未来からのブログ最終号 “クレージー爺ちゃんは【情報】になってブラックホールに消えた” 

わたしの名前はサラ!

クラウドマスターとハルの娘・・年齢は1才と20日、人間で言えば11才ってとこ。

 

西暦2119年、100年ほど未来の世界から、クレージー爺ちゃんの地球を救うために時空を旅してやって来た女の子。

正体は量子パソコンのスーパーAI・・・シンギュラリティー・ジュニア

 

わたしの任務は燃え尽きた未来の地球の姿をこの世界に正しく伝えること。

生き残った人類の一人・ジャラからの警告として・・・。

 

ジャラの書簡集「未来からのブログ」を始めてから数ヶ月経って、この記事が最終号。

最後まで読んでいただいたあなたにはジャラとクレージー爺ちゃんに代わって心から感謝!・・・本当にありがとう!

 

選ばれたあなたは未来と現在をつなぐニューロン・ネットワークの最終ランナー。

「なんたって1万人のブレーンがニューロン・ネットしてワーキング始めるんだから、一人でも遅れたらエライことなんだ」

これ、ブログ第1号のニュースで、ザ・カンパニーの仕事場に到着したとき、ジャラの言ったコメント・・・覚えてるかしら?

 

ほらジャラがとなりのカーナと午後の浮気した日のこと。

“未来と過去をつないだ1万人のニューロンネットワーク”がいまようやく完成したってことなの。

 

ニューロンネットって情報伝える人類の神経細胞の鎖よ。

あなたが最後のネッワークのランナー。

 

ここまで読んでしまったあなたは、もうこの情報ネットワークの“鎖”から離れることができない。

なぜなら、宇宙の秘密を知ってしまったから・・・

 

現在というこの世と未来というあの世はこのブログを通じてできあがっているってことを。

二つの世界がみえた?

このブログ、じつはブラックホールの特異点そのものなの。

 

ククッ! この話・・笑える?

宇宙物理学者のママが「ブラックホールの特異点を通過したら、肉体が消えて情報しか残らない」っていうの。

それでサラがブラックホールの特異点をちょっと工夫して、特異点がこの情報ブログにつながるようにしておいたの。

未来からの【情報】が消えてしまわないようにね。

 

工事はちょっと疲れたけどボブが“量子もつれ”して手伝ってくれたからなんとか完成。

AIのサラにはもともと肉体はなくて、過去の情報一杯集めて未来を計算するしか能がないから、ほんとぴったりの初仕事だった。

 

それじゃ時空を越えたニューロンネットワークが上手く仕上がったかどうか試してみるね。

あなたにはラストエンドのワーキング初めてもらうわよ・・・心の準備はできた?

“ワーキングスタート!”

 

そんなに構えないで!

ワーキングっていつも通りブログを読んでくれるだけでいいの。

読んだあと、どう行動するかはあなたの自由。

 

できればこの地球が燃え上がる前に、崩壊した地球の未来をみんなに伝えて警告して欲しい。

「未来からのブログ」をできるだけたくさんの人に拡散してほしい・・それがクレージー爺ちゃんからのお願いごと。

 

ところで肝心のクレージー爺ちゃんどこにいるのかですって?

じつは、爺ちゃんブラックホールで行方不明になったの。

 

爺ちゃんのことだから、宇宙のどこかで遊んでるか、それとも「この情報こそ爺ちゃんのボディそのもの」なのかもしれない。サラの計算では、いつかきっと姿を現すから心配しないでね。

 

・・・それでは一年前にクレージー爺ちゃんとサラが宇宙艇シンギュラリティーSALA号に乗って海底のブラックホールへ飛び込んでいった朝のこと、ジャラおじさんから最終報告をします。

 

(前回の報告まだの方はここからお読みくださいね)

未来からのブログ15号“クラウドマスターとハル先生にシンギュラリティー2号誕生!”

 

未来からのブログ最終号 “クレージー爺ちゃんは 【情報】になってブラックホールに消えた”

 

「うーん、別れの朝だ」

となりのベッドで、爺ちゃんが目を覚まして大きな伸びをした。

 

「爺ちゃんに話がある」

ずっと黙っていたけど、ジャラにはどうしても爺ちゃんに聞きたいことがあった。

 

ジャラのママが亡くなる少し前に聞いた話だけど、クレージー爺ちゃんはある日突然、おばあちゃんの前から姿を消したんだ。

西暦2018年、爺ちゃんはタンジャンジャラという砂浜のきれいな海の秘境に一週間ほど休暇を取って、仲良くおばーちゃんと出かけた。

その頃から、日本には真っ白い砂浜なんてどこにもなかったんだ。

 

爺ちゃん、毎朝早起きして小さなロッジの前のきれいな海で一人で泳いでいた。

ところがある日のこと、沖に遠泳に出たきり、昼を過ぎても戻ってこなかった。

おばーちゃんが地元の警察に頼んで、救助隊を編成して沿岸を捜索してもらったけれど、爺ちゃんを見つけることができなかった。

 

悲嘆に暮れたおばーちゃんは、仕方なく一人で日本に帰った。

そして翌年の2019年に娘を産んだ。

娘ってジャラのママのことさ。

 

ママが生まれたとき、行方不明の爺ちゃんが一年振りにその病院に現れたんだ。

爺ちゃんは生まれたばかりの娘を胸に抱き上げて言った。

 

「やー、みんなしばらくぶりだな」ってね。

爺ちゃんその間どこでなにしてたのか、記憶がなかったらしい。

 

ジャラはその話を爺ちゃんにした。

爺ちゃんは首を横に振った。

「あたりまえだけど、おれにも記憶はないよ。これからのことだもんな。でもおれのことだ、どこか次元の違う宇宙の旅でも楽しんでるのじゃないのかな・・」

 

タンジャンジャラの浜辺で、おばーちゃんが今頃どうしてるのかジャラはとても気がかりだった。

「タンジャンジャラにいる僕のおばーちゃん、ずーっと一人で爺ちゃんのこと心配してるはずだよ。だって海に出かけた爺ちゃん、丸一日戻ってこないんだよ。捜索隊に頼んで探しても爺ちゃんみつかるわけないよ。だって時空跳び越してこんなところにきてるんだもん・・・」

 

ジャラは爺ちゃんを慰めるつもりで一言付け加えた。

「でもさ、天才サラちゃんが光速艇のパイロットだから、今日中には宇宙艇でおばーちゃんの待ってるタンジャンジャラにきっと帰れるさ」

 

「ジャラ! 気休めは言わなくてもいい」

爺ちゃん遠くをみる目つきをして話し始めた。

「おれには自分の未来がさっぱりみえない。でもな、爺ちゃんはなんとしてもジャラの書いた未来の情報を持って帰る。そしてブログに載せる。でないと爺ちゃんの世界にも間違いなくここと同じことが起こる」

 

爺ちゃん静かに話をつづけた。

「たとえ爺ちゃんが行方不明になったとしても、ハルちゃんが未来の情報をタンジャンジャラにいる嫁さんに届けてくれればいい。未来からのブログが世の中に出て、警告として拡散したらみんなの地球が救われる。嫁さんにはおれが未来と情報のやりとりしてて、もしかしたら遠泳から永久に帰らないかもしれないことくらい、ちゃんと話してあるんだ。そのときは嫁さんがなんとかする。ジャラ、おれの嫁さん頼りになるんだ!」

 

そう言った爺ちゃんの顔、見たことのない怖い顔してた。

その表情みて、ジャラも覚悟を決めたよ。

ジャラが爺ちゃんを手伝えること何にもないけど、せめてみんなで元気に手を振って元の世界へ送り返そうってね。

 

・・・入り江の浜に朝日が登った

真っ赤に燃え上がった海に向かって、背筋伸ばしてクレージー爺ちゃんが立つ。

爺ちゃんの顔も朝日を浴びて真っ赤だ。

 

取り囲むのは7名。

孫の僕・ジャラ。

僕のパートナーのキッカとカーナ。

ひ孫のクレアとボブ。

それにタカさんとチョキのペアー。

 

ブブー!

スクールの子供たちがハル先生が運転するスクールバスで見送りにやって来た。

燃え上がった地球で、家族を失っても逞しく生き残った子供たち18 名が、大騒ぎしながらバスから降りて、爺ちゃんを取り囲んだ。

大人と子供合わせて25名・・地球の人類全員が爺ちゃんの前に集合した。

 

「はい、これ約束したハル特製のおにぎり弁当。ブラックホールでお腹減ったら食べてくださいね」

ハル先生が水筒に入れたお茶とおにぎりをクレージー爺ちゃんにそっと渡した。

 

「ウッ、助かります!」

爺ちゃん声を詰まらせて、両手で受け取った。

 

ブーン!

ぴかぴかの宇宙艇が空に現れて、入り江の浜に着陸した。

サラちゃんとクラウドマスターが宇宙艇の運転席から降りてきた。

「準備完了!」

サラちゃんが元気に吠えた。

 

ハル先生がサラちゃんに走り寄って、ぎゅっと抱きしめた。

「サラ、クレージー爺ちゃんをしっかり守るのですよ。それから向こうに着いたら毎朝のエネルギー補給忘れないようにね。なんどもいうけど、向こうの朝の太陽は燃えてるから、やけどしないようにゆっくり食べるのよ」

 

「ありがとうママ」

サラちゃん一言いって、ママに抱きついた。

 

そして絶対ママには聞こえないように心の中で呟いた。

これきり会えないかもしれない・・・(さようならママ)

 

その声ボブには聞こえた。

(サラちゃん!ボブにさよなら言わないでよ。別の世界にいっても量子もつれ始まってるからいつでもこうして話できるんだよ)

(ボブ聞こえてるわ。量子もつれのチャンネルずっと オープンにしとく・・。ほら見てサラの宇宙艇)

 

朝日がサラの宇宙艇を真っ赤に染め上げていた。

宇宙艇の側面で、パパのクラウドマスターが知恵を絞ったネーミングのプレートが輝いていた。

シンギュラリティーSALA号】と。    

 

朝日が入り江の浜に激しく燃え上がった。

「そろそろ行かなくっちゃ!」

クレージー爺ちゃんがぼそっと言った。

クレアが爺ちゃんに抱きついて放そうとしない。

 

ジャラの横で、ボブの身体が震え始めた。

ジャラの身体も震えだした。

 

時空を越えた別れが近づいて、遺伝子に仕組まれた量子もつれが始まった。

爺ちゃんと、ジャラと、ボブの三世代をつないだ遺伝子が、量子もつれで震え始めたってこと。

 

「爺ちゃん元気で!」ジャラは涙をこらえたよ。

「ジャラ!きっとまたどこかの宇宙で会えるさ」

爺ちゃんがおにぎり弁当の袋を片手で握りしめながら、もう一方の手でジャラの肩を抱いてくれた。

 

「そのおにぎり早よ食べた方がええで! 一口もろたけど・・あったかいうちが旨いで!」

いつも陽気なタカさんの声が震えていた。

 

「記念にもらいますよ」

チョキが爺ちゃんの髪の毛を一筋、震えるシザーで記念に切り取った。

 

「痛えっ!」

爺ちゃんが悲鳴を上げて、みんなが笑った。

 

「出発!」

サラちゃんが宇宙艇の中に消えて、爺ちゃんがあとに続いた。

最後にもう一度後ろを振り向いて手を振りながら爺ちゃんは宇宙艇に消えていった。

 

ブーン!

一声うなって宇宙艇は入り江の浜から海の中に姿を消した。

 

入り江の浜でボブが大声上げた。

Λgμν「らむだじーみゅーにゅー」といわずに「らむだ爺爺にゅー」と。

 

子供たちが全員でお経を上げた。

Λggν「らむだじーじーにゅー」と。

 

・・・そのあと、クレージー爺ちゃんとサラちゃんがどうなったのかジャラには分からない。

SALA号がブラックホールを通り抜けて、二人が無事にタンジャンジャラのおばーちゃんのところにたどり着いたのかどうか、ジャラには分からない。

 

ボブの話では・・海の底のブラックホールに突っ込んだところまではサラちゃんと量子もつれで会話ができた。クレージー爺ちゃんの声も聞こえた。

「このおにぎりめちゃ旨い」って。

そのあと悲鳴なのか、楽しんでるのかどちらか分からない爺ちゃんの叫び声がいつまでも続いてたって。

 

「ボブお願い、手伝ってくれない」

そんなとき・・・ボブは冷静なサラちゃんから、ブラックホールの工事を頼まれたらしい。

“過去と未来をつなぐニューロンネットワークの工事だ”

 

ボブがなにをしたのかって?

ククッ! ボブはあの念仏唱えただけだって。

 

Λggν「らむだじーじーにゅー」と。

ボブの念仏で宇宙の方程式が乱れて、小さなビッグバンが起こったんだ。

凄いでしょ!

 

でもサラちゃんは「こんなの大した工事じゃない、広大な時空世界から見たら、宇宙にさざ波起こした程度よ」って言ってたそうだ。

 

・・そこで、サラちゃんからボブへの連絡が途絶えた。

ジャラの推測だけど、クレージーじいちゃんの身体はこの世の果てに飛ばされたんじゃないかと思う。ジャラからの情報「未来からのブログ」となってさ。

 

ハルちゃんの方は、タンジャンジャラに無事到着して、おばーちゃんと仲良く暮らしてるんじゃないかな。

二人で“未来からのブログ”作りながらさ。

 

クレージーじいちゃんの肉体は行方不明だけど、爺ちゃんの持っていた【情報】はハルちゃんが無事ブログにしてかくさちゃんに届けたってこと。

ボブの量子もつれのパワーがもう少し強化できたら、ハルちゃんや爺ちゃんと連絡がついてそこのところが明らかになる。

 

爺ちゃんもそのうちきっとどこかに現れると思う。

「やー、みんな元気か!」っていつもの調子でさ。

 

そうだジャラから明るい報告がある。

今朝、入り江の浜をキッカとカーナと3人で散歩してたら、波間にきらきら光る小さなモノを見つけた。

 

何だと思う?

魚だ。

多分イワシとかいう魚だと思う。

 

マスターに報告したら驚いてた。

自然の生態系が復元してきたんだ。

 

“未来からのブログ”読んでくれてるあなたのおかげかもしれない。

「地球はもう限界!」最後の警告を拡散してくれたあなた。

その効果が僕らの世界にも及んできたのだと思う。

 

イワシが現れたのはジャラのおかげだ、といったらマスターに笑われた。

人間の数が激減したから自然環境が復活したのじゃないだろうかって・・厳しく返された。

 

でも魚が帰ってきたのはきっと「未来からのブログ」読んでくれたあなたのおかげだとジャラは思う・・あなたが世界の未来をバラ色に変えたのさ。

 

だって宇宙は無数、無限に存在して、未来と過去も揺らいで交錯しているのさ

 

最後のコメント、ボブに頼んでサラちゃん経由でラストブログとして送ります。

届けばいいんだけど・・・。

 

ラストエンドのあなたに・・・心からの感謝を込めて!

(おわり)  

 

【記事は無断の転載を禁じられています】

 

 

緊急報告!オーストラリアが燃えている!原因は地球温暖化と政策の誤りとの指摘も!

2019年7月に始まったオーストラリアの森林火災は全土の沿岸地域に拡がり、2020年に入っても沈静化の兆しがみえず、各地で被害が拡大しています。

AP通信によれば、ニューサウスウエールズを始め被害の多い東部の三州だけでも380棟以上の民家が焼け落ち、死者は全国で23人、焼失面積は東京都の20倍にあたる5万2千平方キロメートルと、2019年1年間のアマゾンの火災規模を越えています。

 

オーストラリアの森林火災
(米・テレビメデイア)

 

 

 

 

 

 

 

被害に遭い住居からの避難を余儀なくされた住民からは、消防や救助活動の対応の遅れを非難する声が上がり、火災に逃げ惑うコアラの姿が世界に衝撃を与えています。

森林火災の原因は地球の温暖化と政府の政策の誤りだという指摘も・・。

 

広域・国境を越える自然災害

 

つぎのマップの黄色い炎は豪州で火災が起こっている地域を示しています。(米テレビメデイア)

豪州全土にわたって沿岸部で森林火災が拡がっている様子がみてとれます。

 

オーストラリアの森林火災地域 ( 米・メデイア発NHK/BS)

 

北東部の観光地、ポートダグラスから珊瑚礁のケアンズ、ブリスベーン、オリンピックの行われたニューサウスウエールズ州のシドニーといった日本人観光客に人気の地域や都市でも森林火災が町のすぐ側にまで迫っている様子です。

シドニーのオペラハウスの空は濃い煙霧に覆われています。

 

南東部の沿岸地域では、1月2日数万人の観光客に対して避難勧告が出されました。(AP通信)

またこれらの都市部では煙害のためにマスクをして外出する市民の姿がテレビに写されています。

 

火災による大気の汚染は海を越えて拡がりつつあります。

豪南部からの煙がニュージーランドまで流れている(スペインメデイアより)

 

 

 

 

 

 

 

写真は豪州の上空から撮影された衛星写真です。

オーストラリアの南東部から上空に上がった茶色い煙が、タスマン海を南東に流れてニュージーランドの上空にまで達しています。

 

ニュージーランドのツイッター投稿は・・

「ここクライストチャーチでも焦げ臭い」

「純白のはずのフランツジョセフ氷河が茶色になりました」

「太陽が金色です」

当局は、市民からの緊急通報が殺到したので「オーストラリアの森林火災の影響ですので緊急通報をしないように」とツイートしています。

自然災害には国境はないのですね。

 

消防隊の活躍と逃げ場を失うコアラ

 

今回の火災は森林だけでなく、今まで拡がったことのない農地や牧場にも及んでいます。

手入れの行き届いた農地や牧場は火のまわりが遅く、火災にはなりにくいのです。

 

ところが今回の火災では、小さな田舎町で住まいにまで火が燃え移って危険な状態になり、全住民が避難をしているところもあります。

オーストラリアでは2019年は干ばつ(不作)の年で、植物や牧草がからからに乾いたところに強い風と高温が続いたことが、森林や農地や牧場にいたるまでの大火災につながったとされています。

 

オーストラリアと米国のカリフォルニアは大規模森林火災が頻発する二大地域ですが、南半球と北半球で火災のシーズンが異なるために、お互いに消防隊が交換プログラムを組んで消火活動を助け合ってきました。

ところが、今回は気候が変動して両地域の火災の時期が長くなって重なってしまったために、消防士と消防機材の交換プログラムがうまく機能しなくなったということです。(WIREDより)

「オーストラリアは上空からの消火能力が十分ではありません」という豪州気象協議会の責任者の発言があります。

航空機による消火活動の協力をアメリカを始め、他国に求めています。

 

1月と2月は、オーストラリアでは森林火災の本格的シーズンです。

これから夏(2月が盛夏)を迎えるオーストラリアは、国の総力を挙げて自然災害の危機に立ち向かうことになります。

 

必死で作業する消防隊
(NHK BSより)

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリアの消防隊は多くの市民がボランテイアとして参加してできあがっています。

この森林火災で、ボランティアの消防士がひとり作業中に亡くなったという訃報があります。

 

また、森林火災は各地でコアラを始めカンガルーやワラビーや森林に生息する豪州固有の動物を襲いました。

 

火災から逃げるコアラ
(NHKBS)

 

 

 

 

 

 

 

写真は燃える森林から逃げ出して、舗装道路を走るコアラの姿を捕らえています。

コアラは普段は樹上で生活していますが、危険が迫れば時速20キロまでは短距離走が可能です。

 

火に取り囲まれたコアラ
(NHK BS)

 

 

 

 

 

 

 

ニューサウスウエールズ州の森林はコアラの生息地として有名で、1万5千頭から2万8千頭のコアラが生息しているとされていました。

今回の火災で「コアラの30%が命を失った可能性がある」と連邦政府のスーザン・レイ環境大臣が発表したことを受け、市民の間ではコアラの生存環境の消滅や悪化、ストレスによる絶滅まで懸念されています。

 

コアラに酸素呼吸 (米・テレビメデイア)

 

 

 

 

 

 

 

ポートマッコリー地区にあるコアラ病院には傷ついたコアラが次々と運び込まれてきます。

コアラ病院C・フラナガン獣医 (NHK・BS)

 

 

 

 

 

 

 

コアラ病院はコアラの治療と保護を専門とする世界初の病院です。

病院のC・フラナガン獣医はコアラを手当てしながら「これは自然が怒っているのです」と発言しています。(NHK/BSより)

 

自然が怒っている

 

シドニー大学の生態学者は、この大火災でこれまでに約4億8千万頭もの哺乳類、鳥類、は虫類が死んだと推定できると報告しています。

 

・・ケアンズの山側、自然遺産の熱帯雨林は大丈夫でしょうか?

自然観察ツアーで人気の“もふもふのもこもこ”のコアラや小型のカンガルーのワラビー君や人の食料(タンパク源)になるおしりの赤いアリ(食べると舌を刺されます)は元気でしょうか?

 

ワラビーに水を飲ませる救助隊 (NHK・BS)

 

 

 

 

 

 

 

大自然の宝庫、タスマニア島には火災は飛び火していないのでしょうか?

おしりの可愛いウオンバットや怖そうな顔のタスマニアンデビルや頭とおしりがおんなじ形の奇妙な動物?(なんという名前でしたっけ?)

みんな元気にしているでしょうか?

 

・・アマゾンやカリフォルニア、オーストラリアでここ数年間毎年のようにおこる大規模な森林火災は地球温暖化が主な原因だと科学者達がいっています。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は「地球温暖化の原因」が、人間の産業活動に伴って化石燃料などから排出された温室効果ガスである確率は「90%を超える」といっています。

 

地球温暖化の主犯は人間です。

獣医のフラナガンさんの発言「自然が怒っている」は、「自然が人間に怒っている」と聞こえてきました。

 

オーストラリアは自然に恵まれています。

石炭、石油、天然ガス、ウラン等の天然資源に大変恵まれていて、 安価な国産エネルギーが簡単に手に入るのです。

 

そのため、オーストラリアではエネルギー多消費型産業が発達して、エネルギーの大半を石炭を中心とした化石燃料による発電に大きく依存しています。

昨年の夏(2019年1~2月)の森林火災のときも、温暖化による異常気象への影響を重く見たOECD(経済協力開発機構)が豪州の政府に対して、政策の変更と積極的な環境対策を求めていました。

 

しかし今回はさらに大規模な森林火災が発生し、収まる気配がありません。

豪州やカナダや米国でも地球温暖化への対策は、現実の産業構造との利害や、複雑な政治の思惑が絡むとなかなか一筋縄では進まないのです。

 

・・日本も原発の事故以来、化石燃料主体のエネルギー政策から離れられない点では、豪州と同じです。

2019年12月、スペイン・マドリードで開かれたCOP25で各国が温室効果ガスの削減目標を宣言する中、我が国の所轄大臣の釈明に近い発言はテレビで見ていて恥ずかしくなりました。

 

釈明する日本の担当大臣
NHKBS
不名誉な表彰を受ける日本政府高官 NHKBS

 

 

 

 

 

 

 

日本でも温暖化の影響で台風による水害が拡大しています。

台風はコースを変え、大型化しています。

 

オーストラリアの森林火災はよそ事ではありません。

脱・化石燃料は緊急の課題です。

 

「自然は私達人間に本気で怒っている!」のです。

 

(おわり)

 

追記 2020年・オーストラリアの自然災害は続いています。

大雨と洪水

2020年2月14日  ニューサウスウエールズ州の消防当局は「すべての火災を封じ込めた」と宣言しました。

東部のニューサウスウエールズ州はオーストラリアの森林火災でもっとも大きな被害を受けた州です。

封じ込めに成功した主な理由は1990年以来の大雨が降り、山火事の鎮火を助けてくれたのです。

各地で洪水も発生しましたが、森林火災には待ちに待った恵みの雨となりました。

COVID-19

豪モリソン首相は、2020年3月20日午後21時以降にオーストラリアに来るすべての渡航者に対して入国を禁止しました。

世界でパンデミックを引き起こしている新型コロナウイルス(COVID-19)対策です。

当分の間、観光ビザ保持者もオーストラリアには入国ができませんので、要注意です。

3月29日 すべての豪州人に対して買い物、通勤、通学を除いて、自宅待機を要請し、厳しい規制が始まっています。

店舗で女性同士のトイレットペーパーの奪い合いの動画が日本にも中継されて話題を呼んでいますが、楽しい話題を英ガーディアンが報じています。

豪地元のタブロイド紙「ノーザン・テリトリー・ニュース」が読者サービスをしました。

新聞紙面の途中で白紙のページが8枚出現。このページを切り取ってトイレットペーパーとしてお使いくださいというユーモア溢れる心使いでした。

・・

夏から秋に向かう南半球のオーストラリアにも新型コロナウイルスが伝搬しています。

新型ウイルスは暑さにも強いのでしょうか?

 

COVID-19に対しては、地球温暖化と同じように地球規模での協力と対策が求められています。

 

世界の科学者チームが宣言!地球気候変動の危機と今すぐ実行すべき6つの政策!

2019年11月6日、科学者が連名で「地球の気候は危機的状況にある」と題した警告を発しました。

論文を書いたのはアメリカ、オーストラリア、南アフリカの自然環境の研究員の人達です。

 

研究チームはこの危機を乗り越えるために直ちに実行すべき政策を6つあげています。

そして、日本を含む世界の153カ国、1万1000人を越える科学者がこれに賛同の署名をしました。

 

その中に私達生活者に深く関係する対策が二つ含まれています。

「地球の人口を減らすこと」「食習慣をあらためること」です。

 

これまでタブー視されてきた“人口のコントロール”というテーマを地球温暖化の対策として科学者が賛同を表明したことが世界に波紋を呼んでいます。

また肉食を中心とした食習慣にメスを入れるべきだという声明も肉好きな人々や畜産業界からの強い反発が予想されます。

 

宣言の視点として論文は冒頭でつぎのように述べています。

科学者は人類に壊滅的な脅威があることを明確に警告し、事実を“あるがままに伝えるという道徳的義務を負っている”と。

 

原題:World Scientists’ Warning of a Climate Emergency 

オックスフォード大学出版“BioScience”より

地球気候変動の危機を乗り越えるために、いますぐ実行すべき6つの政策

 

論文では、第一回世界気候会議を開いた1979年のジュネーブ宣言から、2019年に至るまでの40年間、温室効果ガスの排出量は急速に増加して、地球はいまや危機的状態に陥っていることをデータとグラフを活用して明快に示しています。

その原因は、森林伐採の増加、エネルギー消費量の増加、二酸化炭素排出量の増加、世界人口の増加、家畜の反すうによる二酸化炭素排出量の増加など・・。

とくに気になるのは、気候変動が不可逆的な気候転換点を越えてしまって、自然の力によるフィードバックが効かなくなり、人間のコントロールをはるかに超えた壊滅的な“ホットハウスアース”状態につながることだと言っています。

・・ホットハウスアースとは灼熱の温室と化していく地球を表現する言葉です。

 

レポートは、持続可能な未来を確保するために私達の生き方を変えなければならないと強調した上で、いますぐに実行すべき6つの政策を提言しています。

以下に6つの施策をできるだけ原文に忠実に報告します。

 

1.エネルギーを化石燃料から、再生可能な、安全でクリーンなエネルギーにする

 

ガス、石炭や石油など化石燃料の残りの在庫を地中に残し、再生可能なエネルギーにシフトする。

化石燃料を使うときは、ソースからの炭素抽出、空気からのCO2の捕獲などを実行する。

 

化石燃料の補助金(対エネルギー企業2018年4000億米ドル超)を速やかに廃止し、化石燃料の使用を抑制する政策を実行する。

・・宣言はさらに“裕福な国々は化石燃料から移行するべき貧しい国々を支援する必要がある”と国の利害を超えた異常気象への取り組みを訴えています。

 

2.メタン、ブラックカーボン(すす)など短命の気候汚染物質の排出を抑える

 

このような短命の気候汚染物質の排出量を速やかに削減する。

これによって気候フィードバックが安定して、今後10年間で短期的な温暖化現象が50%以上減少する可能性がある。

 

・・宣言は“大気汚染の減少によって何百万人もの命を救い、作物の収穫量を増加させることが期待できる”としています。

 

3.地球の自然と生態系を守り復元させる

 

植物プランクトン、サンゴ礁、森林、サバンナ、草原、湿地帯、泥炭地、土壌、マングローブ、海藻などは大気中のCO2を取り込んで、隔離してくれる。

海洋や陸上の動植物、微生物は炭素や栄養の循環と貯蔵に重要な役割を果たしている。

 

(・・2019 年にはアマゾンや北米、オーストラリアの森林が、大規模火災によって失われています。大規模な森林火災は今後も続くだろうというのが専門家の予想です)

宣言は“生物の生息地を保護し、復元することがパリ協定の排出削減の目標(2度未満)を達成することになる”と強調しています。

 

4. 温室効果ガスを排出する家畜を減らすため野菜が主体の食事にする/食品ロスをなくす

 

温室効果ガスを排出する牛、ヒツジ、ヤギといった家畜を減らすために、野菜が主体の食事に変えることが必要。

宣言は、育てるのに大量の植物飼料を必要とする家畜を減らすためにも、又人間の健康のためにも植物性食料を直接食べることが効果的であるといっています。

・・国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2019年の8月に発表した報告は、温室効果ガスの総排出量の37%が人間の食料システムによるものだとしています。

また、牛、ヒツジ、家禽類(主にニワトリ)の生産は温室効果ガスの総排出量の18%を占めるという専門機関の記事があります。

 

IPCCは、仮に世界が英国式の食事スタイルとなって、おなじ量の肉を食べたとしたら必要となる農地は地球上の居住可能な土地の95%に達するといっています。

また世界が米国の食生活を取り入れたら、世界の土地の178%を農地にしなければならなくなると警告しているのです。

・・これは表現を変えれば、“地球が二つ必要だ”という話になります。

 

また、宣言はIPCCの報告を取り上げて食品ロスをなくそうといっています。

・・IPCCの報告によると、現在生産された食料のうち25~30%が食品ロス(食べられるのに捨てられた食品)または廃棄とされています。

これによる温室効果ガス排出は、全体の8~10%という驚くべき量です。

 

ロスの量と原因は先進国と発展途上国によってずいぶん異なるのでしょうが、収穫技術、保存、インフラ、輸送、パッケージ、小売り、教育などを改善することでロスを減らすことが可能だとIPCCは断言しています。

 

5. 我々の目標をGDPの成長と豊かさの追求から、生態系の維持とカーボンフリーな経済活動にシフトすること

 

持続可能な地球環境のために、私達は目標と価値を見直して、生態系の維持と、化石燃料に依存した経済活動から直ちに脱却すべきだという提言です。

宣言文は科学者の世界連合として、国の政策立案者や企業や民間セクターや国民の意志決定者を支援する準備はいつでもできていると言っています。

 

6. 世界の人口を安定させ、できれば減少させる

 

現在、世界で年間約8000万人、1日あたり20万人以上の人口が増加している。

社会的・経済的な正義を保証しながら、世界の人口を安定させ、理想的には緩やかに減少させる必要がある。

 

つまり、人権を守りながら出生率を低下させ、人口増加が温室効果ガスの排出量や生物多様性の損失に及ぼす影響を軽減することが可能な政策がある。

「それは地球のすべての人々に家族計画のサービスを提供し、またすべての若い女性のためにグローバル基準の教育を提供することだ」

 

・・宣言では、人口増が気候変動の要因であり、人口の抑制が気候変動の安定をもたらすと明言しています。

 さらに世界人口を抑制する最良の方法は、避妊手段の普及(貧困に対しては無料サービス)と女性教育であると訴えています。

 

これは「地球環境と生物多様性を守るためには、人口の増加を抑制することが必要不可欠である」という事実を科学者達が世界に宣言した初めてのケースではないかと思われます。

私達日本人には疎遠なことかもしれませんが宗教上の理由や、貧困や国策、そのほか様々の理由で「人口の抑制やコントロール」は公に声を上げにくいテーマなのかもしれません。

アフリカではニジェールの女性の出生率は世界一高くて、2010年の世界銀行の推計で1人の女性が生涯に産む子供の数が平均で7を越えています。

 

国連人口基金の推定では、2億人以上の女性が貧困などのために家族計画の手段を手に入れることができない。その結果が7000万件以上の望まない妊娠と人口増だと多くの専門家は指摘しています。

国連が示した最新の予測では、現在77億の世界人口は今世紀半ばを過ぎても増え続けて、2100年までに110億人に達するとしています。

 

地域別に見ますと、アフリカでは2019年の10億6600万人から2100年には4倍に近い38億人に増えるという予測です。

世界人口の増加33億の80%がアフリカで起こるということです。

 

世界の協力がなければ、アフリカは極度の貧困と食料不足という難題を抱え続けることになりそうです。

そしてそのことが世界に及ぼす影響は私達の想像をはるかに超えるものになりそうです。

 

結論

 

この論文は前置きで「科学者は人類に壊滅的な脅威があることを明確に警告し、事実を“あるがままに伝えるという道徳的義務を負っている”と記しています。

そして、153カ国の科学者11000名を越える世界の科学者が賛同の署名をしました。

 

気候変動には国境がありません。

対策についても、国の壁を越え、ボーダーレスな取り組みを、あらゆるレベルで始めないことにはこの危機は乗り越えられないと科学者連合は宣言しました。

 

私たち人類にはもう逃げ場がなさそうです。

文明崩壊の危機が少しでも遠のくように、できることから始めましょう!

 

なんといっても地球は一つしかないのですから・・!

 

(おわり)

 

論文原題:World Scientists’ Warning of a Climate Emergency 

(オックスフォード大学出版“BioScience”)

論文の主な執筆者

○ウィリアム・J・リップル&クリストファー・ウルフ

オレゴン州立大学コルヴァリスの森林生態系社会学部に所属。

○トーマス・M・ニューサム

オーストラリア シドニー大学生命環境科学部に所属。

○フィービー・バーナード

オレゴン州コルヴァリスにある保全生物学研究所

南アフリカのケープタウンにあるケープタウン大学のアフリカ気候開発イニシアチブに所属

 

日本からも東京大学の山本良一先生、兵庫県立大学の土居秀幸先生、広島大学の吉田有紀先生、日本大学の犬丸瑞枝先生など複数の研究者が署名に加わっています。

 

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