いま、多くの野生動物が絶滅の危機に瀕しています。
世界自然保護基金WWFによれば野生動物の数は1970年以降、推計で6割近くが減少したという報告です。
その原因は生息域の浸食、狩猟と取引、環境汚染や地球温暖化による気候変動など人間の経済活動によるものとみられています。
人間のせいで、子供たちの大好きな野生動物の多くが、近い将来地球から姿を消してしまうかもしれません。
野生のライオンやトラや象やキリンやゴリラは、いまどのくらいの個体数が地球に生息しているのでしょう?
数億頭でしょうか、数千万頭でしょうか、それともわずか数十万頭でしょうか?
なんだか心配になってきて、いろいろなレポートから最新の状況を調べてみました。
目次
ライオン 絶滅危惧種
世界のライオンの生息個体数は数万頭と推定されています。
野生動物の王者といわれるライオンは、IUCN (国際自然保護連合)の絶滅の恐れのある動物リスト(レッドリスト)において、絶滅危惧種に指定されています。
ライオンはアフリカとインドに棲息していますが、その頭数は調査が困難で、推定も異なります。
インドでは野生のライオンは二カ所の森林でしか目にすることがなく、その頭数はわずか320頭と言われています。
アフリカにおけるライオンの野生個体数は、2002~2004年の時点で16,500~47,000頭という推定数字があります。
1950年には10万~40万頭が棲息していたとされていますから、わずか50年で15%にまで激減したということになります。
野生のライオンが激減した主な理由は、ライオンの生息地が人間の手で浸食されてライオンの餌が少なくなっただけではなくて、腹を減らしたライオンが家畜を襲い、人間によって殺されるという悪循環があげられています。
また人間の生活圏に迷い込んだライオンが車や列車にひかれたり、銃で打たれたりする事故が増えていることも理由として指摘されています。
最新の情報ではインドライオンの最後の生息地である「ギル野生生物保護区」の個体数が600頭以上に回復したという朗報がありますが、一方西アフリカ11カ国のライオンはわずか250頭になったという衝撃的な調査報告もあります。
世界の動物園にはアフリカ産が1,000頭、亜種であるインドライオンが100頭いるとされています。
ライオンは動物園でしか見られないときが近づいているのかもしれません。
トラ 絶滅危惧種
トラの生息数はわずか3890頭です。
世界自然保護基金(WWF)が2016年4月13日に発表した調査報告によりますと、主にインド、ロシア、ネパールでの保護活動が実を結んで2010年に3200頭だった世界の野生のトラの個体数が3890頭に増えたと伝えています。
3890頭という詳細な数字が報告されたのは、生物多様性保全の権威である国際自然保護連合(IUCN)の委嘱調査だったからです。
世界のトラの2/3が棲息するインドでは、1706頭から2226頭に増えたトラのおかげで保護区の観光事業が成功モデルにされたという朗報もあります。
しかしわずか3890頭では依然として絶滅危惧種であることになんら変わりはないのです。
象 準絶滅危惧種
陸棲では最大の動物である象の生息数はどのくらいでしょうか?
1995年調査による推定では世界全体で93~108万頭とされています。
現在の推定ではアフリカ象が45万頭、アジア象が5万頭。
合わせて50万頭と推定されています。
アフリカ象
1930年ごろ、アフリカ大陸にはおよそ500~1,000万頭のアフリカゾウが生息していました。
しかし2013年現在はその10%以下、およそ45万頭しか残っていません。
密猟が危機的なペースで増えていて、アフリカゾウの出生率よりも密猟率のほうが高くなってしまっていることが原因とされています。
現在、アフリカ大陸では年間を通して約1割のアフリカゾウが密猟の犠牲になっているのです。
ある報告では、アフリカにおける密漁で殺された象の割合について、監視地域でみつかった象の死体の50%以上が密漁によるものであったとされました。
“このままのペースで密猟が続けば、今後10~20年の間にアフリカゾウが絶滅してしまうのではないか”と危惧されています。(NPO「アフリカ象の涙」より)
アジヤ象
2000年の推定では3万5000頭から5万頭の生息数です。
20世紀初頭、アジヤ各地にはおそらく10万頭の象が棲息していましたが、それ以降半滅したと考えられています。
ナショナルジオグラフィック”絶滅”号は、アジヤ象も象牙や肉、皮を目当てにして、また農作物を荒らす報復としていまも人間に殺されていると報告しています。
ゾウの真の脅威は密漁であり、人間なのです。
キリン 絶滅危惧種(危急種)
キリンの棲息数は推定で9万8000頭です。
最近まで、キリンがアフリカのサハラ砂漠より南の地域で絶滅に向かっていることが認識されていませんでした。
IUCNの2016年発表によりますと、生息地のアフリカではこの30年間でキリンが4割近く減少し、現在の生息数は9万8000頭とされました。
1700年代には100万頭以上いたキリンが、2016年に絶滅危惧種の中の「危急種(絶滅の危機が増大している種)」に仲間入りをしてしまいました。
2019年9月発行のNATIONAL GEOGRAPHIC 「絶滅」号によりますと、人間の構築物であるフェンスや道路による棲息域の分断、森林の伐採、内戦、密漁がキリンを脅かしていると言っています。
象やシロサイなどの減少に注目が集まる中で、「キリン保全団体」(GCF)はキリンの現状を”静かなる絶滅”と呼んでいます。
キリンは声を発することがまずありません。
人間の耳に聞こえる方法では仲間と意志の疎通を行わないのです。
象のように低周波音を出しているという考えもありますがまだ実証はされていません。
声を発しないキリンの現状はまさに「静かなる絶滅」といえるかもしれません。
ゴリラ
ニシローランドゴリラ 近絶滅種
マウンテンゴリラに比べて少し小型のニシロ-ランドゴリラの生息数は15万頭から25万頭といわれています。
36万頭を越えるという別の調査報告もありますが、カメルーンや中央アフリカ、赤道ギニア、コンゴ、などの熱帯雨林に棲息するニシローランドゴリラは絶滅の危機に晒されているのです。
人間の行う森林伐採が彼らにとって二重の脅威となっています。
生息地が破壊されるだけでなく、労働者が肉を食べるために捕獲するというケースも報告されているのです。
ニシローランドゴリラは IUCNのレッドリストによる危機の評価は近絶滅種です。
マウンテンゴリラに比べれば個体数が多いのは事実ですが、正確な生息数を推定することは困難とされています。
マウンテンゴリラ 絶滅危惧種
マウンテンゴリラの推定個体数はWWFの最近の発表によれば880頭です。
2010年に推定されていた781頭より増加した朗報としていますが、880頭という寂しい数字は「絶望的」としか表現ができません。
マウンテンゴリラはローランドゴリラよりも体毛が長く、腕が短いが体格は少し大きめです。
480頭がコンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園に生息し、400頭がウガンダのブウィンディ国立公園に生息しています。
この二つの国立公園以外には世界のどこにも生息していないのです。
ヴィルンガ国立公園では密猟者や反政府武装勢力からゴリラを守るレンジャー隊が活躍しています。
またブウィンディ国立公園ではウガンダの野生生物局が国際ゴリラ保護プラグラムを組んで保護活動を進めています。
今回わずかでも個体数の増加が見られるのは保護活動のおかげとされていますが、国立公園の開発を進める計画や、密漁の危険から安全になったわけではありません。
人間の社会に例えれば、880という個体数は小さな集落の一つにしか過ぎないのですからね。
いつ消え去っても不思議ではない個体数なのです。
最後に
2018年3月20日、ケニアのオルベジェタ自然保護区でキタシロサイの最後のオス「スーダン」がなくなりました。
一つの種の生命が消えたとき、残されたのは二頭の孫娘とスーダンの精子だけです。
人工授精の計画があるので希望が消え去ったわけではありません。
しかし一つの種の継続のためには若い300の個体数が必要という学説があります。
キタシロサイという生命の輝きは、おそらく二度と帰ってこないのです。
地球がゾウやサイなど野生の生命の輝きを失うとき、その原因を作った人類はどうなるのでしょう?
ナショジオ”絶滅”号はスーダンの死をつぎのように伝えています。
サイは何百万年も続く複雑な生態系の一部であり、その存続は人類の存続と密接にかかわっている。野生動物がいなくなれば、私達は想像力を失い、感嘆する心を失い、輝かしい未来を手放すことになる。自分を自然の一部と見れば自然保護が自分自身を守ることだと理解できる。
スーダンがそれを教えてくれた。
(おわり)
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下條 俊隆
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