未来からのブログ14号 「おれ紐になる!未来の情報持って明日の朝、過去に帰る」爺ちゃんが叫んだ!

僕の名前はタンジャンジャラ。

舌噛みそうだから、“ジャラ”って呼んでくれていいよ。

いま、旧市街からザ・カンパニーに向かって、クレージー爺ちゃん背中に乗っけて走ってるところだ。

爺ちゃん君たちのいる世界から、100年後のジャラの世界に時空を越えてやって来た。

そして、ついにジャラの世界の現実を見てしまったんだ。

ジャラはこんなひどい世界を爺ちゃんに見てほしくなかった。

だからクラウドマスターと相談して街を昔の姿に変えておいたんだ。

でもさ、爺ちゃんは虚構を見破った。

流石クレージー爺ちゃんだ!

虚構が破れて現れたのは廃墟となった世界さ・・つまり爺ちゃんや君たちの未来の世界だってこと。

熱波に溶けてぐにゃりとつぶれたビルや、だれもいない町並みが廃墟となって目の前にひろがってるのを見て、爺ちゃんとジャラは抱き合って泣いた。

でもさ、涙が涸れて・・気がついたら爺ちゃんは腹ぺこでお腹がグーグー鳴ってた。

この世界は爺ちゃんの世界と真逆の素粒子でできてるから、この世界の食料は食べられないんだ。

このままでは、爺ちゃんの身体長くは持たないと思う。

大変だよ、爺ちゃんがもとの世界に戻れる方法を早く探さなくっちゃ!

(前回のストーリーはここからどうぞ・・)

未来からのブログ13号 クレージー爺ちゃんが早朝の散歩してたら街が溶け始めたよ!

未来からのブログ14号

「うめー!」

爺ちゃんが箸で一口食べて、顔くしゃくしゃにしてうれしい悲鳴をあげた。

ジャラと爺ちゃんがザ・カンパニーのオフィスに着いて、最上階のミーテイングルームに駆け込んだら、ジリジリしながらハル先生が二人を待ってた。

部屋にはハル先生が作った朝食の良い香りが漂ってたんだ。

テーブルの白いクロスの上に、大きな丼茶碗とお箸がセットされていて、丼茶碗の中にはできたてのおじやが湯気を上げていた。

「あわてないでゆっくり召し上がれ!」

ハル先生が一晩掛けて用意したのは爺ちゃんの胃に優しい一品だった。

「間違いない! このおじやのスープ、おれの好物の淡路島3年もののトラフグだしだ。お前、よくやった!100年の熱波に耐えて島で生き延びてたのか?」

爺ちゃん感激して思わずトラフグスープに話しかけてた。

おじやをほおばってる爺ちゃんの幸せ顔見たハル先生、フグの代わりににっこり笑って答えた。

「きのう一晩掛けてスープのフグだしを透明になるまで煮込みあげましたの。マスターが盗んだジャラじいちゃんの記憶倉庫から、おじやの米とスープのデータ取り出して、そのまま再合成しましたの。あら不思議! 素材のデータが反物質の構造になってましたので、そのままでジャラ爺ちゃんが食べられるおじやに再合成できちゃったってわけ」

ククッと笑って、ハル先生が一言追加した。

「クラウドマスターの盗み癖が怪我の功名になりました。このおじやでマスターの罪を許してあげてくださいね」

「ハル先生!あんたきっと最高の嫁さんになる。クラウドマスターは幸せ者だ」

爺ちゃんも、お腹膨らんで幸せいっぱいの顔してた。

ジャラも一安心したよ!

でも、少し気になることがあって、ジャラは爺ちゃんの意見聞いてみた。

「爺ちゃん、どう思う? クラウドマスターがここんとこ、僕らのブレーンの中覗きまわってるんだ。そのうえ爺ちゃんの脳みそにまで手を出した。これどうみても量子スパコンのAIとして、倫理規定違反だ。タカさんやチョキとAI倫理委員会開いてマスターを処罰しようかなと思ってるんだ」

ジャラがマジでそう言ったら、爺ちゃんゲラゲラ笑い出した。

「ジャラ! お前マスターにとことん世話になっててなんてこと言うんだ。爺ちゃんはマスターのキャラが好きだよ。人間で言えばだ、シンギュラリティー1号はいま成長期なんだ。学習欲が強いだけで、悪気がない。きっとハルちゃんと良い夫婦になれる。シンギュラリティー2号や3号や4号や二人の子供いっぱいできたらさ、みんなでお祝いしてジャラたちと一つの大家族になるこったな」

横にいたハル先生、その答え聞いて感激して、爺ちゃんに抱きついていったよ。

爺ちゃんもハル先生をしっかり抱きしめたんだ。

「ところでハルちゃんのパートナーいまどこにいるんだ?」

爺ちゃん部屋を見渡してハル先生に聞いた。

「あの人、クレージー爺ちゃんの過去への帰還ルートをどうしてもみつけてみせるって、昨日の夜、光速艇でどこかの宇宙に飛び出してったわ」

ハル先生がジャラに目配せしながらそう答えたんだ。

ジャラは目配せの意味に気がついて椅子から飛び上がった。

ずいぶん前だけど、ブラックホールが過去の世界とつながってるって、マスターにでたらめ言ったのを思い出したんだ。

「ハル先生! もしかしてクラウドドマスター・・僕の話信じてブラックホール探しに行ったなんてことないよね?」

「ジャラ!正解よ。地球に一番近いブラックホールから順番に調べてみるっていってたわ」

「ハル先生! やばい! それとてもやばいよ! マスター、今頃ブラックホールに引きずり込まれてるかもしれないよ」

「止めてよ、ジャラ! あの人、そんなことぐらい計算済みだわよ・・」

ハル先生が叫んだときだよ、ミーテイングルームのドアがバタンと乱暴に開いて、三人の男が闖入してきたんだ。

でっかい防護ゴーグルと真っ黒い宇宙服に身を包んだ三人が、部屋に入ってくるなり、ハル先生とジャラの前に横一列に並んで合唱した。

「”MEN IN BLACK”ただいま生還!」

「ブラックホール・・めちゃおもろかったぞ!」

グーグル外した右端の男はタカさんだったよ。

「ジャラ知ってる?ブラックホールってSEXYだよ!」

グーグル外しながら左端のチョキが身をよじった。

「ハルちゃん!ただ今!」

そう言って真ん中の背の高い男がでっかいサングラスを外した。

男は宇宙皇帝クラウドマスターその人だったよ。

「マスター!無事だったのね!」

飛び上がったハル先生、クラウドマスターの胸の中に飛び込んでいったよ。

一騒ぎが始まって・・終わって・・ジャラがマスターに尋ねた。

「みんな無事で良かったけどさ、いったいどこのブラックホール調べて来たの?地球から一番近いブラックホールだって光速艇で片道何百年もかかるはずだよ。昨晩出発して、調査終えて、今朝帰ってきただなんて・・それウソだろ?」

マスターにやりと笑って答えた。

「ジャラ!驚くなよ!宇宙のブラックホールに行ったわけじゃないんだ。昨晩、爺ちゃんの歓迎式のあと、ハル先生とタカさんとチョキ入れて爺ちゃんのこれからのこと、どうするか相談したんだ。爺ちゃんが過去に帰りたいって言ってた話だ。・・で、思い出したのがジャラの話さ。ブラックホールが過去に通じてるって話。ジャラの言うとおり、宇宙の果てまで探しに行ってたら爺ちゃんの寿命が尽きてしまう。その時だ、凄いアイデアが出てきたんだ。だれかが思いついたんじゃない。みんなが同時に、同じアイデアが浮かんで来た。で・・最初に口開いたのはチョキだ!」」

マスターがチョキを指さして続きを促した。

「ま、あたりまえの話だ。爺ちゃんどこから現れたのかってことさ。そこが出口ならおれのハサミで出口の扉チョキすればいい。あとは爺ちゃんがやって来た最初の入り口目指して突っ込んでいくだけさ。だよな・・タカさん」

チョキがタカさんを指さした。

「チョキがいってるのは爺ちゃんが現れた夕陽の入り江の浜のことだ。入り江の浜が地球に一番近い時空のトンネルじゃないかって思いついたってわけだ。ハル先生・・あのトンネルなんて名前だったっけ?」

ハル先生が興奮して、きんきん声で答えた。

「ワームホールよ、リンゴの虫食い穴! ワームホールから入って、芯に当たるところにたどり着いたら、そこがブラツクホールの底。ブラックホールを抜けて向こう側に脱出できたら、そこは爺ちゃんの故郷”タンジャンジャラ”ってわけ」

言い終えると、ハル先生がマスター指さして震え声できいた。

「・・で、 海の底に潜って何かめっけたの?」

「海の中には何もなかった。そりゃそうだろ。昨日の夜は入り江の海は真っ暗闇だった。で俺たち一度浜に戻って夜明けを待った。水平線が白み出したときもう一度海に乗り出して、爺ちゃんの現れた辺りに宇宙艇を沈ませた。今度は艇のセンサーにあるものを仕掛けておいた」

黙ってマスターの話を聞いていた爺ちゃんが叫んだ。

「サンドだ、タンジャンジャラの浜のサンドをセンサーに入れて、目的地の故郷に誘導させたんだ! どうだ正解だろ? マスター」

マスター頷いたよ。

「クレージー爺ちゃんの言うとおりだ。爺ちゃんに渡す予定だったサンドレターを宇宙艇の先端のセンサーに入れた。宇宙艇の上の海面が赤く染まりだしたとき、センサーが反応して震えだした。そして不思議なことが起こった。入り江の海がタンジャンジャラの白い浜辺に向かって膨張をはじめたんだと思う。海が細長い時空のトンネルになって宇宙艇を引っ張り出した。宇宙艇は圧縮されながら、ゆっくりと時空を流れた。ブラックホールの底、特異点に近づいたんだと思う。チョキとタカさんが大きな悲鳴上げてるのが聞こえたけど、あのときの感覚はマスターには分からない。タカさんとチョキに聞きたい。あの現象を身体にどう感じたのか教えてほしい」

そう言ってマスターがまずタカさんを指さした。

「おれの身体は縮んでいったんだと思うけど、痛みはなかった。大事なおれの記憶がどこかにぶっ飛んでしまった。この世からあの世へ飛んでるなーって感じ。チョキ、お前どんなだった?」

チョキが立ち上がって身をよじった。

「エクスタシーに近かった! 記憶そのものがどこかへぶっ飛んだのは覚えてる。だからそれからあとのことはチョキの記憶にはないよ。マスター、あのときタカさんとチョキどんなことになってたのか詳しく教えてよ」

マスターがしばらく考え込んでから答えた。

「あのとき・・タカさんが訳の分からない昔の記憶を倉庫から引っ張り出して、空中に放り出したのが見えた。チョキは“おれの人生のすべて”と叫んで青い色した煙を口から吹き上げてた。これ以上艇を進行したら人間の理性は耐えられないと判断したんだ。で・・宇宙艇を逆転させて時空の流れに任せた。そしたらいつの間にか入り江の浜に帰り着いてた」

ずーっと腕組みと足組みしてみんなの話黙って聞いてたクレージー爺ちゃん、いきなりハル先生に尋ねた。

「ハルちゃん! 失礼・・ハル先生! 宇宙物理学者としていまの話をわかりやすく解説していただけませんかな?」

頷いたハル先生、やおら立ち上がって、会議室の空中に両手を差し出した。

先生の指からプラズマが放射されて、空中にこんな絵が浮かび上がった。

会議室にハル先生の声が響いた。

・・この絵は爺ちゃんつまりプロフェッサーGが100年前のタンジャンジャラからこの世界にやって来たルートを示したもの。

左側の黄色い矢印を見てね。

プロフェッサーGはタンジャンジャラの浜からブラックホールに入って、真ん中の細い穴、ワームホールを抜けて、ホワイトホールにやって来た。

赤い矢印のあるホワイトホールの出口は入り江の浜のことよ。

つまりこの世。

“MEN IN BLACK”探検隊は昨日の夜、逆のルートをさかのぼった。

マスターとチョキとタカさんは入り江の浜からワームホールに入って、ブラックホールに近づいていった。

光速艇とタカさんとチョキはブラックホールの底・特異点に近づいて無限小に圧縮されていった・・筈。

一言で言えば、チョキとタカさんの身体は重力をなくした紐になって震えた

そして時空には記憶という二人の情報だけが漂ってた・・。

「分かる?」

ハル先生がみんなを見渡した。

「分からん」

みんなが答えた。

一人黙り込んでいた爺ちゃん・・プロフェッサーGがぼそっと言った。

「分かった!」

ジャラとチョキとタカさんが爺ちゃんを取り囲んで聞いた。

「何が分かったの?」

爺ちゃん天井見て叫んだ。

「おれ紐になる! そして明日の朝、日の出とともに入り江の浜からタンジャンジャラに帰る!」

ジャラは爺ちゃんの顔見つめた。

クレージー爺ちゃんの顔、怖いぐらい引き締まってみえた。

爺ちゃん静かにジャラに囁いた。

「ジャラ! お別れだ。未来の情報もらっておれ帰る。早く“未来からのブログ”はじめないと・・地球は温暖化どころじゃない“人類絶滅”へ一直線だ!」

“さっきの溶けた町並みが教えてくれたことだよ、ジャラ!”

爺ちゃんの一言で会議室は沈黙してしまった。

ハル先生が爺ちゃんにそっと近づいてきて、テーブルの上のおじやの残りをスプーンですくって爺ちゃんの口元に届けた。

「残しちゃだめ。ハイ、お口開けて、あーん!」

爺ちゃんとろけそうな顔して口開けた。

「あーん!」

「明日はお弁当に爺ちゃんの大好きなおにぎり作りますからね」

おじや食べさせてるハル先生の目が潤んでた。

“故郷の地球のみんなのために・・あした命かけるのね!”

ハル先生が爺ちゃんの耳元で囁いた言葉、ジャラに聞こえた。

ジャラは驚いて爺ちゃんに抱きついていったよ。

(続く)

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下條 俊隆

下條 俊隆

ペンネーム:筒井俊隆  作品:「消去」(SFマガジン)「相撲喪失」(宝石)他  大阪府出身・兵庫県芦屋市在住  大阪大学工学部入学・法学部卒業  職歴:(株)電通 上席常務執行役員・コンテンツ事業本部長  大阪国際会議場参与 学校法人顧問  プロフィール:学生時代に、筒井俊隆姓でSF小説を書いて小遣いを稼いでいました。 そのあと広告代理店・電通に勤めました。芦屋で阪神大震災に遭い、復興イベント「第一回神戸ルミナリエ」をみんなで立ち上げました。一人のおばあちゃんの「生きててよかった」の一声で、みんなと一緒に抱き合いました。 仕事はワールドサッカーからオリンピック、万博などのコンテンツビジネス。「千と千尋」など映画投資からITベンチャー投資。さいごに人事。まるでカオスな40年間でした。   人生の〆で、終活ブログをスタートしました。雑学とクレージーSF。チェックインしてみてくださいね。

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