僕の名前はタンジャンジャラ。
「ジャラ」って短く呼んでくれていいよ。
ところで君の名前はなんていうの?
君、きっとすこし変わってるんだろうね。
おじいちゃんのクレージーSF読んで、ジャラともつれてくれてるんだものね。
「ありがとう!」
それじゃ、いつものように100年先の未来からブログ送るよ。
・・クラウドマスターと重要会議してるとき、いきなり二人の男が乱入してきた・・っていう話の続きだったよね。
前回のストーリーはここからどうぞ読んでくださいね。
未来からのブログ5号“皇帝クラウドマスターはクールで可愛い人工頭脳だったよ”
未来からのブログ6号 “クラウドマスターとのブランチは生牡蠣だったよ!”
「腹減った~」
「なんだこの匂い、たまらんぞ!」
突然の乱入者は、もち、いつもの二人さ。
サンタ・タカシとはさみ男だよ。
「やー! ジャラにカーナ、重要会議に遅れて済まない」
サンタ・タカシがそういって、はさみ男がすかさず続けたよ。
「ちょっと寄り道しててさ、約束に遅れちまった」
ジャラもカーナも約束した覚えがない。
クラウドマスターも、あっけにとられて突っ立ってたよ。
「どうやってあの最高機密のセキュリテイー・ドアこじ開けたのかな?」
マスターの問いにシザーマンが軽く答えた。
「俺のブレーン、みくびるんじゃないよ」
不気味に光る右手を差し出して、マスターの目の前でチャカチャカはさみ鳴らしたよ。
「シザーマン! あの暗号アルゴリズムが解読できたというのか?」
そういったクラウド・マスターが、シザーマンのはさみの先が折れてるのに気がついた。
「シザーマン、大事のはさみの先っぽ、折れてるみたいだぞ。お前、力任せでやったな?」
「うっ!」
シザーマンがあわててはさみを隠したよ。
サンタ・タカシがソファーに深々と腰掛けて、マスターに偉そうに聞いたよ。
「で・・俺たちのブランチは?」
クラウドマスターはクスッと笑って二人分のブランチをテーブルに用意してあげたんだ。
もち、ハマハマとくまもとだ。
マスターはサンタ・タカシとはさみ男の二人にはとくべつ優しい。
二人をまるで自分の子供だと思ってるみたいだ。
前にもいったけど、デザイナーズ・ベビーのサンタ・タカシはクラウドマスターが親権代理人だよ。
二人のスーパースターのDNAを人工編集して生まれたサンタ・タカシには父親がいないから、サンタ・タカシに事業投資したクラウドマスターが父親になったのさ。
それから、ある貧乏なヘヤー・デザイナーが自動運転の車とぶつかって、右手を大けがしたときのことだ。
その車を運転していたクラウドマスターの分身が、自分の身体のコンピューターの一部を使って、応急手当をしたのさ。
その手が、ヘヤーカットができる特殊な金属の“はさみ”になっててさ・・・貧乏デザイナーがすっかり気に入ってしまって、はさみそのままにしてシザーマンになったってワケ。
これで生牡蠣出てきたワケ、わかった?
「ワインはどちらにする?」
シザーマンがサンタ・タカシに聞いた。
「きりりと冷えた白だろうな」
サンタ・タカシが答えた。
そしたら、テーブルに白ワインが二つのグラスで出てきたよ。
もちろんマスターの特製・合成ワインだよ。
「俺たちのこと気にしないで、会議続けてくれていいよ」
シザーマンがそういったので、ジャラはカーナに確かめたよ。
「僕はどこまで話たっけ?」
「盗まれたエネルギーを“過去の世界から取り戻すいい考え浮かんだ”ってとこからよ」
「誰がそんなこといった? カーナかな?」
「ジャラよ。とぼけてないでいい考えっての、早く思い出しなよ。それともまた得意の口からでまかせだったっての?」
ジャラは思い出した。
口からでまかせをいおうとしたときのことをさ。
ジャラはとうとうとみんなに話したよ。
「そうだ、思い出した。僕は良いことを思いついたんだよ。
ジャラはその良い考えをこれからおじいちゃんに伝えることになるのさ。
そうしたら、それがおじいちゃんのブログに掲載される。
そのブログのタイトルは“未来からのブログさ”。
そのブログはいまから100年前のものだから、クラウド・マスターのデジタル・アーカイブに残ってるはずだ。
マスターにお願いがあるんだ。
アーカイブをひっくり返して探してほしいんだ。
僕の凄い考えはマスターのメモリーの中にかならずある。
頼んだぜマスター!
ジャラの答えは、マスターの頭の中にあるんだよ」
どう~? ジャラのこの考え凄いだろ。
全員、感心して口あんぐりしてたよ。
その時だよ。
クラウドマスターが瞑想に入ったのさ。
古い過去の記録をアーカイブの底から探し出そうとしてたのさ。
「ない!」
クラウドマスターが唸った。
「未来からのブログというタイトルは数ページ出てきたが、中身は白紙だ!」
マスターが冷たく言い放ったよ。
「ジャラ、口からでまかせ言うんじゃない。
君はまだそのいい考えというのを思いついていない。
思いついてもいない考えが記録に残るわけがない。
時空のパラドックスを馬鹿にするんじゃない。
ジャラ、悪いが、早く思いつくことだな。
でないと思いつくまで今日は帰さないよ。
明日も、あさっても、ずーっと、ずーっと、つらーい残業が続くよ」
ジャラは唸った。
だって今日の午後はドリーム・ワールドで、久しぶりに娘のクレアと息子のボブに面会する予定だからさ。
今日は帰れないよ? 残業は続くよだって? これじゃ永久にクレアにもボブにも会えない。
そのうちクラウドマスター退場のテーマソングがはじまった。
「チャンチャカチャー、ちゃかちゃ~、チャカチャー」
「ずっと残業だって? 悪いのは僕じゃない。エネルギー盗んでるのは過去の人たちだよ!」
その時だよ、答えがひらめいたのは・・。
エネルギー返してもらう答えのことさ。
凄い答えだよ。
・・残業は過去の人達にしてもらうことにしよう・・だよ。
あのね・・ブレーン・ネットワークでワーキングするのってとんでもないエネルギーがいるんだ。
いまも宇宙の総エネルギーを計算してる真っ最中だよ。
過去の世界の使いすぎで、僕らの宇宙のエネルギーがとても少なくなったのにさ、いまもまだ過去の世界に盗まれてるんだよ。
すこしは返してもらわなくっちゃね。
で、この世の仕事を手伝ってもらうことにするよ。
もち、君にだよ。
その代わりにジャラが未来の情報を提供するよ。
おじいちゃんとの量子もつれ使ってこれから毎日送るからさ、情報を参考にして立派な未来作り上げてほしいのさ。
これならクラウドマスターも、未来の情報送ることに賛成してくれると思うよ。
・・昔の人、つまり君がOKすればの話だよ。
ブレーン・ネットワーキングの仕事の仕方はこれまでずいぶん説明したから、もう理解してくれてるよね。
ジャラの世界の人口なんてすこしかいないけどさ、過去の世界には数十億の人がいるからさ、凄いネットワークができあがると思うよ。
それじゃまずクラウド・マスターに話してみることにする。
「待ってマスター!」
ジャラは立ち去るクラウドマスターを呼び止めたよ。
そして僕の考えを話した。
・・いまから言うジャラの考えを取り入れたら、エネルギー不変の方程式が完成します。
この方程式は、時空を超えた方程式です。
うまくいけばこの世の宇宙のエネルギー問題もすこしは解決します。
説明しますからよく聞いてくださいね・・
ジャラのアイデアを聞いたマスターの表情が晴れ上がった。
「私の宇宙おむつがとれるのなら大賛成だよジャラ!」
「宇宙おむつまでとれるかどうかは、過去の人達の熱意次第です。では過去とのもつれを進めてみます」
ジャラはもう得意満面だったよ。
カーナが尊敬の目でジャラを見てた。
サンタ・タカシとシザーマンは「ジャラのおかげだ!」って、白ワインうまそうに飲んでたよ。
でもさ、気分よかったのはそこまでだった。
「で、ジャラ! 次のおじいちゃんとの連絡はどうするんだね?」
マスターに聞かれてジャラのおつむは真っ白になった。
・・次のおじいちゃんとの連絡方法だって?・・
「ジャラ、次の連絡はサンドレターだぞ」
昨日の夜、おじいちゃんの言った最後のセリフが聞こえたよ。
タンジャンジャラの白い砂を混ぜた七色カクテルの最後の一滴のおかげだよ。
“あのサンドは使い果たした。”
・・おじいちゃんと量子もつれするためのサンドがない・・。
ジャラは呟いて、下を向いた。
「ジャラいまなんて言った?」
クラウドマスターのクールな一言がジャラを冷やした。
「おじいちゃんと話をするためのサンドがない。昨日の夜、全部飲んでしまった」
仕方なくジャラは繰り返した。
マスターはさらにジャラを追い詰めたよ。
「ジャラ、一言付け加えると、マスターの計算によれば、昨日のおじいちゃんとの量子もつれは、110年に一度のチャンスだったと言っておこう。
おじいちゃんとジャラのDNAが粒子状でもつれて、お互いに影響を及ぼすのは、太陽と月と時空の関係で110年に一度しかない。
今日以降の時間で、時空を超えてつながるにはその白い砂が必要なんだよ」
「タンジャンジャラのサンドがないとジャラはおじいちゃんとつながらない。マスター、どうして昨日のうちにそう言って忠告してくれなかったんだ!」
ジャラはむかっ腹がたって、マスターに噛みついたよ。
「ジャラはまたそんな無茶を言う。人工知能が人間にできるのは差し迫った“注意”だけだ。忠告なんて贅沢なものが欲しいときは人間同士でやりとりしてほしいね。わかってて無理いうなよジャラ!」
マスターが珍しい言葉を使ったよ。
斜めになったイタリック体のところだよ。
ジャラが感心してマスター見つめてたら、サンタ・タカシがにやにや笑って近づいてきたんだ。
「AIと人間の喧嘩はじめてみたぞ。面白いぞ。もっとやれ!」
はさみ男も近づいて来て、なにか言ったよ。
「サンドほしいか?」
はさみ男がポケットから折りたたんだ小さなハンカチ取り出してきたよ。
「サンドほしいか?」
サンタ・タカシもポケットから折りたたんだハンカチ取り出してきた。
ジャラとマスターが同時に大声上げたよ。
「サンドほしい!」
ジャラは思い出した。
昨日のことをさ。
・・入り江の海、ホットクロス・スポットでの出来事だ。
「それ“量子もつれ”・・か」
はさみ男とサンタ・タカシが砂粒を一粒ずつ大事に指に挟んで調べてた。
それからハンカチに包んでポケットにしまい込んだシーンをさ・・。
「本物だぞ!」
サンタ・タカシとシザーマンが唸るように吠えた。
それからハンカチを開いた。
カーナとジャラとマスターは顔見合わせたよ。
二つのハンカチの中で白く輝いていた砂の粒子は・・
合わせてたったの二粒だった。
ただちにジャラは決断したよ。
「一粒は今すぐ飲んでおじいちゃんの話の続きを聞く。きっと大事な話が聞けるはずだよ。もう一粒はおじちゃんとの最後の連絡のために取っておく」
ジャラの宣言を聞いて、クラウドマスターはあわてて両手を宙に挙げて指先からプラズマを放射したんだ。
中空に白ワインのグラスが一つとストローが五本出現したよ。
マスターが指先を下に向けると、ワインの入ったグラスとストローがテーブルの上に静かに着地した。
で、全員が席に着いた。
「ワインにサンタ・タカシの一粒入れてくれるかな」
ジャラがサンタ・タカシに頼んで、白い砂のひとかけらがそっとグラスに入れられたんだ。
砂がワインに溶け込んだのをみて、五人がストローをグラスに入れた。
顔をくっけながら、ワインを飲んだ。
グラスが空になって、五人は顔を見合わせた。
そろそろだ。
その時、あのしゃがれ声がみんなの耳に届いたんだ。
・・・で、生牡蠣にはなんといっても白だ。
間違っても赤はいかんぞ。
できれば、すこし値段が高いがナパの白“ファーニ××”だ。
冷やし過ぎるなよ・・。
で、ここから××しろよ・・
そこで、声が消えていった。
五人は顔を見合わせたよ。
「ほらみろ、白が正解だったろ!」
サンタ・タカシが自慢したよ。
「”××しろよ”って何の意味かしら」
カーナが口とがらせて聞いたよ。
「ワインのブランドだ」
はさみ男が答えたよ。
「違うわよ、聞きたいのは“ここから××しろよ”の方よ」
カーナがいったので、ジャラが答えたよ。
「ここからのここは最後の一粒のことかもしれないよ。マスター、××の答えを計算して教えてよ」
ジャラがそう言ったらクラウドマスターが明快に返したよ。
「”ここから××しろよ”の解釈は宇宙の星の数ほどある。計算はできるが答えは出ない。ここは人間の出番だ! だれか“どて感でいい、答えろよ”」
「うーむ・・」
ジャラとサンタ・タカシとシザーマンは唸ったが、どて感が働かなかったよ。
どて感が働いたのは、アマゾン出身のカーナだった。
「何をうじゃうじゃ言ってるのよ。マスターが自分で答え言ってるじゃない。最後の一粒は飲んでしまわずに“答えろよ”なのよ。手紙でいったら返信覧じゃないの。最後の一粒に返信書けってことよ!」
カーナが明快に結論を出してくれて、重要会議はなんとか終わったんだ。
最後の一粒は、はさみ男のシザーハンドからクラウドマスターに慎重に手渡されたよ。
「粒子の検査ともつれをほぐすキーワードをみつけるのに二日はかかる。また会議を招集する。ジャラはおじいちゃんへの返信の内容を簡潔に36文字で考えておくこと。それでは解散する。お疲れ様!」
ようやくミーティングは終了したよ。
で、ジャラはすぐにスーツマンに命じて、クレアとボブに会うためにドリームワールドへ急いだんだ。
二人に会うのは久しぶりだよ。
・・クレアもボブも僕のこと忘れてないか、すこし心配だよ・・
(続く)
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