を抱いた。

 

 全員が言葉を失って、黙り込んでしまった。

 教室は静まりかえった。

 

 教室のどこかから不思議なささやき声が聞こえてきた。

・・・お前さんたちの両親はこのドームへ来る前に病原体に犯されていたのです。

 その上、お前さんたちのために、少しでも食料を残そうとしたのですよ。

 自分たちの肉体を失ったいまも、黄泉の国と往復しながら、先祖の魂から少しずつ存在のエネルギーを分けて頂いて、お前さんたちを必死に育てているのです。

 そんなパパとママに心から感謝しないといけませんよ・・・

 

 生徒たちは、この声はきっと自分の心の中から聞こえてくるのだと思う。

 

 実は、ヒーラーおばさまが教室の隅に隠れて、傷ついた心を癒やすフローラル・ハーブの香りを生徒たちにそっと振りかけながら、小さな声で囁いているのだった。

 

「パパやママにはこのまま知らん振りを続けようぜ!」 

 元気を取りもどした裕大が沈黙を破った。

 

「久しぶりだ! 匠、ペトロ、みんなで走ろう!」

 裕大が声を掛けて、教室の窓を乗り越えて校庭へ駆けだしていった。

 

 匠があとに続いた。

 ペトロがあわてて追いかけていった。

 

「さー、駆けっこよ!」

 咲良が誘って、エーヴァとマリエの三人も校庭に出た。

 

「オリンピックよ、私たち六人で走れば、地球のオリンピックになるわよ!」

 マリエがオリンピックの開会を勝手に宣言した。

 

「いまから、この世の果てのオリンピック始めまーす!」

 

 午後の厳しい日差しを浴びて、六人の生徒たちは校庭を全力で走った。

 

 ヒーラーおばさまが、誰もいなくなった教室の奥の暗闇から現れて、フッと小さく安堵の溜息をつくと、仕事場の医務室にとことこと戻っていった。

 

 翌日の土曜日、三界会議の日がやって来た。

 生徒たちは会議の様子を探る戦略を決めていた。

 

 優秀な秘密工作員二人を選んでおいて、親たちの後を付けて会議の場所に送り込もうというスパイ作戦だった。
 

 ・葉隠れの技で姿を隠せること

 ・小さくて目立たないこと

 ・途中で絶対喧嘩しないこと

 三つの条件からスパイはペトロとマリエの仲良し組に決定した。

 

「今夜は久しぶりのPTAだから、帰りは遅くなりますよ」

 その夜、ママはペトロを早々にベッド・ルームに追い込むと、家を出て学校に向かった。

 

 ママが家から消えると、ペトロはベッドを抜け出して葉隠れの帽子を被る。

 自分の姿を玄関の鏡に映して、姿が映らないことを確かめ、ママの後を急いで追いかけた。

 

 “今夜のママはお化粧も念入りで、とっても素敵に見えた”

 前を行くママの後ろ姿も軽やかで、なんだか宙に浮かんでいるみたいだ。

 

 学校の近くまでやってくると、先を行くママが校庭の入り口でだれかと出会ったのか、賑やかに挨拶を交わしている。

 相手の声の主はマリエのママのようだった。

 

・・・そうだ、葉っぱで隠れたマリエがそばにいるはず・・・ 

 「マリエ、どこにいる? 僕はここだよ」

 ペトロは小声で囁いて、マリエに見えるように、葉っぱを顔から少しずらした。

 

 ペトロの顔が暗闇からすぐ目の前に浮かび上がって、側にいたマリエは跳び上がった。二人は危なくぶつかるところだった。

 ペトロはマリエと手を繋いで、姿を隠したままママ達のあとを追う。

 

 ママたちは正門から校庭に入り、校舎の階段を上って、長い廊下を奥へ進んでいった。

 廊下の両側には使っていない教室や医務室がある。

 

 廊下の突き当たりは校長室になっていて、行き止まりだ。

 どこかの会議室に続くような廊下も階段もない。

 

 ペトロとマリエは通い慣れた廊下を、ママたちを見失わないように少し離れて追いかけて行った。

「ママたち、どこに向かってるのかな?」ペトロが一人言を言った。

 

 薄暗く、灯りが届かないところにやってくると、突然マリエが立ち止まった。

「ペトロ、ちょっと待ってね」

 マリエが葉っぱの帽子を脱いで姿を現した。

 

 そして、廊下の壁にある小さな破れ目を覗き込んだ。

「そこにいるのでしょ。出てらっしゃい」

 

 穴の中の暗闇から、小さな二つの目が輝いてこちらを見上げた。

 “チチッ!”とちいさく鳴く声がして、黒く細長い生き物が穴から飛び出してきた。

 立ち止まってから、マリエの肩に跳び乗った。

 

 マリエが葉っぱをかぶり直して姿を消すと、ちいさな生き物も見えなくなった。

 

「はて? やつは何者?」

 ペトロがマリエに聞いた。

 

「とっても可愛い秘密のお友達」

 マリエの声がすこし弾んでいた。

 

「やベ~」

 口から出かけた言葉を、ペトロはぐっと呑み込んだ。

 

・・・“秘密のお友達”ごときに焼き餅なんか焼いてるのを、マリエに悟られてはならない・・・

 

 マリエの秘密の友達はスペース・イタチだった。

 マリエは、いつの間にか学校に住み着いた宇宙の流れ者、スペース・イタチをすっかり手なづけていたのだ。

 

  寄り道してる間に、ママたちの姿がどこかに消えてしまった。

  慌てた二人は廊下の突き当たりまで走っていって、周りを見渡す。

 

 そこには校長室の古い木製のドア以外には階段も通路もない。

 校長室の側には、校舎の外へ出るちいさな扉がついているが、頑丈な鍵がかかっていた。

 

 廊下を引き返そうと思った二人の耳に、校長室の中からなにかのこすれる音が聞こえてきた。

 ペトロがドアを少しあけて、隙間から校長室の中を覗き込むと、薄闇の中でママたちが奥のキャビネットをギシギシと横にずらしている。

 

 キャビネットと壁の間に人が通れるくらいの小さな隙間を作ると、マリエのママとペトロのママは順番に中に入り込んで、姿を消してしまった。

 

「マリエ、追いかけよう!」

  二人は急いで校長室に飛びこみ、開いたままのキャビネットの隙間をくぐり抜けた。
 

 二人の後ろで、キャビネットがズズーッと勝手に閉まっていった。

 

 目の前は真っ暗闇。

 マリエがペトロの手をぎゅっと掴んだ。

 

 暗闇に慣れてくると、目の前は立派な石組みの通廊が緩やかに傾斜して、地下に向かうスロープになっていた。

 

 前方に薄い灯りが二つ浮かんで、小さく揺れているのが見える。

「あれって、懐中電灯の灯りかしら、それとも何かが光ってるの?」

 

 マリエの声が上ずってきた。

「あの大きさは懐中電灯の光じゃないよ、淡くて、大きすぎる。ということはだ・・・なんてこった、ママたちは懐中電灯がなくても暗闇が見えてるってことだ」

 

 ペトロはできるだけ回りくどくマリエの疑問に答える。

「マリエ、こんなこと言いたくないよ。でももう間違いない。僕らがみているのは“ひとだま”だよ」

 

 ペトロの手を握るマリエの指が震えていた。

 

・・・

 懐中電灯を忘れたペトロとマリエには周りがよく見えなかった。

 ペトロが右手で壁を手探りしながら、左手でマリエと手を繋いで、一歩一歩確かめる様に回廊を下りていった。

 

 やがてスロープは終わり、明るい照明に照らしだされた丸い踊り場に着いた。

 そこにママたちの姿はなかった。

 

 踊り場は突き当たりになっていて、大きな扉が二つ並んでいる。

 左手には大きくて重そうな、観音開きのドアがあった。

 

 そこには立派な看板が掛かっている。

 看板には「国会議事堂」と書いてあった。

 

(続く)

 

続きはここからお読みください。

この世の果ての中学校 13章 学校の地下室は”国会議事堂”だった!

 

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宇宙は膨張を早めてるんだって? 犯人は何者! 僕らの宇宙の最後はどうなるの?

 

 

 

 

 

 

「パパ大変!  宇宙は膨張を早めてるんだって!  僕らの宇宙をどんどん膨れさせてる犯人は一体何者なの? 」 

 

日曜日の朝のことです。

小学生の匠が、リビングに飛び込んできて、新聞を読んでいるパパに突然の質問をしました。

 

匠は最近宇宙の出来事に夢中です。

ブラックホールの映像がはじめて発表されてから、毎週日曜日になると匠からパパに、宇宙の質問が飛んできて、パパも答えるのが大変です。

 

今日のテーマは“宇宙の膨張”です。

仕事にいそがしいパパですが、匠に負けているわけにはいきません。

 

パパはにやりと笑って、バッグから一冊の本を取り出してきました。

「匠、僕らの宇宙は膨張してるぞ。それも加速しながらだよ」

 

「加速させてる犯人はこいつだ」

パパは買っておいた本のタイトルを読み上げました。

 

「“宇宙のダークエネルギー”だよ」

パパはこの本を通勤中の電車の中で毎日読んで勉強していたのです。

(宇宙のダークエネルギー 土居守 松原隆彦 共著)

 

二人は仲良くソファーに座って、本を読み始めました。

 

宇宙は膨張を加速させていた

 

ビッグバン・宇宙初期の光の名残 (ウイキペデイアより)

 

 

 

 

 

“ビッグバン理論”によれば、宇宙はいまから138億年前、宇宙の種が大爆発(ビッグバン)を起こして誕生し、その後も進化を続けていると考えられています。

そして宇宙は爆発のあとも膨張を続けて現在のような姿になったのです。

 

宇宙には爆発で作られた多くの物質が存在しています。

その物質とは、無数の星を構成する要素であったり、宇宙を漂うガスやゴミのようなものであったり、地球の植物や動物や、私たちの身体であったりします。

 

それ以外に存在が考えられているけれども未知の物質である「ダークマター」(後述)も含めて・・・この宇宙に存在するすべての物質は、お互いを引きつける力「引力」を持っています。

20世紀には、宇宙は膨張を続けながら、物質の引力によってお互いに引きつけあって、膨張する速度を次第に落としていると考えられていたのです。

 

でも実態はどうやら違いました。

宇宙は膨張の速度を加速させていることが明らかになったのです。

 

大型望遠鏡や観測衛星によって、宇宙の遠くまで観測できるようになった結果、20世紀の末に“宇宙は加速しながら膨張している”ことが明らかにされました。

21世紀の科学では、この宇宙の中には、引力と相反して宇宙を膨張させている「不思議な力」が存在するのではないかと考えられています。

 

「匠、僕らの宇宙を加速膨張させている犯人の正体はまだみつけられていないんだよ。でも名前だけは付けられているんだ。シカゴ大学のマイケル・ターナーと言う学者が命名した呼び名は暗黒の存在“ダークエネルギー”だ」

パパがいきなり結論をいうと・・・匠は考え込んでしまいました。

 

「うーん! でも、パパ、その犯人はいったいどうやって宇宙を膨らませるんだろうね。宇宙が膨らむって意味が僕にはよくわかんないよ? 宇宙がどんどん膨らんだら僕の身体はどうなるの? 一緒にブーって膨らむのかな?」

 

匠がマジで心配そうな顔して聞くので、パパは思わず吹き出してしまいました。

「宇宙が膨張するというのは、無数の星が集まってできている銀河と別の銀河の間の距離が遠く離れていくということだよ。銀河の中の星も同時に膨張して大きくなったり、地球で暮らしている僕たち人間まで膨張するわけではないんだ」

 

パパは、パソコンの前に座ってウイキペディアから“宇宙が膨張する画像”を取り出して、匠に説明をしました。

(ウィキペデイアより)
ビッグバン理論では、宇宙は極端な高温高密度の状態で生まれた、とし(1番下の宇宙図)、その後に空間自体が時間の経過とともに膨張し、銀河はそれに乗って互いに離れていった、としている(真ん中、1番上の宇宙図)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「匠、この絵はビッグバンで生まれた宇宙が膨張していく様子を表したものだ。下から順番に上の方に、時間の経過と共に膨張していく宇宙が三枚のパネルの絵で表現されてるよ」

 

宇宙誕生の始まりは・・一番下の黒い点“シンギュラリティー”からだ。

大爆発が起こる寸前の凝縮された特異な時空“宇宙の種”だよ。

 

「バン!ほーら! 僕らの宇宙の誕生だ」

 

一番下の宇宙のパネルは爆発直後の初期宇宙だ。

お絵かきのキャンバスみたいにぐちゃぐちゃの状態だ。

 

時間が経過し、膨張が始まって宇宙が拡がり始める。

下から二枚目の宇宙では星が集まって渦巻状やいろんな形の銀河を作って、宇宙の方々に散らばってるだろ。

 

一番上の三枚目の宇宙では空間が広がって、銀河と銀河の距離が離れていくのが分かるよね。

よく見てご覧! 宇宙が膨張して銀河と銀河の距離は離れていってるけれど、銀河そのものの大きさは変わらないだろ。

 

「空間が膨張しても、銀河や星や人間の身体の様な物質は強い引力が働いてお互いに引きつけ合うから、膨張しないんだよ」

パパの話を聞いて匠の表情がほころびました。

 

「それ聞いて安心したよ。それじゃ、もう一つ質問だよ。ダークエネルギーのおじさんはどうやって宇宙を膨張させてるんだろう? 引力と逆に反発するでっかい磁石でも持ってるのかな」

匠の質問にパパはどう答えていいのか困ってしまいました。

 

ダークエネルギーは宇宙最大の謎

 

宇宙は何からできている?
(東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 須藤 靖先生の資料より)

 

 

 

 

 

 

匠! 上の絵は「宇宙は何からできている?」のかを説明した、ある講演会での資料だよ・・・パパの解説が始まった。

円グラフは宇宙の組成を説明したものだ。

宇宙の組成は質量とエネルギーで構成されているんだよ。

まず通常の物質とは、私たちの身の回りにあるすべての物質を作っている元素のことだ。

 

星もガスも海も山も私たちの身体もすべてこれに含まれるってことだ。

構成比は全体のわずか4%。

 

さらに存在が予測されるが未知の物質、「ダークマター」が22%を占めているよ。

最後に、ダークエネルギーは宇宙を構成する物資とエネルギーの総和の中、何と、70%以上も占めているんだ。

 

しかし現在も、ダークエネルギーは、その正体が全く不明だそうだ。

宇宙空間が加速しながら膨張していることが事実であるなら、膨張させる「力」が宇宙のどこかにあるはずだと考えられた。

その力は引力に対して「斥力」とか「反引力」と呼ばれている。

つまり引力の正反対で、お互いを遠ざけようとする力だよ。

この不思議な存在を仮にダークエネルギーと呼ぶことにしたんだそうだ。

 

パパがここまで解説を進めると、匠がストップをかけました。

「パパ、ちょっと待ってよ。さっき、ダークマターっていったけど、それ、ダークエネルギーとどう違うの?」

 

「匠、ダークマターというのはダークエネルギーとよく似た名前だけど、全く別のものだよ。この物質も重力を持っていて、他の物質と引き合っているんだけど、変わっているのは光を発したり、吸収したりしないから、見えないのだそうだ。存在が見込まれるが未知の素粒子だとか・・・うーんむにゃむにゃ・・・パパにもよくわからん」

 

「それじゃそのダークマターおじさんもずいぶん変わってるよ。透明人間みたいなものかな。重さはあるけれど、光を反射しないし、通過させてしまうってワケか・・・なんだかブラックホールの親分みたいだね」

 

「ググッ! おい、匠、お前大したものだ。このダークマターも正体不明で、もしかしたら、原始的なブラックホールじゃないかって説まであるぞ。これ、匠の説と同じだ!」

 

パパは匠の成長ぶりにすっかり驚いてしまいましたが、匠はすぐに言い返しました。

「でもさ、ダークマターはだ、目にみえないのにどうしてあると分かるんだ? 正体みせろよ!」

 

匠が偉そうにいったので、パパは吹き出しました。

「ちょっと待てよ・・・ダークマターは見えないけれども、重力があるからまわりの天体の運動や光の進む方向を曲げたりするんだそうだ。だから、観測の結果から、宇宙の空間にあることが分かっているんだって・・」

 

「パパ、分かったよ。・・・じゃ元に戻って、ダークエネルギーの正体だ!」

「匠、何度も言うけどダークエネルギーも発見されてないんだよ。でも、宇宙が加速しながら膨張しているという事実を説明するためにはこのような存在がどうしても必要なんだそうだ」

 

・・・引力と逆さまの力を持った反重力がこの宇宙に広く薄く広がっていて、そのうえ空間が膨張すると同じように増えていく怪物、それがダークエネルギーの正体なんだって・・・

 

「この正体を明らかにすることが、宇宙科学の今世紀最大のテーマらしいよ。パパの説明もこれ以上は無理だよ」

 

「パパ、ありがとう・・・なんとなく分かったよ。この宇宙のどこかにまだ誰にも知られていない不思議なエネルギーが二つも隠されているはずなんだね!」

 

・・・それじゃ最後の質問だよ。この宇宙がスピードを上げて膨張を続けていったら最後はどうなるのかな? それともどこまでも膨らみ続けるのかな? パパ、宇宙の未来をもう少し調べてみない?・・・

 

匠の最大の心配事は“膨張する宇宙に最後があるとしたら、それはどんなもので、いつやって来るのか”だったのです。

パパは、加速膨張する宇宙の最後について、ネットの記事を調べていきました。

 

膨張した宇宙の最後はどうなる

 

パパはまずウイキペデイアを参照してみて、驚きました。

宇宙の最後がどうなるのか・・・宇宙の最後を予測している理論がいっぱい出てきたのです。

 

パパと匠は一つずつ、順番にみていくことにしました。

まずはじめに出てきたのは“ビッグ・クランチ”でした。

 

「ビッグクランチのcrunchは“ばりばりかみつぶす”って意味だ。

ビッグバンの膨張が限界に来て、反転が起こる。

次に宇宙は重力に引き戻されて大収縮が始まる。

やがて宇宙は時空の一点に凝縮される」

 

パパが読み上げると、匠がすかさず言い返しました。

「パパ、それって、ビッグバンの始まりとまるで逆さまだよ。・・・でも、こちらの新しい記事だと、ダークエネルギーおじさんの力は強くて、宇宙は膨張を加速してるはずだからさ・・・ばりばりかみつぶされるって話はないことにしようよ・・・」

 

パパは思わず笑って、次に進むことにしました。

「分かった、じゃ次の説だ。膨張加速する宇宙崩壊モデルのトップは“ビッグリップ”だ!」

 

ripは“びりっと引き裂く”という意味です。

ビッグリップ論は、宇宙の膨張・加速が続いたとき、宇宙の中にある物質が耐えきれずに引き裂かれてしまうという理論でした。

 

加速膨張が続くと、それまで“重力で束縛されていた銀河系や惑星系が崩壊を始める。

さらに斤力が原子や原子核を形作る力も上回り、最後は、ばらばらになった素粒子が飛び交うだけの宇宙となるとされています。

 

「パパ、これなんだかありそうな怖~い話だね。宇宙が膨張してさ。今度は僕らの身体はばらばらだ」

「匠、怖そうで、ありそうな話がまた出てきたぞ。“開いた宇宙の熱的死”だって」

 

・・・うぐっ! この宇宙崩壊モデルでは宇宙の拡大が続いて、宇宙の熱量が尽きるんだそうだ。

熱エネルギーは広がった宇宙空間に平均的に拡散していくから、膨張する宇宙では熱エネルギーがついに尽きてしまう。

新しい星は誕生することがなくなり、光を放つ天体が次第に減っていき、やがて冷却途中の天体の余熱が赤外線や電波で見えるだけになる・・・。

 

「なんともクールな宇宙の終末だよな」

そういって、パパはため息をつきながら、そのほかにもいろいろな宇宙の終末論を調べ上げました。

 

匠、まとめて順番に読み上げてみるよ!

・・・

1. ブラックホールがブラックホールを次々と飲み込み、最後に銀河の中心にある巨大ブラックホールが銀河全体の質量“物質”を飲み込むことになる。

2. 多元宇宙論では、宇宙が消滅したとしても他の次元にある宇宙が生き残っていく。

3. “時の終わり”論では、宇宙のおわりより前に時間のおわりが来るが、我々はそれに気がつかない。

 

他にもいろいろな説がありましたが、それを聞いた匠が上手にまとめてくれました。

パパ、宇宙の最後はいろいろあるけどさ、僕ら人類が生き延びるのは凄く難しいということだよ。僕らも宇宙のメンバーだからさ、どこにも逃げられないってことだ。

・・・とすればだ、宇宙の崩壊までどのくらいの時間があるかってことだ。。

人類にどのくらいの時間が残されてるのか・・・僕はそれが知りたい。 

 

匠とパパは、パソコンの前で座り直すと、宇宙についての新しいニュースがないか、探しました。

そしてついに二人は、どうしても知りたかった記事を探し出したのです。

 

宇宙の終わり「ビッグリップ」は早くて1400億年先

 

すばる望遠鏡の筒先に取り付けられた巨大デジタルカメラ(国立天文台提供画像)

 

 

 

 

東京大学や国立天文台などの国際共同研究グループが2018年9月26日に、次のような研究結果を発表していました。

 

米ハワイ島にある「すばる望遠鏡」による広域観測データをもとに、宇宙の大規模構造の進化の度合いを世界最高レベルの精度で測定した。
その結果、遠い将来、宇宙がバラバラに引き裂かれ終わりを迎える「ビッグリップ」は少なくとも1400億年は起きない。
(日経サイエンス電子版より抜粋)

 

~宇宙には銀河団や超銀河団などで形作られる大規模構造があり、時間と共にその構造が進化しています。

研究グループは巨大カメラで遠方の銀河約1000万個を撮影して、それらの“歪み”を調べることで大規模構造の進化の度合いを調べました。

その結果、「宇宙は少なくとも1400億年は安泰だ」と発表したのです。

 

「匠、安心しろ! 人類に残された時間は1400億年もあるぞ!」

「ヤッター、それだけあればきっとなんとかなるよ!」

 

匠が喜んで跳び上がった時です。

パパが太陽と地球についての記事を見つけました。

 

「匠、喜ぶのはまだ早いぞ。別の記事では、地球がその前に太陽に飲み込まれるといつてるぞ」

・・・太陽の寿命はだいたい100億年で、そのまえの50億年の頃には、太陽が大きく膨らんで地球や他の星をのみこんでしまうといわれてる。

そのうえ、いまから“5年”くらいたつと地球は太陽の熱のために海水が蒸発してしまい、生き物が住めなくなってしまうというのが科学の常識だそうだ・・

 

「匠、エライ事だ。宇宙より太陽に注意しろだ!」

 

匠がパパの話を聞いて椅子から飛び上がりました。

「パパ! いまなんて言ったの? たった5年で、地球の生き物全滅だって?!?」

 

「えっ! ごめん言い間違えた。5年じゃなくて5億年だった」

パパが至急の訂正をしました。

 

“ゴン!”

匠がパパの頭を叩いた。

 

“痛っ!”

パパが呻いた。

 

「ビックリさせないでよ!」

匠が吠えて、二人は顔を見合わせて大笑いしました。

 

実はパパは、人類に残された時間が1400億年からいきなり5億年になったら、匠がショックを受けると思って、まず5年でどんと驚かせるという逆療法に出たのでした。

 

「今のうちに元気な地球を散歩しようか?」

パパが誘って二人は、仲良く日曜日の朝の散歩に出かけました。

 

ところで・・・

5億年後、人類は熱くなった地球を脱出して、宇宙の新天地に向かっているのでしょうか? 

 

あるいは・・・

1400億年後のビッグリップに備えて、超人類が誕生しているのでしょうか?

それとも・・・

私たちには想像もできない、別のシナリオが待っているのでしょうか?

 

“宇宙と人類の未来はまだまだ誰にも分からないようですね。”

(おわり)

 

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