うるう年はだれがなぜ作ったのでしょうか?
暦は、天体と季節の移り変わりに合わせて人間が作ったものです。暦が狂っていては農耕も人の生活も成り立ちません。農耕での種まきから刈り取りまでのスケジュール、祭り事をいつ行うのかなど、一年の生活のスケジュールを決めるために暦はなくてはならないものでした。
紀元前46年、ローマの英雄ジュリアス・シーザーは、自然や天体の動きを正確に反映する新しい暦を作り上げました。それは四年に一度、1年の365日に一日を加える“ユリウス(ジュリアス)歴”です。これがうるう年の始まりでした。
その後、ユリウス暦はローマ教皇グレゴリウスの手で修正され、現在の私たちの生活に欠かせないグレゴリウス歴に進化します。ここでは、暦の進化の歴史を、由来やエピソードを交えてご紹介します。
目次
古代ローマの英雄ユリウス・カエサル【ジュリアス・シーザー】がうるう年を作った
うるう年を取り入れた現在の暦のひな形はローマの英雄ユリウス(ジュリアス・シーザー)が、紀元前46年に作りました。ユリウスはエジプトを征服した英雄です。エジプトからローマに凱旋したユリウスは、一年を365日としたエジプトの暦を参考にして新しい暦を作りました。
新しいユリウス暦は、4年に一度、1日を増やして、1年が366日の「うるう年」を作ったのです。これがうるう年の始まり、ユリウス暦です。なぜそんなことをしたのでしょう。
1年とは、地球が太陽のまわりを回って元の位置に戻ってくる日数のことです。この日数が暦と同じ365日であれば問題はないのです。しかし、現実には地球が太陽のまわりを回って元の位置に戻ってくるのには、1年の365日に対して0.24219 日・約5.8時間が余分にかかっていました。
暦が一年経ちましたよといっても、地球はまだ一年前の位置のすこし手前にいたわけです。次の図をみてみましょう。暦の上で1年が経過したとき、地球はまだ少し前の位置「ここ」にいるのです。
このように、1年を365日とする暦を使っていると、四年が経てば約一日、暦と地球の位置にズレが出ました。
0.24219 日×4年=約1日
地球に「もっと早く回れ!」と言っても無理です。ということで、ユリウスは4年に一度、平年より1日多い366 日のうるう年を作って、1日のズレを調整したのでした。4年に一度追加された1日のおかげで、地球はぴたりと元の位置に戻れるのです。これがうるう年をユリウスが作った理由です。
ところで、うるう年に追加される1日を1年のどこに置くかについて、面白いエピソードがあります。ユリウスは、まず1日増やす月は2月にしようと決めました。そこまではよかったのですが、ユリウスは1日増やす方法として、2月24日を2回繰り返したのです。
きっとみんな驚いたでしょうね。翌日目が覚めたらまた前の日と同じ日付けなのですから。でも現在なら誕生日が2月24日の子供は大喜びしたでしょう。誕生日のお祝いが2日続くのですから。1日の増やし方として、とても乱暴なやり方ですが、凡人には思いもつかない合理的な方法ともいえますね。
さて、この暦は無事スタートしたのですが、カエサルの死後とんでもないことが起こります。4年に1回のうるう年をなんと間違って3年に1度にしてしまったのです。ありえないミスですが、数年間だれも気がつかなかったのです。
のちに初代のローマ皇帝アウグストゥスがこれに気づいて元に戻すことになります。この功績でアウグストゥスは8月に自分の名前を付けて、「Augusutus」(英語でAUGUST)とします。先輩のユリウスが、既に7月を自分の名前を取って「Juliusu」(英語でJULY)としていたのでこれを見習ったのでした。
ローマ法王グレゴリウスがユリウス暦を修正、現在も使われているグレゴリウス暦とは?
現在私たちが使っている暦はグレゴリウス暦といいます。これはユリウス暦と実際の天体の動きの間に起きる月日のズレを解消するために、ローマ法王・グレゴリウス13世が1582年に定めたものでした。
実は、ユリウス暦を使用していたローマ教会やヨーロッパの国では、長い年月の間に自然とのあいだに1年間で10日のズレが生じていました。市民の日常生活や教会の活動にも影響が出たため、法王と教会はユリウス暦を修正して新しい暦“グレゴリウス暦”を作ることを決定します。
グレゴリウス暦では、うるう年は4年に1度ではなくて、「400年に97回」設けられました。新しい暦では400年のうち、4年に1回の合計100回ではなくて、3回減らした97回がうるう年となります。
それでは、先ほどの計算式をもう一度、見てみましょう。
1年のズレ0.24219 日×4年=約1日
0.24219日のズレが0.25日であれば4年できっちり1日のズレになるのです。しかし、ユリウス暦では1年で0.00781日のずれが残っていました。この結果、ユリウス暦では400年経つと1年で3日分、太陽に対する地球の位置が暦からずれてしまいます。
そこで、グレゴリウス13世は「400年に3日のズレ」を修正した新しい暦を作ったのです。
グレゴリウス暦の新しい「うるう年ルール」とは・・・。
- 西暦が4で割り切れる年をうるう年とする
- このうち100の倍数はうるう年から外す
- 最後に400の倍数はうるう年に復活させる
たとえば西暦2001年から2400年で見ていきますと・・・4で割切れる年は2004年に始まって最後の2400年迄、100回がうるう年です。このうち100の倍数の2100年、 2200年、 2300年、 2400年の4回はうるう年から外します。最後に400の倍数2400年はうるう年として復活させます。
これで400年にうるう年は97回となり、太陽の動きと暦が重なって無事400年が過ぎるのです。
グレゴリウスは1582年10月4日の翌日に新しい暦をスタートさせますが、このときのエピソードがあります。グレグリウス暦では、ユリウス暦10月4日木曜日の翌日を、グレゴリウス歴の10月15日金曜日としたのです。教会の暦にユリウス暦を使っていたために、長い年月をかけて暦が10日ほどずれていたので10日分を暦からカットしたのです。
グレゴリウスはキリスト教徒に取って大事な暦計算の基礎となる春分の日を3月20頃と決めて、新しい暦のスタートに際して10日の日数を暦からぶっ飛ばしてしまいました。これにはヨーロッパ中が驚いたことでしょう。10日間も失った人たちは予定が狂って、大忙しだったでしょうね。
新しいグレゴリウス暦では、それまで続いていたうるう年に2月24日を二回繰り返すことを止めて、2月に一日を増やして2月29日を設けることとしました。これが4年に1度のうるう日2月29日の始まりでした。
おわりに
ローマの英雄ジュリアス・シーザーは、古い暦を、天体の動きに合った正確な暦にするために、4年に1度、1日を増やして“うるう年”を作りました。しかしこの暦は完全ではなかったのです。
ローマ法王・グレゴリウス13世が「400年に3日のズレ」を修正した新しい暦を作り上げます。このグレゴリウス暦が現在も使われている暦です。でも、まだ微妙なズレがあるのです。次はどんな暦ができるのでしょう。
地球が太陽の周りを回る太陽暦ではなくて、宇宙で暮らすための宇宙歴かも。
(おわり)
参照:国立天文台・暦計算室長 片山真人著「暦の科学」
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下條 俊隆
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