「令和」の「令」の正しい書き方とは!「令」とマ文字の令/あなたはどちら派? 

教科書体の「令」

  

または 

【令和元年○○月××日】

これから新元号の「令和」を自筆で書く必要が出てきたとき、あなたは「令」の字をどのように書きますか。

楷書できっちり「令」でしょうか?

それとも上の写真のような小学校四年で習った教科書体のマ文字でしょうか。

普段は書きやすいのでマ文字を使っている人も、元号となるとどちらが正しいのか考え込んでしまいそうです。

新聞を見ても、雑誌を見ても、ネットの文字もすべて印刷文字で「令」となっています。

昔、新生児の届け出を、鈴木令子さんの令をマ文字で書いて、役所の戸籍の窓口で受け付け拒否されたという有名な話がありました。

令和の令がマ文字の「令」では役所や銀行で、届け出の書類が無効になったりしないでしょうか?

そんなことはありませんので、どうか安心して使ってください。

「令」のマ文字は正しい書き言葉なのです。

ここでは「令」という漢字の正しい書き方を歴史とルーツから詳しく調べてみました。

「令」と「マ文字の令」どちらも書き文字として正しい

「令和」の「令」 子供はみんなマ文字です。 mainichi.jp より。

「令」のマ文字は正しい書き言葉として、国が認めていました。

漢字の使い方として国の考え方・目安を示すものとして常用漢字表というものがあります。

現行の常用漢字表は2010年(平成22年)11月30日に内閣告示されたものです。

「常用漢字表」によりますと、付表「字体についての解説」の中で「明朝体と筆写の楷書の関係」は印刷文字と手紙文字における習慣の相違に基づくものにすぎない・・とされています。

その例として「令」の印刷文字と二つの書き文字が次のように表示されていました。

常用漢字表の例

左端が「令」の明朝体の印刷文字

次は「令」を楷書で筆写した文字

そして右端が「令」のマ文字です。

「令」のマ文字は、常用漢字の正しい書き文字として認められているのです。

最近では文化庁の発表・・平成28年2月29日の文化審議会国語分科会の報告・・の中で、

「常用漢字表」の字形比較として、書き文字として使用可能な2087番目の例として「令」のマ文字があげられています。

またこの分科会では「令」の2種類の書き文字による社会でのトラブルがいくつか報告されています。

『令子』という女性が、ある金融機関の窓口で、記名の箇所に『令』をマ文字で書いたら、ちゃんと活字の通りに書き直して欲しいといわれたそうです。

金融機関や郵便局で「令」のマ文字は「令」とは違う文字であるという間違った解釈がされているケースが報告されています。

令和○○年の「令」をマ文字で書いたとしても、役所とか金融機関の窓口で、訂正しろといわれることはないでしょうが、やはり気になるところです。

それではなぜ、小学校の四年生のときに国語教科書でわざわざ「令」でなくて「令」のマ文字を教えるのでしょうか。

不思議に思って調べてみると、話は戦後の初等教育にまでさかのぼりました。

戦後の新しい国語教育では、識字率を高めるために、できるだけ手書きに近い形で文字を表示することが必要だとされたのです。

漢字は小学生のときに何度も書いて覚えるようにという教育方針でした。

そのために書いて覚えやすいような新しい書体が作られました。

「令」のマ文字もそうした教育方針で作られたのでした。

教科書は、国の定める国定教科書から民間の会社に編集が委ねられましたが、このときの教

科書体が大きく変化することなく現在まで引き継がれているということです。

(参照:阿辻哲次書『漢字最入門』)

ところが、中学校や高等学校の教科書からは「令」は、明朝体の「令」が使われているのです。

私たちは2種類の「令」の漢字を教育されたことになります。

どうやら、このことが「令」の書き文字が2種類あって、社会に出てからトラブルが起こる原因になったようです。

それでは「令」のマ文字はいつ頃、誰が作ったのでしょうか。

「令」のマ文字が戦後教育の中で、国の方針と作られたことはわかりましたが、マ文字の原型はどこかにあったのでしょうか?

子供の頃から愛着のあるマ文字なので、「令」と言う字のルーツを古代の中国にまでさかのぼって徹底的に調べてみました。

「令」のルーツを中国の象形文字から調べてみたら、マ文字が出てきた!

中国の象形辞典 [vividict.com] をネットで開いてみました。

検索窓に日本文字のまま「令」と打ち込んでみますと、次のような象形文字が現れました。

『令』象形文字の変遷 ①

『令』の変遷 ②

”是“”的本字。,甲骨文朝下的“口”人,等候指示的下级),表示上级指示下级。

『令』を意味する象形文字が左から右に並んでいました。

文字を写真に取り、二枚のパネルに並べました。

下段の記事は解説文の一部です。

まず「『令』象形文字の変遷 ①」のパネルをご覧ください。

左から二つの文字は共に甲骨文、次の二つの文字は金文、最後が篆文(てんぶん)です。

大辞林によれば、甲骨(こうこつ)文字というのは亀の甲(きっこう)や獣の骨に刻まれた中国の殷(いん)の時代の象形文字です。

紀元前15世紀頃に使われていた中国でもっとも古い文字といわれています。

また、金文(きんぶん)というのは青銅器などの金属製の器に刻まれた文字や文章で殷とそのあとの周の時代のものとされています。

(参照:大辞林)

それではこれらの文字は何を表した象形文字なのでしょうか?

白川静著「常用字解」によりますと次のように解説されています。

象形文字と見比べながら、お読みください。

深い儀礼用の帽子を被り、ひざまづいて(お告げ)を受ける人の形。

令は「神のお告げ」の意味。

甲骨文字・金文では「令」は「命」の意味。

令は命のもとの字である。

これが「令」と言う字のはじまり・ルーツとしての意味でした。

それでは次のパネル『令』の変遷②をご覧ください。

「令」のマ文字が鮮やかに出てきましたよ。

このパネルの一つ目の文字は隷書(れいしょ)・・篆書を省略して簡便にしたものです。

二つ目の文字が楷書・・きちっとした書き文字です。

次が行書・・楷書の画をすこし崩した書体ですが、楷書より先に発生しています。

草書・・筆画をもっとも崩した書体

最後は印刷字

・・となっています。

書き文字の楷書、行書はもちろん、最後の印刷字もマ文字でした。

・・中国では現在、印刷文字にもマ文字が「令」と併用して使われています。

ではマ文字の形が現れてくるのはいつ頃からでしょうか?

もう一度一枚目のパネルの象形文字を見直してください。

あれ、不思議です。

足を折り、跪いて祈る姿がなんだか「令」のマ文字に見えてきましたよ。

「令」のはじまりは、マ文字かもしれませんよ。

最後に・・

新元号の「令」の書き文字にマ文字を使うことは、常用漢字表の説明文で正しく認められていました。

そのうえ、3000年をさかのぼった「令」のルーツ探しの旅で、マ文字に似た姿を見つけることができました。

よく考えたら、この頃は印刷文字などはなくて、書き文字ばかりだったのですね。

せっかく小学校で覚えた愛着のあるマ文字・・

教科書体の「令」

胸を張って、書いてあげましょうよ!

(終わり)

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下條 俊隆

下條 俊隆

ペンネーム:筒井俊隆  作品:「消去」(SFマガジン)「相撲喪失」(宝石)他  大阪府出身・兵庫県芦屋市在住  大阪大学工学部入学・法学部卒業  職歴:(株)電通 上席常務執行役員・コンテンツ事業本部長  大阪国際会議場参与 学校法人顧問  プロフィール:学生時代に、筒井俊隆姓でSF小説を書いて小遣いを稼いでいました。 そのあと広告代理店・電通に勤めました。芦屋で阪神大震災に遭い、復興イベント「第一回神戸ルミナリエ」をみんなで立ち上げました。一人のおばあちゃんの「生きててよかった」の一声で、みんなと一緒に抱き合いました。 仕事はワールドサッカーからオリンピック、万博などのコンテンツビジネス。「千と千尋」など映画投資からITベンチャー投資。さいごに人事。まるでカオスな40年間でした。   人生の〆で、終活ブログをスタートしました。雑学とクレージーSF。チェックインしてみてくださいね。

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