地球温暖化はもう止まらないかもしれない!灼熱の気温上昇にいまから備えるべきこととは?

灼熱した地球でたくましく生きる6人の子供たち

 

 

 

 

人類の皆様!地球史上例を見ない灼熱の夏をいかがお過ごしでしたか?

2024年、日本の暑さは私など高齢の生命体には限界に近い体験でした。このような試練が来年もつづくのでしょうか? 

いつになれば地球温暖化は止まるのでしょう?

1世紀近くを生きてきたおじいちゃんの記憶によれば、地球は年々暑くなるばかり。人知を尽くしても地球温暖化はもう止まらないのではないかと心配です。

私たちの子供や孫たちの世界はいったいどうなっていくのでしょうか?

ここでは、地球温暖化が止まりそうにないと懸念する主な理由と、気温上昇にいまから備えるべき対策について、筆者なりの考えをまとめてみました。

まずはじめに、「なぜ、人知を尽くしても地球温暖化が止まりそうにないのか?」についての根拠をご説明します。

 

地球温暖化が止まりそうにない5つの理由

地球温暖化が止まりそうにないと思う主な理由は次の5つです。

 

理由1 地球の人口が減らない限り温暖化は止まらない?

2024年に地球の総人口は81億人に達しました。良くも悪くも人類が主役の世紀なので地質学的には今の時代区分を「人新世」というそうです。

ここでは、地球の人口の増加と地球の温度上昇との関連性を確認するために、以下の3つのグラフを縦に並べて調べてみました。

①世界の人口の推移

引用:グラフストック/国連「World Population Prospects 2019」より

人口の減少が先進国で問題となっていますが、地球全体の人口は1960年に30億人強であったのが、2020年には80億人近くまで増加。2024年には81億を突破したとみられています。増加率が減少しつつあるとはいえ、わずか60年の間に2.6倍の爆発的増加です。

人口の着実な増加と、活発化する経済活動により地球資源への影響はどのように変化してきたのでしょうか?

次に、人類の経済活動の原点となるエネルギー消費量の推移を調べてみました。

⓶世界のエネルギー消費量の推移

出典:経済産業省 資源エネルギー庁

この図表は、世界の一次エネルギー消費量の推移をエネルギー源別に示したグラフです。地球温暖化の原因となるCO2やメタンを発生する化石燃料である石炭、石油、ガスの消費量は1965年から2019年までの54年間で3倍近くに増えています。増加の時期と増加率が、前掲の人口の傾向と重なっています。

人口の増加と活発な経済活動が化石燃料の消費量を比例的に増やし、CO2やメタンなどの温室効果ガスを大量に放出したことが読み取れます。

③ 世界の年平均気温の推移

出典:気象庁

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この図表は世界の年平均気温の推移を、1991年から2020年の平均温度からの差で示したグラフです。1975年を過ぎたころから2020年までの45年間に急角度で気温上昇が続いています。①の人口増のグラフ、⓶のエネルギー消費量の増加を示すグラフとの明らかな相関性が見られます。

3つのグラフから、地球の温暖化の現象は人類発のものであり、地球人口の増加が地球温暖化の基本的な要因であると断言しても間違いないでしょう。

このことから、地球の人口増が止まらない限りは、さらに言えば減らない限りは温室効果ガスの削減は実現できないだろうと思われるのです。

とはいえ、地球の人口を地球規模で計画的に減らすなどという政策は、現実的には実行が大変困難な道筋だと推測されます。

人類の普遍的な繁栄と平和を目指す国連の場では、温暖化対策として人口を減らすという提言には、倫理的な理由や、宗教的伝統、国内情勢の違いなどで、反対意見が多すぎて、総意は期待できないでしょうね。

 

理由2  COP29の2030年度CO2削減目標「42%」は実現困難?

国連は2024年11月に予定されるCOP29を目前にして、23年度の世界の温室効果ガスの排出量が前年度に比べて1.3%増加して、571億トンと過去最高値を記録したと報じています。

一方、産業革命前からの気温上昇を、目標の1.5度以内に抑えるためには、2030年までに温室効果ガスの排出量を2019年と比べて42%削減する必要があるとしています。42%といえば総排出量の半分に近い数値です。

これを実現するために、2030年までに再生可能エネルギーの量を世界全体で3倍以上にして、同時に世界のエネルギー効率を2倍以上にするといった思い切った措置が必要となるといっています。

各国がCOPの提言に応じて、様々なレベルの対策をスタートしても排出量が増え続ける現状のなかで、2030年までのわずか6年間でエネルギーの生産方法と、消費の効率を大胆にシフトして、 排出量を半分近くにしようとは、2050年にカーボンニュートラルを実現するために必須とはいえ、まさに実現不可能な提言としか思えないのです。

 

理由3 後戻りができない「ティッピングポイント」を超えている可能性がある?

すでに突破したと推定される後戻りできない気象現象のことを「ティッピングポイント」と呼んでいます。

温室効果ガスの排出を止めても気温の上昇が継続する現象のことです。一度突破すると元に戻ることが非常に難しいとされています。

以下は、ティッピングポイントとみられるいくつかの気象現象の例です。

北極海の氷塊の消失→太陽光の反射が減少し海水の温度が上昇。氷の溶解がさらに加速する悪循環が起こる。

アマゾン熱帯雨林の消失→CO2の吸収力が大幅に低下して温暖化が加速する。

グリーンランドや南極の氷床の融解→世界的に海面が上昇し、気候が変動する。

これらの現象は既に進行中で対策が急務とされますが、逆戻りできない「ティッピングポイント」に入っているという科学者の厳しい見解が見られます。

 

理由4 大気中のCO2を吸収してくれる海や森林の機能が低下している!

海と森林は大気中のCO2を吸収して、気温を一定に保ってくれるバランス役としての機能を果たしてきました。昨今、その機能が低下していると報告されています。

次の図は大気に放出された#人為起源二酸化炭素109億トンのその後の行く末を赤い矢印で表した模式図です。2010年から2019年の平均値を一年あたりの値で表しています。

#黒の矢印は産業革命前の状態を表したものです

#109億トンは「人類起源二酸化炭素」と区分される量です。世界の二酸化炭素排出量は2020年で314億トンとされています。

 

引用:気象庁 人為起源炭素収支の模式図(2010年代)

109億トンの中、陸上で吸収される量が34億トン、海洋に吸収される量が25億トン、大気中に残留する量が残りの51億トンとなっています。

人間の活動で排出されたCO2の約半分が自然界に回収され、残りの50%が大気に蓄積されることが温暖化の原因です。

一方、地球温暖化で温められた海水は、CO2を吸収する能力が低下するとされます。気温があがると海水の温度が上がり、吸収されないCO2が大気中により多くとどまることになります。

2023年8月5日のBBCニュースによれば、地球の海水温度が史上最高を記録したとのこと。イギリスの海域では6月の海水温度が平均より3~5°高く、フロリダでは7月の海水温度が38.4°と大浴場並みの海洋熱波が襲っています。

2024年の世界の海水温度に関する具体的なデータはまだ発表されていませんが、気候変動の影響で海水温度が上昇している可能性が高いとされています。

また、植物生態系の主役である世界の森林は、速度が緩やかになっていますが減少傾向が続いています。林野庁作成「世界の森林面積の変化(1990-2020)」によれば、南米アマゾンやアフリカの森林減少が大きな要因となっています。農地や牧草地への転用、燃料用採取、温暖化による森林火災などが主な原因です。

引用:FAQデータより林野庁計画課作成資料

 

 

 

 

 

 

大気中のCO2を吸収してくれる海や森林の機能が低下していることも、地球温暖化を止めにくい要因となっています。

ちなみに、産業革命以降に人類が自然界に排出したCO2の総量は6,850億トン炭素と推定されています。

海と植物が頑張って、CO2の約半分を吸収してくれたと大胆に仮定しますと、残りのおよそ3,000億トンの炭素が大気中に蓄積して温暖化を図っていることになります。

既に巨大な負債を抱えている状態で・・・海や植物の自然な吸収力がこれ以上低下するとさらなる事態の悪化が懸念されることとなります。

 

理由5  ”持続可能な発展目標”には地球がもう一つ必要?

”持続可能な発展目標”はもはや存在しないかもしれません。

SDGs持続可能な発展目標13は「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」となっています。これさえ実行できれば人類の未来はなんとかなる、と私は思っていました。

しかし、”気候変動における持続可能な発展目標”は、地球のどこを探したら見つかるのでしょうか?

そういえば・・・「70億人を超えてしまった地球の人類を養うためには、2030年には地球が2つ必要になる」と環境保全団体のWWFが2008年に警鐘を鳴らしていました。私たちは未来の人類に残すべき地球の資源を使いすぎて、すでに危機的状況に陥ってしまっているのが現状の姿だとWWFは訴えたのです。

最近になってようやく、人類の活発な経済活動が地球温暖化を進め、異常気象などの自然災害を起こしているのだとみなされるようになりました。

異常気象による被害は、自然災害ではなくて人的災害とよぶべきでしょう。“持続可能な発展目標”を目指そうとしても、(自然による温室効果ガスの吸収力を含めて)地球の資源には限界があります。地球の人口は70億人どころか、すでに81億人を超えてしまいました。

人類を養うためにはもう一つの地球をみつけないと駄目かもしれません!

灼熱の気温上昇にいまから備えるべきこととは?

 

国連は2024年10月、COP29の開催を前にして、「このままでは世界の平均気温は今世紀末までに最大で3.1度上昇する」という警告を発しました。

国連によれば、これは世界にとって「破壊的」なもので、熱波や洪水などの異常気象が劇的に増えるとしています。3.1度の上昇という数字は、屋外での仕事や、真夏の外出はほとんどできない灼熱地獄になるということです。

科学者によって未来の上昇温度の予測値に大きな開きがありますが、国連発表の数字は現実に起こりうる事態として正しく認識する必要があると思われます。

ここでは、気温が3.1度にまで上昇する最悪の事態に備えるために、私たちが今からできることを具体的にピックアップしました。

温暖化を軽減する効果が期待できますので、ぜひ参考にしてくださいね。

 

1.自分の電力は自分で作る

再生エネルギーで自給自足のカーボンニュートラルを目指そう! 

・太陽光パネルと蓄電池をセットで併用する

・エアコンの停止など不意の停電に備えておく

・売電で費用対効果が上がることも

・マンションなら管理組合での検討も

 

2.住居を省エネ型や防災型に

家庭のエネルギー消費の30%を占める冷暖房を省エネ型に。

・夏に熱を侵入させない日射遮蔽(植栽・ブラインド・遮熱複層ガラスなど)を設置

・冬に熱を逃がさない断熱材の設置

・地下室や防災シェルターなど安全で涼しい場所も

 

3.家庭菜園をはじめる

異常気象による農作物の不足に備えて家庭菜園を始める。

・自宅の庭やマンションの緩衝地・ベランダを活用

・野菜や育てやすい根菜など高温に強い非常食がおすすめ

・裏庭などの日陰ではシイタケの栽培も楽しめますよ

 

4.みんなが肉を食べる量を減らせば気候変動と戦える

食料生産は世界の温室効果ガス排出量の約26%を占めており、その最大の原因は家畜にあるとされています。

・家畜の生産には膨大な植物由来の食料が必要となるので、食べる肉の量を減らせばCO2を減少できる

・特に牛のゲップはCO2より強力な温暖効果ガス・メタンを発生させる厄介者

・肉の消費が多いイギリスなど欧米を中心に代替肉の開発など肉類の消費削減が積極的

 

5.コンパクトなライフスタイルに見直す

気温の上昇が1.5度以内に収まらず、3.1度以上の上昇が想定されるときに準備したい対策です。生活の基盤を、気候変動に備えて移動しやすいスタイルにスリム化しておくことが必要となるかもしれません。

・住環境のコンパクト化・賃貸などによる柔軟性

・生活必需品のコンパクト化

・生活資金の簡便化・手元資金も

・安全な移動先への検討・検証も

 

6.自然災害への準備・対策

全ての家庭で台風・洪水・火事・熱波などの災害への対策・準備が必要になるでしょう。以下は必須です。

 ・避難先・避難ルート・移動手段の確認

 ・食料・水・医薬品などの備蓄

 ・家族間の緊急情報ネットワークの確認

 ・近隣との協力ネットワーク体制

 

最後に

終戦後、食料不足の時代に、父に連れられて神崎川の川べりの親戚の土地で育てたサツマイモの収穫に兄弟4人で出かけた記憶が鮮明によみがえります。砂地なのによく育っていました。育ち盛りの兄弟には貴重な食料源でしたよ。

「自然と人間とどちらが大事と思う?」

”自然との共生”など話題にもならなかった昔のある日、もと大阪市の天王寺動物園長で大阪市立自然史博物館を創設した動物学者の「故・筒井嘉隆」館長が中学生の私に聞きました。

「そんなもん人間が大事に決まってるやんか。そんなこというてるからうちの家いつまでたっても貧乏なんや!」と答えていました。

黙ってしまった父の寂しそうな顔が今でも脳裏に焼き付いて離れません。

この記事は父への贖罪です。

おやじ!ごめんなさい。それから・・・ありがとう。

 

このテーマはこれからも追いかけ続ける予定です。

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワケあって僕たちまもなく絶滅します②」チンパンジー、チーター、カバ、ホッキョクグマ、パンダはいま地球に何頭いますか?

いま、多くの野生の哺乳類が絶滅の危機に瀕しています。

世界自然保護基金WWFの「リビング・プラネット・レポート2022」によれば1970年以降、野生動物の個体数は69%激減したという報告です。

2年前の同レポートでは推計で6割近くが減少となっていますので、直近の2年間でさらに1割程度減ったという恐ろしい結果になります。

その主な原因は、生息域の浸食、狩猟と取引、環境汚染や地球温暖化による気候変動など人間の経済活動によるものとみられています。

このブログの前号は、子供たちの大好きな野生のライオンやトラ、象やキリンやゴリラについてルポしました。すべての種が絶滅の危機にあることに筆者も驚きました。

他の野生動物はどうなっているのか心配になって、今回は子供たちの大好きな野生の動物からチンパンジー、チーター、カバ、ホッキョクグマ、パンダの5種に焦点をあてて調べてみました。

 

1. チンパンジー 絶滅危惧種

昼間はほとんど樹上で寝ているチンパンジー 引用:WWF
昼間はほとんど樹上で寝ているチンパンジー 引用:WWF

 

 

 

 

 

 

 

「天才!志村動物園」で人気タレントとなったパンくん。いつもの“お使い”の行き帰りに2足歩行するので、チンパンジーは2本足で歩く可愛いイメージが強いですが、野生のチンパンジーが普段過ごしている樹木から下りて地面を歩くときは、危険を避けて素早く動ける四つん這いで移動します。

 

チンパンジーは、中央アフリカや西アフリカの森林や草原で暮らしています。チンパンジーの個体数は生息地のアフリカ全土でわずか17万頭から30万頭です。絶滅が心配される3段階評価の中、最も危険な領域にある絶滅危惧種に指定されています。

 

類人猿に属するチンパンジーは人間と最も近い動物で、遺伝子配列の98%以上が同じとされています。共通の祖先から枝分かれした古い仲間であるにもかかわらず、チンパンジーを絶滅に追い込んだのは実は人間です。

 

WWFによれば、その原因は主に次の3つです。

1.人間による森林の伐採、農耕地や鉱物資源の採掘による生活圏の浸食

2.趣味・習慣としてのブッシュミート(野生動物から得る食肉)

3.ペットとしてチンパンジーの赤ちゃんを密売

など、主犯は人間とされています。

チンパンジーの未来を安全にできるかどうかは、私たち人間次第ということですね。

 

2.チーター 絶滅危急種

チーターの親子  引用:BBCニュース

 

 

 

 

 

 

美しい姿で草原を疾走するチーター! チーターは走り始めてから3秒で最高速度に達します。最高速度は時速約120キロと、スポーツカークラスの性能です。

地上で最速の哺乳類であるチーターの数が激減しています。2016年・PNAS(米国科学アカデミー紀要)に複数の科学者達が寄稿した論文によれば、チーターの総個体数はわずか7,100頭です。

チーターの生息地はアフリカの南部とアジアの一部で、過去の分布地域のわずか9%になってしまったそうです。アジアではイランだけで生き残っていて、集団の個体数は13頭と推定されています。

 

PNASによれば、チーターは人間と接触するようになってから本来の行動圏・生活圏の91%を失ったとされています。

 

チーターの生息圏の推移 引用:PNAS

 

画像はチーターの生息圏の推移を示しています。Aがアフリカ、Bがアジアです。灰色の網掛けは過去に生息していた範囲で、赤い網掛けは現在の生息推定範囲を示しています。失われた生活圏の大きさが一目で分かります。

 

青色マークはIUCNの保護区域(PA)の境界を示したものです。筆者の目で見ても、保護区域と実際の生息が確認されている赤色との分布のズレが目立ちます。生息地が保護区域からはみ出したところに点在しているのがみてとれます。

 

肉食動物であるチーターの生活圏は広範囲に及び、野生保護区の圏外に及んでいます。しかし、保護区の圏外は農地に開拓され、餌とする動物も人間の食料として狩られているのでチーターの食料が少なくなり、チーターは飢えに苦しんでいるのが現状です。

 

論文は、保護区域を設立して維持することは「生物多様性保全のための重要な施策だが、チーターのような広範囲でまばらに暮らす種には不十分」と指摘しています。アフリカに生息するチーターの分類は現在「絶滅危急」となっているので、論文は「絶滅危惧種」に引き上げる必要があると指摘しています。

一方、イランだけに生息するアジアのチーターは絶滅危惧種に指定されていますが、わずか13頭では絶滅寸前と言うべきでしょう。

 

また、BBCの報道によると、子どものチーターは湾岸諸国で富裕層にペットとして人気があり、捕獲されて高値で密売されていることも個体数激減の原因だと言っています。

 

近い将来、チーターが草原を走る姿が見られなくならないかとても心配です。

 

3.カバ 絶滅危急種

引用:WWFジャパン

 

 

 

 

 

 

カバは国際自然保護連合IUCNのレッドリストで絶滅危急種に分類されています。サハラ砂漠以南のフリカ大陸に生息し、IUCNの推定で個体数はわずか11万5000から13万頭です。

 

1.5トンのでっかい身体に短い足、大口あけて欠伸をするカバは愛嬌があって、動物園でも子どもの人気者。陸上動物では象やシロサイに続く大型哺乳類です。

野生のカバは陽射しの強い日中は水中で過ごし、夜になると水辺から陸に上がって草などを食べます。皮膚が常に濡れていることが必要で、生きていくためには水と陸という両方の自然環境が必要な動物です。

 

一方、近くに水がある陸地は農地や家畜の放牧地として開発され、カバの生育地が失われています。縄張り意識の強いカバが侵入してきた人を攻撃する事故が多発し、逆に銃で駆除されることが多くなったのです。気候変動によると思われる干ばつが方々で増えたこともカバにとっては致命的です。

 

内戦や紛争地帯では治安の悪化や貧困から、食肉用や、象牙の代替品とされる牙を狙われて殺される密漁が激増しています。一方、政情が安定した国では保護区や密漁対策が行われ、個体数が回復している傾向も見られます。

 

WWFは絶滅危急種であるカバを守るためには貧困や、紛争に悩む地域に対する世界の支援が必要だとしています。

 

【カバの特技を3つご紹介】

1. オスは縄張り意識が強くて乱暴者。近づいた見学ツアーの観光船に体当たりしたことがあります。

2.水中で眠ることができます。水中でもいびきをかいているのでしょうか?

3.体重が重すぎて泳ぐことが苦手です。水の中では実は、足で地面をけって歩いています。呼吸をするときには地面を強くけって顔を水面に出します。

 

4.ホッキョクグマ 絶滅危惧種

北極の海氷は厚さと範囲の両方で減少  引用:BBC NEWS
北極の海氷は厚さと範囲の両方で減少 引用:BBC NEWS

 

夏の動物園で、プレゼントされた氷と戯れるホッキョクグマ(シロクマ)は、子供たちの人気者です。

肉食動物で最強のホッキョクグマですが、現在の総個体数はわずか26,000頭です。国際自然保護連合ICUNは絶滅危惧種に指定しています。北極圏で暮らす野生のホッキョクグマは、地球温暖化の影響で氷が溶けために、活動の範囲が狭くなってアザラシなどの餌が取れなくなり、絶滅の恐れがあるとしています。

 

北極圏の氷は地球の他の地域と比べて2倍以上の速さで温暖化が進んでいます。アラスカやカナダ北西部の平均気温は過去50年間で3~4度上昇しました。氷は太陽の光を大量に反射しますが、色の濃い海水は太陽熱を吸収しやすいので、さらに氷の溶解が進んでしまいます。フィードバックループと呼ばれる悪循環が起こっているのです。

アメリカのGFDL(地理的流体動力研究所)によれば、このまま地球温暖化が進むと2050年には夏に溶ける氷の量が増えて、北極圏では5か月もの間溶けたままの状態が続く恐れがあるとの試算も。

ホッキョクグマは、獲物の少ない夏に生命が維持できるように、春に獲物を大量に捕らえて体脂肪を蓄える必要があります。氷が溶け出すのが早くなれば陸地に移動する時期が早まり、体脂肪を蓄える狩りの時間が少なくなります。

学術誌「Nature Climate Change」に発表された研究では、コグマが生まれても子育てに必要な母熊の母乳が薄くなり、生き残るコグマの数が減っているそうです。

 

また、地球温暖化の影響で、近年、北極圏の永久凍土が溶け出して植物や動物の遺骸からCO2やメタンという温暖効果ガスが放出されています。その結果、温暖化が加速されるという悪循環が指摘されています。ホッキョクのシロクマを守ることは、温暖化から地球環境を守ることと直結しているのです。

 

筆者は20年前にアラスカの北端バローに行って永久凍土の上を歩いた経験があります。原住民のイヌイットの人達の住居は高床式の二階建てで、3階くらいの高さがありました。屋根の上には狩猟で獲ったアザラシの肉が干してありました。聞いてみると、シロクマに獲られないように高いところで干し肉にするのだそうです。

 

バローで野生のシロクマを観察する機会はなかったのですが、アラスカのホテルのロビーで剥製の巨大シロクマがいまにも襲いかからんばかりに展示されていました。その大きさと迫力に圧倒されたことを鮮明に覚えています。

 

いま、バローのホッキョクグマたちは、どのようにして餌をとってコグマを育てているのか心配になります。

 

5.パンダ

動物園で子供たちの圧倒的な人気者のジャイアントパンダとレッサーパンダ。ともに哺乳類の食肉目ですが、ジャイアントパンダはクマ科に属し、レッサーパンダは独自のレッサーパンダ科に分類されています。

ジャイアントパンダはクマの一族で、レッサーパンダはスカンクやアライグマ、イタチに近い別の動物です。ともに「パンダ」と呼ばれるのは、笹を食べることが理由です。レッサーパンダが始めてネパールで発見されたときに、現地の言葉で「nigalya ponya」(「竹を食べる」の意味)でポーニャと呼ばれたことが発祥です。

後にジャイアントパンダが発見されたときに同じく竹を食べるので、大きなパンダ「ジャイアントパンダ」と名づけられ、従来のパンダは小さなパンダ「レッサーパンダ」と呼ばれたのです。

二つのパンダの共通点は、とても可愛いこと、竹を食べること、そして絶滅が心配されていることです。

レッサーパンダ 絶滅危惧種

Red panda 引用:WWF
Red panda 引用:WWF

 

レッサーパンダは体毛の多くの部分が赤茶色をしているのでレッドパンダとも呼ばれています。国際自然保護連合IUCNのレッドリストで最も危険水域にある絶滅危惧(EW)に指定されています。

 

中国南部、インド北東部、ネパール、ミャンマー、チベットの温帯森林に生息していますが、生息地の50%はヒマラヤの東部です。森林の多くが伐採されて、生息地のほとんで個体数が減少しているそうです。

 

WWFによれば、総個体数は10,000頭を下回ると報告されています。レッサーパンダは野生のブタやシカなどを狙う罠にかかって命を落とすことがよくあるそうです。毛皮が目的で密漁されて、中国やミャンマーで売られているのがみつかっているとのことです。

 

ジャイアントパンダ 絶滅危急種

野生のジャイアントパンダ  引用:WWF

 

 

 

 

 

ジャイアントパンダは世界自然保護基金WWFのシンボルキャラクターです。

ジャイアントパンダ(以下パンダ)は国際自然保護連合IUCNの2021年レッドリストで「絶滅危急(VU)」に指定されています。近年はWWFと中国当局との共同作業で保護活動が進み、野生の個体数が増加傾向にあるとみられています。

しかし、WWFによれば野生の個体数は最大でもわずか1,000頭(成獣のみ)で、絶滅の危機は今なお続いているとのことです。

野生のパンダは食物の99%を数種類のタケに依存している草食動物で、タケの群生する奥深い山地の森でしか生きられません。環境の変化でタケがなくなると絶滅の危機が襲います。絶滅が懸念される理由は、長年の開発による山林の喪失と地球温暖化による生息環境の変化です。

気温や気候の変化で生育や発芽ができなくなるタケが出てくる可能性も指摘されています。野生以外に世界の動物園で飼育されている総数は700頭近いとのことです。

 

昔、東京の上野動物園のパンダが妊娠したときに、パンダ基金を集めるために、ある関西の企業に生まれたパンダのスポンサーになる内諾を取り付けて、園長さんにその話を持ち込んだら快諾をしてもらったことがあります。

スポンサーになる企業は、人気者のパンダの応援団としてPRできると喜んでおられたのですが、ある日園長さんから筆者に電話がかかってきて、「残念ですが、パンダの赤ちゃんを流産してしまいました」とのことで、THE ENDになりました。

 

実は、たとえ生まれたとしても生まれたてのパンダの赤ちゃんは85~140gと、とても小さくて自分で動けない赤ちゃんを母親が舌でやさしく拾いあげるのだそうです。生後約2か月間は目が見えないので、自力で動くことができません。母親の体温と母乳が命綱で、母親に守ってもらはないと生きていけないのです。ママパンダも大変です。

 

パンダは育てるのが難しい動物です。野生のパンダがいなくなったときのためにも動物園や保護区で少しでも個体数を増やしておいて欲しいですね。

 

(おわり)

関連記事もお読みくださいね。

「ワケあって僕たち間もなく絶滅します」ライオン・トラ・象・キリン・ゴリラはいま地球に何頭いますか?

 

クイズ!地球の哺乳類を4つに分類「人類、野生の哺乳類、ペット、家畜」個体数の多い順番は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永久凍土の溶解が地球の温暖化を加速!消えていく永久凍土を復活させるマンモス草原計画とは?

アラスカ・バロー 永久凍土の融解
NHK/BS 世界のドキュメンタリー

 

 

 

 

 

 

 

 

いま、北極圏の永久凍土が地球温暖化の影響で溶け始めています。

温暖化が進んで、永久凍土の中に閉じ込められていた動植物の遺骸(有機物)からCO2やメタンガスが大気中に放出され、さらに温暖化を加速させるという悪循環が起こっているのです。

“地球は大丈夫?”シリーズの今回は、永久凍土溶解の現状と永久凍土を復活させる「マンモス草原計画」について、ロイターやネイチャーの記事、公式機関の発表などを中心に追跡・ルポしてまいります。

 

止まらない悪循環?永久凍土の溶解が地球温暖化を加速!

 

永久凍土分布の予想図
永久凍土予測分布図 引用:イベルドローラ

 

 

 

 

 

 

 

 

この図は、永久凍土が変化していく予測図です。濃い茶色が2050年までに消滅する地域。薄い茶色が2100年までに消滅する地域。黄色は2100年に永久凍土が残っている地域です。

スペインに本拠を置く多国籍電力公益企業・イベルドローラが米国立NSDC(National Snow and Iice Data Center)のデータから作成した予測図です。

この図を見ると、2100年までに永久凍土の半分近くが消滅するという予測になっています。いい代えれば、永久凍土の半分の領域から温暖効果ガスが放出されることになります。

ロシアの生態科学者セルゲイ・シモフ氏によれば、永久凍土の溶解によるCO2の排出量は、人間が排出するCO2の総量と同等程度だが、メタンの温室効果はCO2の80倍強力で、CO2による影響の4倍になる可能性があるそうです。

私たち人類が努力して2050年までに温暖効果ガスの排出量が、現在目指しているカーボンニュートラルの目標値に達したとしても、永久凍土の溶解が続けば温暖化を食い止めることはできないという恐ろしい結論になってしまいます。

シモフ氏や永久凍土の研究者は、永久凍土の融解が気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測に正しく反映されていないのではないかと言っています。シモフ氏は、コロナ渦による経済の沈静化のなかでも大気中のメタンが増えた原因は永久凍土の溶解が原因だ、としています。

 

既に、永久凍土の溶解はティツピングポイント(戻れない地点)を通過したのでないかという科学者のコメントも聞かれます。セルゲイ・シモフ氏も、この自然現象は人間の手におえないかもしれないと危惧する科学者の一人です。

 

シモフ氏は、人間の手に負えないのであれば、動物の手を借りることができれば、溶解を止めることができるかもしれないと考えつきます。シモフ氏は、シベリヤの永久凍土で実験を始めました。

実験を行うエリアは「更新生パーク」と名付けられました。氷河期の更新世(こうしんせい)の時代に永久凍土を作り続けた「マンモス草原(ステップ)」を、現代に復活させようという壮大な計画です。

実験は現在も続いています。果たしてマンモス草原は復活するのでしょうか? 

 

そもそも、永久凍土とは何者なのでしょう?

 

永久凍土とはいったい何者なのか? 

 

現れた永久凍土の断面
引用:国連ニュース

 

 

 

 

 

 

 

永久凍土とはいったい何者なのでしょうか?

永久凍土は主にカナダ、アラスカ、シベリアなどの北極圏の周囲に広がる土壌で、北半球の陸地の25%という広大な領域を占めています。

永久凍土は、数千年から数万年にわたって、枯れた植物や死んだ動物をその中に閉じ込めることで、有機物からCO2やメタンの放出を封じ込める地球の炭素保管庫としての役目を果たしてきました。

温暖化で永久凍土が溶けると、大量のCO2や高濃度のメタンが放出されて、地球温暖化を加速させることになります。温度が上昇するとさらに永久凍土の凍解が進み温暖化が加速するフィードバックサイクルが心配です。

 

筆者は、20年前にアラスカの北端、北極圏のバローへ行って永久凍土の上を歩いてきました。低い草が密集してふかふかの絨毯の上を歩いているみたいで、踏みごたえがない不思議な感覚が鮮明に記憶に残っています。

北極海に面して、ところどころに小さな水たまりや湿原がある永久凍土が広がっていたのを思い出します。イヌイットの人たちの住居は高下駄式で、食料のアザラシの肉を北極クマに取られないように屋根の上に干していましたよ。

いま、バローの永久凍土が溶けだして、小さな池からメタンがブクブクと吹きだしているそうです。20年前にはみられなかった光景です。火種があると爆発する危険なゾーンになっています。

噴き出すメタン。引用:NHK BS 世界のドキュメンタリー

 

 

 

 

 

 

 

住居の下の永久凍土が溶けると、住居は傾き、倒壊する恐れがあります。住居をいつでも安全な地形に移動できるように、イヌイットの人達は、移動式住居に切り替えているとの報道もみられます。

 

北極周辺の永久凍土には、地球上のすべての植物に含まれる有機物の2倍以上の量の有機物が含まれていると報告されています。永久凍土が貯蔵する有機物の炭素は主にメタンと二酸化炭素です。その量は地球の大気圏にある炭素のおよそ2倍に達するそうです。

前掲のロシアの地球物理学者で生態科学者でもあるセルゲイ・ジモフ氏は、ユネスコの記者のインタビューに答えて・・・「永久凍土では有機物のほとんどが上層部の3mに集中していて、その3mが溶けるのにわずか3年から5年しかかからない」と言っています。

このことが、永久凍土の融解が地球気候に対する直接の脅威である理由だとしています。融解が温室効果ガスを発生し、その結果としての地球温暖化が永久凍土の融解を加速させる。「この循環するプロセスを止めるのは非常に困難です」とジモフ氏は答えています。

永久凍土から放出されるメタンはCO2よりはるかに危険です。「CO2だけなら、人間が排出する量と同程度だが、ガスの10%から20%はメタンだ。メタンの温室効果は短期間ではCO2の80倍強力で、その影響はCO2より最大4倍も大きくなる」とのことです。

・・・

温暖化への影響も深刻ですが、永久凍土の溶解で起こる脅威は、温暖化の悪循環だけでは無いと報告されています。

警告! 永久凍土の溶解で起こる脅威は温暖化だけではない?

 

2万4000年前の永久凍土で眠っていた微生物が復活…解凍後に餌を食べ繁殖も  引用:ビジネスインサイダー

 

 

 

 

 

 

 

永久凍土の溶解で起こる脅威は、温暖効果ガスの放出にとどまらないと言われています。溶解によるそのほかの脅威についての科学者からの警告は主に次の3つです。

警告1 ウイルスや細菌の放出

2016年12月、シベリアのツンドラでトナカイの死骸が発見されました。死骸から伝染したとみられる炭疽菌によって少年が死亡し、数十人が入院。調査の結果、病原体として古代の微生物が発見されたのです。

永久凍土の溶解で70年前に埋まっていたトナカイから炭素菌が生き返り、トナカイの群のあいだで広まったことになります。科学者は、永久凍土が溶解すると、腺ペストや天然痘など古代の病原体が放出される危険性があると警告を発しています。

警告2 生態系への影響

シベリアの永久凍土が溶けてツンドラの土地に泥だらけの風景が広がり、植物相が消滅しています。そのため、植物を餌にしている野生動物が餓死しているのです。湖などの下の永久凍土が溶けると、水が地面に浸透して消滅し、干ばつを引き起こします。

北極圏では、栄養失調のシロクマの映像が記憶に残っていますが、IPCC/海洋と雪氷圏に関する特別報告書の極地章の主執筆者であり、WWFの北極プログラム保全責任者であるマーティン・ゾンマーコーン博士によりますと、北極圏の動物の生息地と生活条件が劇的に変化しつつあるとのことです。

警告3  地滑りと地質事故

永久凍土の上に建設された都市では、地滑りが発生しています。国土の60%以上が永久凍土のロシアでは深刻な問題です。永久凍土の上に作られた最大の都市、ヤクーツクで土地の崩壊が起こっているそうです。

カナダの北極圏、永久凍土の上に作られたイヌイットの村では、地面が家の下に陥没してしまい、安全な内陸部への移動が始まっています。

 

永久凍土の溶解を防ぐいい手立てはないのでしょうか? 

次章では、シベリヤで永久凍土の溶解を食い止めるべく、氷河時代に隆盛を誇ったマンモス草原の復活にかける科学者親子の奮闘をルポします。

 

永久凍土の融解を止めるマンモス草原の復活とは?

 

氷河期におけるマンモス草原https://pleistocenepark.ru/science/

 

 

 

 

 

 

ネイチャー誌によれば、セルゲイ・ジモフ氏は1988年にシベリアの北東部コリマ川流域に哺乳類を再導入する実験を始め、息子のニキータ氏とともに1996年に更新生公園を作りました。氷河期である更新世後期にユーラシアで優勢だったマンモス草原(ステップ)に匹敵する生態系を復元することが目的でした。

マンモス草原とは、1万年~10万年前の氷河期にあった豊かな生態系を育んだ草原のことです。草原を維持するためには草食性のマンモスや大型草食動物の役割が欠かせなかったのではないかとジモフ氏は考えました。

大きな身体で木を倒して葉や果物を食べ、土を掘り返して根を食べ、排泄物で栄養を与え、草の生長を促したのだと。大事なことは、重い足で雪と氷の大地を踏みしめ、北極圏の冷たい空気を永久凍土の奥深くまで送り込んで凍らせていたのだろうと推測したことでした。

シベリアの永久凍土の溶解によるメタンとCO2の放出に警告を発してきたジモフ氏は、大型の草食動物を導入して豊かなマンモス草原を作ることが、永久凍土を硬く凍らせて炭素を地中にとどめることにつながると思いついたのです。

そのことを検証するために、ジモフ氏と息子のニキータ氏はチェルスキーに近いツンドラの土地にフェンスで囲った「更新世パーク」を開設。シカ、バイソン、トナカイ、フタコブラクダなど大型の草食動物を200頭放牧しました。

 

更新世パーク  引用:ネイチャー日本版

 

 

 

 

 

 

 

更新世パークでは、他の地域に比べて永久凍土の温度が下がっていると二人が言っています。2021年11月8日のロイターによれば、ネイチャーが発行する「サイエンティフィック・リポーツ」誌に掲載された二人の共著の論文は・・・

「更新世パークに導入された動物により、平均的な積雪の深さは半分になり、地中温度は年間平均で1.9度低下した。冬と春には下げ幅がさらに大きくなる」と発表しています。(*積雪には保温効果があり、雪の下では摂氏0度より温度がさがらない)

永久凍土の北極圏の温度が上昇している中で、更新世パークは年間平均で1.9度低下していると言うことは驚異と言うべきでしょう。

 

更新世パークで実現したマンモス草原計画という手法は、地球規模のモデルで実現可能なのでしょうか? 論文では、更新世パークの動物の生育密度「1平方キロメートルあたり114個体」は北極圏全体の規模でも実現可能であるとしています。

「地球規模のモデルでは大型草食動物をツンドラ地帯に導入することで北極圏の永久凍土の37%で融解を防止できることが示唆されている」と結んでいます。

息子のニキータ氏は、地球温暖化に対して単一の解決策は存在しないと語っています。「こうした生態系が温暖化対策に役立つことを証明しようと努力している。でももちろん、私たちの取り組みだけで十分というわけではない」と。

 

マンモスを復活させてマンモス草原へ放牧する計画が秘かに進行中!

 

未来をみつめるセルゲイ・ジモフ氏
更新世パークの未来を見つめるセルゲイ・ジモフ氏    引用:ロイター

 

 

 

 

 

 

 

2021年9月13日、米ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏は、起業家ベン・ラム氏とともに「コロッサル」というスタートアップ企業を立ち上げました。目的は、永久凍土から出土したケナガマンモスのDNAを使って、寒冷地に強いアジア象との間にハイブリッド象を作り出すことでした。

チャーチ氏は、セルゲイ・ジモフ氏とナショナルジオグラフィック教会本部で開かれた世界初の「脱絶滅に関する会議」で出会い、更新世パークについて話し合います。二人はもしハイブリッド象が誕生したら更新世パークで何頭かを放牧するという約束をしたのです。(日経ネイチャー日本版より)

倫理上の問題、動物相への影響、北方先住民族への影響、など検討すべき事は山ほどあるとされていますが、ロシアによるウクライナへの侵攻が長期化する中、米・露の民間人主導による地球温暖化対策への壮大なロマンとして注目されます。

 

~地球ぐるみでの壮大なマンモスパークへの取り組みが始まるといいですね~

 

(おわり)

 

主な参考・引用資料

「永久凍土の溶解」イベルドローラ(多国籍電力公益企業)

https://www.iberdrola.com/sustainability/what-is-permafrost

 

地球環境研究センターニュース
https://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201811/335001.html

 

国連ニュース
https://news.un.org/en/story/2022/01/1110722

 

ユネスコの記者による特別インタビュー
セルゲイ・ジモフ氏

https://en.unesco.org/courier/2022-1/sergey-zimov-thawing-permafrost-direct-threat-climate

 

マンモス草原画像

マンモス草原の復活を目指す:更新世公園とは
https://pleistocenepark.ru/science/

 

日経 ネイチャー日本版より

マンモス復活計画が始動 気候変動対策の切り札?
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2167U0R20C21A9000000/

 

フォトログ:永久凍土融解を防げ、科学者父子の「氷河期」計画
ロイター編集

https://jp.reuters.com/article/climate-un-russia-permafrost-idJPKBN2HT0C3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球温暖化が止まらないときの最後の手段! 地球を人工的に冷却する“SRM計画”とは?

地球温暖化が止まらないときの最後の手段! 地球を人工的に冷却するSRM計画をあなたは知っていますか?

 

2022年夏、今年も熱波や山火事、干ばつなど地球温暖化が原因とされる異常気象が世界で観測されています。いま、私たち日本人が実感している暑さも、2018年の記録的猛暑を越えそうな勢いとか。世界の主要なCO2排出国は2030年に削減目標を達成して、地球の気候変動にストップをかけることができるのでしょうか?それともさらに暑い夏がやって来るのでしょうか?

 

人類起源による地球温暖化がどうしても止められなくなったとき、温暖化対策の最後の手段として考えられている方法があります。その方法とは、地球を冷却させるために人工的に気候介入を行う方法「SRM( Solar radiation modification )」です。SRMは太陽光の一部を宇宙に反射して、地球に届く太陽光を減らすことで地球の表面温度を下げようという試みです。

 

SF映画でしかお目にかかれそうにない大胆なテーマですが、米国では2017年に公聴会が開かれ、400万ドルの予算が付いて研究を進めています。一体どのようにして太陽光を反射するのでしょうか? 自然災害などが起こる心配はないのでしょうか? 

 

以下では、地球を人工的に冷やすSRMの仕組みや課題をわかりやすく解説して参ります。

 

微粒子エアロゾルを成層圏にばらまいて太陽光を反射

 

成層圏エアロゾル注入(SAI)の概念図
成層圏エアロゾル注入(SAI)の概念図 (東京大学ビジョン政策研究センター)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SRMの代表的方法は、地表の上空・成層圏に二酸化硫黄などの微粒子(エアロゾル)を撒いて太陽光の一部を遮り、地上に届く光の量を減らして地球の気温を下げてしまう成層圏エアロゾル注入法(SAI)です。安定した大気の層である成層圏、地表20kmに飛行機でエアロゾルを注入して太陽光を反射し、調整します。

 

これは、火山の噴火によって地球の気温が下がる現象を模倣した方法です。1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火したときエアロゾルが成層圏に滞留し、地球の平均気温が0.5℃下がったと報告されています。

 

ピナツボ火山の噴火クラスのSAIを起こすことができれば、人類起源による気温の上昇を0.5度ほど抑制することができるという計算です。この方法は地域を限定するなど、比較的実現可能な方法としてモデル化され研究が進められています。

 

世界の平均気温を下げるための主な気候介入としてもう一つの方法があります。大気中のCO2濃度を下げるために、直接、大気から二酸化炭素を除去してしまうという方法(CDR)です。CDRはSRMに比べて生態系への影響などリスクが少ないとされています。

 

※CDR (Carbon Dioxide Removal)︓⼤気中の⼆酸化炭素を除去し、地中・地上・海洋の貯留層や製品に持続的に貯蔵する⼈為的な活動

 

植物の光合成という仕組みではなく、化学的に大気から直接CO2を 除去する手段を開発している企業や団体があります。最大の課題は回収した二酸化炭素をどのように処理するかです。ある企業は二酸化炭素を加工して建築用の資材を作りだしています。ある企業は、二酸化炭素を食べる藻やバクテリアに処理させる方法に成功したとか。いずれにしても、CDRは、現在の技術では世界の平均気温を下げることができる規模の場合、とんでもないコストが掛かるとされています。

 

一方、SAIを実装するためのコストとテクノロジーは達成可能な範囲ではあるが、生態系への影響など危険性については、まだ十分に研究されていないと言うことです。

 

人工的気候介入(SAI)が地球の生態系に及ぼす影響は不明?

SAIを用いたSRMが気候に及ぼす影響・イメージ図(PNASより)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年2月に米国科学アカデミーの機関誌・PNAS(Proceedings of the National Academy of the Sciences of the United States of America)に掲載された論文:

「地球を冷やすために太陽光を反射させることによる気候介入の生態学的影響の可能性」によりますと・・・SAIを使った人工的気候介入が生態系に及ぼす影響についてはほとんど不明とされています。

 

SAIによる成層圏エアロゾルは紫外線を含む太陽光を宇宙へ反射して、地表の紫外線を減少させる一方、成層圏のオゾンを破壊して地表の紫外線を増加させる可能性もあります。一般的に紫外線は生物に有害で、植物は成長に影響を受けるとされているので、生態系へのリスクが懸念されます。

 

紫外線とオゾンに対するSAIの影響の程度は、成層圏のエアロゾルの量や分布の状態、エアロゾルの種類、大気との科学反応や、放射との相互作用に依存するとされています。結論としては、生態学者・エコロジストと、気候科学者の間で国際的なチームを組んでSAIの潜在的な影響やリスクを研究する必要があるということです。

 

将来にむけて

 

実は、21世紀の初めから2013年にかけて、温暖化が見られなかった「ハイエイタス」と呼ばれる時期があります。気候変動に関する政府間パネル・IPCCはこの原因を海洋の熱吸収が大きかったこと、太陽放射が減少したことに加えて「エアロゾルによる冷却化が大きかった可能性」も理由に挙げているそうです。地球冷却化計画・SAIの有効性が示されているのかもしれません。

 

一方、エアロゾルは大気汚染物質でもあり、人体や生物への悪影響が懸念されます。SAIによる人工的気候介入には不確実性が付きまとっています。一方、生態系への影響などリスクが不明のまま、単独国家が強行して実施に踏みきるといった危険性も指摘されています。SAIは国際的なガバナンスや同意が必要とされる手段として、最後の最後まで残しておいてほしいものです。

 

【参考資料】

PNAS:Proceedings of the National Academy of the Sciences of the United States of America

「地球を冷やすために太陽光を反射させることによる気候介入の生態学的影響の可能性」

Potential ecological impacts of climate intervention by reflecting sunlight to cool Earth | PNAS

 

技術で地球は変えられるか?~気候工学(ジオエンジニアリング)~

https://www.jstage.jst.go.jp/pub/pdfpreview/sicejl/56/5_56_366.jpg

 

人類は地球温暖化対策としてどこまで踏み切るべきか?(杉山昌広准教授)/コラム/東京大学政策ビジョン研究センター (u-tokyo.ac.jp)

 

国際環境経済研究所

「エアロゾル」による地球冷却効果
―地球温暖化の知られざる不確実性―

https://ieei.or.jp/2019/11/opinion191127/

 

ロシアのウクライナ侵攻で国際宇宙ステーションISSの中で米ロ紛争勃発?

国際協力のシンボルとして、米国や欧州・日本も含めた西側諸国とロシアとが共同で運用してきた国際宇宙ステーションISS! ロシアのウクライナ侵攻によって、米・欧とロシアの対立が深まる中、狭い宇宙ステーションISSの内部で各国の宇宙飛行士の関係はどのようなことになっているのでしょう。気になって、ウエブで調べてみました。

「ISSで米ロ紛糾」といった記事はどこにも見当たらないので、「紛糾なし」と思って安心したのですが、英文で調べますとSpaceNews誌の公式サイトに掲載された記事のショッキングな見出しが目に刺さりました。

「How Russia’s war with Ukraine jams NASA」

直訳しますと「ロシアとウクライナの戦争がNASAをいかに妨害しているか」ウイリアム・ビアンコ ーApril 14, 2022 

サブタイトルは「国際協力と国際宇宙ステーションの未来」です。ウイリアム・ビアンコ氏はインディアナ大学の政治学教授でNASAとの関係が深く、国際チームを率いてISSが各国の共同運営に至る過程を研究した人物です。以下では、ビアンコ氏の発言の要旨と、ISSの構造がどのようになっているのかを紹介します。

 

“国際協力こそ国際宇宙ステーションの存在の意義!”

国際宇宙ステーションISS構造(NASA公式)

 

 

 

 

 

 

 

1990年代の初頭、米国のNASAは、コストの上昇で中止の危機に瀕した宇宙ステーションISSを存続させるために、「ISS」をロシアで進行中の宇宙ステーション計画「ミール」と統合するという大胆な計画を立て、当時のクリントン政権に提案をしました。この提案は、ロシアとの(冷戦後の)緊密な関係の実証として、またミサイルや核兵器などの武器輸出のための技術開発とは異なる平和的な宇宙ハードウエア開発へロシアを向けさせるという点で、クリントン政権にとって魅力的な提案だったとしています。

一方、NASAで働くあるロシア人の話として「二つのプログラムをまとめる国際宇宙ステーション計画は政治的な決定によるもので、エンジニアの誰も望んでいません。技術者にとってはサイとブルドッグの合体でした」と、余り知られていない否定的な内容の発言を紹介しています。国際宇宙テーションISSは、共同運営による科学的メリットとしては余り役立たなかったが、資金を獲得し、国際協力という大義を手に入れたことではNASAにとってよい取引だったとビアンコ氏は解説しています。

NASAは、ISSを国際パートナーシップのモデルであり、米ロが対立を乗り越えた証であり、ライバル同士が平和的に協力することを学ぶためのガイドとして、長い間、その意義を強調してきました。NASAの写真には国籍の違う宇宙飛行士が仲良く一緒に生活し、仕事をしている様子が写されています。つまり、国際協力こそがISSの存在の意義であったとビアンコ氏は暗に言っているのです。

それでは、今回のロシアのウクライナ侵攻によって「サイとブルドッグの合体」したISSはどうなったのでしょうか?ビアンコ氏は、ロシアのウクライナとの戦争は、NASAにとってのISSの存在の危機を生み出したと言っています。

国際協力のシンボルとしてのISSの価値はロシアのウクライナ侵攻によるNATOとの対立で廃墟に!

「ロシアのウクライナ侵攻とNATOの対立が迫ったことで、国際協力の実証としての国際宇宙ステーションの価値は廃墟と化した」とビアンコ氏は言っています。西側の制裁が続けば、ロシアの宇宙産業がISSに宇宙飛行士を送り続けられるかは疑問であるとしています。

侵攻が始まった数週間後にロシアの国営宇宙公社ROSCOSMOSのトップ、ディミトリ・ロゴジン氏が「国際宇宙プロジェクトをキャンセルし、現在ISSを軌道に乗せているロシアの推進システムを切り離す」と脅したということです。「アメリカ企業へのロケットエンジンの提供を終了し、宇宙に行きたければ『代わりにほうきを使え』」と米国の顧客に忠告したことも記事に付け加えています。

さらに、ROSCOSMOSはロシアの宇宙飛行士が(ISS内のロシア側モジュールの)ハッチを閉じ、ISSのアメリカ側を切り離して、地上に落ちていくのを見ながらアメリカの同僚に別れを告げる様子を再現した合成ビデオも配布したとのことです。

実は、デイミトリ・ロゴジン氏は暴言で有名な政治家で、北方領土問題で「日本人は切腹せよ」と放言したこともあります。AP通信によれば、NASAのチーフであるビル・ネルソン氏は「大きな口を叩くが、彼は結局のところ私たちの仲間だ」と冷静なコメントを発しています。「ロシアの民間宇宙計画で働く他の人々は専門家だ。アメリカの宇宙飛行士、アメリカのミッションに問題はありません。宇宙では、ロシアの友人、ロシアの同僚と協力することができます」と。

2022年3月30日、NASAの宇宙飛行士マーク・ヴァンデ・ヘイは、2人のロシア宇宙飛行士と共に、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から、ロシアのソユーズ宇宙船のカプセルに乗ってISSに向かっています。

国際協力の一環として、ISS滞在クルーが交代するときには要員の国籍にかかわらずソユーズ宇宙船が運ぶことになっているのです。それでは、ISSに到着した後、各国のクルーはどのように分かれて生活をしているのでしょうか? 日本のJAXAのサイトを覗いてみました。

ISSの中での宇宙飛行士の生活や仕事の場所はどこ?

ISS内部には国境はありませんが、クルーは米国、欧州、ロシア、日本の実験モジュールに分かれて仕事をしています。日本の実験棟は「希望」です。米国は「デステニィー」、欧州は「コロンブス」、ロシアは「ナウカ」と「ズベズダ」です。

宇宙飛行士が生活する場所は、主に4つあります。ロシアが開発した「ズベズダ」サービスモジュールではロシアのクルーが寝泊まりや食事をしています。

その他の各国のクルーは米国の3つの結合モジュールで生活をしています。「ユニティ」は食事の場所、「ハーモニー」は睡眠などの個室、「トランクウィリティー」には運動器具やトイレが備えられています。

国別のクルー構成は。ロシアROSCOSMOS 3名。米NASA 4名。欧州ESA 1名、日本JAXA 0名。星出宇宙飛行士が2021年11月9日に帰還しており、次の日本人宇宙飛行士は2022年秋以降に若田宇宙飛行士が打ち上げ予定です。

各国の宇宙飛行士は、普段は別々の生活を送っていますが、特別なイベントや休日にはクルー全員が集まって仲良く食事をすることもあるとのことです。

 

おわりに

ロシアとアメリカの宇宙開発当局の責任者二人のやりとりは興味深いところですが、ビアンコ氏の結論は国際協力を失ったとき、ISSはその存在の意義を失うと警告しています。

宇宙開発という人類共通の夢を乗せた国際宇宙ステーションの存在が、新しい形の国際協力によって次のレベルに進化していくことを願うばかりです。

 

追記:2022年10月7日  ロシアの女性宇宙飛行士がアメリカ/日本の宇宙飛行士と仲良くISSに乗船!

宇宙船に乗り込む4人の宇宙飛行士
左端がロシア人宇宙飛行士(SPACE X/NASA)

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシア大統領府から“西側のウクライナ支援が続けば戦況次第では戦術核の使用もいとわない”という危険なシグナルが打ち上げられた2022年9月。ウクライナを巡る紛争は核戦争までを予感させるカオスな様相を呈しています。

 

そのような時・・・10月7日午前8時前(日本時間)日本の宇宙飛行士の岩田さん、アメリカの宇宙飛行士2名、さらにロシアの宇宙飛行士1名の計4名を乗せた宇宙船が国際宇宙ステーションISSとのドッキングに成功と言うニュースが入ってきました。

宇宙船はアメリカンのスペースX社が開発した民間機「クルードラゴン」5号で、ケネディー宇宙センターから打ち上げられました。宇宙飛行士は最年長でべテランの岩田さんの他にネイテイブアメリカンの女性を含むアメリカ人2名とロシア人1名です。

クルードラゴンに搭乗する前の記念撮影で4人のクルーは仲良く肩を組んでいます。ロシア人宇宙飛行士の名前はアンナ・ユリエフナ・キキナさん。2012年に宇宙飛行士に選ばれた女性のエンジニアです。現在ロスコスモスで活躍している只一人の女性宇宙飛行士で、ロシア人として始めてアメリカの民間宇宙船に搭乗しました。

ロスコスモスがISSからの脱退を示唆し、ISSの存在意義とされる国際協力体制が危惧されるなか、ロシアによるウクライナ侵攻以前からあった計画とは言え、ロシアの女性宇宙飛行士が米国の先住民の女性宇宙飛行士や日本の宇宙飛行士とともにアメリカの宇宙船で仲良くISSに運ばれたニュースは、深い暗闇の中の一筋の灯火といえるのではないでしょうか。

 

【参照記事】

論説|ロシアのウクライナとの戦争がNASAを妨害する方法

ウィリアム・ビアンコ — April 14, 2022

https://spacenews.com/op-ed-how-russias-war-with-ukraine-jams-nasa/?msclkid=db04aea8c78311ec9d9094e1eab1b475

 

ISSの構成

ISSの構成 | JAXA 有人宇宙技術部門

 

緊急報告!オーストラリアが燃えている!原因は地球温暖化と政策の誤りとの指摘も!

2019年7月に始まったオーストラリアの森林火災は全土の沿岸地域に拡がり、2020年に入っても沈静化の兆しがみえず、各地で被害が拡大しています。

AP通信によれば、ニューサウスウエールズを始め被害の多い東部の三州だけでも380棟以上の民家が焼け落ち、死者は全国で23人、焼失面積は東京都の20倍にあたる5万2千平方キロメートルと、2019年1年間のアマゾンの火災規模を越えています。

 

オーストラリアの森林火災
(米・テレビメデイア)

 

 

 

 

 

 

 

被害に遭い住居からの避難を余儀なくされた住民からは、消防や救助活動の対応の遅れを非難する声が上がり、火災に逃げ惑うコアラの姿が世界に衝撃を与えています。

森林火災の原因は地球の温暖化と政府の政策の誤りだという指摘も・・。

 

広域・国境を越える自然災害

 

つぎのマップの黄色い炎は豪州で火災が起こっている地域を示しています。(米テレビメデイア)

豪州全土にわたって沿岸部で森林火災が拡がっている様子がみてとれます。

 

オーストラリアの森林火災地域 ( 米・メデイア発NHK/BS)

 

北東部の観光地、ポートダグラスから珊瑚礁のケアンズ、ブリスベーン、オリンピックの行われたニューサウスウエールズ州のシドニーといった日本人観光客に人気の地域や都市でも森林火災が町のすぐ側にまで迫っている様子です。

シドニーのオペラハウスの空は濃い煙霧に覆われています。

 

南東部の沿岸地域では、1月2日数万人の観光客に対して避難勧告が出されました。(AP通信)

またこれらの都市部では煙害のためにマスクをして外出する市民の姿がテレビに写されています。

 

火災による大気の汚染は海を越えて拡がりつつあります。

豪南部からの煙がニュージーランドまで流れている(スペインメデイアより)

 

 

 

 

 

 

 

写真は豪州の上空から撮影された衛星写真です。

オーストラリアの南東部から上空に上がった茶色い煙が、タスマン海を南東に流れてニュージーランドの上空にまで達しています。

 

ニュージーランドのツイッター投稿は・・

「ここクライストチャーチでも焦げ臭い」

「純白のはずのフランツジョセフ氷河が茶色になりました」

「太陽が金色です」

当局は、市民からの緊急通報が殺到したので「オーストラリアの森林火災の影響ですので緊急通報をしないように」とツイートしています。

自然災害には国境はないのですね。

 

消防隊の活躍と逃げ場を失うコアラ

 

今回の火災は森林だけでなく、今まで拡がったことのない農地や牧場にも及んでいます。

手入れの行き届いた農地や牧場は火のまわりが遅く、火災にはなりにくいのです。

 

ところが今回の火災では、小さな田舎町で住まいにまで火が燃え移って危険な状態になり、全住民が避難をしているところもあります。

オーストラリアでは2019年は干ばつ(不作)の年で、植物や牧草がからからに乾いたところに強い風と高温が続いたことが、森林や農地や牧場にいたるまでの大火災につながったとされています。

 

オーストラリアと米国のカリフォルニアは大規模森林火災が頻発する二大地域ですが、南半球と北半球で火災のシーズンが異なるために、お互いに消防隊が交換プログラムを組んで消火活動を助け合ってきました。

ところが、今回は気候が変動して両地域の火災の時期が長くなって重なってしまったために、消防士と消防機材の交換プログラムがうまく機能しなくなったということです。(WIREDより)

「オーストラリアは上空からの消火能力が十分ではありません」という豪州気象協議会の責任者の発言があります。

航空機による消火活動の協力をアメリカを始め、他国に求めています。

 

1月と2月は、オーストラリアでは森林火災の本格的シーズンです。

これから夏(2月が盛夏)を迎えるオーストラリアは、国の総力を挙げて自然災害の危機に立ち向かうことになります。

 

必死で作業する消防隊
(NHK BSより)

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリアの消防隊は多くの市民がボランテイアとして参加してできあがっています。

この森林火災で、ボランティアの消防士がひとり作業中に亡くなったという訃報があります。

 

また、森林火災は各地でコアラを始めカンガルーやワラビーや森林に生息する豪州固有の動物を襲いました。

 

火災から逃げるコアラ
(NHKBS)

 

 

 

 

 

 

 

写真は燃える森林から逃げ出して、舗装道路を走るコアラの姿を捕らえています。

コアラは普段は樹上で生活していますが、危険が迫れば時速20キロまでは短距離走が可能です。

 

火に取り囲まれたコアラ
(NHK BS)

 

 

 

 

 

 

 

ニューサウスウエールズ州の森林はコアラの生息地として有名で、1万5千頭から2万8千頭のコアラが生息しているとされていました。

今回の火災で「コアラの30%が命を失った可能性がある」と連邦政府のスーザン・レイ環境大臣が発表したことを受け、市民の間ではコアラの生存環境の消滅や悪化、ストレスによる絶滅まで懸念されています。

 

コアラに酸素呼吸 (米・テレビメデイア)

 

 

 

 

 

 

 

ポートマッコリー地区にあるコアラ病院には傷ついたコアラが次々と運び込まれてきます。

コアラ病院C・フラナガン獣医 (NHK・BS)

 

 

 

 

 

 

 

コアラ病院はコアラの治療と保護を専門とする世界初の病院です。

病院のC・フラナガン獣医はコアラを手当てしながら「これは自然が怒っているのです」と発言しています。(NHK/BSより)

 

自然が怒っている

 

シドニー大学の生態学者は、この大火災でこれまでに約4億8千万頭もの哺乳類、鳥類、は虫類が死んだと推定できると報告しています。

 

・・ケアンズの山側、自然遺産の熱帯雨林は大丈夫でしょうか?

自然観察ツアーで人気の“もふもふのもこもこ”のコアラや小型のカンガルーのワラビー君や人の食料(タンパク源)になるおしりの赤いアリ(食べると舌を刺されます)は元気でしょうか?

 

ワラビーに水を飲ませる救助隊 (NHK・BS)

 

 

 

 

 

 

 

大自然の宝庫、タスマニア島には火災は飛び火していないのでしょうか?

おしりの可愛いウオンバットや怖そうな顔のタスマニアンデビルや頭とおしりがおんなじ形の奇妙な動物?(なんという名前でしたっけ?)

みんな元気にしているでしょうか?

 

・・アマゾンやカリフォルニア、オーストラリアでここ数年間毎年のようにおこる大規模な森林火災は地球温暖化が主な原因だと科学者達がいっています。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は「地球温暖化の原因」が、人間の産業活動に伴って化石燃料などから排出された温室効果ガスである確率は「90%を超える」といっています。

 

地球温暖化の主犯は人間です。

獣医のフラナガンさんの発言「自然が怒っている」は、「自然が人間に怒っている」と聞こえてきました。

 

オーストラリアは自然に恵まれています。

石炭、石油、天然ガス、ウラン等の天然資源に大変恵まれていて、 安価な国産エネルギーが簡単に手に入るのです。

 

そのため、オーストラリアではエネルギー多消費型産業が発達して、エネルギーの大半を石炭を中心とした化石燃料による発電に大きく依存しています。

昨年の夏(2019年1~2月)の森林火災のときも、温暖化による異常気象への影響を重く見たOECD(経済協力開発機構)が豪州の政府に対して、政策の変更と積極的な環境対策を求めていました。

 

しかし今回はさらに大規模な森林火災が発生し、収まる気配がありません。

豪州やカナダや米国でも地球温暖化への対策は、現実の産業構造との利害や、複雑な政治の思惑が絡むとなかなか一筋縄では進まないのです。

 

・・日本も原発の事故以来、化石燃料主体のエネルギー政策から離れられない点では、豪州と同じです。

2019年12月、スペイン・マドリードで開かれたCOP25で各国が温室効果ガスの削減目標を宣言する中、我が国の所轄大臣の釈明に近い発言はテレビで見ていて恥ずかしくなりました。

 

釈明する日本の担当大臣
NHKBS
不名誉な表彰を受ける日本政府高官 NHKBS

 

 

 

 

 

 

 

日本でも温暖化の影響で台風による水害が拡大しています。

台風はコースを変え、大型化しています。

 

オーストラリアの森林火災はよそ事ではありません。

脱・化石燃料は緊急の課題です。

 

「自然は私達人間に本気で怒っている!」のです。

 

(おわり)

 

追記 2020年・オーストラリアの自然災害は続いています。

大雨と洪水

2020年2月14日  ニューサウスウエールズ州の消防当局は「すべての火災を封じ込めた」と宣言しました。

東部のニューサウスウエールズ州はオーストラリアの森林火災でもっとも大きな被害を受けた州です。

封じ込めに成功した主な理由は1990年以来の大雨が降り、山火事の鎮火を助けてくれたのです。

各地で洪水も発生しましたが、森林火災には待ちに待った恵みの雨となりました。

COVID-19

豪モリソン首相は、2020年3月20日午後21時以降にオーストラリアに来るすべての渡航者に対して入国を禁止しました。

世界でパンデミックを引き起こしている新型コロナウイルス(COVID-19)対策です。

当分の間、観光ビザ保持者もオーストラリアには入国ができませんので、要注意です。

3月29日 すべての豪州人に対して買い物、通勤、通学を除いて、自宅待機を要請し、厳しい規制が始まっています。

店舗で女性同士のトイレットペーパーの奪い合いの動画が日本にも中継されて話題を呼んでいますが、楽しい話題を英ガーディアンが報じています。

豪地元のタブロイド紙「ノーザン・テリトリー・ニュース」が読者サービスをしました。

新聞紙面の途中で白紙のページが8枚出現。このページを切り取ってトイレットペーパーとしてお使いくださいというユーモア溢れる心使いでした。

・・

夏から秋に向かう南半球のオーストラリアにも新型コロナウイルスが伝搬しています。

新型ウイルスは暑さにも強いのでしょうか?

 

COVID-19に対しては、地球温暖化と同じように地球規模での協力と対策が求められています。

 

世界の科学者チームが宣言!地球気候変動の危機と今すぐ実行すべき6つの政策!

2019年11月6日、科学者が連名で「地球の気候は危機的状況にある」と題した警告を発しました。

論文を書いたのはアメリカ、オーストラリア、南アフリカの自然環境の研究員の人達です。

 

研究チームはこの危機を乗り越えるために直ちに実行すべき政策を6つあげています。

そして、日本を含む世界の153カ国、1万1000人を越える科学者がこれに賛同の署名をしました。

 

その中に私達生活者に深く関係する対策が二つ含まれています。

「地球の人口を減らすこと」「食習慣をあらためること」です。

 

これまでタブー視されてきた“人口のコントロール”というテーマを地球温暖化の対策として科学者が賛同を表明したことが世界に波紋を呼んでいます。

また肉食を中心とした食習慣にメスを入れるべきだという声明も肉好きな人々や畜産業界からの強い反発が予想されます。

 

宣言の視点として論文は冒頭でつぎのように述べています。

科学者は人類に壊滅的な脅威があることを明確に警告し、事実を“あるがままに伝えるという道徳的義務を負っている”と。

 

原題:World Scientists’ Warning of a Climate Emergency 

オックスフォード大学出版“BioScience”より

地球気候変動の危機を乗り越えるために、いますぐ実行すべき6つの政策

 

論文では、第一回世界気候会議を開いた1979年のジュネーブ宣言から、2019年に至るまでの40年間、温室効果ガスの排出量は急速に増加して、地球はいまや危機的状態に陥っていることをデータとグラフを活用して明快に示しています。

その原因は、森林伐採の増加、エネルギー消費量の増加、二酸化炭素排出量の増加、世界人口の増加、家畜の反すうによる二酸化炭素排出量の増加など・・。

とくに気になるのは、気候変動が不可逆的な気候転換点を越えてしまって、自然の力によるフィードバックが効かなくなり、人間のコントロールをはるかに超えた壊滅的な“ホットハウスアース”状態につながることだと言っています。

・・ホットハウスアースとは灼熱の温室と化していく地球を表現する言葉です。

 

レポートは、持続可能な未来を確保するために私達の生き方を変えなければならないと強調した上で、いますぐに実行すべき6つの政策を提言しています。

以下に6つの施策をできるだけ原文に忠実に報告します。

 

1.エネルギーを化石燃料から、再生可能な、安全でクリーンなエネルギーにする

 

ガス、石炭や石油など化石燃料の残りの在庫を地中に残し、再生可能なエネルギーにシフトする。

化石燃料を使うときは、ソースからの炭素抽出、空気からのCO2の捕獲などを実行する。

 

化石燃料の補助金(対エネルギー企業2018年4000億米ドル超)を速やかに廃止し、化石燃料の使用を抑制する政策を実行する。

・・宣言はさらに“裕福な国々は化石燃料から移行するべき貧しい国々を支援する必要がある”と国の利害を超えた異常気象への取り組みを訴えています。

 

2.メタン、ブラックカーボン(すす)など短命の気候汚染物質の排出を抑える

 

このような短命の気候汚染物質の排出量を速やかに削減する。

これによって気候フィードバックが安定して、今後10年間で短期的な温暖化現象が50%以上減少する可能性がある。

 

・・宣言は“大気汚染の減少によって何百万人もの命を救い、作物の収穫量を増加させることが期待できる”としています。

 

3.地球の自然と生態系を守り復元させる

 

植物プランクトン、サンゴ礁、森林、サバンナ、草原、湿地帯、泥炭地、土壌、マングローブ、海藻などは大気中のCO2を取り込んで、隔離してくれる。

海洋や陸上の動植物、微生物は炭素や栄養の循環と貯蔵に重要な役割を果たしている。

 

(・・2019 年にはアマゾンや北米、オーストラリアの森林が、大規模火災によって失われています。大規模な森林火災は今後も続くだろうというのが専門家の予想です)

宣言は“生物の生息地を保護し、復元することがパリ協定の排出削減の目標(2度未満)を達成することになる”と強調しています。

 

4. 温室効果ガスを排出する家畜を減らすため野菜が主体の食事にする/食品ロスをなくす

 

温室効果ガスを排出する牛、ヒツジ、ヤギといった家畜を減らすために、野菜が主体の食事に変えることが必要。

宣言は、育てるのに大量の植物飼料を必要とする家畜を減らすためにも、又人間の健康のためにも植物性食料を直接食べることが効果的であるといっています。

・・国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2019年の8月に発表した報告は、温室効果ガスの総排出量の37%が人間の食料システムによるものだとしています。

また、牛、ヒツジ、家禽類(主にニワトリ)の生産は温室効果ガスの総排出量の18%を占めるという専門機関の記事があります。

 

IPCCは、仮に世界が英国式の食事スタイルとなって、おなじ量の肉を食べたとしたら必要となる農地は地球上の居住可能な土地の95%に達するといっています。

また世界が米国の食生活を取り入れたら、世界の土地の178%を農地にしなければならなくなると警告しているのです。

・・これは表現を変えれば、“地球が二つ必要だ”という話になります。

 

また、宣言はIPCCの報告を取り上げて食品ロスをなくそうといっています。

・・IPCCの報告によると、現在生産された食料のうち25~30%が食品ロス(食べられるのに捨てられた食品)または廃棄とされています。

これによる温室効果ガス排出は、全体の8~10%という驚くべき量です。

 

ロスの量と原因は先進国と発展途上国によってずいぶん異なるのでしょうが、収穫技術、保存、インフラ、輸送、パッケージ、小売り、教育などを改善することでロスを減らすことが可能だとIPCCは断言しています。

 

5. 我々の目標をGDPの成長と豊かさの追求から、生態系の維持とカーボンフリーな経済活動にシフトすること

 

持続可能な地球環境のために、私達は目標と価値を見直して、生態系の維持と、化石燃料に依存した経済活動から直ちに脱却すべきだという提言です。

宣言文は科学者の世界連合として、国の政策立案者や企業や民間セクターや国民の意志決定者を支援する準備はいつでもできていると言っています。

 

6. 世界の人口を安定させ、できれば減少させる

 

現在、世界で年間約8000万人、1日あたり20万人以上の人口が増加している。

社会的・経済的な正義を保証しながら、世界の人口を安定させ、理想的には緩やかに減少させる必要がある。

 

つまり、人権を守りながら出生率を低下させ、人口増加が温室効果ガスの排出量や生物多様性の損失に及ぼす影響を軽減することが可能な政策がある。

「それは地球のすべての人々に家族計画のサービスを提供し、またすべての若い女性のためにグローバル基準の教育を提供することだ」

 

・・宣言では、人口増が気候変動の要因であり、人口の抑制が気候変動の安定をもたらすと明言しています。

 さらに世界人口を抑制する最良の方法は、避妊手段の普及(貧困に対しては無料サービス)と女性教育であると訴えています。

 

これは「地球環境と生物多様性を守るためには、人口の増加を抑制することが必要不可欠である」という事実を科学者達が世界に宣言した初めてのケースではないかと思われます。

私達日本人には疎遠なことかもしれませんが宗教上の理由や、貧困や国策、そのほか様々の理由で「人口の抑制やコントロール」は公に声を上げにくいテーマなのかもしれません。

アフリカではニジェールの女性の出生率は世界一高くて、2010年の世界銀行の推計で1人の女性が生涯に産む子供の数が平均で7を越えています。

 

国連人口基金の推定では、2億人以上の女性が貧困などのために家族計画の手段を手に入れることができない。その結果が7000万件以上の望まない妊娠と人口増だと多くの専門家は指摘しています。

国連が示した最新の予測では、現在77億の世界人口は今世紀半ばを過ぎても増え続けて、2100年までに110億人に達するとしています。

 

地域別に見ますと、アフリカでは2019年の10億6600万人から2100年には4倍に近い38億人に増えるという予測です。

世界人口の増加33億の80%がアフリカで起こるということです。

 

世界の協力がなければ、アフリカは極度の貧困と食料不足という難題を抱え続けることになりそうです。

そしてそのことが世界に及ぼす影響は私達の想像をはるかに超えるものになりそうです。

 

結論

 

この論文は前置きで「科学者は人類に壊滅的な脅威があることを明確に警告し、事実を“あるがままに伝えるという道徳的義務を負っている”と記しています。

そして、153カ国の科学者11000名を越える世界の科学者が賛同の署名をしました。

 

気候変動には国境がありません。

対策についても、国の壁を越え、ボーダーレスな取り組みを、あらゆるレベルで始めないことにはこの危機は乗り越えられないと科学者連合は宣言しました。

 

私たち人類にはもう逃げ場がなさそうです。

文明崩壊の危機が少しでも遠のくように、できることから始めましょう!

 

なんといっても地球は一つしかないのですから・・!

 

(おわり)

 

論文原題:World Scientists’ Warning of a Climate Emergency 

(オックスフォード大学出版“BioScience”)

論文の主な執筆者

○ウィリアム・J・リップル&クリストファー・ウルフ

オレゴン州立大学コルヴァリスの森林生態系社会学部に所属。

○トーマス・M・ニューサム

オーストラリア シドニー大学生命環境科学部に所属。

○フィービー・バーナード

オレゴン州コルヴァリスにある保全生物学研究所

南アフリカのケープタウンにあるケープタウン大学のアフリカ気候開発イニシアチブに所属

 

日本からも東京大学の山本良一先生、兵庫県立大学の土居秀幸先生、広島大学の吉田有紀先生、日本大学の犬丸瑞枝先生など複数の研究者が署名に加わっています。

 

【記事は無断転載を禁じられています】

 

 

「ワケあって僕たち間もなく絶滅します」ライオン・トラ・象・キリン・ゴリラはいま地球に何頭いますか?

いま、多くの野生動物が絶滅の危機に瀕しています。

世界自然保護基金WWFによれば野生動物の数は1970年以降、推計で6割近くが減少したという報告です。

 

その原因は生息域の浸食、狩猟と取引、環境汚染や地球温暖化による気候変動など人間の経済活動によるものとみられています。

人間のせいで、子供たちの大好きな野生動物の多くが、近い将来地球から姿を消してしまうかもしれません。

 

野生のライオンやトラや象やキリンやゴリラは、いまどのくらいの個体数が地球に生息しているのでしょう?

数億頭でしょうか、数千万頭でしょうか、それともわずか数十万頭でしょうか?

 

なんだか心配になってきて、いろいろなレポートから最新の状況を調べてみました。

 

ライオン 絶滅危惧種

 

ライオンの雄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界のライオンの生息個体数は数万頭と推定されています。

野生動物の王者といわれるライオンは、IUCN (国際自然保護連合)の絶滅の恐れのある動物リスト(レッドリスト)において、絶滅危惧種に指定されています。

 

ライオンはアフリカとインドに棲息していますが、その頭数は調査が困難で、推定も異なります。

インドでは野生のライオンは二カ所の森林でしか目にすることがなく、その頭数はわずか320頭と言われています。

 

アフリカにおけるライオンの野生個体数は、2002~2004年の時点で16,500~47,000頭という推定数字があります。

1950年には10万~40万頭が棲息していたとされていますから、わずか50年で15%にまで激減したということになります。

 

野生のライオンが激減した主な理由は、ライオンの生息地が人間の手で浸食されてライオンの餌が少なくなっただけではなくて、腹を減らしたライオンが家畜を襲い、人間によって殺されるという悪循環があげられています。

また人間の生活圏に迷い込んだライオンが車や列車にひかれたり、銃で打たれたりする事故が増えていることも理由として指摘されています。

 

最新の情報ではインドライオンの最後の生息地である「ギル野生生物保護区」の個体数が600頭以上に回復したという朗報がありますが、一方西アフリカ11カ国のライオンはわずか250頭になったという衝撃的な調査報告もあります。

 

世界の動物園にはアフリカ産が1,000頭、亜種であるインドライオンが100頭いるとされています。

ライオンは動物園でしか見られないときが近づいているのかもしれません

 

トラ 絶滅危惧種

 

トラの親子

 

 

 

 

 

 

 

トラの生息数はわずか3890頭です。

世界自然保護基金(WWF)が2016年4月13日に発表した調査報告によりますと、主にインド、ロシア、ネパールでの保護活動が実を結んで2010年に3200頭だった世界の野生のトラの個体数が3890頭に増えたと伝えています。

 

3890頭という詳細な数字が報告されたのは、生物多様性保全の権威である国際自然保護連合(IUCN)の委嘱調査だったからです。

世界のトラの2/3が棲息するインドでは、1706頭から2226頭に増えたトラのおかげで保護区の観光事業が成功モデルにされたという朗報もあります。

 

しかしわずか3890頭では依然として絶滅危惧種であることになんら変わりはないのです。

 

象  準絶滅危惧種

 

ゾウの親子

 

 

 

 

 

 

 

陸棲では最大の動物である象の生息数はどのくらいでしょうか?

1995年調査による推定では世界全体で93~108万頭とされています。

 

現在の推定ではアフリカ象が45万頭、アジア象が5万頭。

合わせて50万頭と推定されています。

 

アフリカ象

1930年ごろ、アフリカ大陸にはおよそ500~1,000万頭のアフリカゾウが生息していました。

しかし2013年現在はその10%以下、およそ45万頭しか残っていません。

 

密猟が危機的なペースで増えていて、アフリカゾウの出生率よりも密猟率のほうが高くなってしまっていることが原因とされています。

現在、アフリカ大陸では年間を通して約1割のアフリカゾウが密猟の犠牲になっているのです。

 

ある報告では、アフリカにおける密漁で殺された象の割合について、監視地域でみつかった象の死体の50%以上が密漁によるものであったとされました。

“このままのペースで密猟が続けば、今後10~20年の間にアフリカゾウが絶滅してしまうのではないか”と危惧されています。(NPO「アフリカ象の涙」より)

 

アジヤ象

2000年の推定では3万5000頭から5万頭の生息数です。

20世紀初頭、アジヤ各地にはおそらく10万頭の象が棲息していましたが、それ以降半滅したと考えられています。

ナショナルジオグラフィック”絶滅”号は、アジヤ象も象牙や肉、皮を目当てにして、また農作物を荒らす報復としていまも人間に殺されていると報告しています。

 

ゾウの真の脅威は密漁であり、人間なのです。

 

キリン 絶滅危惧種(危急種)

 

2頭のキリン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリンの棲息数は推定で9万8000頭です。

最近まで、キリンがアフリカのサハラ砂漠より南の地域で絶滅に向かっていることが認識されていませんでした。

 

IUCNの2016年発表によりますと、生息地のアフリカではこの30年間でキリンが4割近く減少し、現在の生息数は9万8000頭とされました。

1700年代には100万頭以上いたキリンが、2016年に絶滅危惧種の中の「危急種(絶滅の危機が増大している種)」に仲間入りをしてしまいました。

 

2019年9月発行のNATIONAL GEOGRAPHIC 「絶滅」号によりますと、人間の構築物であるフェンスや道路による棲息域の分断、森林の伐採、内戦、密漁がキリンを脅かしていると言っています。

 

象やシロサイなどの減少に注目が集まる中で、「キリン保全団体」(GCF)はキリンの現状を”静かなる絶滅”と呼んでいます。

キリンは声を発することがまずありません。

 

人間の耳に聞こえる方法では仲間と意志の疎通を行わないのです。

象のように低周波音を出しているという考えもありますがまだ実証はされていません。

 

声を発しないキリンの現状はまさに「静かなる絶滅」といえるかもしれません。

 

ゴリラ 

 

ニシローランドゴリラ 近絶滅種

マウンテンゴリラに比べて少し小型のニシロ-ランドゴリラの生息数は15万頭から25万頭といわれています。

36万頭を越えるという別の調査報告もありますが、カメルーンや中央アフリカ、赤道ギニア、コンゴ、などの熱帯雨林に棲息するニシローランドゴリラは絶滅の危機に晒されているのです。

 

人間の行う森林伐採が彼らにとって二重の脅威となっています。

生息地が破壊されるだけでなく、労働者が肉を食べるために捕獲するというケースも報告されているのです。

 

ニシローランドゴリラは IUCNのレッドリストによる危機の評価は近絶滅種です。

マウンテンゴリラに比べれば個体数が多いのは事実ですが、正確な生息数を推定することは困難とされています。

 

マウンテンゴリラ  絶滅危惧種

 

マウンテンゴリラ
リーダーの威嚇
(ナショナルジオグラフィック)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マウンテンゴリラの推定個体数はWWFの最近の発表によれば880頭です。

2010年に推定されていた781頭より増加した朗報としていますが、880頭という寂しい数字は「絶望的」としか表現ができません。

 

マウンテンゴリラはローランドゴリラよりも体毛が長く、腕が短いが体格は少し大きめです。

480頭がコンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園に生息し、400頭がウガンダのブウィンディ国立公園に生息しています。

 

この二つの国立公園以外には世界のどこにも生息していないのです。

ヴィルンガ国立公園では密猟者や反政府武装勢力からゴリラを守るレンジャー隊が活躍しています。

 

またブウィンディ国立公園ではウガンダの野生生物局が国際ゴリラ保護プラグラムを組んで保護活動を進めています。

今回わずかでも個体数の増加が見られるのは保護活動のおかげとされていますが、国立公園の開発を進める計画や、密漁の危険から安全になったわけではありません。

 

人間の社会に例えれば、880という個体数は小さな集落の一つにしか過ぎないのですからね。

いつ消え去っても不思議ではない個体数なのです。

 

最後に

 

キタシロサイ最後のオス
スーダン

 

 

 

 

 

 

 

2018年3月20日、ケニアのオルベジェタ自然保護区でキタシロサイの最後のオス「スーダン」がなくなりました。

一つの種の生命が消えたとき、残されたのは二頭の孫娘とスーダンの精子だけです。

 

人工授精の計画があるので希望が消え去ったわけではありません。

しかし一つの種の継続のためには若い300の個体数が必要という学説があります。

 

キタシロサイという生命の輝きは、おそらく二度と帰ってこないのです。

地球がゾウやサイなど野生の生命の輝きを失うとき、その原因を作った人類はどうなるのでしょう?

 

ナショジオ”絶滅”号はスーダンの死をつぎのように伝えています。

サイは何百万年も続く複雑な生態系の一部であり、その存続は人類の存続と密接にかかわっている。野生動物がいなくなれば、私達は想像力を失い、感嘆する心を失い、輝かしい未来を手放すことになる。自分を自然の一部と見れば自然保護が自分自身を守ることだと理解できる。

スーダンがそれを教えてくれた。

 

(おわり)

 

関連記事をお読みください。

ワケあって僕たちまもなく絶滅します②」チンパンジー、チーター、カバ、ホッキョクグマ、パンダはいま地球に何頭いますか?

クイズ!地球の哺乳類を4つに分類「人類、野生の哺乳類、ペット、家畜」個体数の多い順番は?

 

【記事は無断転載を禁じられています】

 

クイズ!地球の哺乳類を4つに分類「人類、野生の哺乳類、ペット、家畜」個体数の多い順番は?

いきなりクイズです。

地球上の哺乳類「生まれてからしばらくは母親からの授乳で成長する動物」をつぎの4つに分類してみました。

  1. 私たち「人類」
  2. 虎やライオン、猿など「野生の哺乳類」
  3. 犬と猫を合わせた「ペット」
  4. 牛、豚、羊などの「家畜」

個体数の多いのはどれでしょうか?

多い順番に並べ替えてください。

 

友人の自営業30代男性に質問したら答えは・・1位 野生の哺乳類 2位 家畜 3位 人類 4位 ペット でした。

あなたの答えはいかがでしょうか?

 

じつは、正しい答えは“不明”なのです。

人類、家畜、ペットについては信頼できるデータが存在しますが、自然の中で棲息する野生の哺乳類は固体数を確実に捕捉する調査が困難で、科学者や関係者は“unknown ”(不明)と言わざるをえないのです。

 

特に個体数が不明な哺乳動物はネズミ種とコウモリとリスです。

野原や地下や暗闇に隠れて棲息するネズミや、大自然の山奥や断崖絶壁の洞窟に巣くうコウモリや、樹上で動き回るリスの個体数は科学者によれば“unknown”になります。

 

しかし、私のような素人が研究発表されたいろいろな記事から大胆に推定することは自由です。

人類以上の大量棲息が推定される野生のネズミは個体数がunknown(根拠のある調査資料が発見できませんでした)につき、とりあえず引き出しにしまいました。

 

また、うさぎについては推定7億とされています。(後述)

大変大きな数字ですが、小型の哺乳類であることと、野生のうさぎと家畜やペットとしてのうさぎとの区分が不明であることから、今回の調査からは対象外としました。

 

・・ということで、一部の小型哺乳類の存在には目をつぶって、比較的大型の地球上の哺乳類の個体数を大胆推定してみました。

 

地球の哺乳類の数 1位は人類、2位は家畜、3位はペット、4位は野生の哺乳類

地球上の哺乳類の個体数

 

 

 

 

 

 

上の円グラフをご覧ください。

大胆推定の結果、 地球上の哺乳類の個体数は人類が72億で全体の半分以上を占めて1位です。

 

2位が家畜哺乳類の50億で全体の36%を占め、3位がペットの15億で10%でした。

人類と、人類の飼育している家畜と、人類の飼っているペットを合わせると地球上の哺乳類140億の中137億5000万となり、全体の98.2%を占めています。

 

98.2%の残りはわずか1.8%です。

野生の動物はいったいどこへ行ったのでしょうか?

 

ある資料からヒントを手に入れて、大胆に推定した結果は野生哺乳類にとって残酷なものでした。

地球上に棲息している野生の哺乳動物は、すべての種を合わせても、わずか2億5000万頭しか生存していないという寂しい結論になってしまったのです。

 

これが大胆推定の結果です。

1位 人類 72.7億
2位 家畜 50億
3位 ペット 15億
4位 野生動物 2億5000万

 

計算の根拠となった統計の出所をご説明します。

人類の総人口、家畜の個体数はFAOの統計(2014年統計。2017年修正)からデータを取りました。

FAOは国際連合食糧農業機関で、データの数字は信頼がおけます。また、家畜の個体数には、犬と猫は食料ではないので、含まれておりません。

ペットの個体数はworldatlas.comのデータ(後述)から犬と猫の総数を合算しました。

 

問題は野生の哺乳類の個体総数をどのようにして推定するかでした。

大胆推定の論拠となったのは一つの記事でした。

 

2018年8月1日付けのWEF(ワールドエコノミックフォーラム)が発表したグローバルアジェンダ(行動計画)の一節からヒントを手に入れて野生哺乳類の個体数を推定しましたので、その原文を紹介します。

記事は名門大学の生物学者と生態学者を対象にした非公式な調査によって明らかになったこととしています。

 

長文ですが、WEFのアジェンダを原文のまま引用します。

地球史に人類が登場した時点から今日まで、地球の総生物量は半減しています。これは、農地や放牧地を作るために人間が森林破壊を行ってきたことに大きく起因しています。

こうした数字は、これまでに人類がどれほど多くの生物体を絶滅に追いやったかという事実・・(略)・・を新たに気付かせるものでした。過去数世紀にわたり、野生哺乳類の総数は何倍にも減少。今日の家畜哺乳類の総数は野生哺乳類の20倍です。娘と一緒に遊んだジグソーパズルには、ゾウとサイの隣にキリンが描かれていましたが、地球の野生生物の総数からはひどくかけ離れたイメージです。もし、現在の生物量を踏まえてこのイメージを考え直さなければならないのなら、そこには牛が描かれ、その隣に牛、またその隣に牛、そして豚、という何ら面白みもない絵柄であるべきだということになります。

 

ということで野生の哺乳類の頭数は“家畜50億×1/20=2.5億としました。

(注:文面から、ここで言う野生哺乳類にはネズミや野生のうさぎ、コウモリなどの個体数を補足できない小型哺乳動物は含まれていないと推定されます)

 

できあがった大胆推定の結果が指し示すものはグラフを一目見れば明らかでした。

人類の子供たちの友達であるべき野生の哺乳類は、人類に追いやられていまやレッドゾーンの状態だということです。

 

もう少しイメージを明確にするために、哺乳類の種類別の個体数を調べてみました。

 

地球上の哺乳類で個体数の多い種類ベスト10を調べてみた!

 

はたしてライオンや虎、象など子供たちの大好きな動物はベスト10に姿を現してくれるでしょうか?

worldatlas.comが2019年の3月に修正・発表した哺乳類の個体数の記事がみつかりましたので、個体数の多い順番に10位まで並べてみました。

  1. 人類   76億
  2. 牛    15億
  3. 羊    11億
  4. 豚    10億
  5. 犬      9億
  6. 山羊   8.6億
  7. うさぎ  7.1億
  8. ねこ    6億
  9. 水牛   1.7 億
  10. 馬    0.6億

worldatlas.comより)

哺乳類種類別個体数順位

 

 

 

 

 

 

 

棒グラフにしてみると人類が飛び抜けて個体数が多くて、野生動物は10位には顔を見せてくれません。

人類のつぎには牛や豚の家畜と犬や猫のペットが並んでいます。

 

うさぎが7位で個体総数も7億と多いのですが、先述のように補足しにくい小型の哺乳類であることと、野生のうさぎか、家畜やペットのうさぎかの区分がつきにくいことから、今回の調査の対象外としました。

(FAO出典の50億の家畜の中、うさぎは家畜として扱われず、数に含まれておりません)

 

水牛が9位にいますが、水牛も野生なのか家畜なのか区分が不明です。

リスとコウモリとネズミ類(mice,rat)は生息数不明となっています。

 

ということで・・

地球の哺乳類マップは、人類と人類の飼っている家畜と愛するペットたちで満員になってしまいました。

寂しい結論ですが、これが人類がもたらした地球の現実なのです。

 

まとめ

 

いま地球に生きている比較的大型の哺乳類の数は、人類と家畜とペットで98%を占めています。

ライオンやサイなど野生の哺乳類はいったいどのくらい生き残っているのでしょう。

 

“生物の多様性”はすでに失われたのでしょうか?

人類が地球の自然に大規模な変化をもたらしてきたことを指し示して、現代の地質年代は「人新生」と呼ばれています。

 

地球を我が物顔で独占している人類の世紀「人新生」は、次の世紀に何を残すのでしょう。

多様性の失われた自然界は人類の生存を許してくれるのでしょうか?

 

勝手な人類のおかげで、哺乳類全体のわずか2%に減少した野生の動物のことがとても心配になります。

次号では、子供たちの大好きな哺乳動物をピックアップして最新の棲息状況と頭数を調べることにしました。

(続く)

 

続きはここからどうぞお読みください。

「ワケあって僕たち間もなく絶滅します」ライオン・トラ・象・キリン・ゴリラはいま地球に何頭いますか?

 

ワケあって僕たちまもなく絶滅します②」チンパンジー、チーター、カバ、ホッキョクグマ、パンダはいま地球に何頭いますか?

追記1:バイオマスで見た哺乳類の総量

 

 

 

 

 

 

出典:地球上のバイオマス分布

https://www.pnas.org/content/115/25/6506

 

このグラフは地球上の哺乳類を個体数ではなく、重量でみた分布図です。

イスラエルのワイツマン科学研究所が2018年5月に地球上の生命体のバイオマス(重量:炭素量)を推計して発表したデータを基に編集しました。

先述のワールドエコノミックフォーラム(WEF)への寄稿もこの研究グループによるものです。

哺乳類の1位は家畜で、バイオマスは0.1GtC(ギガトン炭素)です。2位は人類で0.06GtC。野生の哺乳類は0.007GtCとなっています。

家畜が人類のバイオマスより多い理由の一つは、家畜が人間を大きく越えた重量を持つ牛と豚で主に構成されていることによるものと推定されます。

理由の二つ目は、ペットの犬や猫が家畜化された哺乳類として家畜に含まれていることが考えられます。

 

また、野生の哺乳類のバイオマスにはネズミ類などの小型の動物も含まれていると推測されます。

野生の哺乳類のバイオマス構成率は4.4%と、先述の個体数の推定値1.8%より増えていますが、家畜の総量は野生の哺乳類の14倍もあります。

バイオマスの比較でみても、野生の哺乳類が危機的な状況であることに何ら変わりがありません。哺乳類のバイオマスは人類と家畜が支配しているのです。

レポートによれば家畜家禽(鶏)のバイオマスも野鳥の総量の約3倍と推定しています。野鳥の生態系がどうなっているのか気がかりです。

 

追記2:日本の哺乳類とネズミの個体数

 

世界におけるネズミの個体数のデータは不明ですが、我が国のデータがありました。

相当古いですが、平成13年4月に行われた我が国の第2回生物多様性国家戦略懇談会に提出された推定資料を紹介します。

 

データのタイトルは「日本全国における各種哺乳類の推定個体数」です。

推定個体数は1位がアカネズミ、僅差で2位がヒトどんと離れて3位に野ウサギという結果です。

日本では野生のネズミであるアカネズミが個体数推定においてヒトを少し上回っていました。

ただし、アカネズミの体重は0.04kgなのでヒトの体重を70kgとして換算しますと、推定現存量(体重換算)ではヒトの0.05%程度になります。

 

いろいろな種類の野生のネズミが世界中に棲息しています。

さらに人類の生活圏で暮らす推定不可の数の家ネズミがいます。

 

地球規模でみてネズミが一番個体数が多い可能性を否定できません。

地球の哺乳類の個体数マップはネズミとヒトでほとんど満杯というひどいことになっているのかもしれませんね。

 

【記事は無断転載を禁じられています】

地球温暖化が止まらない! 世界で熱波・山火事・洪水が頻発!異常気象が通常に?

 

2019年も異常気象による自然災害発生のニュースが世界から飛び込んできます。

私と同じマンションに住むご夫婦の話では、次女の娘さんがパリの国際機関に勤めていて、もうパリでは暑くて仕事ができないと、悲鳴の電話があったそうです。

 

熱波、山火事、洪水などの災害は1月には南米や南半球の各地で、6~7月にはヨーロッパや北半球の方々で発生して、地元に大きな被害をもたらしています。

ある科学情報誌は、このような異常気象をそのうち私達は異常とは感じず、新たな“普通”と感じるだろうと警告しています。

 

そういえば、自然災害のニュースはもはや例年のことで、異常を異常と感じなくなってしまいそうです。

この記事では、2019年の世界の異常気象や自然災害のニュースをピックアップして、地球温暖化との関連を専門家の意見をもとに紹介いたします。

 

2019年1月に熱波がオーストラリアとアルジェンチンを襲った。

 

最高気温46℃を記録したアデレード

 

 

 

 

 

 

 

 

南半球では、今年の1月から2月は記録を塗り替える暑い夏になりました。

 

オーストラリアの南に位置するアデレードでは、1月24日に46.6℃という観測史上最高の気温が記録されています。

オーストラリア史上もっとも暑い1月だったと、オーストラリア気象庁が発表しました。

 

この気温は日本では経験したことのないものです。

日本気象協会によれば、我が国の最高気温の記録は、2018年7月23日埼玉県熊谷市で観測された41.1℃です。

 

40度を超えると人は熱疲労を感じて、41℃を越えると身体に障害が出る危険性があります。

アデレードの記録はこの危険な気温を5℃以上も上回っていたのです。

 

CNNの国際報道によれば・・1月のオーストラリアは、すべての州で気温が上がり続け、長引く干ばつと猛烈な熱波で道路は溶けて、インフラはやられ、衛生当局は全土に警報を出して日中の外出をしないように注意をしていました。

 

野生の馬が大量死・CNN

 

 

 

 

 

 

ニューサウスウエールズ州のダーリング川の魚は大量死して川面に溢れ、北部では数十頭の野生の馬が涸れた水飲み場の近くで死骸となってみつかっています。

またタスマニアン・デビルなど珍しい野生生物で有名な南部のタスマニア州では、山火事が相次いで、森林の4万ヘクタール以上を焼失して、生態系への被害が拡大しています。

 

生活インフラでは、ビクトリア州や南部の州で暑さ対策としてのエアコンや扇風機による電力消費の負荷で、発電施設の能力が限界を超えて、停電が頻発しました。

熱波の中をエアコンなしで耐えていた数十万世帯の人達がいたのです。

 

そのような中、OECD「経済協力開発機構」が豪州の政府に対して、豪州の特有の生物多様性を守り、異常に高い化石燃料への依存を減らすように、政策の変更を求めたとCNNが報じていました。

調べてみましたら、オーストラリアは、石炭、石油、天然ガス、ウラン等の天然資源に大変恵まれていて、 安価な国産エネルギーが簡単に手に入るのです。

 

そのため、オーストラリアではエネルギー多消費型産業が発達して、エネルギーの大半を石炭を中心とした化石燃料発電に大きく依存しています。

温暖化による異常気象への影響を重く見たOECDは、政策の変更と、積極的な環境対策を豪州に求めたのです。

 

日本経済新聞、2019年8月21日の記事によれば「オーストラリアでも化石燃料への依存を減らし、温暖化ガス排出削減を加速する方向で動き出していたが、温暖化対策に消極的な陣営が総選挙で有利になるなど、揺り戻しが起きている」と報じられています。

 

豪州やカナダや米国でも地球温暖化や環境対策といった課題は、現実の産業構造との利害や政治が絡むと、なかなか一筋縄では進まないのです。

 

南米では熱波で牛とニワトリが大量死

 

南米でも2019年の1月は猛暑による被害の報告が続きました。

 

ブラジルのリオデジャネイロでは1月の平均気温が37度を超えています。

ブラジルの国立気象研究所は、気温の記録が始まった1922年以来もっとも暑い夏だと報告しています。

 

ウルグアイではニワトリが暑さのために大量死した報道が続きました。

アルゼンチンの首都ブェノスアイレスでは気温が過去最高の45℃に達して、搬送の途中で牛やニワトリが熱波で死んでいると報道されています。

 

南米の暑い夏はそのあと3月まで続いたのです

 

2019年6月7月は地球の北半球で異常気象

 

2019年 6月7月も世界は異常気象(東京新聞)

 

 

 

 

 

 

 

 

この異常気象マップは、世界気象機関WMOが2019年7月12日に分析・発表した世界の異常気象を東京新聞が翌日の夕刊で、地図上にまとめたものです。

WMOは1950年にジュネーブに設立された国連の専門機関です。

 

WMOによれば・・2019年6月以降、ロシア、シベリアなどの北極圏が記録的な高温となり、山火事が多発しました。

一方で米国やバングラデシュでは洪水となるなど世界各地で異常気象が相次いでいる、と発表しています。

 

また欧州やインドも厳しい熱波に襲われていて、この原因をWMOは“地球温暖化による高温や降水パターンの変化が山火事の増加や夏の長期化をもたらしている”と分析しています。

 

WMOによれば、地中海から北極圏までの広い地域が異例の高温と乾燥状態になっています。

シベリアでは6月の平均気温が1981年から2010年の平均より10℃も高くなりました。

 

米国アラスカ州では観測が始まってから2番目に暑い6月となり、夏も涼しいはずのアラスカで7月4日には32℃を記録しています。

ヨーロッパ全部が熱波に襲われて、6月は観測史上もっとも暑い6月となったことを気象衛星のデータが示していました。

 

フランスではご存じの通り、6月28日にフランスの観測史上最高の45.9℃と、想像を絶する暑さを経験しています。

スペインでは高温で山火事が発生して、懸命の消火活動にもかかわらず、数千ヘクタールの土地が焼け野原になってしまいました。

 

・・・

南半球のオーストラリアのアデレードでは1月に最高気温の46.6℃を経験し、北半球のフランスでは6月に最高気温の45.9℃を経験しています。

2019年は、世界の都市を熱波が襲い、経験したことのない最高気温に記録が塗り替えられたのです。

 

アマゾンの山火事が止まらない! 地球温暖化に拍車?

 

アマゾン熱帯雨林の火災
NHK/BS 2019/8/27

 

 

 

 

 

 

 

2019年のアマゾンでは、森林火災が方々で発生していて、9月に入っても沈静化する気配がありません。

8月27日のNHK/BSの朝の報道では、火災は記録的なペースで増え続けていて、ブラジルの国立宇宙研究所によれば1月から8月末までに8万3000件をこえ、去年の二倍になっています。

 

アマゾンの熱帯雨林の面積は世界最大で、南米の9つの国と地域の670万平方キロメーターに広がっています。

つぎのMAPは宇宙からアマゾンを撮影したNASAの航空写真をベースに、ナショナルジオグラフィック誌が描いたアマゾンの火災の状況です。

 

NASAの航空写真から描いたアマゾンの火災の地域(ナショナルジオグラフィック)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地図を拡大して見てください。

赤い点が火災が発生している地区です。

ブラジルだけでなくて、ボリビア、ペルー、アルジェンチンでもアマゾンの森林火災が発生しているのです。

 

NHKによれば、アマゾンは地球の酸素の20%を生み出すことから”地球の肺”と呼ばれています。(注)

アマゾンの火災による熱帯雨林の焼失は、地球の温暖化を加速させるとして、世界中からブラジルの政策を非難する声や、早期の対応を求める声が上がっています。

 

アマゾンの火災は人災だといわれているのです。

新しいブラジルの大統領は経済のために「森林の焼き畑を推奨している」という非難が、国内や海外から起こっています。

 

「大統領が僕らの未来を燃やしている!」抗議する少年(NHK)

 

 

 

 

 

 

 

大統領は急遽空軍を出動させて消火活動に当たらせましたが沈静化する気配はありません。

アマゾンの乾期はこれから12月まで続きます。

 

地球温暖化への懸念はもちろん、アマゾンで暮らす原住民の人たちや、多様な野生動物のことも大変心配になります。

 

人類への警鐘! アイスランドで地球温暖化の影響で消えた初めての氷河の跡に記念碑が建てられた!

 

アイスランドの消えた氷河の記念碑の上で、地球温暖化に警鐘を鳴らす人たち(NHK/WEB)

 

 

 

 

 

 

 

2019年8月19日のNHK・BSの朝の国際報道番組がアイスランドの消えた氷河の記念式典のニュースを流していました。

 

アイスランド西部の「オクオヨット」の氷河はかつて16平方キロメートルの大きさがありました。

それが現在は1平方キロメートルになってしまいました。

 

気象当局は2014年に地球温暖化によってはじめて消滅した氷河だと宣言しました。

そして、2019年8月18日に記念の式典が開かれ、アイスランドの首相や国内外の研究者数百人が集まって、銅でできた記念碑を、氷河のあった場所の岩に埋め込んだのです。

 

記念碑のタイトルは「未来への手紙」です。

プレートには未来の人々に当てたメッセージが刻まれています。

 

今後200年ですべての氷河がおなじ運命をたどると予想される。

この記念碑は私たちが何をなすべきかを認識するためのもので、それがなされたかはあなたたちだけが知ることになる。.

 

地元のメデイアによりますと、科学者たちは、アイスランドでは毎年110億トンもの氷が溶けていて、このままだと2200年までにアイスランドにある400あまりの氷河がすべて消滅すると警鐘を鳴らしているのです。

 

氷河の消滅は地球の海面の上昇を招き、生活圏としての沿岸地域の消滅を意味します。

世界の異常気象は、地球から人類に送られた「地球温暖化対策・待ったなし」の“警鐘”なのかもしれません。

 

(おわり)

 

【注】ナショナルジオグラフィック誌による異論(オックスフォード大学環境変動研究所マルヒ氏の計算)を紹介します。

 

“アマゾンが地球の酸素の20%を作りだしているという話は正確ではない”

アマゾンは陸上で生産される酸素のうち約16%を作り出している。

 

海洋の植物プランクトンが生産する酸素を計算に入れると数値は9%になる。

さらに付け加えれば、木は酸素の生産者であるだけでなく消費者でもある。

 

日中に蓄えた糖をエネルギーに変換する細胞呼吸の過程で酸素を使用する。

夜間は、木は昼間に生産する酸素の半分強を呼吸で消費している。

 

・・・あれあれ! 残りは3%ちょっとになってしまいました。

じつは、植物の一生における炭酸ガスと酸素の差し引きは ゼロなのです。

このテーマ、いつかまた植物の真実を探って報告しますね。

 

 “地球は大丈夫?”シリーズ記事をご覧ください。

ミニ氷河期到来?地球は温暖化じゃないの?そのうえホットハウス・アースって何者よ!

あと100年で地上から昆虫が消える!生態系の危機で人類の生存にも影響?

 

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