スペース・イタチ一族の長(おさ)、パパ・ゴルゴ ンが薄ら寒い地下の穴蔵で焚き火を起こした。
パチパチと火がはぜて暖かくなってくると、焚き火のまわりに子どもたちを集めた。
「いまのうちにお前たちに伝えておかなきゃならんことがある。俺たち一族の話だ」
パパ・ゴルゴンは長ーい話を始めた。
・・前回のお話はここからお読みください。
この世の果ての中学校21章“ゴルゴン一家と蘇ったカレル先生の記憶 ”
ゴルゴン一族宇宙の旅
たいした昔でもない時のことだ。
この世は無数・無限の世界から出来ておった。
一番上には善意の者達が集まった世界があった。
ここでは日頃からみんな仲良く暮らし、一日中明るい光が溢れていた。
一番下の世界は極悪人がうじゃうじゃと潜んでおる闇の世界だ。
そこでは憎悪がはびこり、命ある者たちがお互いに殺し合っていた。
二つの間には無数・無限に世界が存在し、命あるものが様々な形をとって生きておった。
それらの世界は、生き物たちの往き来が出来ないように、でっかい歪んだ空間で隔てられていた。
この歪みは宇宙の意志と呼ばれる巨大なエネルギーでできていた。
俺たちはこの存在を神様と呼んで、崇めておった。
でっかい歪みには裁判所があった。
無数・無限の世界で死んだ者たちはそれぞれの黄泉の国でのんびり過ごしておったが、
生前に悪事を働いた疑いのある者には裁判所から黒い仮面の使者が逮捕状を持ってやってきて、裁判所に連行して裁判を受けさせた。
裁判所はそれぞれの生きものたちの守り神と、守り神から選ばれた長老で構成されていて、投票と長老会によって判決が出ておった。
ここからは話をよーく聞いて欲しい。
少しややこしいからな。
ゴルゴン一族の先祖は、明るい光で溢れた世界で生まれた、まっとうな人間だった。
しかし、俺たち末裔の人間がとんでもない過ちを犯した。
善人たちに思いつく限りの悪さを山ほどしたんだ。
生きていくためではなくて、楽しむためにだ。
こいつはちょっとやり過ぎた。
俺たちはやりたい放題やって、死んじまったあとで、黄泉の国から天上の裁判所に集められた。
裁判の結果、俺たちは極悪犯罪人とされて、罰としてイタチの姿に変えられ、闇の世界に追
放された。
闇の世界の惑星というのが、この地球だったんだよ。
つまりだ、善人は輝く世界に生まれ変わり、 悪さをした者は暗闇の世界に放り込まれるというわけだ。
それが裁判所の仕事だった。
「俺は前の世界で極悪人だった。ママも同じ極悪人仲間だった」
二人は闇の世界を流浪して、あげくにこの世の果て、ここ地球に流れ着いた。
そしてお前たちが生まれた。
「ここは闇の世界。とても怖い処なんだね」
そういって、一番年下のチビゴンがぶるっと震えた。
「それがどうやらそうでもなかった」
パパゴンが大笑いした。
命あるものの殺し合いと、果てしのない絶滅ゲームはもう終了したらしい。
生き残ったのは人間の若い生命(いのち)が六つ、まだ悪も善も知らない人類の最後の世代だ。
あとは彷徨う魂がいくつか・・黄泉の国からの通い人。
それにホラーやアンデッドたちのちょい悪くらいだ。
ここには残虐な奴らはもういないようだし、食い物の苔やミミズもここ地下洞窟に少しは残っているようだから、もうしばらくはここに逗留しようと思う。
「しかしだ、悪い予感がする」
パパゴンは鼻の下のひげを撫でて、言った。
「この先、光の球の爆発があるかもしれん。とんでもなくでかい奴だ」
そのときが近づいてきたらパパには分かる。
このひげが教えてくれる。
長くて細ーいこいつがぴくぴくと震え始めたら危ない。
そのときは家族揃って宇宙へ逃げ出す。
みんな、身体をなまらせるんじゃないぞ。
そのときに備えてスペース・イタチの宇宙遊泳術を鍛えておけ。
今日は疲れたろう。
みんな良く戦った。
パパはお前たちを誇りに思う。
マリエにペトロに裕大はいい奴らだ。
あの子たちと仲間になれただけでも幸せだと思わなきゃな。
「今度死んだら、輝く世界にもどろうぜ!」
話し終えると、パパゴンは焚き火のそばで穴蔵に響き渡るような大きないびきを掻いて寝込んでしまった。
「やったろうやんか!」
後ろ足で立ち上がった12人のチビゴンたちは宇宙遊泳に備えて、地下の洞窟で筋トレを開始した。
(続く)
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下條 俊隆
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