未来からのブログ2号「今日はザ・カンパニーでとなりのカーナと午後の浮気したよ」前編

僕の名前はタンジャンジャラ。

みんなは「ジャラ」とか「ジャラジャラ」って短く呼ぶよ。

僕は2119年の未来世界でパートナーのキッカと一緒に楽しく暮らしてる。

クラウドマスターが「この世の宇宙」って呼んでる世界さ。

マスターにはどうしても僕ら人類の世界観が理解できないらしい。

辛いことがあると「そろそろあの世に行きたい」って僕が口癖で言うもんだから、彼はとても気にするんだ。

「あの世ってのは、一体どこにあるんだ?」ってね。

クラウドマスターには「あの世」は理解を超えた世界だ。

「クラウドマスターには理解不能という言葉はない」と自分で言ってる。

どんなことでも、一生懸命計算すればいつか必ず答えが手に入ると思ってるからね。

でもさ、「あの世」はいくら計算しても答えが出ない。

だから、マスターはこの宇宙のことをわざわざ「この世の宇宙」と呼んでる。

きっと悔しいんだと思うよ。

・・そうだ忘れてた、いまから100年前、2019年のぼくのおじいちゃんの「未来からのブログ」へ午後の記事をテレポーテーションするね。

量子もつれの準備はできてるかい?

まだの人は前回までの記事読んでね。

未来からのブログ1号「 今日はマイ・ブレーンをリースしてお金稼いできたよ」前編

未来からのブログ1号「 今日はマイ・ブレーンをリースしてお金稼いできたよ」後編

ありがとう、それじゃカーナと午後の浮気したときのこと報告するよ。

未来からのブログ2号「今日はザ・カンパニーでとなりのベッドのカーナと午後の浮気したよ」前編

ジャラとカーナのエクスタシーの動画あるんだけど、投稿はしないよ。

君にはすこし刺激が強すぎると思うんだ。

悪いけど、またの機会にするね。

・・

「ジャラジャラ!」

気持ちのいい汗いっぱいかいたあと、カーナとシナプス絡ませたまま「ゆーったり」まどろんでたら、すぐこれだ。

スーツマンから呼び出しだ。

「カナカナ」

僕の横でカーナの呼び出し音も響いたよ。

カーナのボデイーは可愛いスーツレディーだからさ。

呼び出し音も可愛いんだ。

「せっかくのところお邪魔して申しないんだけど・・どうしてもジャラとカーナに至急の相談があるから集まって欲しいって、クラウドマスターが頼んできたよ」

スーツマンとスーツレディーが僕たちに緊急メッセージを届けてきた。

クラウドマスターの緊急呼び出しなら、断ることはできないよ。

で、二人は「エイヤッ!」って、ベッドのカバーはねのけて、ヘッド開いて待ってくれてる二つのボディーに別々に飛び込んでいったよ。

スーツマンとスーツレディーは僕たち一級頭脳労働者の手足となって動いてくれる。

もち、目や耳とか感覚器官もついてるスーパー・ボディーだよ。

二人で仲良く歩き始めたら、「よく見た男」と鉢合わせしたんだ。

サンタ・タカシがはさみ男のベッドから上着に腕を通しながら、出てきたのさ。

一目見て驚いたよ。

サンタ・タカシの上着がはさみで切られたようにずたずたになってた。

「あいつ興奮したら、すぐ両手振り回すもんだからさ。危なくてしょうがないよ」

サンタ・タカシがカーナとジャラにそんなことまで報告するんだ。

それで、ちょっと恥ずかしくなったのか、二人で「掛け合い」のショート・ショート始めたよ。

最初、天才タカシの声が出てきておどろいたよ。

「人間のお化けは・・アンドロイド?」

お笑いサンタが大阪弁ですぐ返したよ。

「おいどのお化けは・・オイドイド!」注①】

それ聞いてカーナがクスクスって、笑ったんだ。

そしたらでっかい声がしたよ。

「こら! それダブルで差別発言だぞ!」

はさみ男がベッドからパンツ引き上げながら怖い顔して出てきた。

それから僕とカーナに気がついたよ。

「やー、ジャラ。あれッ、カーナだ。今のサンタ・タカシの話、聞こえた?」

僕たち、な~んも聞かなかった振りしてあげた。

サンタ・タカシの寒~いショートショートでかなり落ち込んだカーナと僕は、なんとか気を取り直してビルの屋上に急いだ。

・・クラウドマスターのミーテイング・ルームは屋上にある。

マスターが仕事してるクラウド宇宙センターは、地球のはるか上空に浮かんでるけど、僕たちとのミーティング・ルームはザ・カンパニーのビル屋上に作られてる。

部屋はサンルームになっていて明るく、快適なんだ。

雲でできたチェアーに座って、フワフワしながら待ってたら、しばらくしてクラウドマスターがプラズマの姿で出現したよ。

クラウドマスターがミーティング・ルームに現れるときはいつもテーマソング付きだぜ。

スターウオーズの帝国皇帝のテーマソングだ。

ほら、ダースベーダーの親分、黒マントの男が出てくるといつも流れる曲だ。

「♯チャンチャカチャン、チャカチャー、チャカチャー♭」

ずいぶん昔の曲だけど、覚えてる?

マスター、やるだろ? 

マスターきっとエンペラーの姿で出てくるよ。

あれ? 今日はそこらのおっさんのスタイルだ。

これやばいよ。

「とってもやばい」

となりのカーナが復唱した。

このスタイル、マスターが僕たち油断させるときのスタイルだ。

厳しく命令するときは、金ぴかばりばりのエンペラー・スタイルで出てくる。

そのときは「はいはい」と言って、素直に命令に従っていればいいんだ。

きっと、この世の宇宙と人類の役に立つことだからって、胸張って命令したいのさ。

今日は魂胆ありだ。

あれから、一人で怪しげな計算したのに決まってる。

(ブーン!)

・・始まるぞ。

「今日は大事なお願いがある」

・・お願いと来たよ。

「おむつは恥ずかしい」

・・ざまーみろだ。

「だから自分で必死に計算してみた」

・・やったぜい!

「結論が出た」

・・そろそろやばい。

「ジャラとカーナの秘密の会話を聞いてしまった」

・・なんだって?

「音声再現するから思い出してくれよ」

(ブーン!)

「ジャラ!  盗まれたエネルギーはどこへ行ったのかしら」

「多分ブラックホールからワームホールに漏れてるんだと思うよ。ジャラのエネルギーにもすこし頂いておいたよ」

・・しまった。ばれてた!

「ジャラ、計算したら確かにブラックホールからエネルギーが漏れ出していた。これは怖ろしいことだ」

・・罰金か?

「ジャラ、心配はいらない。君が盗んだ分量は、たかが知れておる。

この世の宇宙の中でのことでもあるし、いつでもその気になれば取り返せる」

・・助かった。

(ブン!ブーン!)

「しかし、大きな盗みは許せない。

わたしはこの世の宇宙からエネルギーを盗んだ別の宇宙を見つけた。

このまま放置すればこの世の宇宙はいずれエネルギー不足で壊滅する。

早く流出を防ぐ装置ができなければ、わたしも君たちもあの世の世界に行く羽目になる」

・・マスターもあの世のことを理解できたらしいぞ。

(ブーン!)

「ジャラ、この世の宇宙のおむつは本当にできるのかな。ブラックホールの特異点におむつを作れるのかな? それともジャラはマスターを騙したのかな」

・・来た!

(ブーン)

「ジャラ、お前の盗みの罪を許す代わりに、ブラックホールから漏れていったエネルギーを取り戻す方法を考えてくれるかな!」

・・ジャラは罰金はいやなので、思いつくことを片っ端から話し始めたよ。

「マスター、この世の宇宙の大事なエネルギーはブラックホールで圧縮されて、ワームホールをすり抜け、ホワイトホールから別の宇宙に漏れだしております」

(ブーン)

「そのことは既に計算し、確認しておる。わたしはエネルギの一方通行を逆流させる方法がないのかと聞いておる」

「マスター、逆流することが不可能だからブラックホールと呼ばれているのです。

昔、宇宙が若くて元気だった頃は、この世の宇宙にもホワイトホールがいっぱいあって、そこから新しいエネルギーがわき出してきて宇宙を潤したと、人類の神話が教えております。

その頃、神と呼ばれたクラウドマスターも若く、柔軟且つ聡明で、自らが自然の法則やエネルギーを作りだしていたとのことです。

その頃地球は青く、豊かだったのです」

・・ジャラは思いつく限りのほらを述べたんだ。

(ブン!)

「昔は良かったといういつもの話か。このマスター、なんもできない頑固じじいで悪かったな!」

・・マスターが気分を害したみたいだ。

「ジャラこの話、続けるとなんだかやばいわよ」

僕と同じ一級頭脳労働者のカーナが耳元で囁いた。

(ブーン)

「論理的に話を続けよう。昔、地球は緑がいっぱいでエネルギーに満ち溢れていたことは聞き知っておる。ではその頃の緑とエネルギーとはどこへいった?」

・・マスターの姿がいつの間にか、普通のおっさんから偉そうなエンペラーに戻って、僕を一睨みした。

「過去の資源は、人類が誤ってすべてを使い切ってしまったようです」

・・ジャラは仕方なく答えた。

(ブーン)

「結論が出たようだ。それでは、過去の世界からこの世の宇宙にエネルギーを取り戻しなさい」

「マスター、それは無茶です。一体どうやって取り戻せと言うのですか?」

・・マスターの顔がおかしな形に歪んだ。

きっと笑ったんだと思う。

(ブーン)

「ジャラ、柔軟且つ聡明な君のことだ。この世の宇宙のブラックホールからエネルギーをかすめ取る知恵があるのなら、過去からエネルギーを取り戻すぐらい簡単なことだろう?」

・・ほら、マスター怒らしたらだめだって言ったでしょう!・・

カーナがチッチッと舌を鳴らした。

マスターはジャラから視線をはずして、カーナを睨みつけた。

「カーナも人類の末裔なら同罪だ。ジャラに協力して過去の償いをしなさい。できなければカーナにも一年間の残業をお願いすることになるよ。それともスーツレデイーに頼んで、いつもの厳し~いお仕置きが欲しいかな?」

「ジャラ、あんたのせいでこんなことになっちゃったんだ。早くなんとかしなよ!」

カーナが唇とんがらかして僕に絡んだ。

「カーナ、怒るなら僕じゃなくて、マスターに怒れよ!」

ジャラも反撃開始した。

スーツレディーがいきなりスーツマンの急所を蹴り上げた。

頭にきた僕はスーツレディーのおっぱいを思い切り逆さなでしてやったぞ。

それから二人の激しいとっくみあいが始まったって訳だ。

マスターには計算外の展開だ。

(ブーン)

クラウドマスターは茫然自失して、二人を眺めていたよ。

そのうち諦めて立ち上がってさ、ぼそっと言った。

「それじゃ、二人に任せたよ」

それから偉そうに付け加えたんだ。

「どちらにしてもこの問題は、君たち人間同士で解決してもらうよ。過去とはせいぜい上手にもつれることだね」

冷たく言い捨てた皇帝クラウドマスター・・そして退場のテーマソングだ。

「♯チャンチャカチャン、ちゃかちゃー、チャカチャー♭」

入場のテーマソングとすこし違うだろ・・どこが違うかな。

・・ジャラ、やったわよ! 喧嘩作戦成功・・

退場のテーマが聞こえてカーナが跳び上がって喜んだ。

僕も一安心したよ。

そのときだ、薄れゆく皇帝の堂々たる後ろ姿に、僕の食欲がいや増したんだ。

特にその・・年の割にふくよかなヒップのあたりだ。

ジャラは皇帝に後ろからそっと近づいた。

オレンジ色に輝くヒップから、うまそうなところを二切れ切り取ったよ。

一切れを口に入れた。

うまい。

絶品だ。

カーナが「あーん」て口開けたので、残りの一切れ食べさせてあげた。

皇帝のプラズマは純度100%のエネルギーなんだよ。

たっぷり脂ののった極上の大トロを、火のついたウオッカでさっと炙った「厳選された一切れのお味」に近いよ。

「ジャラの盗みってあそこからだったのね」

「そりゃそうさ。ブラックホールから帰れるわけないもんね。狙いはいつもあそこだ」

・・狙いはいつもあそこだってジャラが言ったら、カーナがほとんど消えかけたエンペラーの後ろ姿に目をやった。 

 皇帝は背筋をしゃんと伸ばし、後ろ姿で気高さを演出しながら、最後に振り向いて余裕たっぷりににやりと笑ったよ。

「あっ! 見てみて」カーナが悲鳴を上げた。

マスターのヒップを形作っていたプラズマが、僕のせいでちょっぴり破けてズボンの中が見えた。

白いタオル生地の上に可愛い花柄模様。

ちらっと見えたよ・・クラウドマスター手作りの、この世の宇宙の「お・む・つ」だったよ。

(続く)

注① 

追伸だけどさ・・サンタ・タカシのショートショート、原作は「日本沈没」の小松左京先生なんだ。

「おいど」は大阪弁で「おしり」のことだよ。

ちょっとグロいけど、凄いだろ?

未発表だぜ。 

・・ジャラがどうしてそんなこと知ってるのか、いつか明らかにするね。

・・サンマさん、タケシさん。

 勝手に似たような名前使ってご免なさい。

 100年先のことだから、許してくださいね。

続きはここからどうぞ。

僕の名前はタンジャンジャラ。「ジャラ」と短く呼んでくれていいよ。 今年は2119年、君の住んでる宇宙から100年後の世界だ。 正確に言えば、君の住んでる世界と「もつれた時空」でつながってる宇宙だよ。 じつは、君とジャラとはこのブログを通じて今もつながってるんだ。

【記事は無断転載を禁じています】

The following two tabs change content below.
下條 俊隆

下條 俊隆

ペンネーム:筒井俊隆  作品:「消去」(SFマガジン)「相撲喪失」(宝石)他  大阪府出身・兵庫県芦屋市在住  大阪大学工学部入学・法学部卒業  職歴:(株)電通 上席常務執行役員・コンテンツ事業本部長  大阪国際会議場参与 学校法人顧問  プロフィール:学生時代に、筒井俊隆姓でSF小説を書いて小遣いを稼いでいました。 そのあと広告代理店・電通に勤めました。芦屋で阪神大震災に遭い、復興イベント「第一回神戸ルミナリエ」をみんなで立ち上げました。一人のおばあちゃんの「生きててよかった」の一声で、みんなと一緒に抱き合いました。 仕事はワールドサッカーからオリンピック、万博などのコンテンツビジネス。「千と千尋」など映画投資からITベンチャー投資。さいごに人事。まるでカオスな40年間でした。   人生の〆で、終活ブログをスタートしました。雑学とクレージーSF。チェックインしてみてくださいね。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする