囲碁ソフトが強すぎる!人間を超えた人工知能との勝負はもはや「シンギュラリティー」?

囲碁の人工知能「アルファ碁」が2017年の5月に人類最強と言われた中国の囲碁棋士、柯潔(カケツ)九段を三連勝で破って世界を驚かせたときのことです。

わたしの娘が、父の日にプレゼントしてくれた「囲碁」のソフトに、5目置いても勝てなくなりました。

娘が買ってくれる囲碁ソフトは毎年強くなって、ついに六目置かないと勝負にならなくなったのです。

これはショックでした。

これでもわたしは日本棋院から三段の免許をもらっています。

四段あげると言われたのですが、三段なら、免許料が2万円やすいので三段にしたのです。

2005年頃は、ソフトに6目置かせても「こてんぱん」にやっつけて楽しんでいました。

ただの囲碁ソフトじゃないかとはいえ、これは恐ろしい進歩です。

「一目置く」という囲碁用語から出た言葉があります。

 これは相手を尊敬した言い回しですが、努力すれば追いつけると言う可能性を含んだ言葉です。

しかし「六目置く」という言葉には何の意味もありません。

かつて六目置かせていたわたしは、今や「囲碁ソフト」に頭を下げる「シンギュラリティー」の関係になりました。

ここまで来ると囲碁ソフトから笑われている気がします。

世界最強の囲碁AI「アルファ碁」とは次元の違う只の囲碁ソフトでさえこの強さです。

世界最強の囲碁AI「アルファ碁」は一体どのくらい強いのでしょうか?

気になってNewton誌やNature誌を調べて、まとめてみました。

 囲碁AI「アルファ碁ゼロ」は一日で囲碁2000年の歴史を超えた!

(アルファ碁対世界一位柯潔棋士の対局・解説の様子と考え込む柯潔・・ユーチューブより)

「アルファ碁」はグーグル傘下のイギリス企業Deep Mind社が開発した囲碁の人工知能です。

アルファ碁は過去に人間同士が戦った膨大な棋譜を基に、「デイープ・ラーニンブ(深層学習)」をして、勝負に勝つ戦略や手筋を学習したのです。

「ディープ・ラーニング」というのは人間の脳の仕組みを真似しています。

多重層に作り上げた仮想のネットワークによって膨大な情報を処理して、より高度な概念を作り出す仕組みです。

アルファ碁は、囲碁の戦いで勝つための「定石」や「手筋」と呼ばれるものを自分で学習して、見つけ出しているのです。

わたしも、三段の免許をもらうために何年も囲碁の本を読んで、定石や手筋を勉強しました。

今わたしが対戦している囲碁ソフトは、何回対局しても勉強しないので、始めの布石のときに打ち返してくるパターンが二三種類しかありません。

相手のパターンを覚えたわたしは、五目置けば勝てるようになりました。

一方、アルファ碁は絶えず勉強して2017年の5月に世界最強の棋士に進化しました。

ところがその年の10月に「アルファ碁」でさえ太刀打ちできない囲碁AIが出現しました。

新しく誕生した「アルファ碁ゼロ」が先輩の「アルファ碁」と戦い、100戦して100勝したのです。

「アルファ碁」は人類NO1を破ったわずか数ヶ月後に、後輩の「アルファ碁ゼロ」に「こてんぱん」にやっつけられたのです。

驚くべきことに「アルファ碁ゼロ」は戦いの経験も皆無で、棋譜のデータも与えられず、わずか40日間でここまで強くなっています。

「アルファ碁ゼロ」には囲碁のルールが教えられただけでした。

「アルファ碁ゼロ」はひたすら自己対局(仮想の棋士AとBを作り対局をさせる)を行い、囲碁の定石や手筋などを見つけ出して、勝つための戦略を自力で編みだしたのです。

対局した数はなんと2900万回に及びました。

24(時間)×60(分)×60(秒)×40(日)÷29000000(回)= 0.119(秒)

「アルファ碁ゼロ」は約0.1秒で一局の碁を打っています。

1局の平均手数は220手位ですから、仮に碁盤で打ったとすれば、「アルファ碁ゼロ」は目にも止まらないスピードで碁石を打っています。

人間なら盤上で一手打つのに30センチほど手を伸ばします。

30(センチ)×220(手)÷0.119(秒)=55462(センチ/秒)

盤上の打ち手の速度はなんと秒速555メーターと言う結果になりました。

「アルファ碁ゼロ」の思考の過程を覗いたわけではありませんが、「ゼロ」は音速の約二倍のジェット飛行機の早さで、仮想の盤上を走り回っていたのです。

その二ヶ月後、「アルファ碁ゼロ」に続いて「アルファゼロ」が発表されています。

囲碁AIの進化は続き、「ゼロ」は囲碁だけでなくて将棋とチェスも覚えていました。

三つのゲームのルールだけを教えられた「ゼロ」は、将棋で2時間弱、チェスで約四時間、囲碁では約24時間のあいだ自己対局を繰り返しました。

そのあと「ゼロ」は囲碁、将棋、チェスの世界最強AIと対局して、すべてやっつけてしまいました。

もちろんその中に「アルファ碁ゼロ」も含まれていました。

「ゼロ」は中国や韓国や日本の人たちが囲碁を学んだ二千年の歴史の蓄積を、たった一人で、わずか24時間で自己学習で学び、追い越したことになります。

先生も棋譜も経験もなく、たった一人でです。

これは恐ろしいことです。

人工知能「アルファゼロ」の「ゼロ」の意味は人間の手を借りることが必要でなくなったという意味だそうです。

Newtonは2018年6月号で次のように言っています。

・・もはや最新のAIは・・特定の課題に限れば、その驚異的な学習能力において既に人間を超えたといっても過言ではないでしょう。

特定の課題とは囲碁やゲーム、自動運転や画像認識などのことです。

これは特化型AIと言って、設計した人間があらかじめ想定した特定の課題を扱うものです。

それでは想定していない課題に直面したとき人工知能はどうするのでしょうか?

車の自動運転AIに飛行機を操縦しろと命令します。

車の自動運転のAIは解決方法が見つからずにギブアップするのです。

想定しない課題でも解決できる能力を持たせるにはどうすれば良いのか?

未知の課題に対応できる人工知能を「汎用AI」と呼んでいます。

汎用AI「Artificial General Intelligence」の最良のお手本、それは「ヒトの脳」でした。

いま、人工知能の進化のステージは人間の脳をモデルにした、どんなことにも対応できる「汎用型AI」の開発段階まで進んでいるのです。

特化型の囲碁AI「アルファゼロ」は、たった24時間で人類の囲碁文化2000年の歴史を超えました。

創造性や意志と言った人間の思考と同じ構造を持つ人工知能が開発されたとき、AIと人間との関係はどうなるのでしょうか?

人工知能AIが人間の知能を超えるとき・・「シンギュラリティー」は人類の文化の終焉を意味する。

これは「シンギュラリティー」を説明するときによく使われるキャッチ・コピーです。

わたしの認識が間違っていなければ、AIをどのような汎用型にするかは、プログラミングの領域であり、開発者の意志であると思っています。

人口知能と人間の関係を決めるのはどこまで行っても人間次第だと言うことです。

人間さえ間違えなければシンギュラリティーは怖くない筈でした。

悪意のある人間が、人工知能をプログラミングしない限りは、人工知能は人間の良きパートナーであるはずです。

しかし現実はそのような簡単な図式ではなさそうです。

「シンギュラリテイー」の意味と、その鍵を握る「汎用AI]

(ニューラルネットワーク。人間の大脳とよく似た構造と仕組み)

「シンギュラリティー」とは、AI自身がAIを改善することで、加速度的にその知的能力を向上させて、ついに人類にとってその先の進歩が予測不能になる状況のことです。

        (Newton2018年6月号)

「シンギュラリティー」はアメリカのAI研究者レイ・カーツワイル博士が2005年に著書の中で述べた言葉で、博士はシンギュラリティーは2045年に到来すると予測しています。

シンギュラリティーが本当に実現するかどうかは意見が分かれていますが、シンギュラリティーが実現するための条件は・・

 「AIが自分自身のプログラム・アルゴリズムを書き換えて自分を改善できる能力を持つこと」とされています。

これは「再帰的自己改善」と呼ばれています。

ドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏博士によれば、「再帰的自己改善には新しいものを生み出す創造性が必要であり、まさに汎用AIこそがそうした創造性を持ちうる」のだそうです。

人工知能は人間より優れた知能を持つだけでなく、人間のような意識や感情を持った存在・・人間以上になる可能性を持っているということです。

人工知能が人類にもたらしてくれる夢は果てしなく広がりそうです。

しかし一方・・人工知能などの未来のテクノロジーが生み出す脅威について、国連で問題提起がされていました。

2015年の国連の会議で、「人間をはるかに越えるような能力を持つスーパー人工知能に関して、人工知能の良い意味での可能性も十分認めつつ、テクノロジーがコントロール不能になれば脅威となりうる」という問題が提起されています。

 その時の二人の博士の発言をライブドアニュース(2015年10月21日)から抜粋して、要約してみました。

まず始めは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の物理学者マックス・テグマーク氏の発言要旨です。

・・未来のテクノロジーは、金融市場の裏を書いたり、人間の研究者より優れた発明をしたり、人間の指導者を越えて人心を操作したり、理解できないような武器を作ったりするかもしれない。

人工知能の短期的な影響は誰がコントロールするかに依存するものの、長期的な影響は、そもそもコントロール可能なのかどうかという問題になる。

今のところ、より良いコントロールの仕組みをどう作るかという問題は未解決のままなのです・・

次に、オックスフォード大学のニック・ボストロム教授の発言の要旨です。

「我々は、スーパー人工知能を使ったシステムを作る前に、それをコントロールする仕組みを用意する必要がある」

・・教授は人工知能を開発する研究者と、その安全性を考える研究者の協力の必要性を訴えました。

さらに全関係者に対し、長期間のAIプロジェクトには公益の原則を埋め込むべきだと主張しました。

ボストロム氏は、人工知能によって人類が絶滅したり、生き延びたとしても壊滅的な状態になってしまったりする可能性もあると示唆しています。

今後100年間で人間が何をするかは、人間の未来にとって自然災害よりはるかに大きな脅威だとボストロム氏は言います。

「本当に大きなリスクは、人為的なカテゴリにすべてあります。人間は地震や疫病、隕石の衝突などがあっても生き延びてきました。

我々は今世紀、まったく新しい現象と要素を世界にもたらします。

ありうる脅威のほとんどは、今後予想される未来のテクノロジーと関連するでしょう」

人工知能が人間の良きパートナーとして存在するためには、「コントロール問題」という乗り越えるべき大きな課題がありことがわかりました。

テクノロジーについて素人であるわたしは、人工知能の最先端で働く専門家に、直接このテーマについて質問がしたくてあることを決行しました。

それは理化学研究所のスーパーコンピューター「京」の現場を訪問することでした。

2年前に神戸のポートアイランドにあるスーパー・コンピューター「京」を見学させて頂いたときのことです

(「京」が計算をしている中核部分の写真です)

スパコンの「京」を案内していただいたのは、富士通から派遣された若くて優秀な研究者でした。

「『京』は一日中、ただたすら計算を続けているのです」

そう説明してくれた彼に、思いきった質問を投げてみました。

「人工知能の正体はなんでしょうか?」

若い研究者はさらっと答えました。

「人工知能の正体は(どこまで行っても)プログラミングです」

AIが人間にとって素晴らしいパートナーとなるのか、人類にとって制御の効かない脅威となるのか、すべては人間の英知にかかっている、と思った瞬間でした。

終わりに・・「ゼロちゃん」と対局しました。

いつか世界最強のアルファゼロの娘「ゼロちゃん」と黒番で対局することを夢見ています。

可愛い女の子の姿をした汎用型AI「ゼロちゃん」が目の前に現れて、碁盤を挟んで対局するシーンを想像するのです。

「うーん! 参りました」

「ゼロちゃん」がわたしに頭を下げました。

・・「お前がアルファ碁の子孫に勝てるわけないだろう」・・ですって?

じつはゼロちゃんは上手に手心を加えてくれているのです。

そりゃそうでしょう・・人類の知能を超えた賢い「ゼロちゃん」ですよ。

たかが人間の大人を囲碁で負かして喜ぶわけがないじゃないですか。

(終わり) 

付録:特異点・シンギュラリティーの三つの意味とは? 

 

シンギュラリティー「Singularity」とは『特異な』を意味する形容詞「singular」の名詞です。

名詞の「Singularity」は『特異、特異なこと、特異点』という意味になります。

「特異点」と呼ばれる「Singularity」には3つのステージがあります。

① 数学的な意味での特異点「Singularity」 とは、分数の分母が限りなく0に近づく状態を意味します。

0.00000000000000000000・・・分の1

このとき分数は無限大に拡散した特異な状態になります。

② 物理的な意味での特異点「Singularity」とは、宇宙に存在するブラックホールの中の特異な地点のことをいいます。

ブラックホールに引きずり込まれたすべての物質はもうこれ以上圧縮できないところまで圧縮されます。

このような無限に圧縮される地点をブラックホールの特異点と呼びます。

③ 技術的な意味での「Singularity」・・「技術的特異点」と言う概念は、人工知能AIが人類の知能を追い越して、新しい知能「超知能」の時代が出現することを示唆しています。

「シンギュラリティー」の提唱者であるレイ・カーツワイル博士はこのままのスピードで行けば、2045年には特異点に達するだろうと予測しているのです。

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下條 俊隆

下條 俊隆

ペンネーム:筒井俊隆  作品:「消去」(SFマガジン)「相撲喪失」(宝石)他  大阪府出身・兵庫県芦屋市在住  大阪大学工学部入学・法学部卒業  職歴:(株)電通 上席常務執行役員・コンテンツ事業本部長  大阪国際会議場参与 学校法人顧問  プロフィール:学生時代に、筒井俊隆姓でSF小説を書いて小遣いを稼いでいました。 そのあと広告代理店・電通に勤めました。芦屋で阪神大震災に遭い、復興イベント「第一回神戸ルミナリエ」をみんなで立ち上げました。一人のおばあちゃんの「生きててよかった」の一声で、みんなと一緒に抱き合いました。 仕事はワールドサッカーからオリンピック、万博などのコンテンツビジネス。「千と千尋」など映画投資からITベンチャー投資。さいごに人事。まるでカオスな40年間でした。   人生の〆で、終活ブログをスタートしました。雑学とクレージーSF。チェックインしてみてくださいね。

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